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192.声 ♀セージ一行は、ブリトニアまで何の障害も無く辿り着く事が出来た。 そんな僥倖を指して♂プリ曰く、 「わざわざこんな狭っくるしくなった土地に来ようって馬鹿もいねえだろ」 だそうである。 北側からブリトニアに入った一行だが、いくつかの城門は完全に封鎖されており、侵入は簡単に出来そうも無かったが、橋をいくつか渡った先にあった城門だけは開いていたので、そこから砦へと侵入する事にした。 砦内部の構造には皆疎かったが、そもそもそんなにややこしい構造でも無い上に、妨害も全く無かったので簡単に奥地までたどり着く事が出来た。 通称エンペルームと呼ばれるそこに辿り着いた一行は、台上に燦然と輝くエンペリウムに見惚れ、そして思った。 『こんなデッカイ物どーやって持っていくんだよ!』 モンスターが時々隠し持っているエンペリウムとは比べ物にならない程の大きさだ。 ♂アーチャーは嘆息しながら言う。 「そもそも、この部屋から持ち出せないだろこれ……」 そんな一同を無視して♀セージはエンペリウムの置いてある台座へと歩み寄る。 それを見とがめた♂プリは期待を込めて聞いた。 「おい、何か良いアイディアでもあるのか?」 しかし♀セージは♂プリーストの言葉を無視してエンペリウムに近づいていく。 そして、♀セージがエンペリウムに触れた瞬間、彼女の周囲の景色が変わった。 「!?」 石造りの建物も仲間達も全て消え失せ、そこにあるのは漆黒の闇のみ。 そして、♀セージの前方には何やら蠢く物体があった。 「……呼んでいる? 私をか?」 全てが闇の中、♀セージはその物体へと歩き出したが、それに近づくにつれてその物体の異様が明らかになっていく。 二本の腕に二本の足、頭部と思しき物に、背中から生えた角の様な物。 近くに寄って見ると、その全身が爛れている様がわかる。 角の様に見えた物は、かつては翼であったのだろうが、今その背中に残るのは白い骨格部分のみで、それが肉の支え無しに背後に向かって伸びている。 その腕にはひしゃげた杖のような物を持ち、今まで見たことも無い程の醜悪な顔を♀セージに向ける。 「……ッ……テ…………」 余りの嫌悪感から、いきなり魔法を唱えたくなるのを自制してその言葉に耳を傾ける♀セージ。 その物体は、かすれた声で、顔らしき部分から何かの液体を垂らしながら言った。 「……コロ……シ……テ……コロシテ……」 険しい表情で問い返す♀セージ。 「お前は誰だ? 何故死にたい?」 しかし、その物体は同じ言葉を繰り返すだけだ。 ♀セージはアプローチの仕方を変えてみる。 「ふむ、ではどうすればお前は死ぬ?」 その物体が言葉を止める。 顔が変形し更に醜悪な顔になり、そして♀セージは光に包まれた。 「おい! どうした♀セージ!」 耳元でそう叫ぶ♂プリーストの言葉に♀セージは我に返る。 「……私は今どうしていた?」 ♂プリーストは怪訝そうな顔をする。 「どうしたもこうしたも……そのエンペリウムはどーしたんだって聞いてるんだよ」 「エンペリウム?」 言われて気付いたが、♀セージの手の中に手乗りサイズになったエンペリウムが乗っかっていた。 「お前がエンペに触れた途端、いきなりぴかーってな感じで光って小さくなりやがった。お前一体何したんだ?」 ♂プリーストの言葉にも、♀セージはじっとエンペリウムを見つめているだけだ。 ♂アーチャーの方を向いて肩をすくめる♂プリースト。 そして、その♂アーチャーも何やらみっともなく大口を開いていた。 「なんだ? 今度はお前……」 みなまで言わせず大声で叫ぶ♂アーチャー。 「逃げろっ! 崩れるぞ!」 彼の視線の先では、天井を支えていた石柱が今にも倒れようとしていたのだった。 回廊を駆け抜け、階段を上り、所々崩れ始めている城壁を抜けるとなんとか外にたどり着く事が出来た。 ♂アーチャーはその場に座り込んで、大きく息を吐く。 「ぷは~。速度増加がなきゃどうなってた事か……」 砦は轟音を立てて崩れ落ち、吹き上がる粉塵が宙を舞う。 全員それに巻き込まれ、激しく咳き込む事になるが、瓦礫の下敷きになるよりは遙かにマシであった。 粉塵が収まり、一同が落ち着いた所で♀クルセが何やら難しい顔をしながら地面に文字を書き始めた。 