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2-215 - (2006/06/19 (月) 07:01:40) のソース
215.狂気の瞳 [2日目 丑三つ時] ---- 人には縁というものがある。出会いも別れも、人と人とがつづきあっているからこそ生まれる。 あるものはそれを偶然とし、またあるものはそれを必然とした。 それもそうだろう。この広い世界では、たとえ天寿をまっとうできたとしても、生涯に出会うことのできる人数など知れている。 出会いを縁と呼ばずして、なんと呼ぶことができるだろうか。 偶然であろうと必然であろうと、そんなことは関係ない。ただ出会ったことに、意味があるのだ。 では彼と彼との再会にもまた、なんらかの意味があるのだろうか。 ◇ ◇ ◇ 傷だらけの男───♂クルセイダーは近づいてくる足音に、笑いだしたくなる気持ちを抑えた。 日が落ちてから、すでにかなりの時間が過ぎている。自分の手足が動かせるまでに回復したことから考えても、それはわかっていた。 それでもオートバーサークの反動からか、肉体は万全という状態からは程遠かった。だからこそ♂クルセイダーは、森に身を隠していた。 そこへ♂クルセイダーの事情など知る由もなく、何者かが近づいてきたのである。♂クルセイダーはこれを好機と捉えた。 日中ですら薄暗い森の中である。まして今は月と星の明かりがわずかに差しこむだけの夜。音がなければ相手の存在に気づけるはずもない。 当然♂クルセイダーは、わずかの音も立てなかった。息を殺して不意打ちの機会をうかがっていた。 足音が、相手がたった一人であることを教えてくれた。 その相手が自分のすぐ脇を通り抜けようとしたところで、♂クルセイダーは意を決した。 わずかの躊躇もせず、すばやい動作でシミターの刃を暗闇へ刺しこんだ。とても傷を抱えた男とは思えない、見事な動きだった。 とうてい避けようのない一撃だった。 ♂クルセイダーは、自分の一刀をかわされたことが、にわかには信じられなかった。 潜んでいることを感づかれた覚えはない。反応できるはずもない。はっきりと殺せたと思っていた。 しかし、現実は違っていた。 相手は♂クルセイダーが襲いかかったまさにその瞬間、まるで獣のように殺意を感じとり、即座に横とびしたのだ。 ♂クルセイダーの剣は空を切り、襲撃は結果として失敗に終わった。 こうなると不利なのは♂クルセイダーの方だった。 怪我のせいで余力は乏しい。1対1とはいえ、苦戦は必死である。 初太刀を外すとは夢にも思っていなかった彼は、やむを得ずに相手の出かたをうかがった。 相手は背格好からして、男だった。刀剣を構えた姿勢から、剣士騎士のたぐいであることがわかった。 まっすぐで綺麗な構えだった。 「生きて、いたのか?」 こぼした♂クルセイダーの声に、男はぴくりと反応した。 顔は見えなかったが、♂クルセイダーは、やはりあの♂騎士だろうと思った。 それにしてはすさまじい回復である。 ♂クルセイダーが知っている彼は、およそ一日で回復できるような傷ではなかった。 先ほどの動きにしても尋常なものではない。 疑問はつきなかったが、♂クルセイダーはさらに声をかけた。 「♂ケミはどうした? なぜひとりでいる。おまえは人をまもる騎士だろう」 おそらく♂騎士であろうその男は、なにも答えなかった。 「そうか、ではまもれなかったのだな。つまりおまえも、騎士にはなりきれなかった男というわけだ。俺と同じだな」 苦笑する声が洩れた。男に失望したのかもしれなかった。 男なら自分とは違う道を、騎士としての道を貫いてくれると信じていたのかもしれない。いや、信じたかったのだろう。 神を否定し、醜く生きるしかない自分とは違う世界で、男が騎士として死ねることをうらやましいとさえ思っていた。 うらやましかった。 ───自分には二度と手に入らないものだったから 「・・・・・・ぁ・・・・・・・ぉ・・・・・・」 男の声がかすかに聞こえた。力ない、いまにも力尽きて倒れてしまいそうな、かぼそい声だった。 反して剣をにぎる構えには力が溢れていた。隙らしい隙も、微塵も見当たらなかった。声と姿勢がつり合っていないように思えた。 死にたいのに死ねない、アンデッドのような魔物とどこか重なる気がした。 男のただならない様子に、♂クルセイダーは背筋が寒くなったのを感じた。 久しく感じたことのない恐怖というものだった。 「どうした? 俺がわからないわけでもあるまい。それとも、友の死に正気を失ったとでも言うのか?」 言葉を口にして、♂クルセイダーは一歩後ろに下がった。意識して足を動かしたつもりはなかったが、本能がそうさせた。 気がつけば声を荒げていた。 「こたえろ! ♂騎士。おまえはどうしてここにいる!」 男は変わらず、ぼそぼそと口ごもるようになにかを喋った。 しかし♂クルセイダーは耳を澄ませ、今度ははっきりと聞いた。 「・・・・・・・だれだ?・・・・・・おまえ?・・・・・・」 冷や汗が背中をだらりと流れたのを感じながら、♂クルセイダーは目を凝らし、暗闇の中にいる男の顔を懸命に見た。 ぎらりと男の目がきらめいたのを見てとって、大きく後方へ跳んだ。 伝わってきたのはとてつもない殺意だった。 その瞳は血のように鮮やかな赤色で、♂クルセイダーを映していた。 人が持つ瞳のかがやきではなかった。 <♂クルセイダー> 現在地:E-4 髪型:csm:4j0h70g2 所持品:S2ブレストシミター(亀将軍挿し) 状態:左目の光を失う 脇腹に深い傷 背に刺し傷を負う 焼け爛れた左半身 オートバーサークによる反動 <♂騎士> 現在地:E-4 所持品:ツルギ、S1少女の日記、青箱1個 外 見:虚ろな赤い瞳 状 態:痛覚を完全に失う、体力は半分ほど、個体認識異常(♂ケミ以外)、精神不安定 備 考:GMの暗示に抵抗しようとするも影響中、混乱して♂ケミを殺害 ---- | [[戻る>2-214]] | [[目次>第二回目次3]] | [[進む>2-216]] |