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030. 罪無きイノセンス ---- 大きな木の幹に体を委ね、力無く座り込むローグの少女。怪我をして、辛そうにしている経緯はこうだ。 突然こんな殺人ゲームに放り出され、何、何? と彼女が現状を理解する間もなく、GMジョーカーのポータルにより送り出された森の中(彼女が知るはずはないが、地図上の位置的にはD-4に当たる)には、丁度自分と同じ、ローグの男が降り立っていた。多少気が緩み、あー一緒だろーぐさんだ、と話しかける彼女を無視して男ローグは支給された小箱をぱかりと開くと、その中に入っていた包丁でいきなり斬り付けてきた。左肩から胸にかけて鋭い痛み、鮮血が舞った。多分狙いは喉だったのだろうと後から思い直すとぞっとする。 あたふたと何とか逃げながら、こっちも何か対抗できるものがなきゃ、とあせあせ開けた青箱から出たのはハエの羽。次の瞬間、今度は背中に激痛。縦一文字に斬られたようだ。最早迷っている暇もなく、今手にしたばかりのハエの羽を放り投げる事で窮地は脱したが(島の全然違う場所に出たようなので、本来のそれよりも大きな魔力を持っていたようだ)、今この状況になって落ち着いてみても流れる血はなかなか止まらない。痛みは熱を帯びてきた。初っ端からいきなりハンデを背負ったものだ。 彼女に唯一の幸運があるならば、男ローグに刻み込まれた傷跡が、まだ状況をよく把握できていなかった彼女に血文字を以て教えてくれたことだろう。この現実がどういうことなのか。 殺し、殺され、殺し合う。そのために自分はここにいるわけだ。 理解はしてみたが、彼女は人なぞ殺したこともなければ、そんな人達を見たこともなかった。ローグになったのは、友達の子がローグになったと聞いて、じゃあ私もと、たったそれだけの理由。裏の世界に首を突っ込むどころか、そんな世界の存在すら知らぬ、純粋な少女。 ローグになって日が浅いというわけではない。身体能力は悪くもない。首を狙った包丁の一撃を、逸らすだけの反射神経もあった。 しかし哀しいかな、ローグにとって生き残るために大切なふたつの事。騙し合いや駆け引きといった狡猾さと、人の闇に対する知識が、彼女には備わっていなかった。 果たして彼女は死闘を演じることはできるのか。この先の運命やいかに・・・・・・。   *  *  * さてさてそんなローグの少女、痛みに耐えながらも止血用の包帯でも入っていないかと、支給された麻袋を漁っていると、こんなものを見つけた。 っ[古いカード帖] 間違って入ってた。らっきー!なのか、これも皆に配られてるのか。詳細はわからないが、とりあえず今の彼女には必要のないものである。開いてみようかと考え、その前にまずもうひとつの青箱の中身を確認しておくことにした。 「わぁ、かわいい」 頭にセットすることができる、金色の大きな鈴。折角なので、とりあえず付けてみた。赤い彼女の髪の色に、きらり輝く金色は意外と映える。らららんと音が鳴る。微妙に重いけれど、ちょっと楽しい。あー、鏡がないのが残念だなぁ。珍しいもの手に入れたぞっと、喜びそうになったのだが(いや、確かに喜んでいたが)、ふと視界に映った掌を染める鮮血が彼女をはたと現実に引き戻す。 「・・・・・・こんなしゃらんしゃらんウルサイのつけて歩いてたら、狙ってくださいって言ってるようなもんなんだよね・・・」 結局彼女は武器も身を護るものもない。人を殺すなんて考えたくもないが、誰かに襲われた場合、護身用に武器は必要だろう。丸腰、手負い、音が鳴る。由々しき事態というやつだ。 傷口は思いのほか深いらしく、流れる血は彼女の足元の土に染み込んでゆく。 