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2-233 - (2006/08/09 (水) 17:11:28) のソース

233.大自然の呼び声 [3日目未明]
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ずびし。
♂セージの脳天に鋭いチョップが入った。

「ついてこないで」
♀商人は冷たく言う。

「そうは言ってもですね」
♂セージは眠そうに目をしばたかせつつ抗弁した。
「やはり1人になるのはよくありませんよ」

「すぐに戻るってば」
彼女はいらだたしげに男を押し戻す。
ただし寝ている仲間を起こさないように小声で。

「しかし排泄中は最も無防備になる瞬間のひと・・・ぶっ」
言葉の途中で靴を投げつけられ♂セージは倒れた。

投げつけた姿勢のまま♂商人は肩を怒らせ荒い息を吐く。
「分かってるなら来るなっ!」
要するに見張り番の最中にトイレへ行きたくなったのだ。

彼女は投げつけた靴を拾って木立に入る。
「いい?絶対にこないでね」
「仕方ありませんね。声の届く範囲にいて下さい」
♂セージは倒れたまま答えた。


「まったく。もーちょっとデリカシーあれば完璧なのになあ」
ぶつぶつ言いながら♀商人は藪をかきわける。

結局、彼女はかなり奥まで分け入っていた。
声が届く距離では音も聞こえてしまうかも知れない。
乙女の恥じらいのなせるわざである。

「・・・・・・」
♀商人は来た方向を振り返った。
そろそろ東の空も白み始める時刻とは言え、木立の中はまだまだ闇に等しい。
視線も気配も届かないのを確認して彼女はしゃがみ込んだ。

