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040.the key ---- 彼女と一匹が見つけたとき、その男はガタガタ震えていた。 民家の扉に鍵を掛け、机の下にうずくまって。 「ねえ」 「ワン!」 「うわゃぉうっ!」 ガン! 声を掛けると男は文字通り飛び上がり、机の天板に頭をぶつけた。 「…何やってんのよ」 「いったいどこから!?」 男は尻餅を付いたまま、もの凄い勢いで後ずさる。 彼女――♀アコは無理に近寄ろうとせず、立ったまま背後を示した。 「どこからも何も、あっちの窓から」 「わざわざ鍵掛けたのになんで入ってくるんだっ」 「扉に鍵が掛かってたから、中に何かあるんじゃないかな~って。ね?」 「ワンワン!」 子デザが答える。 一応入る前に声は掛けたのだ。危険なことに。 そしたら人の気配があったので入ってみた。すごく危険なことに。 いくら施錠したところで、窓はぼろぼろに破れている。入ろうと思えば簡単に入れた。 それでも鍵が掛かるだけましな方だろう。同じ集落でも建物によっては扉そのものが無かったり、壁まで破れている所もある。 「窓からはいるなんて非常識だろう!」 「今さらなに言ってるのよ」 投げ込まれた状況の方がよっぽど非常識なのだ。 どうも相手は命がけの状況に慣れていない、良くも悪くも一般人らしい。 長めのローブをまとっているので魔術師かとも思ったのだが、どうやら違うようだ。 ♀アコは改めてしげしげと見つめた。 ――だいぶ汚れてるけど、結構いい服。お金持ちだな~。 ――でも、あの服どこかで? Int1の脳裏に何かがちょっぴり引っかかった。 「あなた、だれ?」 一歩踏み込む。 「寄るなああああぁぁぁぁ~~っ!」 途端、男は彼女から少しでも離れようと部屋奥へ逃げ出した。 そのローブの背にはミッドガルド王国旗の刺繍。 彼女はやっとその衣装を思い出した。 「あー、お城の――――!!?」 大臣の位を示すローブだ。 このゲームを生み出した悪い奴の1人。 思わずつかみかかったとき、男が絶叫を上げた。 「うひぃやあぁぁーーーーっっ!」 同時に馬のいななきのような声が上がり、ペコペコも真っ青な勢いで走り出す。 「待ちなさいよ!」 短い競走はあっけなく終わった。 足の速さだけなら間違いなく男が勝っていたのだが、彼が走り寄った扉には鍵が掛かっていた。 彼自身が掛けた鍵が。 「あんた達のせいで…っ!」 「やめろぉっ!離れてくれえぇっ!死ぬ、死んでしまう、お前も死ぬんだぞぉっ!!」 胸ぐらをつかんで締め上げる彼女の手を、男は死にものぐるいの力で振り払った。 そして転がるように建物の奥へと逃げ出す。 「寄るなっ…首輪が爆発してしまうっ…」 壁にへばりつき、うわごとのように呟きながら逃げ道を探す大臣。 「わたしは悪くない…悪くないんだ……あの女に引っかけられただけなんだ…」 「ふん、いい気味」 ♀アコはゆっくりと歩み寄りながら男の狂態を見下ろした。 だが、彼女の筋肉っぽいおつむにも次第に疑問が湧いてくる。 何でこのゲームを作った大臣がこんな所にいるんだろう。 それにずっとプロンテラにいたけれど、この男の顔は知らない。 彼女でも顔を知ってるような大物ではないからか…そうじゃないなら偽者? 「もう一度聞くね。あなた、何者?」 「わたしは…い、いや、言えないっ」 「なんで?」 「それも言えないんだ…言ったら私は殺される……」 男は首輪を押さえた。 彼女がもう少し賢ければ気付けたのかも知れない。 殺される、と言うのはGMジョーカーの言った首輪の爆発で、という意味であると。 つまり彼は何か言ってはならないことを知っていて、開催者側はそれを言わないか監視していると。 ――即ち、彼らの首輪には盗聴機能が付いていると。 その他にもいろんなことに。 もちろん彼女はそんなことには気付かず、こう言った。 「分かったわよ。じゃあ言わなくていいから首振って答えて。あなた、大臣なのよね?」 「う…うわああぁぁぁぁあああああぁぁぁーーーーーーーーーーっっっ!!」 これなら答えられるだろうと思った問いに、男は恐慌をきたした。 そのまま手近な窓を突き破って飛び出す。 「ちょ……!」 慌てて窓に駆け寄るが、男の後ろ姿はすでに魔法も届かないほどの距離にあった。 「…あ~あ。何だったんだろあの人」 「クゥン」 ♀アコは子デザと顔を見合わせる。 でも、あの男を探さなくちゃいけない気がする。 次に出会った誰かが殺してしまう前に。 彼はきっと何か大事なことを知っている。 よく分からないけど、たぶんこのゲームに関わる何か。 ♀アコは効き目の悪い速度増加を使い、普段よりちょっとだけ速いペースで歩き始めた。 ある意味参加者中最大の敵かもしれない男を見つけ、助けるために。 <♀アコ> 髪型:Wizデフォ銀色   所持品:集中ポーション2個 子デザ&ペットフードいっぱい   備考:殴りアコ・方向オンチ   現在地:F-5(小集落) <??大臣> 髪型:NPC(PvPドアマン)   所持品:馬牌(残4)、青箱   備考:恐慌状態・特別製の首輪を着けられたと思い込まされている。実際は通常型   現在地:F-5→? <残り47名> [[戻る>2-039]] | [[目次>第二回目次]] | [[進む>2-041]]
