はじける笑顔を眺めて、ただ明るい声に包まれながら

穏やかに 和やかに 安らかに

この幸せを強くかみしめていた



~T15と私。「かけがえのないありきたりな幸せ」~



涼州藩国内に居を構えるとある一件の住居。
そこからは毎日のように賑やかな音が漏れ聞こえる。
それはとてもとても楽しそうで、それ以上に幸せそうで、家屋からこぼれてくる人声だけで通りがかった者を笑顔にしてしまう。
だけれどその家に住む家族は、その何倍も幸せなのだった。



「忠孝さん聞いてくださいよ。ひなぎくってばね~」
「ちょ、それはまだ秘密なのー!それよりも、翡翠ちゃんはやっぱり好きな子が共和こ…」
「ぬああああ!!ひな言うな!それ以上言うなああああああ!!!」
「大丈夫です。想っていればきっとまた会えますから」
「コーラルはいい事を言うな」
「にゃー」
「はははは」

今日も蒼家では、いっそ騒がしいといった表現が合いそうなほどの家族の語らいが行われていた。
母が楽しげに話し、長女と長男が必死に止めようとする。
次男と最年長の三男は少し距離をとっているものの、その表情は任務中とは比べ物にならないほど穏やかで。
父の膝の上で丸まっている番猫さえも楽しみ声を上げ、父は全てを見守りながら優しく微笑んでいた。

この家の団らんの中心は母親である事がほとんどだった。
何も考えてなさそうなゆるみきった喜色満面の笑顔を振りまき、ほんの些細な事すら楽しげに話す。
周りはそれにつられるように破顔する。
総じてそれは、明るい家族の気風となった。

だがこの家庭にも、ただ一つだけ決まりごとがあった。
「母親を悲しませない」
放任主義で何をやっても受け入れてくれるからこそ、誰がいうでもなくそれぞれの心に宿った大切な取り決め。
知らず知らずのうちに家族に守られながら、母は皆の真ん中で大輪の笑顔を浮かべている。

「柘榴様はもてるんですよ」
「何を言っているんだ。僕らの周りは男ばかりじゃないか」
「柘榴ちゃんって好意を全く気付かずスルーするタイプよね」
「お前最悪だな」
「そうねー。柘榴は知らないうちに女の子を傷つけちゃう朴念仁よねー。翡翠は好意を向けても本気にされない可哀想な子だけれど」
「ぐぼふぁっ」
「わー、翡翠ちゃんかわいそー」
「ひなぎくさん、棒読みですよ…」
「にゃー」
「はははは」



はじける笑顔を眺めて、ただ明るい声に包まれながら

強く 静かに 密やかに

この幸せを守るためならなんだってしようと思った

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