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悪魔は来りてホラを吹く  ◆TPKO6O3QOM




 金属音を奏でて、列車は停まった。間抜けなアナウンスを背中に聞きながら、ケットシーは列車を降りた。
 周りの様子は先の二か所と、さして変化はない。コンクリートの壁に囲まれた空間を、蛍光灯の寒々しい灯りが照らしている。

「座ってるだけってのも疲れんなー。マントが皺になっちゃったぜー」

 手でマントを伸ばしながら、ケットシーは鼻をひくつかせた。血の臭いがどこからか流れてきている。それを辿りながら階段を上ると、別の路線のプラットホームに出た。
 そこを歩いて気、血が零れているのを見つけた。まだ生乾きで、天井の照明をねとりと反射している。

「KILLされちゃった間抜けが居たのかねー。それとも、され損なってるぅ?」
 血を指で触り、臭いを嗅ぐ。
「され損なっていると、オイララッキーなんだけどなー。そんな間抜けな奴を、オイラウォンチュー!」

 べとつく血を親指と人差し指で捏ねまわしながら、ケットシーは尻尾を上機嫌に動かした。
 自分がそういう間抜けを二回も仕留め損なったことは棚に上げている。
 当面の彼の関心事は、血痕の主はどうなったかということだ。
 死体がないということは、この場では殺されなかったと考えられる。殺害者が死体を持っていったり、捕食したりする場合もあるだろうが、そこまで彼は考えない。

「死に損ないクン、すなわち、オイラのために生きてくれているグッド根性クンはドコかなー?」

 人気はなく、トンネルを通り抜ける風音だけが低く響いている。生きているなら、逃げようとするはずだ。血痕は地上への階段へと続いている。
 さて、手負いの獣は外から来たのか、それとも逆に外に出て行ったのか。
 後者ならばさして遠くには行っていないだろうが、行き先の絞り込みは難しい。
 それでは前者か。そうなると血痕がプラットフォームで途切れている状況から見て、列車に飛び乗ってしまったと考えるのが自然だ。だが、ここまで逃げて来て何処かに潜伏している可能性も捨てきれない。発見さえできれば、手間もなく生体マグネタイトを得られる相手だ。

「それを諦めるほど、オイラはシュガーじゃないぜー」

 ケットシーはそう独りごちると、地下鉄構内の探索を始めた。
「探索、孫策、メリケンサーック!」
 プラットホームの下の空洞は勿論のこと、ベンチの下やトイレの中も覗きこむ。
「放尿中籠城中、オイラ、もー辛抱なんねー。早く開けてくりー! って、開きっぱなしかよぉ。オケツ、丸だしー?」
 無駄に派手な動作で女子トイレにも飛び込むが、個室は全開である。人の居た気配も全く残っていない。同様の探索を、もう一つのプラットホームでも繰り返した。
 しかし、手負いの獣はおろか、死体の痕跡さえも見つけることは出来なかった。
 階段の昇降を繰り返し、さすがに高いテンションも続かなかったようだ。
 あらかた調べつくしたケットシーは手近なベンチに腰かけた。ここに来て、何本目かの列車の到着を伝えるアナウンスが響く。
 愛しい相手を探して地下を東奔西走した結論――手負いの獣は此処にはいない。ようするに骨折り損だったわけだ。

「つきあい悪いぜー。すなわちバッド付き合い!」

 ケットシーは口を尖らせた。不満は手負いの獣だけでなく、キュウビにも向けられている。あれだけの力を持っているのだから、もっと生体マグネタイトを手に入れやすくしてくれてもいいはずだ。
 ケットシーが電車を待っていた時にキュウビが起こした闇からも、その力の絶大さが知れる。伊達に魔王を名乗ってはいない。
 しかも、その闇は憎悪や怨恨、嫉妬、憤怒、恐怖、悲観、憂愁、絶望、狂気といった陰の感情の坩堝であった。あれ程の感情のエネルギーはそうそう見られるものではない。一体どれほどの贄を費やしたのだろうか。
「少しは分けてほしいよなー、まったくしけてんぜー」
 到着した列車が重苦しい音を立てて、動きだした。次々と通り過ぎていく無人の車両を見つめていたケットシーは、ふと気付いたように髭をぴくんと上げた。

