「2-040」(2005/11/13 (日) 21:26:32) の最新版変更点
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040.the key
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彼女と一匹が見つけたとき、その男はガタガタ震えていた。
民家の扉に鍵を掛け、机の下にうずくまって。
「ねえ」
「ワン!」
「うわゃぉうっ!」
ガン!
声を掛けると男は文字通り飛び上がり、机の天板に頭をぶつけた。
「…何やってんのよ」
「いったいどこから!?」
男は尻餅を付いたまま、もの凄い勢いで後ずさる。
彼女――♀アコは無理に近寄ろうとせず、立ったまま背後を示した。
「どこからも何も、あっちの窓から」
「わざわざ鍵掛けたのになんで入ってくるんだっ」
「扉に鍵が掛かってたから、中に何かあるんじゃないかな~って。ね?」
「ワンワン!」
子デザが答える。
一応入る前に声は掛けたのだ。危険なことに。
そしたら人の気配があったので入ってみた。すごく危険なことに。
いくら施錠したところで、窓はぼろぼろに破れている。入ろうと思えば簡単に入れた。
それでも鍵が掛かるだけましな方だろう。同じ集落でも建物によっては扉そのものが無かったり、壁まで破れている所もある。
「窓からはいるなんて非常識だろう!」
「今さらなに言ってるのよ」
投げ込まれた状況の方がよっぽど非常識なのだ。
どうも相手は命がけの状況に慣れていない、良くも悪くも一般人らしい。
長めのローブをまとっているので魔術師かとも思ったのだが、どうやら違うようだ。
♀アコは改めてしげしげと見つめた。
――だいぶ汚れてるけど、結構いい服。お金持ちだな~。
――でも、あの服どこかで?
Int1の脳裏に何かがちょっぴり引っかかった。
「あなた、だれ?」
一歩踏み込む。
「寄るなああああぁぁぁぁ~~っ!」
途端、男は彼女から少しでも離れようと部屋奥へ逃げ出した。
そのローブの背にはミッドガルド王国旗の刺繍。
彼女はやっとその衣装を思い出した。
「あー、お城の――――!!?」
大臣の位を示すローブだ。
このゲームを生み出した悪い奴の1人。
思わずつかみかかったとき、男が絶叫を上げた。
「うひぃやあぁぁーーーーっっ!」
同時に馬のいななきのような声が上がり、ペコペコも真っ青な勢いで走り出す。
「待ちなさいよ!」
短い競走はあっけなく終わった。
足の速さだけなら間違いなく男が勝っていたのだが、彼が走り寄った扉には鍵が掛かっていた。
彼自身が掛けた鍵が。
「あんた達のせいで…っ!」
「やめろぉっ!離れてくれえぇっ!死ぬ、死んでしまう、お前も死ぬんだぞぉっ!!」
胸ぐらをつかんで締め上げる彼女の手を、男は死にものぐるいの力で振り払った。
そして転がるように建物の奥へと逃げ出す。
「寄るなっ…首輪が爆発してしまうっ…」
壁にへばりつき、うわごとのように呟きながら逃げ道を探す大臣。
「わたしは悪くない…悪くないんだ……あの女に引っかけられただけなんだ…」
「ふん、いい気味」
♀アコはゆっくりと歩み寄りながら男の狂態を見下ろした。
だが、彼女の筋肉っぽいおつむにも次第に疑問が湧いてくる。
何でこのゲームを作った大臣がこんな所にいるんだろう。
それにずっとプロンテラにいたけれど、この男の顔は知らない。
彼女でも顔を知ってるような大物ではないからか…そうじゃないなら偽者?
「もう一度聞くね。あなた、何者?」
「わたしは…い、いや、言えないっ」
「なんで?」
「それも言えないんだ…言ったら私は殺される……」
男は首輪を押さえた。
彼女がもう少し賢ければ気付けたのかも知れない。
殺される、と言うのはGMジョーカーの言った首輪の爆発で、という意味であると。
つまり彼は何か言ってはならないことを知っていて、開催者側はそれを言わないか監視していると。
――即ち、彼らの首輪には盗聴機能が付いていると。
その他にもいろんなことに。
もちろん彼女はそんなことには気付かず、こう言った。
「分かったわよ。じゃあ言わなくていいから首振って答えて。あなた、大臣なのよね?」
「う…うわああぁぁぁぁあああああぁぁぁーーーーーーーーーーっっっ!!」
これなら答えられるだろうと思った問いに、男は恐慌をきたした。
そのまま手近な窓を突き破って飛び出す。
「ちょ……!」
慌てて窓に駆け寄るが、男の後ろ姿はすでに魔法も届かないほどの距離にあった。
「…あ~あ。何だったんだろあの人」
「クゥン」
♀アコは子デザと顔を見合わせる。
でも、あの男を探さなくちゃいけない気がする。
次に出会った誰かが殺してしまう前に。
彼はきっと何か大事なことを知っている。
よく分からないけど、たぶんこのゲームに関わる何か。
♀アコは効き目の悪い速度増加を使い、普段よりちょっとだけ速いペースで歩き始めた。
ある意味参加者中最大の敵かもしれない男を見つけ、助けるために。
<♀アコ>
髪型:Wizデフォ銀色
所持品:集中ポーション2個 子デザ&ペットフードいっぱい
備考:殴りアコ・方向オンチ
現在地:F-5(小集落)
<??大臣>
髪型:NPC(PvPドアマン)
所持品:馬牌(残4)、青箱
備考:恐慌状態・特別製の首輪を着けられたと思い込まされている。実際は通常型
現在地:F-5→?
