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122.聖なる大馬鹿者 ---- 見知った顔だった。会相えたのはほんの少しの時間なのに、腹立たしい程に記憶に焼きついた顔だった。 ―皆が助かりますように、ってか?手前だって、そこまで馬鹿じゃ… きょとん、とその頬から少し血を流しながら自分を見つめる顔。 水を補給するためにローグ達は地理を思い出しながら川原に来たのだが。 川についた途端、はしゃいでちょろちょろと動き回るアラームと、それを危ないからと止めようとするアーチャー。 そしてそのアーチャーの頭にのっかっているバフォメット。 その騒ぎをぼんやりと見つめてぶつぶつと不貞腐れる♂ローグを♀クルセが苦笑いしながら水をそれぞれの水袋に入れるのを手伝っていた。 が、2人と一匹が走っていった方向で悲鳴があがる。 悲鳴の上がった方向へと悪漢と聖堂騎士が駆ける。 そしてそこ…夕日で赤く染まる中、その夥しい赤に目を奪われた。 ―馬鹿野朗!! 助けたんじゃねぇ!! 手前みたいなInt1馬鹿は、わざわざ殺さんでもすぐにおっ死ぬから、手間省いただけだ!! びくりと震えて、涙のあとがのこる顔をこちらを向いて。 手に食べ物をもったまま突っ伏して死んでいる男、 少し離れたところで背中から大量に血を流してこときれているシーフ、 争った痕跡、血が乾いてこびりついたスティレット。 そして… そして少しうつむいて、ポツリと。 ―お優しいんですね 「……っとに…!!」 ローグは目を閉じ、拳をぎりと音が出るほど強く握る。 頭にくる。頭にくる。頭にくる…。 吐き気がする、ムネがムカムカする… どんな状況で殺されたのか、わからない…けれどきっとこいつは、そう…バカだから。 こんなところで、死んだ。 ♂ローグの思考が何か彼自身わからない感情に染まりきる寸前、その肩をたたくものが居た。 肩を叩いたのは沈痛な面持ちの♀クルセである。 「ローグ。もう、行こう…。」 この光景を目の当たりにして気付かぬうちに結構経っていたらしい。 日は既に完全に沈み、 スティレットをクルセが持っていた。 そのクルセの肩越しに顔色を暗くして、野花を供えているアラームたちの様子が見えた。 舌打ちをして歩き始めようとするが、プリーストのそばに転がっているものに気が付く。 それは、小さな青箱。 無言でプリーストの遺体とそれを交互に見つめ、ローグは青箱を拾い上げた。 「いくぞ、日が落ちる前に少し川上って休む所を探さないとな」 惨劇の場からしばらく離れた辺りで苛立っているローグを見て、 アーチャーが先頭を行くローグに小走りで追いついて話しかける。 「ねぇ…。」 「あんだよ」 胸の中でまだわからない怒りがぐるぐると渦を巻いている。 頭痛までしてきた。 「ローグ、もしかして…さっきの人たち、知り合…」 「しらねぇ。」 遮るように言う。それきりアーチャーは黙ってまた歩き続ける。 そうとも、理解なんかできない、あんな大バカは。 知らない、知らない、識らない。 あの馬鹿のせいで。 後ろを振り返る。 アラーム、アーチャー、クルセ。それにバフォ。 そういえばなんでこいつらがついてきているのか。どうして、自分は。 そして少しうつむいて、ポツリと。 「…ああ…馬鹿って、うつるもんなんだな…」 まったく、可笑しい。 そうとも、あんな大馬鹿は笑ってやる。くっくっとひとり笑う。 嘲笑の形を型作っているつもりだったが、ローグのそれは苦笑い。 うまく、笑えない。 最後尾を歩くクルセイダーは一人、考えていた。 『♀BSは…もしや』フラッシュバックする先程の光景。 ハッとなって頭の中から振り払う。 まだだ、まだ…。 しかし、ミョルニール山脈をどうやって超える。禁止区域、あの狂ったBSの脅威、アルデバランへ、約束の… 思考がまとまらない。 ふと、前を見る。 私には、一時的にとは言えパーティーが居る。 ♂BSは…ひとり。 そして♀BSも。 何かに焦る。 最初に集められた場所では、あの♂BSだって普通の青年の表情をしていた。 何が起きたのかわからない。 唯、狂気がそこに。 先程の川辺の光景は異様だった。 『私はひとりじゃない、しかし…』 唯不安が募る。 ♂BSの狂乱と、ひどく狼狽した♀BSの顔がちらついた。 ローグの乾いた笑い以外、誰も一言も発しないまま、日が落ちるまで一向は歩く。 <ローグ一行 また移動中 ♂ローグ→小さな青箱1個獲得 ♀クルセ→スティレット1個獲得> ---- | 戻る | 目次 | 進む | | [[121]] | [[目次]] | [[123]] |

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