「165」(2005/11/04 (金) 02:31:32) の最新版変更点
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165.殺し屋
♂プリ、♀アサの二人は旧クワガタ谷に入り、北から大回りにブリトニアを目指す。
♂プリは嘆息を禁じ得ない。
『……やっぱりアルデバラン侵入は無謀か。結局策も思いつかなかったしな』
外部への連絡手段の重要性は高い。
だから放送を聞いてもそのまま今まで通りの進路を取ってアルデバランを目指し、何かの工夫でアルデバランに入れないものかと考え続けていたのだが、良い案も結局思いつかなかった。
しかたなく当初の予定通り進路を西に取り、ブリトニアを目指す事にしたのだ。
ふと、♀アサシンは♂プリの進路に疑問を持つ。
「ねえ、なんでこっちなの?」
すぐには答えずまず地図を広げる♂プリ。
「なあ、突然思いつきで死ぬほど違う話題振っていいか? 俺今すんげー恋愛について語りたい気分なんだ」
「は?」
当惑する♀アサを無視して話を進める♂プリ。
地図上の現在地を指さし、そこからプロンテラ、そしてバッタ海岸からカタツムリ海岸、そしてブリトニアを指さした後、またカタツムリ海岸、バッタ海岸と戻り、プロンテラを指さした後チュンリム湖を指さす。
「誰かを好きになっても、いきなり露骨なのは良くない。こっちの意図が明らかにわかりすぎるような行動は慎むべきだ」
そして今度は、現在地から、クワガタ湖を抜けてGH前を通ってブリトニアへ、そのままバッタ海岸、カタツムリ海岸を経てプロンテラ、そして最後にチュンリム湖を指さす。
「自然に、今までしてきた事をそのままに自然にやるのが一番。そう思わないか?」
♀アサはそれでも表情を曇らせたままだ。
「あまりそうやって時間かけすぎるのも良く無いんじゃない? 誰かに邪魔でもされたらどーすんのよ」
「ま、凡人共はそーかもしれないけど、俺達には恋愛の奥義があるしな」
そう言って早口に速度増加を唱える♂プリ。
それで♀アサも了解し肯く。
「そうね、うん。……もっとも、私恋愛とかって一度もした事無いんだけどねー」
「……嘘だろ?」
「フリならした事あるけどね。そもそも恋する殺し屋なんて聞いた事も無いわよ。私達はそういうの掟で禁じられてるの」
♂プリーストはふと気になって♀アサシンに訊ねてみる。
「お前さ、何か殺し屋とかのギルドに入ってたりするのか?」
暢気な顔をしていた♀アサが、急に表情を硬くする。
「あまり……深入りはしない方がいいわよ。ロクな事にならないから」
「コンビ組んどいて今更深入りも何も無いだろ」
♀アサシンは下を向きながら地面に落ちてる石ころを蹴飛ばす。
「本当はね、こうやって他人と接触するのも駄目なのよ……でもほらっ」
TCJをくるっと回す。
「これ託されたって言えばボスもきっと納得してくれるわ」
そして何処か遠い目で街道の先を見る。
「時々ね、殺しじゃなくて狩りに行くアサシンって見てたの。騎士とかプリーストとかハンターとかと一緒にわいわいやってて……」
照れくさそうに鼻をこする♀アサ。
「羨ましい訳じゃないけどね、一度やってみたいとは思ってたんだ……だから」
不意に♂プリの方を向く♀アサ。
「先の事は知らないけどさ、今あんたとこうしてるのは結構楽しいよ」
言うだけ言って後は前を向いて歩き続ける♀アサ。
♂プリはそんな♀アサを見ながら後を歩いていった。
『何、まだ時間はあるさ……ゆっくり深入りさせてもらいましょうか。ふん、聖職者の前でそんな泣き言言ってそのまんまで済むと思うんじゃねえぞ』
育った環境、自分の寄って立つところ、価値観、全部が違う相手だ。だが、それでも仲間だ。相手の負担にならない程度に、少しづつ過ちを正してやろう。
そう♂プリーストは心に決めたのだった。
<♂プリースト、所持品/チェイン、へこんだ鍋、現在地/旧クワガタ谷mjolnir_08>
<♀アサシン所持品/ウサミミヘアバンド、TCジュル、現在地/旧クワガタ谷mjolnir_08>
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