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041.微笑み   「……」  僕───♂剣士は、ただぼうっとして大きな湖畔に立ちすくんでいた。  きっと、数時間後に死刑を待つ囚人の気持ちはこういったものだろう。  何となく、そんな気がした。    言われた事実は、余りにも過酷で。  こうしていると夢のようにも思える。  けれど、首を摩ると、僕が『繋がれている』証明が在る。  見えない鎖がくっついた皮の首輪だ。  さく。  ふと、土を踏む音が聞こえて振り返る。 「誰…? 言っておくけど、僕にやる気は無いよ?」  どうせ、どう足掻いたって、殺されるだろう。 「奇遇ね…私達もそう」  振り返った先に居たのは、♀アーチャーと、♀マーチャント。  僕にそういったのは、弓手の方だ。隣には、頭に猫耳を付けた商人がくっ付いている。 「珍しいね。てっきり、皆その気になってる人ばかりだと思ってた」  言うと、弓手は憮然そうな顔、商人は残念そうな顔をしていた。 「心外ね…」 「そうですよっ。信じないと駄目ですっ」  ぴょこぴょこと、商人の頭の上で猫耳が揺れている。  彼女は、一歩、歩み出ると、僕の手を握る。 「よかったら、私達といきませんかっ?」 「いいの?」 「いいよいいよ。歓迎するよ」  やがて…僕は、立ち上がる。  二人の言葉に、ほんの少し勇気が沸いていた。  きっと、それは僕の武器よりも、ずっと強いんだろう。  その手の柔らかさが、僕のいくじなさを砕いていった。 「ありがとう…」  その言葉に、二人は頷く。  少し、遅れてしまったけれど、僕の出立の時がやってきたようだった。 「あ…ごめんですぅ。ちょっと、先に行っててもらえないですか?」  僕と♀アーチャーは頷く。 「それじゃあ、おねがいしますぅ。直ぐ、追いつきますねっ」  それから…商人の少女は、二人の後姿を見ていた。  その口元に、三日月の様な微笑みを浮かべて。 ---- | 戻る | 目次 | 進む | | [[040]] | [[目次]] | [[042]] |

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