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054.目覚め  …体が、痛い。どうやら、強かに体を打ち付けたらしかった。  顔を顰めながら、俺の意識は、徐々に覚醒していく。  何時も何時もプロでダラダラしてた俺が、転職以来嗅いでいなかった臭いが鼻を突いた。   潮の、臭いだ。  「…海に落ちたんだっけか。そういや」  目覚めは、ちょっぴり生臭かった。ごつごつした岩場に横たわった体を起こす。  頭に手をやって、額をぐりぐりと擦る。無理矢理に呆けた脳味噌を叩き起こそうとする試み。 「むー…」  辺りを見回すと…俺から、少し離れた位置に、水に浸したぬいぐるみみたくなって、子バフォが転がっていた。  そいつは、数秒のウェイトの後、む…ん、と呻いたかと思うと、体を起こす。  しかし、こんな状況でも鎌を手放していないのは、流石というかなんというか。 「生きてるかー?」 「生きておるよ」  俺は問い、子バフォが答えた。  山羊は、ぴょこっと立ち上がるとこっちにやって来る。 「お主も無事か?」  ぶるぶる、と丁度犬がそうする様に、全身の水分を払ってから、山羊が言った。  無事なもんかい。被害は極めて甚大だ。  大事な一張羅は塩水漬け。折角、セットした逆毛は今や、力なく唯の前髪として垂れ下がってるときたもんだ。  というか、こいつ意外な所で畜生の本性を見せやがる。紳士として一人前になる為には、そんな事では遺憾と思うのだが。  まぁ…それはともかくとして、だ。 「生臭ぇ。塩水で体中がベタベタする。最悪の気分だ」 「そうか。無事か」  …無視か。そうか。俺の不平は見事に無視か。  そして、無視したまま、子バフォは、その寸詰まりの手を、顎にやった。  まぁ、先の一軒(俺を無視しやがった事件)は兎も角として、そいつが考えてることは、俺にも判る。 「ここは…どこだ?」  それが先ず一つ目。まぁ、これは大した問題ではない。  落ちた場所が、落ちた場所だからだ。あの崖下の海は穏やかで、遠くまで押し流す急な流れなんぞ入り込まないように思われたから。  俺の勘だが…場所からして、さっきの場所から余り離れていない。  沖合いに引きずり込まれるリガンリュー、とか言う恐ろしい現象もあるらしいが、それなら、今頃おっ死んでるだろう。  「それより…荷物、全部あのガキのとこだぞ畜生…」  二つ目。…むしろ、こっちの方が現状では深刻だ。  ぶっちゃけた話、今手元にある物といえば…ゴミと腰のツルギが一本だけ。  しかも、塩水に漬けちまった。後で拭いとかんと、漏れなく錆びたツルギになることだろう。  三つ目の問題は、あの糞スミだ。  ゾンビのよな目と似ても似つかない、あのふざけた馬鹿力と装備。  更にオーラだぞ?もう、世界で一番俺に関係の無い日、バレンタインとクリスマスが同時にきたよな騒ぎだ。  ガキは見殺しでもかまわんが、最悪でも俺の荷物を確保するには、どっちにしろアレが徘徊する森に戻らにゃならん。  正直、滅茶苦茶に気が重い。つーか、むしろ尻尾巻いて逃げてぇ。 「むぅ…」  子バフォが呻く。こいつも、俺が考えてるような事態は、大体把握してるらしい。 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ーーーーっ…クソッタレめ。ほんっっっっっっっっっとうにツイてねぇっ!!」  あのバカプリといいガキといい。本当の俺は、こんなんじゃねぇ。認めねぇ。  大体、俺はもうちっとcoolで、躊躇いなかった筈だ。もう、この場所じゃ何人もぶっ殺しててもおかしかない。  