「190」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

190」(2005/11/04 (金) 02:44:56) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

190.理由   「ふわぁあ~」 玉座に座りながらGM秋菜は欠伸をした。 人数も大分減ってきたら当然の事なのだが、各々がチームを作り極力戦闘を避けている。 裏切りや絶望・恐怖・狂気に駆られる者を見るのが楽しいのに、これでは少し興ざめだ。 ゲームが始まって既にかなりの時が経っている。 自分も少し休息を取っておかなければ。 ここぞという時に疲れて眠ってしまっていては面白くない。 GMの一人に何か食事を持ってくるように言いつける。 しばらくしてコンコン、と言うドアを叩く音の後に 「はい…るよ?」 と遠慮がちに、しかし友人に話し掛けるような口調の後に一人の♂GMが入って来た。 年齢は彼女と同じ位だろうか。 しかし優しそうな瞳と幼げの残った顔は青年と言うよりも少年と言った方がしっくり来る顔立ちであった。 GM秋菜は顔を上げて彼を見ると何か気まずい事があるかのように一瞬暗い顔をした。 そして彼をムスッとした表情でじっと見つめる。 ♂GMはその視線を受け止めながらも、ゆっくりとGM秋菜へと近づいてサンドイッチの乗った皿とポットに入った御茶をさしだした。 「はい。ありあわせの物で作ったからあんまり美味しくないかもしれないけど。」 そう言い彼女の近くにあった机に皿とポットを置いていく。 GM秋菜は彼の方を見ようとせず依然ムスッとした表情のままでそっぽを向いていた。 二人の間に気まずい沈黙が流れる。 「秋菜…」 ふとその沈黙を破って♂GMが彼女の名前を呼んだ。 「もう止めようよ…こんな事をしても…」 「…ッウルサイッ!!!」 ♂GMの言葉をGM秋菜の叫び声がかき消した。 ♂GMが少し脅えた様な表情を見せたのを見てGM秋菜は自分の戸惑いを隠すように再びそっぽを向いた。 再び二人の間に気まずい沈黙が流れる。 今度はその沈黙を破ったのはGM秋菜であった。 「…食事は後で食べます…何か目立った動きがあったら起こしてください…」 そう言い残すとGM秋菜はツカツカと歩いて行き奥の寝室へと姿を消した。 「秋菜…」 ♂GMは消えて行く彼女の背中をみてそうつぶやく事しか出来なかった。 彼は彼女の働いていた部署の同僚であった。 当時彼女の明るい笑顔のおかげで何人もの人達がつられて笑顔になった事だろうか。 そんな彼女に彼は密かに恋心を抱いていた。 ある日、彼は彼女に自分の思いの内を打ち明けていた。 彼女はテレながらも顔を赤らめて、そしていつもの用に笑って「嬉しい」と言ってくれた。 それから彼女と色々な所へと行ったりした。 その中でも彼女は一緒に時計塔の鐘の音を聴くのがとても好きだった。 自分もテレながらも二人で結婚式場の鐘の様だ等と言って笑いあっていた。 しかしある日、ある事件を境に彼女の笑いは優しく暖かい笑みから冷たく氷の様な笑みへと変わってしまった。 ソレハスベテヲウラギラレタカラ ソレハスベテニゼツボウシタカラ それ以来彼女はこのゲームをするようになった。 始めは彼も気づかなかったがある日彼女の行為に気がつき、それを止めようとしてから彼もこの首輪を付けられていた。 その後も幾度となく彼女にゲームを止める様に言っても大体この調子だ。 彼は今までの悲しそうな瞳をグッっと何かを決意したかのようにひきしめると机に置いてあった紙にペンで文字を書き始めた。 そして5枚程同じ文面の手紙を書き終えると彼はひとつの行動に出た。 このゲームを終わらせて戦っている人達を救出する方法は彼にはわからない。 しかしこのゲームを終わらせる方法は確かにある。 前に彼女が確認の為か独り言を言っているのを聞いた事があった。 なんと言っていたか…はっきりとは思い出せないが魔術触媒がどうこう言っていた記憶があった。 それと彼もただゲームを傍観していた訳ではない。 彼女がエミュ鯖を使って世界と同時にアイテムを創造しているのを彼は見逃さなかった。 彼は彼女と同じ手順を使い5個の大き目の古くて青い箱を創った。 そしてその中に自分が考えうる限りでこのエミュ鯖から脱出、 ないしエミュ鯖を壊す事が出来そうな物と見た感じ高価そうな物、そして最後に自分の思いを書き連ねた手紙を入れて首都に近く、まだ禁止領域になっていないMAPへと転送した。 こんな事をした事が秋菜に知れれば今度こそ首輪を使い殺されるかもしれない。 むしろ今まで何度も彼女に意見して殺されなかった方が奇跡なのである。 それは彼女がまだ自分の事を想ってくれているからなのか、それともただの気まぐれなのか。 彼の思いを乗せて5個の古くて青い箱が転送されていった。 誰がこれを見つけるのだろうか。 そのまま誰の目にも止まらずにいるかもしれない。 そんな箱の中に入っている手紙の文頭はこのように始まっていた。 「御願いします。誰か秋菜を救ってあげてください…」   <GM秋菜…睡眠中 / ♂GM…プロ周辺MAPに「エミュ鯖破壊に使えそうな物・高価そうな物・手紙」を青箱に入れて5個転送> ---- | 戻る | 目次 | 進む | | [[189]] | [[目次]] | [[191]] |

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示:
人気記事ランキング
目安箱バナー