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035.選択肢    きゃりっ。♂アサシンは、不意に、自分の足元からそんな音を聞いた。  足をどけてみると…そこには、一枚のコイン。10000z金貨だった。そして、それは表を向いている。  一瞬、どうしてこんな高級貨幣が道端に転がっているのか、と考えてしまうのは貧乏人の性というものだろう。  それを拾い上げ、土を払って、しげしげと見つめる。  まーちゃん等は、意外と質量のあるこれを思いっきり投げつけて、相手を撲殺するのかもしれない。  世に言うメマーナイト、である。嗚呼、ブルジョワジー。  金の力万歳に万歳三唱。大合唱。  それはともかく。 「俺が持っていても、意味は無い」  というのだけは、確かだ。 「さて、随分と歩いてきた」  既に、砂漠と思しき地形はあっと言う間に超えてしまった。  距離感が妙な気がするのは…まぁ、深く考えないことにした。  今は、森の手前にさしかかろうか、と言う所である。  但し。 「あの娘は…まだ見つからない、か」  これまでの道のりで、彼の求める女性の姿は全く見えなかった。  これからも、探し続けることは確かだが… 『これからの行動の指針を決める必要がある』  それは、事実であった。  ふらふらと探し歩くだけでは面白くないし、第一、何らかの形で食料を手に入れなければ、 そのうち探しつかれて飢え死にしてしまうやもしれん。歩いているうちに、腹が鳴って気づいたことだ。  探索をし続けるには、それなりに食料が必用である。勿論、唯普通に生き延びるにしてもだ。  そして、暗殺者としては、食料はその辺にいる人間を殺して奪うのが一番手っ取り早かろうと思われた。 「しかし、そうなると…」  多くの人間を敵に回す事になる。  武装の限定されたこの状況では…何とか切り抜けられないこともなかろうが。 「乗るべきか、乗らざるべきか。それが問題だ」  と、不意に彼は手にしたままだった金貨に目を落とす。  自分で決められないのなら、自身の運に決めてもらうのが、一番楽で確実だ。  ぴぃん、と彼は、金貨を空高く跳ね上げた。  それは、地面に落ち…ころころと転がっていく。 「裏」  運は、彼に殺せ、とお命じになられた。  奇しくも、それは男が此処に訪れる前、コインを投げたアルケミスト♂とは、真逆の結果。  最も、アサシンはその事実を知る由も無い。 ---- | 戻る | 目次 | 進む | | [[034]] | [[目次]] | [[036]] |

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