「2-025」(2005/11/13 (日) 21:29:16) の最新版変更点
追加された行は緑色になります。
削除された行は赤色になります。
025.Hello
----
「怖い怖い怖い怖い怖い怖い」
頭の中を駆け巡る言葉にならない感情。
それを必死に言葉にして紡ぎだしたとき彼女の口からこぼれたのはそれだけだった。
GMジョーカーによる狂宴の幕開けのあと、♀商人は海岸に飛ばされていた。
見渡す限りの広大な海。
思わずここから逃げ出したくなる。逃げることが可能なようにも思えた。
だがそんなことは有り得ない。
商人ギルドにもBR法の施行およびその実施の噂は流れてきていた。
情報というものの価値をある意味では最も重要視する商人ギルドにおいて
その情報の持つ意味はまさに「人生の終わり」であった。
現世利益、商売繁盛がモットーの商人達にとってそんなゲームに巻き込まれることは
騎士や暗殺者達とは当然意味合いが違っていた。
ゆえに♀商人の反応もまた商人ギルドの一般的な枠を外れるものでは決してなかった。
「こ の ゲ ー ム か ら 逃 げ ら れ る わ け が 無 い」
そんな観念が♀商人の頭の中にはゲームが実際に始まる前から植えつけられていたといってもいい。
「怖いよぉ…」
ただただ恐ろしかった。殺すことも殺されることも。
モンスターとの戦闘の経験はあった。
パーティーを組んでそれなりのダンジョンに潜ったこともある。
しかし、そこで知ったのは独りで戦うことの恐ろしさ。
そして、自分が震えてしまうようなダンジョンでも一人で戦い抜くことのできる
戦闘に特化した騎士や暗殺者やモンクといった者たちの存在。
自分が腕力や知恵を振り絞ることがまったくの無意味に思えた。
結果、♀商人は支給品をまず確認することも忘れ、この島から逃げ出そうと試みることもせず
しかしその場から動くことも出来ずうずくまりガタガタ震えていたのだ。
「こんにちはぁ~」
能天気な声がかけられたのはその時だった。
「!!」
さすがにその声には過敏に反応し、声のした方、自分の後方約10mを振り返る♀商人。
そこには中肉中背の男が立っていた。
身なりからすると魔術師であろうか。少なくとも接近戦を主とするタイプのようには思えない。
♀商人が辛うじてそこまで認識した時にまた声がかかった。
「こんにちはー」
「・・・」
そんな無意味な言葉のやり取りが出来るほどに平静を取り戻しているわけではない。
男は♀商人との距離を保ったまま、笑顔でまた声をかけてくる。
「いけませんねぇ。挨拶は人と人との基本です。コミュニケーションってのはそこから始まるんですよ?
何事も基本を疎かにしちゃいけないと思います。
私、別にいろんなことの応用に通じてるわけじゃないのでなんとも言えませんが。
はい、ということで…こんにちは。」
「こ、こんにちわ…」
「はい、ありがとう。でも正直よく聞こえませんでした。
もうちょっとそっちに近づいてもいいですか?」
そう言って男は一歩足を踏み出す。
瞬間的に♀商人の中で警報が鳴る。
「こっちに来ないでっ!!」
男はその言葉に反応し、足を止め苦笑する。
「あら~この半径約10mがあなたのパーソナルスペースってわけですね。
普通の人に比べたらやたら広いです。
まぁこの状況だと仕方ないのかもしれませんが、このままじゃ話が進みません。
そしてこんなだだっ広い場所で立ち話は危険だと思いませんか?
私を信用しないにしてもこの場所から早めに離れることをお勧めします。」
「・・・あ、あなた何なの!?」
山ほど生まれていた問いの一部をなんとか搾り出す。
「何なの…と言われても。
ちょっと風変わりなセージとしか言えませんねぇ。
あ、それに関連してもう一つ。この距離は多分私の間合いです。
あなたはそんなことしそうに無いですけど、あなたがこっちに攻撃を仕掛けてくる前に私何らかの対処が取れますから。
だからあなたとしても私に平手打てるくらいの距離まで近づいたほうがいいと思うんです、はい」
セージなんて須らく風変わりだろうという固定観念が♀商人の中にはあったのだが
そんなことに突っ込むよりも♂セージの言うように距離を詰めるのが最善のように思えた。
誰でも思いつくはずの「逃げる」と言う選択肢はそのときの♀商人には思い浮かばなかった。
それは…
おそらくセージには容易に追い討ちが可能とかそんな考えからではなく
きっと独りでいることの心細さから解放されたがっていたから。
信用できなくても誰かと繋がっていたいと心の底から思っていたから。
♀商人が目の前まで来たときに♂セージはまたにっこり微笑んだ。
「こんにちは」
何度目の挨拶だよ、あんた。
そう思ったがさすがに口には出さずに。
「こんにちわ」
あぁ、やっと言えた。
相変わらず地獄の底にいるのは間違いない。
でも…ほんの少し、ほんの少しだけ光が差した気がした。
<♀商人>
現在位置-砂浜の海岸(F-1)
所持品-不明
備考-わりと戦闘型 まだまだ疑心暗鬼 ♂セージとPT?