「ちぇー、ミスったなー。次のが来たら、乗っちゃお。外はデンジャラスだしー」

 残響の中、ケットシーは呟いた。そのとき、ケットシーの耳が微かな電子音を捉えた。電話の呼び出し音だ。
 反響して分かりづらいが、電話が近くに設置されているのだろう。
「オイラと話したくてこんなところにまで……ポッ」
 ケットシーは跳び上がり、音源を求めて歩きだした。耳を前後左右に動かしながらホームを行くと、どうも改札の方から聞こえてくるようだ。
 開放されたままの改札口の脇にある事務室の中で、電話の赤いライトが点滅している。それに応える駅員の姿はない。
 自動扉を通ったケットシーはカウンターを飛び越え、受話器を手に取った。

「ヒーホー! あんた誰ー?」
『お、やっと出てくれたなあ』

 受話器からのんびりとした声が聞こえてきた。

『おいらは楽俊ってんだ。おめえは?』
「ケットシーだよー、よろピー! ラクシュンはそんなにオイラに会いたかったのかーい? もしかしてオイラにフォーリンラブ?」
『おめえの言ってることはよく分からねえんだが、おいらはこの電話ってもんで情報集めてんだ。今までも色んな所に繋いだんだが、誰も出てくれなくてよ、諦めかけてたところだ』
「ふーん」

 相手の言っていることに特に興味はない。ただ、声の調子からそれほど俊敏そうな相手ではなさそうだと、ケットシーは思った。
『早速だがぁ、幾つか訊きてえことがある。いいかい?』
「只で訊こうっての? ここはシュガーな奴ばっかりで困るぜ。もうちょっと世間の荒波で揉まれた方がいいんじゃなーい? 怠惰界おすすめー。そうだなー、MAGとか魔石とかくれたら考えるかもー」
『そうは言われてもなあ……この状態じゃおいらも渡せねえし、おめえも取れねえだろ?』
 楽俊が困ったように言う。それを聞いたからではないが、ケットシーは自分もまた伝言を預かっていたことを思い出した。

「オイラも熱ーいメッセージ頼まれてたんだっけ。じゃ、先にオイラの答えてくれたらいいよー」
『めっせーじ? 言伝か?』
「そうそう、それー」
『……そうかい。そうだったかい』

 楽俊は何処か嬉しそうに呟いた。のんびりした口調が、さらに緩んだものになったのが分かる。
 何故かは分からないが、楽俊は警戒を解いたらしい。もっとも、あの口調で今まで警戒していたらしいことの方が驚きであったが。

「オカリナっていう白い鳥とヒグマの大将っていう大熊、知らなーい? お仲魔が会いたがってるんだけどさー」
『……ヒグマの大将ってなあ、さっきの放送で死んだと言っていたぞ』
「そうだっけー? オイラ忙しくて、記憶がミッシングリンク?」
『いやぁ、それをおいらに訊かれても……禁止区域ってのはちゃんと聞いてたんだろうなあ?』
「それは聞いたー」

 自分の生死に関わる情報は把握している。楽俊は苦笑のような吐息を溢し、ケットシーの問いに応えた。

『オカリナは知ってる。さっき電話で話したばかりだ。オカリナを知ってるってこたぁ、おめえはオカリナの父ちゃんに会ったんだな?』
「イエス、オーボウって黒い鳥ー」
『そうかあ。あのな、オカリナはイーの四の保健所ってぇ所にいる。おいらの友達もそこに向かってんだ。おいらは一人で留守番中さ。急ぎなら、おいらからオカリナに伝えようか?』
「じゃ、よろしくー。おまえのパパは生きてるってさー」
『そんだけか。分かった。そんじゃ、おいらの番だ。ミュウツー、グレッグルって名前に心当たりはねえかい?』
「ないよー」

 本当に無かったので即答する。受話器の向こうで楽俊がたじろんだのが分かった。
 さて、どうしようか。とケットシーは思案した。よく分からないが、この楽俊は自分を信用してくれたらしい。しかも、一人でいるようだ。
 これは生体マグネタイトを得られるチャンスではないだろうか。
 ケットシーは銃の入ったデイバッグを見た。爪と剣では仕留められなかったのだから、次は銃が相当だろう。
 まずは居場所を聞き出すことにした。

『そりゃ残念だなあ。ところでよ、ついでに悪ぃんだがオーボ――』
「ねえねえ。実はオイラ、人生上手くいってないみたいな感じー。バッドな馬に襲われたり、犬とか狐とかに冷たく袖にされたりしてさー、オイラのハートはズタズタギタギタでむかむかドッカン。ヒトの温もりが懐かしい今日この頃。そんな寂しんボーイをラクシュンは癒してくれる気なーい?」

