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124.燻ぶる火種 ----   思い出の名前はアリス。 親友だった。 唇を硬く引き結ぶ。顔は上を向く。 悲しみ漏らさぬよう。涙零さぬよう。 彼女の装束は黒。夜明けの赤にも、空の青にも染まらない気高い色。 宵闇の中、静かにたゆたい、夢の安らぎを導く優しい色。 その漆黒の戦装束に、涙は一粒だって似合わない。 手には、中程からぽっきりと折れた剣。 剣と言うよりは、大振りの鉈。 構わない。目的は遂げられるだろう。 管理者は、斃す。けれど、その前にしなければならないことが。 だから寄り道をして、歩く事にしよう。 一人で、折れた剣を手に道を往こう。 管理者を斃す為ではなく、参加者の誰かを殺す。 そんな復讐の旅に、道連れはいらない。 逆毛の助祭も、少し間の抜けた錬金術師も。 彼女は、親友を殺した者を決して許さない。 それは大切な、日常(パズル)の欠片。 二度と、そこに嵌るピースは無く。 ピースの欠けた日常の図版は、もう完全では在り得ない。 ──或いは、完全で無くなった時点で、彼女の日常は死に絶え。 師は、血騎士候は私を叱るだろうか。 だから、黒衣の騎士は己に問う。 騎士は、誰かを、何かを守るからこそ騎士足り得る。 ならば、守ることを棄てた私は。 既に、騎士ではない。 それでも構うまい。 黒い復讐者は、己に言う。 血は、所詮血でしか購う事はできはしない。 けれど、何処か寂しげな笑みを浮かべ。 そして──私は所詮、人ではない。 「これ以上は…ついてくるな、人間」 鉈を手に、背を向けて歩き出す。 何事か、二人は喋っている。しかし、耳に入れない。 「殺さなければならない者が出来た」 それは、きっと彼等にとっては道に外れる事だから。 「恩のあるお前達まで、巻き込む訳にはいかない」 けれど、背中の気配は消えなくて。 「冗談言わないでくださいよ…泣きそうな声で肩を震わせてるような女の子、一人で往かせちゃ男の名折れっす」 「うはwwwwokkkkkkwwww」 そんな事を、言う。 「……馬鹿者」 もう騎士で無くなった彼女は彼等を止める事が出来なくて。 「此処に来た時点で自棄っぱち。何処まででも付き合いますよ」 道を自ら違えた錬金術師は一言彼女にそう言った。 火種は、ぱちぱちと音を立てて燻り始めていた。   <深淵の騎士 アリスの復讐を誓う> ---- | 戻る | 目次 | 進む | | [[123]] | [[目次]] | [[125]] |

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