「このカード帖破けば、止血には使えるかなあ・・・」 あからさまにカード帖程度の大きさで、しかも紙では彼女の傷口を覆うことなどできはしないが、何もしないよりはマシなんじゃあないだろうか。勿体無いが、これ以上血を失うのもやばい。あ、中身のカードくらいは確認しておこうかな。 ぴりりとカード帖を破りかけて、ふと思い留まる。 「・・・誰か、武器余ってる人とかいたら、これと取り替えて・・・くれる、かなぁ?」 彼女的には突如閃いた名案だった。 「・・・みんな、さっきの人みたいに襲ってくるのかなあ」 全員がそうではないはずだ。きっと。多分。お願いします。 「・・・こわいなあ」 そして、そうと浮かんだ考えは、少女の中では絶対だった。 持ち運ぶだけでもしゃらしゃら鳴る金の鈴は、その場に放置していくことにした。 が、数歩歩くごとに振り向き振り向き、名残惜しそうにしている彼女を、鈴のほうが呼んだ。ことにしておこう。 そうだ、これも交渉に使えるかもしれないし。・・・生き残れたら、持って帰れるかも、しれないし。 ・・・ええい、どうせ音が鳴るんだったら、つけて歩こっと。そうだ、この音に気付いて誰かが見つけてくれるかもしれないんだし。(彼女は気付いていないが、どうせ歩くだけで血痕も残る)   *  *  * 彼女がローグギルドよりこのゲームに選抜された理由は、見ての通りだろう。 どう見ても、ローグには向いていない少女であった。 <♀ローグ・・・青箱→すごいハエの羽(既に消費)、所持品・・・大きな金の鈴 古いカード帖(武器と交換を求めている)> <現在位置・・・大きな木より移動中(E-9から北東へ) 備考・・・純粋無垢 左肩から胸にかけてと背中に傷、出血中 動くと鈴の音が鳴る> <外見・・・歳の頃は「女性」よりはまだ「少女」 何かコード っ[csf:4m83i0l2] > | [[戻る>2-029]] | [[目次>第二回目次]] | [[進む>2-031]] |
030. 罪無きイノセンス ---- 大きな木の幹に体を委ね、力無く座り込むローグの少女。怪我をして、辛そうにしている経緯はこうだ。 突然こんな殺人ゲームに放り出され、何、何? と彼女が現状を理解する間もなく、GMジョーカーのポータルにより送り出された森の中(彼女が知るはずはないが、地図上の位置的にはD-4に当たる)には、丁度自分と同じ、ローグの男が降り立っていた。多少気が緩み、あー一緒だろーぐさんだ、と話しかける彼女を無視して男ローグは支給された小箱をぱかりと開くと、その中に入っていた包丁でいきなり斬り付けてきた。左肩から胸にかけて鋭い痛み、鮮血が舞った。多分狙いは喉だったのだろうと後から思い直すとぞっとする。 あたふたと何とか逃げながら、こっちも何か対抗できるものがなきゃ、とあせあせ開けた青箱から出たのはハエの羽。次の瞬間、今度は背中に激痛。縦一文字に斬られたようだ。最早迷っている暇もなく、今手にしたばかりのハエの羽を放り投げる事で窮地は脱したが(島の全然違う場所に出たようなので、本来のそれよりも大きな魔力を持っていたようだ)、今この状況になって落ち着いてみても流れる血はなかなか止まらない。痛みは熱を帯びてきた。初っ端からいきなりハンデを背負ったものだ。 彼女に唯一の幸運があるならば、男ローグに刻み込まれた傷跡が、まだ状況をよく把握できていなかった彼女に血文字を以て教えてくれたことだろう。この現実がどういうことなのか。 殺し、殺され、殺し合う。そのために自分はここにいるわけだ。 理解はしてみたが、彼女は人なぞ殺したこともなければ、そんな人達を見たこともなかった。ローグになったのは、友達の子がローグになったと聞いて、じゃあ私もと、たったそれだけの理由。裏の世界に首を突っ込むどころか、そんな世界の存在すら知らぬ、純粋な少女。 ローグになって日が浅いというわけではない。