<♂セージ>
現在位置-砂浜の海岸(F-1)
所持品-不明
備考-FCAS―サマルトリア型 ちょっと風変わり? ♀商人とPT?
| [[戻る>2-024]] | [[目次>第二回目次]] | [[進む>2-026]] |
025.Hello
----
「怖い怖い怖い怖い怖い怖い」
頭の中を駆け巡る言葉にならない感情。
それを必死に言葉にして紡ぎだしたとき彼女の口からこぼれたのはそれだけだった。
GMジョーカーによる狂宴の幕開けのあと、♀商人は海岸に飛ばされていた。
見渡す限りの広大な海。
思わずここから逃げ出したくなる。逃げることが可能なようにも思えた。
だがそんなことは有り得ない。
商人ギルドにもBR法の施行およびその実施の噂は流れてきていた。
情報というものの価値をある意味では最も重要視する商人ギルドにおいて
その情報の持つ意味はまさに「人生の終わり」であった。
現世利益、商売繁盛がモットーの商人達にとってそんなゲームに巻き込まれることは
騎士や暗殺者達とは当然意味合いが違っていた。
ゆえに♀商人の反応もまた商人ギルドの一般的な枠を外れるものでは決してなかった。
「こ の ゲ ー ム か ら 逃 げ ら れ る わ け が 無 い」
そんな観念が♀商人の頭の中にはゲームが実際に始まる前から植えつけられていたといってもいい。
「怖いよぉ…」
ただただ恐ろしかった。殺すことも殺されることも。
モンスターとの戦闘の経験はあった。
パーティーを組んでそれなりのダンジョンに潜ったこともある。
しかし、そこで知ったのは独りで戦うことの恐ろしさ。
そして、自分が震えてしまうようなダンジョンでも一人で戦い抜くことのできる
戦闘に特化した騎士や暗殺者やモンクといった者たちの存在。
自分が腕力や知恵を振り絞ることがまったくの無意味に思えた。
結果、♀商人は支給品をまず確認することも忘れ、この島から逃げ出そうと試みることもせず
しかしその場から動くことも出来ずうずくまりガタガタ震えていたのだ。
「こんにちはぁ~」
能天気な声がかけられたのはその時だった。
「!!」
さすがにその声には過敏に反応し、声のした方、自分の後方約10mを振り返る♀商人。
そこには中肉中背の男が立っていた。
身なりからすると魔術師であろうか。少なくとも接近戦を主とするタイプのようには思えない。
♀商人が辛うじてそこまで認識した時にまた声がかかった。
「こんにちはー」
「・・・」
そんな無意味な言葉のやり取りが出来るほどに平静を取り戻しているわけではない。
男は♀商人との距離を保ったまま、笑顔でまた声をかけてくる。
「いけませんねぇ。挨拶は人と人との基本です。コミュニケーションってのはそこから始まるんですよ?
何事も基本を疎かにしちゃいけないと思います。
私、別にいろんなことの応用に通じてるわけじゃないのでなんとも言えませんが。
はい、ということで…こんにちは。」
「こ、こんにちわ…」
「はい、ありがとう。でも正直よく聞こえませんでした。
もうちょっとそっちに近づいてもいいですか?」
そう言って男は一歩足を踏み出す。
瞬間的に♀商人の中で警報が鳴る。
「こっちに来ないでっ!!」
男はその言葉に反応し、足を止め苦笑する。
「あら~この半径約10mがあなたのパーソナルスペースってわけですね。
普通の人に比べたらやたら広いです。
まぁこの状況だと仕方ないのかもしれませんが、このままじゃ話が進みません。
そしてこんなだだっ広い場所で立ち話は危険だと思いませんか?
私を信用しないにしてもこの場所から早めに離れることをお勧めします。」
「・・・あ、あなた何なの!?」
山ほど生まれていた問いの一部をなんとか搾り出す。
「何なの…と言われても。
ちょっと風変わりなセージとしか言えませんねぇ。
あ、それに関連してもう一つ。この距離は多分私の間合いです。
あなたはそんなことしそうに無いですけど、あなたがこっちに攻撃を仕掛けてくる前に私何らかの対処が取れますから。
だからあなたとしても私に平手打てるくらいの距離まで近づいたほうがいいと思うんです、はい」
セージなんて須らく風変わりだろうという固定観念が♀商人の中にはあったのだが
そんなことに突っ込むよりも♂セージの言うように距離を詰めるのが最善のように思えた。
誰でも思いつくはずの「逃げる」と言う選択肢はそのときの♀商人には思い浮かばなかった。
それは…
おそらくセージには容易に追い討ちが可能とかそんな考えからではなく
きっと独りでいることの心細さから解放されたがっていたから。
信用できなくても誰かと繋がっていたいと心の底から思っていたから。
♀商人が目の前まで来たときに♂セージはまたにっこり微笑んだ。
「こんにちは」
何度目の挨拶だよ、あんた。
そう思ったがさすがに口には出さずに。
「こんにちわ」
あぁ、やっと言えた。
相変わらず地獄の底にいるのは間違いない。
でも…ほんの少し、ほんの少しだけ光が差した気がした。
<♀商人>
現在位置-砂浜の海岸(F-1)
所持品-不明
備考-わりと戦闘型 まだまだ疑心暗鬼 ♂セージとPT?
<♂セージ>
現在位置-砂浜の海岸(F-1)
所持品-不明
備考-FCAS―サマルトリア型 ちょっと風変わり? ♀商人とPT?
----
| [[戻る>2-024]] | [[目次>第二回目次]] | [[進む>2-026]] |
表示オプション
横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: