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005.決意 ---- 荒涼とした砂漠の中、一陣の砂埃と共に、漆黒の影が走っていた。 気がつくと彼はここにいた。 奇しくもそこは彼の生まれ故郷に酷似していた。 しばらくの間、彼はただ呆然と立ちすくんだ。 頭が混乱して、耳の奥がぐわんぐわんと鳴り響いていた。 GM秋菜と名乗る女が説明したルールはひどく胸糞悪いものだった。 ゲーム自体は殺しを生業とする彼にとって決して不利なものではない。 名前も知らない哀れな♀ノービスの死も、彼には見慣れた光景だった。 ただ、彼は嫌だったのだ。 ギルドの依頼でもなく、何かよく分からないものに乗せられて 納得できないままに他人を殺めるのが。 どう、すればいいのだろう。 このゲームに乗るか、反るか。 決めかねて困惑した彼の脳裏にふっと浮かんだのは、青髪の♀プリーストだった。 まだ彼が駆け出しだったころ、無理をしてタートルアイランドに単身渡ったことがあった。 FLEEは十分足りているから観光なら十分可能だと高をくくっていた。 しかし、島に着いて程なくして彼は自分の甘さを思い知った。 巨大トンボの群れに襲われたのだ。 当時の彼のレベルでは、切っ先を当てることすら難しかった。 加えて囲まれているため攻撃を満足にかわすことも出来なかった。 あっという間に白ポーションを使いきり、彼は死を覚悟した。 その時。 温かな光が彼を包んだ。 瞬時に傷が癒え、体が軽くなり、感覚が研ぎ澄まされた。 驚いて目を走らせると、一人の女司祭が微笑んでいた。 流れるような美しい青髪の少女。 彼女は彼がトンボを倒しきるまで支援を続けてくれた。 そのおかげで、彼はその場を乗り切ることが出来たのだ。   始まりの部屋で彼が見たのは、確かにあの少女だった。 あまりに急な展開で話しかけることすら出来なかったけれど、 彼女は今どうしているだろうか。 無事にいるだろうか・・・。   彼女を、守りたい。 反射的に彼は思った。 守りたい。今度は自分が恩を返す番だ。   彼は走り出した。 どこに行けばよいのかはわからない。 でも必ず見つけ出す。あの少女を。 そして命の限り守ろう。この命は彼女に救われたものなのだから。   <♂アサシン 獲得物不明> ---- | 戻る | 目次 | 進む | | [[004]] | [[目次]] | [[006]] |

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