※♀商人のお願い。目と耳をふさいでてね※

数分後。彼女は顔を上げた。
かすかな葉擦れの音。
まっすぐに近付いてくる。

彼女は慌てて服を整え、靴を脱いだ。
やがて目前まで迫った気配の顔のあたりを狙って叩きつける。

「天誅!」
「うおっ!?」
彼は大げさに飛び退いた。

「んもう、来ちゃ駄目っていったでしょ!」
仲間からは充分離れているので今度は気兼ねなく声を張り上げる。
「・・・そりゃまあ心配してくれるのは嬉しいけど・・・」

一方、彼は左腰に手をやって用心深く問いかけてきた。
「何者だ?」
その言葉でやっと♀商人はおかしさに気付く。
なんだか♂セージと様子が違う。

「ええっと、誰?」
「・・・♂騎士。そっちは」
「♀商人。って、え?ええええええっ!?」
反射的に答えてから♀商人は狼狽した。

わずかな明かりに覗く真っ赤な眼。
腰の手は剣の鞘に掛かり、すでに鯉口を切っている。
♂セージは言っていた。
♂騎士は狂戦士化しているかもしれない。

ズッ、と摺り足で踏み出す音。
「来ないでっ!」
カートもゼニーも置いてきた彼女は反射的にもう片方の靴を投げた。

銀光がひらめく。
鈍い音とともに靴がたたき落とされた。
彼女は身を翻して逃げだそうとする。

だが、靴がない。
素足に石や木の根が食い込む。
「痛っ・・・くつ、靴っ」

その背を襲うかと思えた♂騎士はなぜか立ちすくんでいた。
「靴・・・?」
足元に落ちた靴と♀商人を見比べる。

「そう、靴っ。返してっ」
「・・・・・・」
無言で考え込んでいた♂騎士はやがて剣をゆっくり収めた。
そして靴を拾う。

「ほら」
靴を差し出す彼から♀商人は後ずさった。
「寄らないでっ」

怯える彼女へ♂騎士はため息混じりの悲しげな笑みを向けた。
「そっちに敵意がないらしいことは分かった。なら戦う意味はない」
そう言って靴を彼女の足元へ投げ返す。

「・・・なんで?」
♀商人は警戒しながらそれを拾い、聞き返した。
彼は答える。
「敵なら靴なんか投げない。もっと硬い物を選ぶし、裸足じゃ戦いにくい」

彼女は思わず呟いた。
「それが分かるのになんで♂ケミさんを・・・」
何も持ってなかったのに。という言葉は口の中で消えた。

♂騎士は息を飲む。
「・・・あの時居たのか」
そして寂しそうに言った。
「見えなかったんだ」

「どうして?暗かったから?」
不思議そうに聞く♀商人へ彼は首を振る。
「いや。姿は見えていた」

「でもそれが誰か、何を持ってるか、持ってないかもわからなかった」
♀商人は首を傾げ、靴を履き直した。
「この靴は見えるのに?」

♂騎士は首を縦に、そして横に振る。
「今は見えない」
「どういうこと?」
「わからない」

「・・・これはどう?」
♀商人はその大きな手袋を外して見せた。
そちらをちらりと見た♂騎士は無言で首を振る。

「じゃあ、こうしたら?」
彼女は手袋をぽんと投げ渡した。
受け取った♂騎士は何とも言えない表情を浮かべて言った。

「決闘の申し込みか?」
上流階級では手袋を叩きつけるとそう言う意味になる。

「ちーがーうー!」
両手足をじたばたさせて抗議する♀商人に彼は苦笑した。
「冗談だ。手袋だなって意味のな」

「シャレになってないからやめて」
彼女は深々と息を吐いた。
そして気を取り直し、手袋を取り返す。
「でも、やっぱり見えたんだ。私が持ってると見えないんだね」

♀商人の手元を見ていた♂騎士は、やがて大きくうなずいた。
「そういうことか」
「うん。たぶんそういうこと」
彼女もうなずき返す。

「俺は他人がちゃんと見れなくなってるんだな」
彼は深々とため息を吐き、手に顔を埋めた。
「どうして・・・」

見かねて♀商人は言った。
「GMに何かされたんじゃないかって。♂セージさんが」

「GM・・・橘や森にか?」
♂騎士は顔を上げ、すこし考え込んだ。
心当たりがあるような気もするし、ないような気もする。

一方の♀商人も首を傾げた。
「橘とか森って誰?GMって言ったらジョーカーじゃないの?」

「ああ、俺が最初に会ったのはその2人だったんだ」
彼は当然のように答えた。
♀商人も、ふうん、と相槌を打っただけで終わる。

「それより。詳しい話も聞きたいし、あいつをちゃんと弔いたい」
そう言って♂騎士は辺りを見回す。
「他の皆は?」

「ん。ちょ~っとあっちの方」
♀商人は背後の木立を示す。
「遠いのか?どうしてこんなとこに1人で・・・」
♂騎士は首を傾げながら踏み出した。

「ん?」
名状しがたい水っぽい足音。
彼は何かに気付いた様子で小さく鼻を鳴らす。
「なんだ。トイレか」

その瞬間、♀商人の顔が真っ赤に染まった。
「え・・・え・・・」
「え?」

「えんがちょ~~~~~~っ!!わ~~~~~~ん!」
「しまった!?すまん。ごめん。待ってくれ!」
泣きながら一直線に駆け去る彼女を追って♂騎士は必死に走り出した。


<♀商人>
現在地:D-6(仲間とやや離れた位置)
所持品:店売りサーベル、(以下仲間の所に置き去り)乳鉢いっぱい、カート、100万はくだらないゼニー
容 姿:金髪ツインテール(カプラWと同じ)
備 考:割と戦闘型 メマーナイトあり? ♂セージに少し特別な感情が……?
   ♀WIZ・♂シーフ・♂セージ・淫徒プリと同行→朝を待って♂セージ・淫徒プリと同行
   ♂騎士と遭遇

<♂騎士>
現在地:D-6
所持品:ツルギ、S1少女の日記、青箱1個
外 見:深い赤の瞳
状 態:痛覚を完全に失う、体力は半分ほど、個体認識異常(♂ケミ以外)正気を保ってはいるが、未だ不安定
    ♂ケミを殺してしまった心の傷から、人間を殺すことを躊躇う それでも生きたいと思う自分をあきれながらも認める。
備 考:GMの暗示に抵抗しようとするも影響中、混乱して♂ケミを殺害 体と心の異常を自覚する
    ♂ケミのところに戻り、できるなら弔いたい ♀商人と遭遇


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