最初っからあのプリぶっ殺しとけばこんな事にゃならんかった。  …後悔先に立たずたぁ、このことか。  とはいえ。  俺は、疲れた様に俯いて、ぼりぼりと頭を掻き毟る。  このままでは、にっちもさっちも行かないのは確かな訳で。 「仕方あるまいな。諦めよ」  何をだ。つーか明言しろ。そりゃ、俺の命のことかっ!? 「……」  脳裏に、何となく帽子を手で振って俺を見送る連中を空想しながら、目の前の畜生を見る。 「何を黙っておる?我とて、お主の地図で主の名も、我がいた場所も確認しておらん。 お主と我がアラーム殿の所に戻るのは事は利害の一致だろうに。一々躊躇うな」  …この、畜生め。 「お前、リスクマネージメントとかいう言葉知らんのかっ!?」 「知っておる。その上での発言だ」 「……判ったよ。行くよ。戻りゃいんだろうが、戻りゃ」  投げやりに言っていると、世の理不尽に何となく悲しくなってきた。 「うむ。…だが、何処か判るのか?」 「俺様の記憶力ナメるな、子山羊。  そんなに流されてない筈だし、ここから上って崖沿いに進んでりゃ、そのうち見覚えのある場所にたどり着くだろ」 「…間違えるなよ?」 「たりめーだ。…と」  かつん、と靴が小石を蹴る音だ。勿論、俺のそれじゃあない。  岩影に転がり込むと、ツルギを抜き払う。子バフォも、別の岩の後ろで鎌を手に身構える。 「…客、か。誰だか知らぬが何とも間の悪い。こちらは何ももてなし等できんというのにな」  子バフォがぼやく。勿論、愚痴吐きたいのは俺も同じだ。  嗚呼、クソッタレ。不運がトコトンまで重なりやがる。 <子バフォ&♂ローグ、荷物は隠れ家にいるアラームの所に> <やってきた者は不明。但し、流された関係で、BSは除外> ---- | 戻る | 目次 | 進む | | [[053]] | [[目次]] | [[055]] |
054.目覚め  …体が、痛い。どうやら、強かに体を打ち付けたらしかった。  顔を顰めながら、俺の意識は、徐々に覚醒していく。  何時も何時もプロでダラダラしてた俺が、転職以来嗅いでいなかった臭いが鼻を突いた。   潮の、臭いだ。  「…海に落ちたんだっけか。そういや」  目覚めは、ちょっぴり生臭かった。ごつごつした岩場に横たわった体を起こす。  頭に手をやって、額をぐりぐりと擦る。無理矢理に呆けた脳味噌を叩き起こそうとする試み。 「むー…」  辺りを見回すと…俺から、少し離れた位置に、水に浸したぬいぐるみみたくなって、子バフォが転がっていた。  そいつは、数秒のウェイトの後、む…ん、と呻いたかと思うと、体を起こす。  しかし、こんな状況でも鎌を手放していないのは、流石というかなんというか。 「生きてるかー?」 「生きておるよ」  俺は問い、子バフォが答えた。  山羊は、ぴょこっと立ち上がるとこっちにやって来る。 「お主も無事か?」  ぶるぶる、と丁度犬がそうする様に、全身の水分を払ってから、山羊が言った。  無事なもんかい。被害は極めて甚大だ。  大事な一張羅は塩水漬け。折角、セットした逆毛は今や、力なく唯の前髪として垂れ下がってるときたもんだ。  というか、こいつ意外な所で畜生の本性を見せやがる。紳士として一人前になる為には、そんな事では遺憾と思うのだが。  まぁ…それはともかくとして、だ。 「生臭ぇ。塩水で体中がベタベタする。最悪の気分だ」 「そうか。無事か」  …無視か。そうか。俺の不平は見事に無視か。  そして、無視したまま、子バフォは、その寸詰まりの手を、顎にやった。  まぁ、先の一軒(俺を無視しやがった事件)は兎も角として、そいつが考えてることは、俺にも判る。 「ここは…どこだ?」  それが先ず一つ目。まぁ、これは大した問題ではない。  落ちた場所が、落ちた場所だからだ。あの崖下の海は穏やかで、遠くまで押し流す急な流れなんぞ入り込まないように思われたから。  俺の勘だが…場所からして、さっきの場所から余り離れていない。  沖合いに引きずり込まれる離岸流、とか言う恐ろしい現象もあるらしいが、それなら、今頃おっ死んでるだろう。  「それより…荷物、全部あのガキのとこだぞ畜生…」  二つ目。…むしろ、こっちの方が現状では深刻だ。  ぶっちゃけた話、今手元にある物といえば…ゴミと腰のツルギが一本だけ。  しかも、塩水に漬けちまった。後で拭いとかんと、漏れなく錆びたツルギになることだろう。  三つ目の問題は、あの糞スミだ。  ゾンビのよな目と似ても似つかない、あのふざけた馬鹿力と装備。  更にオーラだぞ?もう、世界で一番俺に関係の無い日、バレンタインとクリスマスが同時にきたよな騒ぎだ。  ガキは見殺しでもかまわんが、最悪でも俺の荷物を確保するには、どっちにしろアレが徘徊する森に戻らにゃならん。  正直、滅茶苦茶に気が重い。つーか、むしろ尻尾巻いて逃げてぇ。 「むぅ…」  子バフォが呻く。こいつも、俺が考えてるような事態は、大体把握してるらしい。 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ーーーーっ…クソッタレめ。ほんっっっっっっっっっとうにツイてねぇっ!!」  あのバカプリといいガキといい。本当の俺は、こんなんじゃねぇ。認めねぇ。  大体、俺はもうちっとcoolで、躊躇いなかった筈だ。もう、この場所じゃ何人もぶっ殺しててもおかしかない。  最初っからあのプリぶっ殺しとけばこんな事にゃならんかった。  …後悔先に立たずたぁ、このことか。  とはいえ。  俺は、疲れた様に俯いて、ぼりぼりと頭を掻き毟る。  このままでは、にっちもさっちも行かないのは確かな訳で。 「仕方あるまいな。諦めよ」  何をだ。つーか明言しろ。そりゃ、俺の命のことかっ!? 「……」  脳裏に、何となく帽子を手で振って俺を見送る連中を空想しながら、目の前の畜生を見る。 「何を黙っておる?我とて、お主の地図で主の名も、我がいた場所も確認しておらん。 お主と我がアラーム殿の所に戻るのは事は利害の一致だろうに。一々躊躇うな」  …この、畜生め。 「お前、リスクマネージメントとかいう言葉知らんのかっ!?」 「知っておる。その上での発言だ」 「……判ったよ。行くよ。戻りゃいんだろうが、戻りゃ」  投げやりに言っていると、世の理不尽に何となく悲しくなってきた。 「うむ。…だが、何処か判るのか?」 「俺様の記憶力ナメるな、子山羊。  そんなに流されてない筈だし、ここから上って崖沿いに進んでりゃ、そのうち見覚えのある場所にたどり着くだろ」 「…間違えるなよ?」 「たりめーだ。…と」  かつん、と靴が小石を蹴る音だ。勿論、俺のそれじゃあない。  岩影に転がり込むと、ツルギを抜き払う。子バフォも、別の岩の後ろで鎌を手に身構える。 「…客、か。誰だか知らぬが何とも間の悪い。こちらは何ももてなし等できんというのにな」  子バフォがぼやく。勿論、愚痴吐きたいのは俺も同じだ。  嗚呼、クソッタレ。不運がトコトンまで重なりやがる。 <子バフォ&♂ローグ、荷物は隠れ家にいるアラームの所に> <やってきた者は不明。但し、流された関係で、BSは除外> ---- | 戻る | 目次 | 進む | | [[053]] | [[目次]] | [[055]] |

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