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054 現実と幻想
さて……漠然と仲間を探すと考えたところで、都合よく仲間になる人が見つかるというわけも無く。
♂マジは一人海岸から離れ森を抜けを人の気配を探しつつ徘徊していた。
「割と歩いたとは思うのだが一向に人が見つかる気配が無い………
おかしいっ……俺一人が孤立して飛ばされたというのだろうか………?」
支給された袋から地図を取り出し自分のたどってきた道と現在位置を確認する。
「さっきまでいた海岸の形状とコンパスの指した方向から察するに今居る場所は西側………
俺は海岸とは逆の森を進んで……途中平原に出そうになって再び森に戻ったから……
大体この辺りか………?くそっ……この地図大まか過ぎるだろっ……!」
渡された白図では得られる情報が余りにも少なく、とても現在位置が特定できるようなものではない。
頼りになるのはコンパスと己の勘………そしてまったく当てにならない「運」であった。
「畜生っ……命を賭けるゲームにしてはあまりにもお粗末っ……」
故に、自分の一挙一動が大きく影響されるっ………「生き残る可能性」というものにっ………!
先の見えないトンネル………♂マジの今の状況はよく比喩されるそんなものであった。
「だからこそ……仲間が欲しいっ……1人よりも2人っ…2人よりも3人っ………
数が増えれば生き残る可能性はきっと………ん?」
ふと、♂マジの視界に黒い煙が入る。
ずっと辺りを横に警戒していた為……またこの森は非常に見通しが悪かった為
地図をしまい立ち上がるまで黒煙に気付くことができなかったのである。
「煙……人が、人が居るのかっ………!?やったっ……これで、これで生き残れる可能性がっ……!」
僅かに見えた光明に♂マジの表情が緩む。
そこには必ず人が居る…ただそれだけしか浮かばず、♂マジはその黒煙の発する方向へ一目散に駆けていった。
だが……黒煙とはそもそも人が扱う薪を使って火をおこすといった状況では発生しない煙である。
すなわちそれが発生する状況とは薪以外の物が燃える場合。もしくは………
「今現在も炎が消えておらず燃え盛っている状況である」ということである。
「なんだっ……これはっ………!?」
♂マジが目にした光景は一度目にしたら忘れることが出来ないような凄惨たるものであった。
森の中の開けた一画に建てられた山小屋、いやおそらく山小屋だったものが……黒い炎に包まれているのである。
轟々と黒い炎は小屋を飲み込み、音を立てて小屋は崩れていく。
「これは……一体何が………?」
呆然としていた♂マジだったが近くに転がっていたスティレットに気がつき、そちらに駆け寄る。
炎が放つ熱気と物の焼ける異臭が♂マジを包み込むが、構わず落ちていたそれを拾い上げる。
「…このスティレットにこびり付いているのは……」
そのスティレットに付着していた液体が、今のこの光景の理由を……全てを、現実を物語っていた。
しばらく燃え盛る黒い炎を眺め考え込んでいた♂マジだったが考えが纏まったのか立ち上がり再び森の中へ歩み始めた。
「失念していたっ………このゲームに乗り気の奴が居るということをっ………!
浮かれていたっ………ただ漠然と仲間を集めればなんとかなると思っていたっ………!
夢を見ていた……俺はまだ夢を見ていたんだっ………甘い幻想をっ………!
だがこの場所は、この現実は……辛く、酷く、逃れることの出来ない地獄っ………!
それが現実………リアルなんだっ………」
♂マジは袋からコンパスを取り出すと、北を確認しその方向へ道を進める。
「だったら俺は…その現実でどうやって生き残ればいい………?
人を殺して生き残る……それが現実のこのゲームで………俺みたいな考えの奴はいないのか………?
そんなことはない………そんなことはないはずなんだっ……皆が皆乗り気だなんてことはっ……!」
マジシャンのローブの中にしまった血塗れたスティレットが未だにそんなことを夢見ている俺をせせら笑うように思えた。
『お前はまだ現実を直視していない。まだ甘い幻想をみているんだ。
今もどこかで誰かが殺し合い、その命を削りあっているに違いない。
なのに何故そんな幻想を抱く?何故くだらない夢想を捨てきれずにいる?
理想に溺れたものの末路は到底語れるものではないということはわかっているはずだ』
この血塗れたスティレットは、♂マジが唯一このゲームの中で得ることの出来た「現実」である。
自分と同じように仲間を求めている奴がいる、ということはあくまで♂マジの想像であって現実ではない。
「でも……それでも俺はっ………信じたいんだっ………!
たとえそれが幻想であっても……その結果死ぬようなことになったとしても………
冒険者達は……簡単に誰も信じることが出来なくなるような弱い奴らばかりじゃないってことをっ………!!」
♂マジは振り返り、先程の場所から発せられたものと思われる煙を眺めた。
既に炎は収まったのだろうか。
自分が見たときは黒い煙だったが今立ち上っている煙は白いものとなっていた。
「あの炎……相当熟練を積んだ者が魔法を放ったのか…それとも何か別の………」
色々と予想するもののどれも決定打に至るものにはならず、仕方なくその場を離れ北を目指すのであった。
「確か……平原へと出られる場所があったはずだ……人が隠れるなら森の中と思ったが………
平原に出れば人の姿を見ることが出来るかもしれないし向こうからこちらを見つけることもできるはず………
危険は伴うが……誰かに会わなければ気が狂ってしまいそうだっ………」
<♂マジ>
現在位置…(燃え尽きた小屋付近の森)C-7→北上しC-6の(丘の木立を臨める平原)へ向かうところ
所持品…ピンゾロサイコロ(6面とも1のサイコロ) 3個 青箱 1個 スティレット
備考…JOB50 仲間を求める
054 現実と幻想
さて……漠然と仲間を探すと考えたところで、都合よく仲間になる人が見つかるというわけも無く。
♂マジは一人海岸から離れ森を抜けを人の気配を探しつつ徘徊していた。
「割と歩いたとは思うのだが一向に人が見つかる気配が無い………
おかしいっ……俺一人が孤立して飛ばされたというのだろうか………?」
支給された袋から地図を取り出し自分のたどってきた道と現在位置を確認する。
「さっきまでいた海岸の形状とコンパスの指した方向から察するに今居る場所は西側………
俺は海岸とは逆の森を進んで……途中平原に出そうになって再び森に戻ったから……
大体この辺りか………?くそっ……この地図大まか過ぎるだろっ……!」
渡された白図では得られる情報が余りにも少なく、とても現在位置が特定できるようなものではない。
頼りになるのはコンパスと己の勘………そしてまったく当てにならない「運」であった。
「畜生っ……命を賭けるゲームにしてはあまりにもお粗末っ……」
故に、自分の一挙一動が大きく影響されるっ………「生き残る可能性」というものにっ………!