 楽俊の言葉を遮って、ケットシーは捲し立てた。

『…………。やっぱり、おめえの言ってることはよく分からねえんだが』
「ラクシュンは今どこー? オイラを仲魔にしてちょー」
『そういうことかい。回りくでえなあ、おめえの話は。おいらがいるとこは、でーの四の旅籠――この世界じゃほてるって言った方が通じるのかな、まあ、そこの三〇九って部屋だ』

 地図を取り出して広げてみる。ホテルは、ここからすぐ北だ。そこに、このお気楽な参加者はいる。ケットシーは自分の頬が緩むのが分かった。

「ヒーホー! オイラ、近くにいるぜー。すぐ行くから、待っててねー」
『おう。……そうだ、こっちに来るなら報せなきゃなんねえことがあるんだった』
「なーに?」

 さっさと電話を切り上げたくて、ケットシーは忙しなく足を揺り動かした。この様子なら逃げることはないだろうが、うかうかしていたら他の悪魔に先を越されるかもしれない。ケットシーの心情を知ってか知らずか、楽俊はのんびりと告げた。

『この周辺に殺し合いに乗った奴がいるみたいでな。そいつは帽子を被った猫なんだそうだ。充分気ぃ付けてくれよ』
「帽子を被った猫ねー。オイラコピー!」

 そう言って、ケットシーは電話を切った。カウンターを再度乗り越え、自動扉の前に立ったとき、ガラスに映り込む自分の姿を見えた。羽根付きの赤い帽子を被った猫が、爛と双眸を輝かせている。
 楽俊の言葉を反芻する。殺し合いに乗った帽子を被った猫――。
 おもむろにケットシーは帽子を取って、デイバッグに突っ込んだ。

「そんなデンジャーでバッドなやつと勘違いされたら、オイラ困るしねー」

 ケットシーは呟き、改札を抜けて地上へ向かう階段を上って行った。



【E-4/1日目/朝】

【ケットシー@真女神転生if...】
【状態】:疲労(小) 、帽子なし
【装備】:和道一文字@ワンピース、まぼろしのてぶくろ@MOTHER3
【所持品】:支給品一式、デザートイーグル@真女神転生if...(コロナショット2発装填)、コロナショット@真女神転生if...(14発)、雷の石@ポケットモンスター、拡声器、折れたシャムシール@真女神転生if...、巨大キノコ@スーパーマリオシリーズ、グリードアイランドカード(追跡)@HUNTER×HUNTER 、ケットシーの帽子@真女神転生if...
【思考】
基本:生き残る。ゲームに乗るかキュウビに逆らうかは他の参加者をよく確かめてからにする
1:D-4のホテルに行く。
2:先ずは生体マグネタイトを調達する(誰かを殺す、もしくは誰かが持っているのを手に入れる)。一先ずターゲットは楽俊。
3:余裕があれば首輪の解除をする。
【備考】
※雷の石をマハジオストーン@真女神転生if...と勘違いしています
※まぼろしのてぶくろを防具と勘違いしています。拡声器を攻撃アイテムと勘違いしています。
※魔法の制限の可能性に気づきました
※グリードアイランドカードの使用法を聞きました
※オカリナ、ヒグマの大将、グレッグル、ミュウツーの情報を聞きました
※帽子をかぶった猫のことを自分のこととは思っていません。



【D-4/ホテル/1日目/朝】

【楽俊@十二国記】
【状態】:健康、疲労(小)
【装備】:なし。
【道具】:支給品一式、フィジカルミラー@ペルソナ3、不明支給品0~1個(本人は確認済)
【思考】
基本:キュウビを人間の土俵で倒す。
1:保健所に電話して、オーボウのことを伝える。
2:各施設に電話をかけて仲間を集める。オーボウ、グレッグル、ミュウツー優先。
3:ケットシーを待つ。
【備考】
※楽俊の参戦時期はアニメ第6話です。
※人間の姿になれないことに気付いています。
※会場が十二国以外の異世界であり、参加者にも異世界の住人がいることを認識しています。
※アマテラスの本当の姿が見えており、特殊能力があるのではと思っています。
※アマテラスの首輪が壊れていると思っています。
※ピカチュウたちと情報交換しました。
※この会場にいる獣達は全員人間とかかわりをもつ者だと勘違いしています。
※ケットシーを信用できる獣だと思っています。オーボウに信頼されて伝言を託されたと勘違いしたため。


※楽俊はこれまでに幾つかの施設に電話をしたため、場所によってはその呼び出し音が聞こえていた可能性があります




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054:口より先に欲が出る ケットシー 084:Four Piece of History
059:距離を超えた遭遇 楽俊 068:本日の特選素材




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