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167.一つの推理   時計の町から程近い一群の砦が立ち並ぶ区画で、子バフォは段ボールの中で首を捻っていた。 「…どういうことだ?」ダンボールから顔を出しながら、呟く。 先ほどまでアルデバランの街中を徘徊していた筈のガーディアンの姿が、全くと言っていいほど無かったから。 ここに安置してある筈のエンペリウムは、この箱庭にとって決定的に重要な意味を持つ物では無いのか?  少なくとも、首輪を解除できる、という意味では決定的にこのゲームを引っくり返す可能性がある。  そうであるなら、市内と比べ、警備が厳しくなる事はあっても、その逆などありえないはず。 何かが、酷くおかしい気がする。 勿論、砦の内部においては、厳しい警備が待ち受けているのやもしれないが。 「これではまるで…」 参加者にエンペリウムを奪い取られても良し、としているかの様だ。 彼は、寸詰まりの手を顎にやり、考えをめぐらす。 あのセージの娘は、ブルージェムストーンと同じ役目をエンペリウムに持たせる、と言っていた。 ならば、少なくとも、エンペリウムは魔術に必用な装置の役割を果たせる、と言う事になる。 …そもそもこの世界で、その鉱石はどんな役割を果たしているのだろう? 「第一、ジェムと同じ程度の事しか出来ないというのに、何の意味があるのだ?」 神の加護を受けた聖域でも張るというのだろうか? …聖域?つまり、一つ所に留める結界…? 連想が加速し、一つの像を結んでいく。 「…そうか。結界か」 成程。つまり、この世界は、そういうことか。 だが、子バフォの表情は晴れない。それは、彼の疑問の本質ではないから。 「まて、ならば益々判らんぞ…この世界を維持する要を、何故これほど無防備に晒している?」 参加者がこの世界の要を崩してもいいと言うのか…? 勿論、それは面白くない事態なのだろう。だが、その考えと目の前の現実がどうしてもかみ合わない。 ローグ達の言うGMの女は、戯れを好む輩の筈だ。自らにとって『面白くない現実』が起こる可能性を見過ごしているだろうか? 只の手抜かり、という可能性も無いではない。 しかし、そのように楽観できる程子バフォは愚かではない。 「要が崩れる事も、戯れの内、か?」 ぼそり、と呟いてみる。 そうなれば、参加者はこの箱庭から逃げ出す筈… 「む?」 そこで、一つの疑問が浮かんだ。 今まで、自分は『要』が無くなればこのゲームは終わる、と考えていた。 成程、確かに其の通り。『会場』が無くなればゲームそのものは終わるだろう。 だが。 ゲームが終わったとしても、会場が無くなった後、参加者が無事帰れるという保障はあるのだろうか? そんなものは無い。元々が、一人しか返す予定は無いのだ。 『要』を失ったとは言っても、むざむざ全員を帰したりするだろうか? つまりは。 「…なるほど、そういうことか」 要を失った世界は、文字通り瓦解するのだ。 恐らくは、内部に居る参加者を道連れにして。 そうであるなら、自分に逆らった者達を苦も無く抹消できる。 その様を秋菜はせせら笑いながら眺めているのだろう。 自らの立つ足場を自分自身で崩している愚者達は、そいつの思惑をしらない訳だ。 それから、全てが終わってからまた次のゲームを始めればいい。 ばらばらだったピースが、子バフォの脳裏でぴったりと符号する。 しかし、その回答はまた新たな疑問を生み出していた。 ならば何故、それぞれの砦にエンペリウムを分割して安置する必要があるのだろう? 一箇所に纏めたほうが管理は楽だろうに。 と、なれば魔術の触媒として必用な処理なのだろうか? 例えば、魔法実験の初歩において、妖物の持つ魔力、妖力を魔方陣で安定させるように。 「四箇所の砦に、一つづつ要を置いて…天地と空間を支えておるのか…?」 そうだ。そうして、この空間を支えているのか。 今度こそ、完全にパズルは解けた。 四箇所の砦は、テーブルの四本の足の様な物。 一つの足が抜けるだけなら、未だなんとか安定もするだろうが。 二本の足が欠ければ…文字通り、この箱庭は横倒しになるだろう。 「と、なれば我はあの男達と再度合流すべきか」 急がねばなるまい。 全員が全員、ゲームに乗っているとは限らない。 このゲームを終わらせようとしているのは、自分達だけでは無い筈だ。 しかしながら、もしその中の一人が、エンペリウムを割ったならば、その瞬間、このゲームに乗る以外の方法で帰れる確率が激減する。 あの娘には、三つのジェムストーンが渡っている。 しかし、それでは足りない。あの女を斃すのには、三人では足りない。 そして、手土産となる情報もある。 このアルデバランには、何かがあるのだ。少なくとも、管理者にとって本当に参加者に渡って欲しくない、何かが。   <子バフォ 持ち物変わらず 場所:ルイーナ砦 目的:ローグに合流し、その後でセージ達に『要』と『アルデバラン』についての情報を伝える> ---- | 戻る | 目次 | 進む | | [[166]] | [[目次]] | [[168]]

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