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121.Marionette ----   ♂BSに襲われたところを、間一髪♀クルセに救われて逃げ果せた♀BSだったが、その歩みは目的地へと辿り着く前に止まっていた。 「どうしよう……」 約束の場所は、アルデバラン。 しかし、そこへ行くための唯一の通り道である赤芋峠が、もうすぐ禁止区域になろうとしていた。 閉じ込められ、そのまま死を待つなんてことは御免である。 命の恩人とも言える人との約束だ。出来ることなら守りたくはあったが……。 「やっぱりダメ。場所を変えるしかない」 彼女が自分の立場だったとしても、ここでアルデバランに向かうようなことはしないだろう。 進行方向を変える必要があった。 「けど……」 この位置から一番近いのはプロンテラ。 現実世界ではもっとも人々の集う、ルーンミッドガッツの首都。 「……」 だがそれ故に、彼女は恐れていた。 人が集まるということは、それだけ襲われる可能性も増えるということ。 もし、もし再び誰かに襲われたら。 そしてそれが、自分の憧れた彼だったら。 自分は正気でいられるだろうか。 恐怖に駆られて人を殺すことも無く、かといって殺されることもなく、無事に彼女と会えるのか。 「そんなの無理!無理よぉっ!!」 無理だ。無理に決まっている。 彼女の心は恐怖でいっぱいだった。 体は常にブルブルと震えているし、木々のざわめきにさえ身構えた。 今も知らず知らずのうちに、腰の包丁に手がかかっている。 「誰も……誰もいなくなればいいのに」 自分を脅かすものなんて全て消えれば良い。 そうすれば恐怖に身を竦ませる事も無い。暖かいベッドで、とまでは行かなくても、心休まる穏やかな眠りも迎えることが出来る。 そうだ。 いなくなってしまえ。 いなくなってしまえ。 いなくなってしまえ!! 「…そう、か」 そう思ったとき、彼女の中で何かが切れた。 今までに死した者たちの怨念か、はたまた舞台に渦巻く狂気の成した悪戯か。 確かに何かが、彼女の中で変わった瞬間だった。 「フ、ウフフ……」 簡単だった。 消せば良かったんだ。 自分の気に入らないもの、自分に危害を加えるもの、自分以外のもの!! だって―――。 だって、あの人もそうしてる。 自分が惹かれ、憧れ、欲したあの人。 ♂BSだって、私を殺そうとしたじゃないか!! 「ウフフフフ……アハ、アハハハハ、ハハハハハハハハッ!!!!」 恐怖というものは、ここまで人を変えることが出来るというのだろうか。 そこに、先ほどまで震えていたか弱き女性の姿は無く。 安寧を、安楽を求めるが故に、そして、何よりも人として生きることを求めたが故に。 人である事を捨てた一つの傀儡が、壊れた笑いを響かせていた。 ---- | 戻る | 目次 | 進む | | [[120]] | [[目次]] | [[122]] |

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