身体能力は悪くもない。首を狙った包丁の一撃を、逸らすだけの反射神経もあった。 しかし哀しいかな、ローグにとって生き残るために大切なふたつの事。騙し合いや駆け引きといった狡猾さと、人の闇に対する知識が、彼女には備わっていなかった。 果たして彼女は死闘を演じることはできるのか。この先の運命やいかに・・・・・・。   *  *  * さてさてそんなローグの少女、痛みに耐えながらも止血用の包帯でも入っていないかと、支給された麻袋を漁っていると、こんなものを見つけた。 っ[古いカード帖] 間違って入ってた。らっきー!なのか、これも皆に配られてるのか。詳細はわからないが、とりあえず今の彼女には必要のないものである。開いてみようかと考え、その前にまずもうひとつの青箱の中身を確認しておくことにした。 「わぁ、かわいい」 頭にセットすることができる、金色の大きな鈴。折角なので、とりあえず付けてみた。赤い彼女の髪の色に、きらり輝く金色は意外と映える。らららんと音が鳴る。微妙に重いけれど、ちょっと楽しい。あー、鏡がないのが残念だなぁ。珍しいもの手に入れたぞっと、喜びそうになったのだが(いや、確かに喜んでいたが)、ふと視界に映った掌を染める鮮血が彼女をはたと現実に引き戻す。 「・・・・・・こんなしゃらんしゃらんウルサイのつけて歩いてたら、狙ってくださいって言ってるようなもんなんだよね・・・」 結局彼女は武器も身を護るものもない。人を殺すなんて考えたくもないが、誰かに襲われた場合、護身用に武器は必要だろう。丸腰、手負い、音が鳴る。由々しき事態というやつだ。 傷口は思いのほか深いらしく、流れる血は彼女の足元の土に染み込んでゆく。 「このカード帖破けば、止血には使えるかなあ・・・」 あからさまにカード帖程度の大きさで、しかも紙では彼女の傷口を覆うことなどできはしないが、何もしないよりはマシなんじゃあないだろうか。勿体無いが、これ以上血を失うのもやばい。あ、中身のカードくらいは確認しておこうかな。 ぴりりとカード帖を破りかけて、ふと思い留まる。 「・・・誰か、武器余ってる人とかいたら、これと取り替えて・・・くれる、かなぁ?」 彼女的には突如閃いた名案だった。 「・・・みんな、さっきの人みたいに襲ってくるのかなあ」 全員がそうではないはずだ。きっと。多分。お願いします。 「・・・こわいなあ」 そして、そうと浮かんだ考えは、少女の中では絶対だった。 持ち運ぶだけでもしゃらしゃら鳴る金の鈴は、その場に放置していくことにした。 が、数歩歩くごとに振り向き振り向き、名残惜しそうにしている彼女を、鈴のほうが呼んだ。ことにしておこう。 そうだ、これも交渉に使えるかもしれないし。・・・生き残れたら、持って帰れるかも、しれないし。 ・・・ええい、どうせ音が鳴るんだったら、つけて歩こっと。そうだ、この音に気付いて誰かが見つけてくれるかもしれないんだし。(彼女は気付いていないが、どうせ歩くだけで血痕も残る)   *  *  * 彼女がローグギルドよりこのゲームに選抜された理由は、見ての通りだろう。 どう見ても、ローグには向いていない少女であった。 <♀ローグ・・・青箱→すごいハエの羽(既に消費)、所持品・・・大きな金の鈴 古いカード帖(武器と交換を求めている)> <現在位置・・・大きな木より移動中(E-9から北東へ) 備考・・・純粋無垢 左肩から胸にかけてと背中に傷、出血中 動くと鈴の音が鳴る> <外見・・・歳の頃は「女性」よりはまだ「少女」 何かコード っ[csf:4m83i0l2] > ---- | [[戻る>2-029]] | [[目次>第二回目次]] | [[進む>2-031]] |

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