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中つ国異聞



 昔々――それは、遠い昔のこと。
 かつて、月には、それはそれは見事な都があったそうな。
 都は巨大な唐繰で、月の民は、わしらには創造もつかぬような豊かな暮らしをしておったそうじゃ。
 月には妖しく耀く、真っ赤な石があって、それはまるで凍てついた焔のようじゃった。
 この石には不思議な力があり、それを使って、月の民は様々なものを生み出し、栄華を極めておった。
 しかしあるとき。
 月に大いなる禍が降りかかったのじゃ。
 遠い遠い時空の彼方より赤い星が降ってきたときから始まった。
 なんと、月にあった赤い石は、その星の欠片だったのじゃ。
 赤い星が欠片に惹かれたのか、欠片が赤い星を呼んだのか――いや、月の民自身が呼び寄せたのかもしれぬ。
 どちらにせよ、赤い星によって月の都は瞬く間に滅び去り、生き残った民は大和という舟に乗って、神々の住まう高天原に逃げて来た。
 神々はそれを受け入れ、大和は大地と月とを結ぶ友好の証として、長らく祀られておったのじゃ。
 じゃが、禍はまだ終わってはいなかった。
 星の海より、八岐大蛇という怪物が高天原に攻めて来たのじゃ。山ほどもある金色の体に、丸太のように太い八本の首。血のように赤い眼(まなこ)は、見ただけで呪いをまき散らす――。
 高天原はたちまちの内に炎に包まれてしまった。
 神々の哀惜と断末魔の声が交叉する中、八岐大蛇に立ち向かう二つの影があったそうな。
 それは、高天原を統治する大神天照と、月から逃げて来た金髪の青年じゃった。
 忍び寄る常闇の中で、天照は光を帯びた体を躍らせ、青年は耀く刃を猛然と振るった。その二人に負けじと、八俣大蛇も八本の首を掲げて喰らい付く――。
 長く激しい戦いの末、八俣大蛇は天照ともつれ合うようにして下界へと落ちて行ったのじゃった。
 一方で、八俣大蛇の毒牙から逃れた神々は、大和を漕ぎ出して生き延びようとしておった。蹂躙された高天原は、神すら住まうことのできぬ程に瘴気の渦巻く穢れ地と化していたからじゃ。
 されど、それが誤りじゃった。あろうことか、大和の奥底より数多の妖怪たちが湧きだしたのじゃ。赤い石の力により造られた、大地の理から外れし物ども――。
 そう。大和には、月を滅ぼした赤い星が潜んでおったのじゃ。逃げ場を失った神々は、為す術もなく妖怪たちに喰い殺され、大和は死の舟と化した。
 舵を失った大和は下界へと墜落し、妖怪たちは大地へ溢れ出て行った。
 下界に降り立った大神天照は八俣大蛇と相果て、大地には混乱と災厄だけが残されたのじゃった。
 元凶たる赤い星はというと、神々の無念の想いを喰らって――眠りについたのだそうじゃ。赤い星は、まさしく空亡ともいうべき大禍津日神だったのじゃろう。
 ん? 生き残った月の青年はどうなったかじゃと?
 その青年がそれからどうなったのかは、誰も知らぬ。風の噂では、下界へと降り、朝廷に仕えたと言うが……。


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