040.the key ---- 彼女と一匹が見つけたとき、その男はガタガタ震えていた。 民家の扉に鍵を掛け、机の下にうずくまって。 「ねえ」 「ワン!」 「うわゃぉうっ!」 ガン! 声を掛けると男は文字通り飛び上がり、机の天板に頭をぶつけた。 「…何やってんのよ」 「いったいどこから!?」 男は尻餅を付いたまま、もの凄い勢いで後ずさる。 彼女――♀アコは無理に近寄ろうとせず、立ったまま背後を示した。 「どこからも何も、あっちの窓から」 「わざわざ鍵掛けたのになんで入ってくるんだっ」 「扉に鍵が掛かってたから、中に何かあるんじゃないかな~って。ね?」 「ワンワン!」 子デザが答える。 一応入る前に声は掛けたのだ。危険なことに。 そしたら人の気配があったので入ってみた。すごく危険なことに。 いくら施錠したところで、窓はぼろぼろに破れている。入ろうと思えば簡単に入れた。 それでも鍵が掛かるだけましな方だろう。同じ集落でも建物によっては扉そのものが無かったり、壁まで破れている所もある。 「窓からはいるなんて非常識だろう!」 「今さらなに言ってるのよ」 投げ込まれた状況の方がよっぽど非常識なのだ。 どうも相手は命がけの状況に慣れていない、良くも悪くも一般人らしい。 長めのローブをまとっているので魔術師かとも思ったのだが、どうやら違うようだ。 ♀アコは改めてしげしげと見つめた。 ――だいぶ汚れてるけど、結構いい服。お金持ちだな~。 ――でも、あの服どこかで? Int1の脳裏に何かがちょっぴり引っかかった。 「あなた、だれ?」 一歩踏み込む。 「寄るなああああぁぁぁぁ~~っ!」 途端、男は彼女から少しでも離れようと部屋奥へ逃げ出した。 そのローブの背にはミッドガルド王国旗の刺繍。 彼女はやっとその衣装を思い出した。 「あー、お城の――――!!?」 大臣の位を示すローブだ。 このゲームを生み出した悪い奴の1人。 思わずつかみかかったとき、男が絶叫を上げた。 「うひぃやあぁぁーーーーっっ!」 同時に馬のいななきのような声が上がり、ペコペコも真っ青な勢いで走り出す。 「待ちなさいよ!」 短い競走はあっけなく終わった。 足の速さだけなら間違いなく男が勝っていたのだが、彼が走り寄った扉には鍵が掛かっていた。 彼自身が掛けた鍵が。 「あんた達のせいで…っ!」 「やめろぉっ!離れてくれえぇっ!死ぬ、死んでしまう、お前も死ぬんだぞぉっ!!」 胸ぐらをつかんで締め上げる彼女の手を、男は死にものぐるいの力で振り払った。 そして転がるように建物の奥へと逃げ出す。 「寄るなっ…首輪が爆発してしまうっ…」 壁にへばりつき、うわごとのように呟きながら逃げ道を探す大臣。 「わたしは悪くない…悪くないんだ……あの女に引っかけられただけなんだ…」 「ふん、いい気味」 ♀アコはゆっくりと歩み寄りながら男の狂態を見下ろした。 だが、彼女の筋肉っぽいおつむにも次第に疑問が湧いてくる。 何でこのゲームを作った大臣がこんな所にいるんだろう。 それにずっとプロンテラにいたけれど、この男の顔は知らない。 彼女でも顔を知ってるような大物ではないからか…そうじゃないなら偽者? 「もう一度聞くね。あなた、何者?」 「わたしは…い、いや、言えないっ」 「なんで?」 「それも言えないんだ…言ったら私は殺される……」 男は首輪を押さえた。 彼女がもう少し賢ければ気付けたのかも知れない。 殺される、と言うのはGMジョーカーの言った首輪の爆発で、という意味であると。 つまり彼は何か言ってはならないことを知っていて、開催者側はそれを言わないか監視していると。 ――即ち、彼らの首輪には盗聴機能が付いていると。 その他にもいろんなことに。 もちろん彼女はそんなことには気付かず、こう言った。 「分かったわよ。じゃあ言わなくていいから首振って答えて。あなた、大臣なのよね?」 「う…うわああぁぁぁぁあああああぁぁぁーーーーーーーーーーっっっ!!」 これなら答えられるだろうと思った問いに、男は恐慌をきたした。 そのまま手近な窓を突き破って飛び出す。 「ちょ……!」 慌てて窓に駆け寄るが、男の後ろ姿はすでに魔法も届かないほどの距離にあった。 「…あ~あ。何だったんだろあの人」 「クゥン」 ♀アコは子デザと顔を見合わせる。 でも、あの男を探さなくちゃいけない気がする。 次に出会った誰かが殺してしまう前に。 彼はきっと何か大事なことを知っている。 よく分からないけど、たぶんこのゲームに関わる何か。 ♀アコは効き目の悪い速度増加を使い、普段よりちょっとだけ速いペースで歩き始めた。 ある意味参加者中最大の敵かもしれない男を見つけ、助けるために。 <♀アコ> 髪型:Wizデフォ銀色   所持品:集中ポーション2個 子デザ&ペットフードいっぱい   備考:殴りアコ・方向オンチ   現在地:F-5(小集落) <??大臣> 髪型:NPC(PvPドアマン)   所持品:馬牌(残4)、青箱   備考:恐慌状態・特別製の首輪を着けられたと思い込まされている。実際は通常型   現在地:F-5→? <残り47名> ---- [[戻る>2-039]] | [[目次>第二回目次]] | [[進む>2-041]]

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