<残り47名>
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040.the key
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彼女と一匹が見つけたとき、その男はガタガタ震えていた。
民家の扉に鍵を掛け、机の下にうずくまって。
「ねえ」
「ワン!」
「うわゃぉうっ!」
ガン!
声を掛けると男は文字通り飛び上がり、机の天板に頭をぶつけた。
「…何やってんのよ」
「いったいどこから!?」
男は尻餅を付いたまま、もの凄い勢いで後ずさる。
彼女――♀アコは無理に近寄ろうとせず、立ったまま背後を示した。
「どこからも何も、あっちの窓から」
「わざわざ鍵掛けたのになんで入ってくるんだっ」
「扉に鍵が掛かってたから、中に何かあるんじゃないかな~って。ね?」
「ワンワン!」
子デザが答える。
一応入る前に声は掛けたのだ。危険なことに。
そしたら人の気配があったので入ってみた。すごく危険なことに。
いくら施錠したところで、窓はぼろぼろに破れている。入ろうと思えば簡単に入れた。
それでも鍵が掛かるだけましな方だろう。同じ集落でも建物によっては扉そのものが無かったり、壁まで破れている所もある。
「窓からはいるなんて非常識だろう!」
「今さらなに言ってるのよ」
投げ込まれた状況の方がよっぽど非常識なのだ。
どうも相手は命がけの状況に慣れていない、良くも悪くも一般人らしい。
長めのローブをまとっているので魔術師かとも思ったのだが、どうやら違うようだ。
♀アコは改めてしげしげと見つめた。
――だいぶ汚れてるけど、結構いい服。お金持ちだな~。
――でも、あの服どこかで?
Int1の脳裏に何かがちょっぴり引っかかった。
「あなた、だれ?」
一歩踏み込む。
「寄るなああああぁぁぁぁ~~っ!」
途端、男は彼女から少しでも離れようと部屋奥へ逃げ出した。
そのローブの背にはミッドガルド王国旗の刺繍。
彼女はやっとその衣装を思い出した。
「あー、お城の――――!!?」
大臣の位を示すローブだ。
このゲームを生み出した悪い奴の1人。
思わずつかみかかったとき、男が絶叫を上げた。
「うひぃやあぁぁーーーーっっ!」
同時に馬のいななきのような声が上がり、ペコペコも真っ青な勢いで走り出す。
「待ちなさいよ!」
短い競走はあっけなく終わった。
足の速さだけなら間違いなく男が勝っていたのだが、彼が走り寄った扉には鍵が掛かっていた。
彼自身が掛けた鍵が。
「あんた達のせいで…っ!」
「やめろぉっ!離れてくれえぇっ!死ぬ、死んでしまう、お前も死ぬんだぞぉっ!!」
胸ぐらをつかんで締め上げる彼女の手を、男は死にものぐるいの力で振り払った。
そして転がるように建物の奥へと逃げ出す。
「寄るなっ…首輪が爆発してしまうっ…」
壁にへばりつき、うわごとのように呟きながら逃げ道を探す大臣。
「わたしは悪くない…悪くないんだ……あの女に引っかけられただけなんだ…」
「ふん、いい気味」
♀アコはゆっくりと歩み寄りながら男の狂態を見下ろした。
だが、彼女の筋肉っぽいおつむにも次第に疑問が湧いてくる。
何でこのゲームを作った大臣がこんな所にいるんだろう。
それにずっとプロンテラにいたけれど、この男の顔は知らない。
彼女でも顔を知ってるような大物ではないからか…そうじゃないなら偽者?
「もう一度聞くね。あなた、何者?」
「わたしは…い、いや、言えないっ」
「なんで?」
「それも言えないんだ…言ったら私は殺される……」
男は首輪を押さえた。
彼女がもう少し賢ければ気付けたのかも知れない。
殺される、と言うのはGMジョーカーの言った首輪の爆発で、という意味であると。
つまり彼は何か言ってはならないことを知っていて、開催者側はそれを言わないか監視していると。
――即ち、彼らの首輪には盗聴機能が付いていると。
その他にもいろんなことに。
もちろん彼女はそんなことには気付かず、こう言った。
「分かったわよ。じゃあ言わなくていいから首振って答えて。あなた、大臣なのよね?」
「う…うわああぁぁぁぁあああああぁぁぁーーーーーーーーーーっっっ!!」
これなら答えられるだろうと思った問いに、男は恐慌をきたした。
そのまま手近な窓を突き破って飛び出す。
「ちょ……!」
慌てて窓に駆け寄るが、男の後ろ姿はすでに魔法も届かないほどの距離にあった。
「…あ~あ。何だったんだろあの人」
「クゥン」
♀アコは子デザと顔を見合わせる。
でも、あの男を探さなくちゃいけない気がする。
次に出会った誰かが殺してしまう前に。
彼はきっと何か大事なことを知っている。
よく分からないけど、たぶんこのゲームに関わる何か。
♀アコは効き目の悪い速度増加を使い、普段よりちょっとだけ速いペースで歩き始めた。
ある意味参加者中最大の敵かもしれない男を見つけ、助けるために。
<♀アコ>
髪型:Wizデフォ銀色
所持品:集中ポーション2個 子デザ&ペットフードいっぱい
備考:殴りアコ・方向オンチ
現在地:F-5(小集落)
<??大臣>
髪型:NPC(PvPドアマン)
所持品:馬牌(残4)、青箱
備考:恐慌状態・特別製の首輪を着けられたと思い込まされている。実際は通常型
現在地:F-5→?
<残り47名>
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