先の見えないトンネル………♂マジの今の状況はよく比喩されるそんなものであった。
「だからこそ……仲間が欲しいっ……1人よりも2人っ…2人よりも3人っ………
数が増えれば生き残る可能性はきっと………ん?」
ふと、♂マジの視界に黒い煙が入る。
ずっと辺りを横に警戒していた為……またこの森は非常に見通しが悪かった為
地図をしまい立ち上がるまで黒煙に気付くことができなかったのである。
「煙……人が、人が居るのかっ………!?やったっ……これで、これで生き残れる可能性がっ……!」
僅かに見えた光明に♂マジの表情が緩む。
そこには必ず人が居る…ただそれだけしか浮かばず、♂マジはその黒煙の発する方向へ一目散に駆けていった。
だが……黒煙とはそもそも人が扱う薪を使って火をおこすといった状況では発生しない煙である。
すなわちそれが発生する状況とは薪以外の物が燃える場合。もしくは………
「今現在も炎が消えておらず燃え盛っている状況である」ということである。
「なんだっ……これはっ………!?」
♂マジが目にした光景は一度目にしたら忘れることが出来ないような凄惨たるものであった。
森の中の開けた一画に建てられた山小屋、いやおそらく山小屋だったものが……黒い炎に包まれているのである。
轟々と黒い炎は小屋を飲み込み、音を立てて小屋は崩れていく。
「これは……一体何が………?」
呆然としていた♂マジだったが近くに転がっていたスティレットに気がつき、そちらに駆け寄る。
炎が放つ熱気と物の焼ける異臭が♂マジを包み込むが、構わず落ちていたそれを拾い上げる。
「…このスティレットにこびり付いているのは……」
そのスティレットに付着していた液体が、今のこの光景の理由を……全てを、現実を物語っていた。
しばらく燃え盛る黒い炎を眺め考え込んでいた♂マジだったが考えが纏まったのか立ち上がり再び森の中へ歩み始めた。
「失念していたっ………このゲームに乗り気の奴が居るということをっ………!
浮かれていたっ………ただ漠然と仲間を集めればなんとかなると思っていたっ………!
夢を見ていた……俺はまだ夢を見ていたんだっ………甘い幻想をっ………!
だがこの場所は、この現実は……辛く、酷く、逃れることの出来ない地獄っ………!
それが現実………リアルなんだっ………」
♂マジは袋からコンパスを取り出すと、北を確認しその方向へ道を進める。
「だったら俺は…その現実でどうやって生き残ればいい………?
人を殺して生き残る……それが現実のこのゲームで………俺みたいな考えの奴はいないのか………?
そんなことはない………そんなことはないはずなんだっ……皆が皆乗り気だなんてことはっ……!」
マジシャンのローブの中にしまった血塗れたスティレットが未だにそんなことを夢見ている俺をせせら笑うように思えた。
『お前はまだ現実を直視していない。まだ甘い幻想をみているんだ。
今もどこかで誰かが殺し合い、その命を削りあっているに違いない。
なのに何故そんな幻想を抱く?何故くだらない夢想を捨てきれずにいる?
理想に溺れたものの末路は到底語れるものではないということはわかっているはずだ』
この血塗れたスティレットは、♂マジが唯一このゲームの中で得ることの出来た「現実」である。
自分と同じように仲間を求めている奴がいる、ということはあくまで♂マジの想像であって現実ではない。
「でも……それでも俺はっ………信じたいんだっ………!
たとえそれが幻想であっても……その結果死ぬようなことになったとしても………
冒険者達は……簡単に誰も信じることが出来なくなるような弱い奴らばかりじゃないってことをっ………!!」
♂マジは振り返り、先程の場所から発せられたものと思われる煙を眺めた。
既に炎は収まったのだろうか。
自分が見たときは黒い煙だったが今立ち上っている煙は白いものとなっていた。
「あの炎……相当熟練を積んだ者が魔法を放ったのか…それとも何か別の………」
色々と予想するもののどれも決定打に至るものにはならず、仕方なくその場を離れ北を目指すのであった。
「確か……平原へと出られる場所があったはずだ……人が隠れるなら森の中と思ったが………
平原に出れば人の姿を見ることが出来るかもしれないし向こうからこちらを見つけることもできるはず………
危険は伴うが……誰かに会わなければ気が狂ってしまいそうだっ………」
<♂マジ>
現在位置…(燃え尽きた小屋付近の森)C-7→北上しC-6の(丘の木立を臨める平原)へ向かうところ
所持品…ピンゾロサイコロ(6面とも1のサイコロ) 3個 青箱 1個 スティレット
備考…JOB50 仲間を求める
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