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065.お医者さん   母さん。父さん。兄さんに妹。お元気ですか? 便りが無いのは良い便り、という言葉もありますが、 懲りもせずに、又手紙を書く僕をどうかお許し下さい。   さて、話は変わりますが新しい友人が出来ました。 少し変わったところも二つか三つ、もしくはそれ以上ありますが、 多分いい奴です。 助祭をしているそうで、僕よりも年下の少年です。 しかし、彼のことは、簡単な紹介に留めたいと思います。 それよりも、僕にとっての重大な問題があるからです。 女性の問題です。 こういう風に書くと、血気盛んな父さんと兄さんは僕を問答無用で殴り倒し、 一方の妹と母さんは、余りの衝撃を受けて泣き出してしまうかもしれませんが、それは激しい誤解です。 正しくは、『怪我をしている女性の問題』です。 僕と、サカ…もとい、友人の前に、彼女は横たわって荒い息を吐いています。 錬金術を学ぶ過程で、多少は医学も学んだ僕です。 そして、丁度都合のいいことに大量のハーブもあります。 ですが。ハーブを使った薬、或いはハーブそのものの用法は二つ。 『塗る』か『飲む』。 この二つのどちらかです。どちらかしかないのです。 そして、彼女は一向に眼を覚まさず、そしてその傷は結構深そう。見た感じ。 喜んでません。喜んでませんよ!?僕は。決して小躍りなんてしてません。 これは正当な医療行為!!間違いない!! 父上様、兄上様、今、私も貴方達と同じく男になろうとしています…やったぜっ!!   首都では、少しずつ熱くなってきている今日この頃。 そちらも変わりなく、平穏無事であることを遠い空の下から祈っています。 かしこ。   …どごん!!そんな鈍い音が、暮れなずむ森の中に響く。 ずきずきと、後頭部が激しく痛む。原因は、逆毛の打撃だった。 「うはwwwwwwエロネタwwwwwwイクナイwwwww不潔wwwおkkkkkkkk?」 「ア…アイアイ…サー」 声に出していたようだった。ツッコミに対する反射的な返答。けれども、半分は事実な訳で。 …むしろ見殺しにするのが一番無難なのだろうが。 だがしかし。男として、また医学を齧った者として。 このような美しい人を見殺しにできるだろうか、いやできない。 魂的に負けてしまう。何かに。 「そうだ!!俺は、治療してさしあげるんだ!!」 「ヒールwwww」 僕を差し置いて、逆毛が癒しの奇跡を行使する。 「…」 ああ。そうなのか。やっぱりそうなのか。俺は、所詮しがないホム待ちのアルケミなのか。 逆毛よ、運命に翻弄され続ける哀れな子羊とでも俺を哀れみたいか? 全身を無力感が蝕んでいく。 「wwwww?」 と…何故だか、逆毛は手のひらを女性にかざしたまま、停止する。 更に何度か、『ヒールwwwww』と繰り返すが、女性の怪我は一向に回復する気配もみせない。 「どうしたんだ?」 「うはwwwwヒール全然効かないwwwwwっぅぇ」 一瞬の間。それは、随分と長く続いたような気がした。 それから、一言呟く。何処か、喜色が滲むのが押さえられない。 「俺の出番が…やった、俺、アコに勝ったよ…っ」 「wwwwwwww」 逆毛が、こっちを見ている。疑ってるようだった。 …何となく、それ以外の色も見えるが、気にしない。 だがしかし。だがしかしだ。 「これは正当な医療行為だ…心配するな」 言って、女性の纏った黒い甲冑の装甲を一枚一枚外していく。 しかし…その過程で、下心は見事に吹っ飛んでいた。 「…酷い」 まず、眼を引くのは腹に負った傷跡。 そこだけ、何かに打ち抜かれたかのように甲冑の下の服が焼ききれ、 火傷と打撲痕が、酷く痛々しい傷跡を残している。 他にも、服にはあちこちに鉤裂きがあり、その下の肌は酷く切り裂かれ、血を滲ませていた。 「誰wwwがwwwwやったのwwwwかなwww」 「知らない」 さっきまで、このあたりでは全く争いの音が聞こえなかった。 つまり、何処か別の場所からこの女性は命からがら逃げ出してきたのだろう。 …むしろ、自分も逃げ出した方が良いのかもしれない。 少なくとも、『こういうマネ』をする奴が居るのは確かだろうし、 そいつが、この女性にトドメをさそうと追って来ないなんて保障は何処にもないのだ。 「wwwwwww?」 逆毛に見守られつつも、急に現実的な思考になり、考えあぐねる。 見殺しにするのも一案。助けるのも一案。 だが、その天秤の片方に『コイントス』という重石が載り、 更には『煩悩』という重石が乗る。 一瞬で、天秤の均衡は脆くも崩れ去った。元々捨て鉢同然だ。 これ以上どうして状況が悪くなりなどするだろうか。 そして、鞄の中から、乳鉢を取り出すと、白ハーブ、それから緑ハーブを混ぜて摩り下ろし始めた。   …   夢だ。 私は、夢を見ていた。 何のことはない。平凡な、日々の暮らしの夢だ。 何時もの様に、古城を巡回し、やってきた人間達と戦う。 剣を手に、槍を手に。愛馬の背に乗って、戦場を駆ける。 剛剣。無双。ある一つの武芸の極み。 それは、私の日常の一側面。守護者としての。戦士としての貌。 夢の形が、崩れる。崩れて、たゆたった後に再び像を結ぶ。 何時もの様に、戦いを終えた後は、同僚達と語らう。 不届き者のレイドリック二人に、何時もの様に渇を居れ。 優しいオートマタの淹れた紅茶を飲む。 時には、紅い服の司祭に翻弄され、また、とある方の娘と友情を深める事もある。 それは、私の日常の一側面。古城に住まう者としての貌。 けれど…どうした事だろう? 不意に、それらをさえぎって一つの姿が現れる。 それは。 …内藤? 同僚でもある、逆毛の深淵の騎士だった。 何時もの様に、馬が嘶くが如き声を上げている。 只…何時もとは少し、様子が違うように見えるのは気のせいだろうか? まぁ、構うまい。内藤は、いつだって内藤なのだろう。 何だか、お腹の辺りが、ひんやりとしてとても気持ちがいい。 ああ…このまま眠り込んでしまいそ…う… 夢は、そのまま途切れた。   <深淵の騎士子 所持品:折れた大剣 首輪付き 昏睡中> <♂アコ 変化なし> <♂ケミ 治療中 白ハーブ&緑ハーブ10枚くらい使用> ---- | 戻る | 目次 | 進む | | [[064]] | [[目次]] | [[066]] |

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