『♀セージ、♂プリースト、♂アーチャー、♂ローグ、♀アーチャー、アラーム……一人分足りなくないか?』 そう、一つのエンペリウムでは五人までしか首輪の開封を行えない。 しかし、この様子では残った四つをここで手に入れるのは不可能であろう。 ブルージェムストーンを使えば、ちょうど全員分となるが、いずれにしてもエンペリウムが一つだけでは、これ以上仲間を増やす事が出来なくなる。 ♀セージは正直に認めて、地面にこう書いた。 『最悪でも二つ手に入れるつもりだったからな。計算が狂ったのは事実だ。だが、これが誰の仕掛けかはわからないが。チュンリムにもこれが仕掛けられている場合、ローグ達が危ない』 そう書かれてその事実に気付いた♀クルセの顔が蒼白になる。 『一刻も早く、ローグ達と合流する必要がある。エンペリウムは今は一つだけで良しとすべき……』 そこまで書いた♀セージの腕が止まる。 崩れ落ちたブリトニアが、再び振動を始めたのだ。 全員姿勢を低くして振動に耐えるが、その振動は今までのそれとは何かが違った。 最初に気付いたのは、♂プリーストであった。 『なんだ? ……声?』 「……ッ……テ…………」 すぐに♀クルセも気付く。 「……コロ……シ……テ……コロシテ……」 『なんだこの声は……地の底から響き渡るような……』 突然、崩れ落ちた砦が爆ぜた。 飛び交う瓦礫に、全員が顔を庇ってその場にしゃがみ込む。 そして、再び顔を上げたそこに居たのは、先ほど♀セージが出会った醜悪極まりないバケモノであった。 ♂プリーストが顔を引きつらせて言う。 「……なんだありゃ……」 ♂アーチャーも同じ様な顔をして言う。 「……知るか……あんなデカイ化物ミドガッツに居るなんて聞いた事も無い……」 ♀セージ達が侵入した砦の半分ほどの大きさのその化物は、一歩、また一歩と♀セージ達に近づいてくる。 ♀クルセは、即座に剣を抜き、皆の前に立つと早く逃げるように促す。 だが、その隣をすいっと抜けて、♀セージはすたすたとその化物に近づいて行った。 「おいこら♀セージ! お前何する……」 慌ててそう叫ぶ♂プリに、振り返りもせず♀セージは言った。 「そこで待っていろ」 唖然としたまま♀セージを見送る三人。 そして、すぐに違和感を覚える。 ♀クルセは眉をひそめて地面に文字を書く。 『……遠近法という物を知っているか? 近くに寄るにつれて、段々と大きく見えてゆくあれだ』 ♂プリは頷く。 そして言った。 「だよな~。あの化物、外見が常識外れなだけじゃなくて、世界の原理原則からも外れてってやがんの」 徐々に近づいて来る化物。だが、その姿は一向にその大きさを変えない。 つまり、近づくにつれて縮んできているのだ。 そして、♀セージの前に辿り着く頃にはほぼ人間と同サイズにまで縮んでしまっていた。 そんな化物を前にして♀セージは恭しく跪いて言う。 「……何かご用でしょうか?」 化物は何も言わず、その手に持っていたエンペリウムを♀セージに手渡した。 意図がわからず、無言のままの♀セージ。 そんな♀セージに向かって、化物が言った。 呪詛を込め、全身から黒い液体を吹き出しながら、憤怒の表情で。 「ワガイカリ……オモイシルガ……ヨイ……」 そのまま化物の全身は溶け落ち、地面へと吸い込まれて行った。 その言葉が♀セージに向けられた物でないと直感しながらも、♀セージはその身が恐怖に震えるのを止める事が出来なかった。 余りに不可思議な出来事であったが、予定通りエンペリウムを二つ手に入れた一行は先を急ぐ。 なんとは無しに無言になる一行であったが、突然♀セージが口を開いた。 「以前読んだ本に、こんな一説があった」 歩きながら、全員が♀セージの言葉に耳を傾ける。 「世界は神なり。故に神は世界なり……そういう学説があったらしい」 三人共意味がわからず首を傾げる。 「神は世界を治めるでもなく、見守るでもなく、ただ世界は神と共にある。ああ、つまりは世界は神と同意義。つまりこの世界全てこそが神なのだと。なればこそ、世界の意志はつまり神の意志になるとな」 余りに突拍子も無い話しに、一同唖然として話を聞き続ける。 「であるとすれば、作られたこの世界にも、世界が作られたと同時に神も存在している理屈になる……あくまで理屈の話だぞ」 最早完全に異次元のお話と化した♀セージトークを、三人はナチュラルにスルーする事に決めた。 