「066」(2005/11/04 (金) 02:09:12) の最新版変更点
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066.犬の首輪
「もう一つの箱からこんなものが出るなんてね――ま、諦めなよGMさん」
頑丈なロープの束を両手に持ち、♀ローグは可笑しそうに言い放った。
その足取りは軽く、この異様な光景をひときわ際立たせる。
――くそっ…バルムンさえあれば…。
もう何度目かになる台詞を心の中で呟きながら、
♂GMは自分を騙したGM秋菜への恨みをつのらせた。
彼は今、森から砂漠へと続くMAPを、半ば強制的に歩かされている。
腕、首――歩くために必要な足以外は、全てロープで固定され、
背中には♀ローグ愛用のダマスカスを突きつけられて。
逃げようにも、逃げられない。
首のロープは、ちょうどGM秋菜のつけた首輪に引っかかる形で巻きつけられている。
逃げようとしてロープを引っ張れば、♀ローグが手を下すまでもなく勝手にBAN、ということだ。
楽天的なようでぬかりない♀ローグの手に、♂GMは絶望的な表情を浮かべる。
今、こうやって歩いている間にも、彼女の頭の中では一体どんな殺人計画が練られているのか。
自分の行く末を知らせられないまま――いや、行く末などはとうに知れている。
肝心なのは、その方法なのだ。
素手で殴りかかったあの時、その場で殺されていたほうが、まだマシだったかもしれない。
――命乞いなんかするんじゃなかった。
♂GMは激しく後悔した。
あの時。
待ってくれ、と叫ぶ♂GMを縛り上げ、♀ローグは一言「高台に行こう」と言った。
「死体を運ぶのは一人じゃきついからね。自分で歩いてもらうよ」
楽しそうにそう言った♀ローグの目には狂気。
表立っては見えないが、それは確実に♀ローグの奥深くに宿っていた。
「秋菜め…精神に多少細工したってのはこれのことか」
低く呟く♂GMの言葉を無視し、♀ローグは彼を無理矢理立ち上がらせる。
犬の散歩みたいだねぇ。そんなことを言って笑いながら、自分の前を歩かせて。
まさか、秋菜は最初からこのつもりで自分をここに送ったのだろうか。
最初から、参加者に殺させるつもりで。
「ビクつかなくても大丈夫だよ。まだまだ、すぐには殺さないから」
微笑む♀ローグに、GM秋菜の残酷な笑みを重ね、♂GMは背筋をぞくりとさせた。
「さて、到着っと」
不意にそんな声が聞こえて、♂GMはハッと我に返った。
到着――では、いよいよ始まるのだ。
「その白い服見てるとね、どうにも気分が悪くてさ」
無防備に伸びをしながら、♀ローグは言う。
参加者は皆、強制的にGM秋菜につれて来られた。
秋菜と同じ立場である♂GMに嫌悪感を抱くのは、ごく当たり前のことだ。
「そうだ。殺す前に一応聞いておくよ」
♂GMにゆっくりと近づき、♀ローグは囁いた。
「…あんた、私をここから元の場所へ戻せる?」
唇が触れそうなほど顔を近づけられ、♂GMはやや戸惑う。
「無理だ…ここは秋菜しか好きに扱えな――」
「そ。じゃぁ用はないね」
♂GMが全て言い終わらぬうちに、♀ローグはいとも簡単に決断を下した。
「その首輪。私にもついてるけど――これを外そうとしたらどうなるのか、見せてもらうよ」
言って、彼女は♂GMの体のロープを解いてゆく。
首輪に巻きついたものと、腕を固定したもの以外は、全て。
♂GMは崖の際まで連れてこられ、彼に巻きついたロープの反対側は、近くの木に括り付けられる。
これから何が起こるのか、見えた気がした。
「…クソっ…!」
最後の抵抗とばかりに、♂GMは固定された両腕で、♀ローグに殴りかかった。
さすがに油断していたのか、腕は完全にかわされることなく、彼女の肩元をかする。
「っく…往生際が悪いね!」
♀ローグは、ほぼ身動きの取れない♂GMの鳩尾を、拳で強く殴りつけた。
そしてそのまま、有無を言わさずに崖下へと蹴り落とす。
一瞬、目の前が真っ白になるぐらいの閃光が走った。
続いて、焼け付くような匂いと、耳を裂く轟音。
あたりが静まり返るまで、♀ローグは両腕で頭を庇う姿勢で固まっていた。
音が消えたのを確認し、ゆっくりと目を開く。
あたりには砂煙が舞い、地面は焼け焦げ、それは酷い有様だった。
あと少し、自分と♂GMの距離が近ければ、巻き添えを食らっていただろう。
「はは…っ。やばいね、これは…」
半分呆けたように、♀ローグは呟いた。
はっと気が付いて手元のロープを手繰り寄せると、先は焼け焦げ、今でも燻っている。
崖下を覗くと、そこには♂GMのものだと思われる屍が、
いくらかの肉片になり、シュウシュウと音を立てて横たわっていた。
「血は残らないってわけね」
少し残念そうに、♀ローグは言う。
そして素早く残りのロープを巻き取ると、鞄に詰める。
あれだけの光と爆音だ。人が集まってくるかもしれない。
♀ローグは、小走りでその場を後にした。
<♂GM死亡>
<♀ローグ ダマスカス1個、小箱→ロープ、プレート1個、ロザリオ1個、赤P食料>
<残り38名>
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