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ドアをノックするのは誰だ ---- 「せいぜいであと一ヶ月だな」 余命の宣告なんてこんなものか。 自分に残された時間を冷徹に告げられても男にはたいした感慨は沸かなかった。 男は闇に生きてきた。 闇に生まれ闇に死ぬ、それが自分の人生だと思っていた。 だがどうやら闘いの中では死ねないらしい。 彼は暗殺者だった。 物心がついた時にはすでに人の殺し方を教えられ、十になる前に初めて人を殺した。 同じような境遇の者が一人、また一人と消える中、彼は常に生き残ってきた。 やがて年月は過ぎ、彼は暗殺者としては闇の世界では名を知らぬ者は居ないほどとなった。 そしてある日、自分がもうすぐ死ぬことを知った。 自らの命を絶つことは至極簡単だ。 常に常備している毒薬を口に入れてしまえばいい。 それに抵抗があるならグラストヘイムの奥地にでも単身潜り込めばいい。 だが、それが自分の、自分の物語の終わりなのかと考えるとどうしようもない空しさが胸に広がった。 「馬鹿馬鹿しい」 闇の世界を生きてきた人間が自分の生に何を求めるというのだろう? 何かを、子供であったり名誉であったり誇りであったり そんなものを自分という物語の幕引きに残していいのは陽の光を浴びて生きてきたものだけだ。 アサシンである自分にそんな資格は・・・ない。 昔、たまたま共闘することになった生涯一次の♀剣士に尋ねたことがある。 「なぜ、騎士にもクルセイダーにもならない? あんたならもっと強くなれるはずだ」 聞き飽きた質問だったのだろう。女は苦笑混じりに答えた。 「強いことにどんな意味がある?  自分の守りたいものを守れるのが本当の強さだ。  力があっても己が目が曇ってしまえば守るべきものを見失ってしまう。  そのことを忘れないために、本当に守りたいものを守るために私はこの姿でいる。  戦うことが手段であり、目的でもある暗殺者には理解できないかもしれないがな」 そう。彼にはまったく理解できなかった。 戦いという連環の中にいる彼にはその外のことなど考えが及ぶはずも無かった。 だが…今なら少しわかる気がする。 彼女は生き続けることの空しさも死ぬことの恐ろしさも知っていたのだ。 今まさに自分を支配している目的も無く生き続ける空虚、何も残せずに消えていく恐怖 それを埋めるために彼女は剣士として戦い続けていたのだ。 一剣士の彼女がなぜそんな苛烈な道を選んだのかまでは見当もつかないが。 だが、この殺し合いに巻き込まれても自分が何をなすべきか彼にはまだわからなかった。 彼女に聞いてみればわかる気がしたが、そんなことがかなうはずも無い。 だから全ては偶然だった。 彼の支給品がTCJ(トリプルクリティカルジュル)であったことも ♂ローグに急襲されている♀アコライトを見つけたことも ♂ローグが不意の乱入者に撤退したことも。 そして、彼が♀アコライトに身元を問いただされたときに、アサシンに伝わるあのおとぎ話の一説を思い出したことも。 「おれ…おれは… (おれはもう…アサシンじゃない)  おれは、忍者だよ」 物語は続く― <忍者-現在位置:E-5 所持品:TCJ、青箱(未開封) 備考:実力的には高レベルのアサシン、一週間以内に死ぬ ♀アコ-現在位置:南へ向かうつもりで島の東部から西へ(現在E-5) 備考:殴りアコ、方向オンチ 状態持ち物変化なし ♂ローグ-現在位置:E-5から南へ逃亡 状態持ち物変化無し 髪型不明> ---- [[戻る>第二回NG]]

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