「そ、そうだな! お前もそう思うだろ♂アーチャー!」 「はははっ! そうだよな! 俺もそう思うよ」 しゃべってはいけない事を良い事に、♀クルセはしらんぷりを決め込んでいる。 そんな三人を見た♀セージは驚いた顔をする。 「もしかして……私の話はわかりずらかったか?」 全力で首を縦に振る三人。 それを見て本気で悩み出す♀セージ。 「そうか、すまない。私の表現力不足だったか……次はもう少し努力してみるとしよう。私もまだまだだな……」 やたら真顔でそう言う♀セージが何やらおかしくて、ついつい♂プリーストが吹き出すと、残った二人も釣られて笑い出してしまった。 そんな三人を見て、♀セージは苦笑する。 そして、最後に思いついた事を口にしようとして止めた。 『もしくは……秋菜がこの世界において、神まで作りだそうとしたか……』 自分が居た世界が、どのようにして『安定』を得て存在していたのか、それは♀セージにはわからない。 世界を構築、維持するのにもしかしたら『神』の存在が必要だったのかもしれない。 自分はプリースト達の様には神を信じて居ない。だが、学問を修める者として神を学ぶ事も怠らなかった。 なればこそ、神話、伝説として語り継がれてきた彼らを作り出すという不遜極まりない行為に、♀セージは嫌悪感を覚えずにはいられなかった。 <♀セージ 現在位置/カタツムリ海岸 ( gef_fild09 )  所持品/垂れ猫 クリスタルブルー プラントボトル4個、心臓入手(首輪外し率アップアイテム)、筆談用ノート、エンペリウム2個> <♂アーチャー 現在位置/カタツムリ海岸 ( gef_fild09 )  所持品/アーバレスト、銀の矢47本、白ハーブ1個> <♀クルセ 現在位置/カタツムリ海岸 ( gef_fild09 )  所持品/青ジェム1個、海東剣> <♂プリースト 現在位置/カタツムリ海岸 ( gef_fild09 )  所持品/チェイン、へこんだ鍋> <備考:ブリトニア崩壊、ブリトニア砦はエンペリウムを二個喪失> ---- | 戻る | 目次 | 進む | | [[191]] | [[目次]] | [[193]] |
192.声 ♀セージ一行は、ブリトニアまで何の障害も無く辿り着く事が出来た。 そんな僥倖を指して♂プリ曰く、 「わざわざこんな狭っくるしくなった土地に来ようって馬鹿もいねえだろ」 だそうである。 北側からブリトニアに入った一行だが、いくつかの城門は完全に封鎖されており、侵入は簡単に出来そうも無かったが、橋をいくつか渡った先にあった城門だけは開いていたので、そこから砦へと侵入する事にした。 砦内部の構造には皆疎かったが、そもそもそんなにややこしい構造でも無い上に、妨害も全く無かったので簡単に奥地までたどり着く事が出来た。 通称エンペルームと呼ばれるそこに辿り着いた一行は、台上に燦然と輝くエンペリウムに見惚れ、そして思った。 『こんなデッカイ物どーやって持っていくんだよ!』 モンスターが時々隠し持っているエンペリウムとは比べ物にならない程の大きさだ。 ♂アーチャーは嘆息しながら言う。 「そもそも、この部屋から持ち出せないだろこれ……」 そんな一同を無視して♀セージはエンペリウムの置いてある台座へと歩み寄る。 それを見とがめた♂プリは期待を込めて聞いた。 「おい、何か良いアイディアでもあるのか?」 しかし♀セージは♂プリーストの言葉を無視してエンペリウムに近づいていく。 そして、♀セージがエンペリウムに触れた瞬間、彼女の周囲の景色が変わった。 「!?」 石造りの建物も仲間達も全て消え失せ、そこにあるのは漆黒の闇のみ。 そして、♀セージの前方には何やら蠢く物体があった。 「……呼んでいる? 私をか?」 全てが闇の中、♀セージはその物体へと歩き出したが、それに近づくにつれてその物体の異様が明らかになっていく。 二本の腕に二本の足、頭部と思しき物に、背中から生えた角の様な物。 近くに寄って見ると、その全身が爛れている様がわかる。 角の様に見えた物は、かつては翼であったのだろうが、今その背中に残るのは白い骨格部分のみで、それが肉の支え無しに背後に向かって伸びている。 その腕にはひしゃげた杖のような物を持ち、今まで見たことも無い程の醜悪な顔を♀セージに向ける。 