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173.ある語り部の昔話~ 白い女と廃墟の町の王様   さて、ここいらで一つ、昔話を致しましょう。 演目は廃墟の町の王様。 即興ゆえに、諸所の『詰まり』はご愛嬌。 見事終わりました暁には、どうか拍手でお迎え下さいませ。   廃墟の町の王様   昔々か、それとも未来か。 そんな事はともかくとして。 とある塔の下にある廃墟の町に、王様とその従者達が住んでいました。   彼と、その従者はその町で、毎日毎日押し寄せてくる人々と戦っていました。 王様は、その町の王様で。彼の従者達とそこに住む者を守らなければいけませんでした。 勿論、人々はそんな事は知りません。 そもそも、毎日毎日やって来る人々は、その町が一体何であったのかも覚えている人は殆どいませんでしたから。   けれど、その王様は。 本当は、争う事が余り好きではないのかもしれませんでした。 彼は、人ではありませんでしたが、同時に人の写し身でもありましたから、何処か人に似ていたのかもしれません。 だから色々と悩むこともあったのでしょうが…それは又違うお話です。   そんなある日の事です。 しろい女が、王様の元に訪れました。 王様は、他にも白い人たちを知っていましたが、その女は白い人たちの中で、彼が一番嫌いな女でした。    彼女は、王様に言いました。   「喜んでくださいねっ、貴方は栄えある『イベント』の参加者に選ばれましたっ」   王様は、憮然とした顔で。   「断る」 「えー、無愛想さんですねっ。でも、いけませんよ?特に、貴方みたいな人には参加してもらわないといけませーんっ」   けれど、女はちっちっ、と指を陽気に振りながら言います。 王様は、その言葉を聴いて。   「それは、私が世界にとって不合理だからか?」   嘲る様に笑います。   「あー、王様は話が早くて助かりますねっ♪その通りですよっ」   女はにこにこと笑うと、プレゼントですよっ、そう言って不細工な王冠を差し出しました。 王様は、そんな王冠には興味が無かったので、スルーで返しますが。   「はっ、阿呆らしい。秋菜、貴様の戯れ遊びに私が付き合ってやるとでも?」 「まぁ、ダメならこの場で貴方を差し替えて修正すれば良いだけですしー、むしろそっちが目的ですねっ」   それに、遊びだなんて酷いですよっ、続けて女はそう言います。   「私はねっ。いえ…私達は、絶対的な正義で、絶対的な裁定者なんですよ。 それに、私はこの世界が大好きで、何時までも何時までも、冒険者さん達にも、他の皆にも『あああって』欲しいんです」   それはそれは優しく、何処か酔いしれている様な調子で、丁度優しい母親が自分の息子に語りかけるような調子で。 しろい女は、王様に言います。   「そう。私はこの世界を愛しているんです。私は、私達は正義で、この世界を愛していて。 だから私達は、この世界をずっとずっと維持しなければいけません。 そう。世界はあるべき形にあらなければいけないんですよ」   まぁ、齟齬を修正する方法に趣味が入っているのは認めちゃいますけどねっ。女はうっとりしながら更に続けます。   「GMとはそういう存在でしょう、王様っ?」   王様は、睨みつけるように演説をする白い女を見ていました。   「…そうだな、其の通りだ。生き延びなければいけない理由が今出来た。だからお前に従ってやろう。だがな」   凄絶な顔で。怒りに満ちた顔で。神様の使いに今にも飛び掛らんとする様子で。 鏡の王様は、一言言葉を吐き出しました。   「何時までも、貴様等の思惑通りに事が運ぶと思うなよ…? この世界が。これから先の未来が。幾度幾十度幾百度貴様等に汚され冒されるとも」   巨(おおき)な剣を手に取ると、その切っ先を白い女に向けます。   「この世界を紡いで行くのは。全ての未来を作り上げていくのは。 断じて貴様等ではあり得ない」 「ははっ、王様にしては負け犬ちゃんな台詞ですねっ。兎も角」    白い女は、笑って言います。   「行きましょうか王様? それから、その不細工な王冠、今の貴方にはとっても似合ってると思いますけどねっ」   それから先、王様がどうなったのかは昔話の外側に。 もしかすると、今もこの『昔話』は続いているのかもしれませんが。 その結末がどう転ぶかはこの語り部めが知る所では御座いません。    つまり、それはこの昔話の『詰まり』の一つと言うことで、聞き手の皆々様は一つ納得していただきたく。   <注記:DOP本編参加前の一コマ> ---- | 戻る | 目次 | 進む | | [[172]] | [[目次]] | [[174]] |

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