「……ッ……テ…………」 余りの嫌悪感から、いきなり魔法を唱えたくなるのを自制してその言葉に耳を傾ける♀セージ。 その物体は、かすれた声で、顔らしき部分から何かの液体を垂らしながら言った。 「……コロ……シ……テ……コロシテ……」 険しい表情で問い返す♀セージ。 「お前は誰だ? 何故死にたい?」 しかし、その物体は同じ言葉を繰り返すだけだ。 ♀セージはアプローチの仕方を変えてみる。 「ふむ、ではどうすればお前は死ぬ?」 その物体が言葉を止める。 顔が変形し更に醜悪な顔になり、そして♀セージは光に包まれた。 「おい! どうした♀セージ!」 耳元でそう叫ぶ♂プリーストの言葉に♀セージは我に返る。 「……私は今どうしていた?」 ♂プリーストは怪訝そうな顔をする。 「どうしたもこうしたも……そのエンペリウムはどーしたんだって聞いてるんだよ」 「エンペリウム?」 言われて気付いたが、♀セージの手の中に手乗りサイズになったエンペリウムが乗っかっていた。 「お前がエンペに触れた途端、いきなりぴかーってな感じで光って小さくなりやがった。お前一体何したんだ?」 ♂プリーストの言葉にも、♀セージはじっとエンペリウムを見つめているだけだ。 ♂アーチャーの方を向いて肩をすくめる♂プリースト。 そして、その♂アーチャーも何やらみっともなく大口を開いていた。 「なんだ? 今度はお前……」 みなまで言わせず大声で叫ぶ♂アーチャー。 「逃げろっ! 崩れるぞ!」 彼の視線の先では、天井を支えていた石柱が今にも倒れようとしていたのだった。 回廊を駆け抜け、階段を上り、所々崩れ始めている城壁を抜けるとなんとか外にたどり着く事が出来た。 ♂アーチャーはその場に座り込んで、大きく息を吐く。 「ぷは~。速度増加がなきゃどうなってた事か……」 砦は轟音を立てて崩れ落ち、吹き上がる粉塵が宙を舞う。 全員それに巻き込まれ、激しく咳き込む事になるが、瓦礫の下敷きになるよりは遙かにマシであった。 粉塵が収まり、一同が落ち着いた所で♀クルセが何やら難しい顔をしながら地面に文字を書き始めた。 『♀セージ、♂プリースト、♂アーチャー、♂ローグ、♀アーチャー、アラーム……一人分足りなくないか?』 そう、一つのエンペリウムでは五人までしか首輪の開封を行えない。 しかし、この様子では残った四つをここで手に入れるのは不可能であろう。 ブルージェムストーンを使えば、ちょうど全員分となるが、いずれにしてもエンペリウムが一つだけでは、これ以上仲間を増やす事が出来なくなる。 ♀セージは正直に認めて、地面にこう書いた。 『最悪でも二つ手に入れるつもりだったからな。計算が狂ったのは事実だ。だが、これが誰の仕掛けかはわからないが。チュンリムにもこれが仕掛けられている場合、ローグ達が危ない』 そう書かれてその事実に気付いた♀クルセの顔が蒼白になる。 『一刻も早く、ローグ達と合流する必要がある。エンペリウムは今は一つだけで良しとすべき……』 そこまで書いた♀セージの腕が止まる。 崩れ落ちたブリトニアが、再び振動を始めたのだ。 全員姿勢を低くして振動に耐えるが、その振動は今までのそれとは何かが違った。 最初に気付いたのは、♂プリーストであった。 『なんだ? ……声?』 「……ッ……テ…………」 すぐに♀クルセも気付く。 「……コロ……シ……テ……コロシテ……」 『なんだこの声は……地の底から響き渡るような……』 突然、崩れ落ちた砦が爆ぜた。 飛び交う瓦礫に、全員が顔を庇ってその場にしゃがみ込む。 そして、再び顔を上げたそこに居たのは、先ほど♀セージが出会った醜悪極まりないバケモノであった。 ♂プリーストが顔を引きつらせて言う。 「……なんだありゃ……」 ♂アーチャーも同じ様な顔をして言う。 「……知るか……あんなデカイ化物ミッドガルドに居るなんて聞いた事も無い……」 ♀セージ達が侵入した砦の半分ほどの大きさのその化物は、一歩、また一歩と♀セージ達に近づいてくる。 ♀クルセは、即座に剣を抜き、皆の前に立つと早く逃げるように促す。 だが、その隣をすいっと抜けて、♀セージはすたすたとその化物に近づいて行った。 「おいこら♀セージ! お前何する……」 慌ててそう叫ぶ♂プリに、振り返りもせず♀セージは言った。 「そこで待っていろ」 唖然としたまま♀セージを見送る三人。 そして、すぐに違和感を覚える。 ♀クルセは眉をひそめて地面に文字を書く。 『……遠近法という物を知っているか? 近くに寄るにつれて、段々と大きく見えてゆくあれだ』 ♂プリは頷く。 そして言った。 「だよな~。あの化物、外見が常識外れなだけじゃなくて、世界の原理原則からも外れてってやがんの」 徐々に近づいて来る化物。だが、その姿は一向にその大きさを変えない。 つまり、近づくにつれて縮んできているのだ。 そして、♀セージの前に辿り着く頃にはほぼ人間と同サイズにまで縮んでしまっていた。 そんな化物を前にして♀セージは恭しく跪いて言う。 「……何かご用でしょうか?」 化物は何も言わず、その手に持っていたエンペリウムを♀セージに手渡した。 意図がわからず、無言のままの♀セージ。 そんな♀セージに向かって、化物が言った。 呪詛を込め、全身から黒い液体を吹き出しながら、憤怒の表情で。 「ワガイカリ……オモイシルガ……ヨイ……」 そのまま化物の全身は溶け落ち、地面へと吸い込まれて行った。 その言葉が♀セージに向けられた物でないと直感しながらも、♀セージはその身が恐怖に震えるのを止める事が出来なかった。 余りに不可思議な出来事であったが、予定通りエンペリウムを二つ手に入れた一行は先を急ぐ。 なんとは無しに無言になる一行であったが、突然♀セージが口を開いた。 「以前読んだ本に、こんな一説があった」 歩きながら、全員が♀セージの言葉に耳を傾ける。 「世界は神なり。故に神は世界なり……そういう学説があったらしい」 三人共意味がわからず首を傾げる。 「神は世界を治めるでもなく、見守るでもなく、ただ世界は神と共にある。ああ、つまりは世界は神と同意義。つまりこの世界全てこそが神なのだと。なればこそ、世界の意志はつまり神の意志になるとな」 余りに突拍子も無い話しに、一同唖然として話を聞き続ける。 「であるとすれば、作られたこの世界にも、世界が作られたと同時に神も存在している理屈になる……あくまで理屈の話だぞ」 最早完全に異次元のお話と化した♀セージトークを、三人はナチュラルにスルーする事に決めた。 「そ、そうだな! お前もそう思うだろ♂アーチャー!」 「はははっ! そうだよな! 俺もそう思うよ」 しゃべってはいけない事を良い事に、♀クルセはしらんぷりを決め込んでいる。 そんな三人を見た♀セージは驚いた顔をする。 「もしかして……私の話はわかりずらかったか?」 全力で首を縦に振る三人。 それを見て本気で悩み出す♀セージ。 「そうか、すまない。私の表現力不足だったか……次はもう少し努力してみるとしよう。私もまだまだだな……」 やたら真顔でそう言う♀セージが何やらおかしくて、ついつい♂プリーストが吹き出すと、残った二人も釣られて笑い出してしまった。 そんな三人を見て、♀セージは苦笑する。 そして、最後に思いついた事を口にしようとして止めた。 『もしくは……秋菜がこの世界において、神まで作りだそうとしたか……』 自分が居た世界が、どのようにして『安定』を得て存在していたのか、それは♀セージにはわからない。 世界を構築、維持するのにもしかしたら『神』の存在が必要だったのかもしれない。 自分はプリースト達の様には神を信じて居ない。だが、学問を修める者として神を学ぶ事も怠らなかった。 なればこそ、神話、伝説として語り継がれてきた彼らを作り出すという不遜極まりない行為に、♀セージは嫌悪感を覚えずにはいられなかった。 <♀セージ 現在位置/カタツムリ海岸 ( gef_fild09 )  所持品/垂れ猫 クリスタルブルー プラントボトル4個、心臓入手(首輪外し率アップアイテム)、筆談用ノート、エンペリウム2個> <♂アーチャー 現在位置/カタツムリ海岸 ( gef_fild09 )  所持品/アーバレスト、銀の矢47本、白ハーブ1個> <♀クルセ 現在位置/カタツムリ海岸 ( gef_fild09 )  所持品/青ジェム1個、海東剣> <♂プリースト 現在位置/カタツムリ海岸 ( gef_fild09 )  所持品/チェイン、へこんだ鍋> <備考:ブリトニア崩壊、ブリトニア砦はエンペリウムを二個喪失> ---- | 戻る | 目次 | 進む | | [[191]] | [[目次]] | [[193]] |

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