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062 K ---- 目を開けると夕暮れが広がっていた。 自分はいつ外に出たのかと♂騎士は一瞬戸惑った。 だが、すぐに単に小さな明かり取りの窓から夕日が差し込んでいただけな事に気付く。 だがその夕陽は強く視界をすっかりオレンジに染めていた。 バードとダンサーが出て行ってから浅い睡眠を繰り返していたが 今回はどうやら少し深く眠れたらしい。 といっても、まだ夕暮れ時なのだから実際は大して寝ていたわけでもないのだろう。 ただ、頭がすっきりしているだけだ。 そしてそのことは♂騎士にいくつかのことをはっきりと認識させていた。 一つは痛み。 バード達と話していたときはまだまだ朦朧としていてあまり感じなかったが この傷は到底かすり傷なんて言えるものではない。 激痛によって全身が歪むようにさえ感じられる。 確かに死ぬほどの傷ではないが、死なないのと痛みが無いのは当然だが同義ではない。 「くそっ…なんだってんだよ」 毒づいてみるが、喋るとどこが痛いかを発見できただけだった。 もう一つは恐怖。 夜の帳が落ちようとしている今になって♂騎士はようやく恐怖していた。 自分にこの傷をつけたのはモンスターではない。同じ人間なのだ。 今まで騎士として生きてきて、「人間」とは常に守るべきか弱い味方だった。 だが違った。それは違ったのだ。 自分以外の人間は自分を殺すかもしれない。 あの♂ローグはそんな事実などとうに受け入れていたに違いない。 自分の知っている人間が自分を殺すことだってありうるんだ。 そして傍らでまだ眠っている♀プリの存在に気付き、ふと目をやる。 いつもと同じ寝顔。すこし疲れているように見える・・・ 少し弱くなった夕陽の赤が♀プリの上でゆらめく。 不意に違和感を感じ♂騎士は♀プリから目をそらす。 何か、何かすごく嫌な感じがした。 一瞬、♀プリがまったく見知らぬ人間のように見えた。 ♂騎士の理性が必死にその「嫌な感じ」を頭の隅に追いやろうとする。 だがその嫌な感じはいつの間にか頭から抜け出てきて悪寒となって♂騎士の身体を包む。 (何考えてんだよっ、俺は。こいつに関して何も心配する必要なんて無いじゃねーか。  こいつは俺が転職してきたときに付け込んできた性悪で、父親は有名な騎士で、おれはすっかり頭が上がらないけど  それでもおれはこいつとパートナーを組んでやってきたんだ。  こいつだって、なんだかんだで俺にくっついてやってきたわけで・・・  温室育ちのお嬢様だけど、役に立つときもあるし!!  だから、だから、だから・・・・) 俺はこいつを信用してる。体の痛みをこらえながらそう口に出したつもりだった。 だが、震える♂騎士の口からは出た言葉はそれとは違った 「オレハ・コイツガ・オソロシイ」 ・・・夕焼けは先刻までのその強烈な赤を徐々に闇色に変えて小屋の中に進入してきていた。 自分は今何を言ったのだろう? 何か変なことを口走ったような気もするし、当然のことを口にしてみただけの気もする。 だが、♂騎士の身体にまとわりついていた悪寒は嘘のように消えていた。 そこで、♂騎士は自分の横に置かれている自分の荷物に気付いた。 いきなりあんなことがあったせいで開けそびれていたものだ。 軋む体を起こし、一つの青箱に手をかける。 出てきたのはいつも♂騎士が扱っているものに比べればごくごく小さな金属。ナイフだった。 鞘から刀身を取り出してみる。 もうわずかしか残っていない夕焼けの残骸を反射してぼうっと光る。 ♂騎士はその今にもプツンと音を立てて切れてしまいそうな弱々しい光を見つめる。 「ん・・・んー」 ナイフに反射された光が差したのだろうか。♀プリが目を覚ました。 「あ、おはよーって、起きたんだ! 良かった!! もう目を覚まさないかと思ったんだよ!?」 そう言って♀プリは涙目で♂騎士に抱きつく。 薄暗い室内に鮮血が飛び散る。 ♂騎士の握り締めたナイフが♀プリの心臓を刺し貫いていた。 「なん…で…? こんな……」 最後まで喋りきる前に♀プリは事切れていた。 だが、たとえもう少し生きながらえることが出来ていたとしても何も変わらなかっただろう。 ♂騎士にも自分が何故そんなことをしたかうまく理解できていなかった。 ただ一つ確かなことは、♂騎士は視界の中に自分以外のものがいなくなったことに たとえようの無い安堵感を覚えていたことだけ。 こうして騎士は守るべきものを失い夜に堕ち―― <♂騎士 現在位置:森の中の小屋 所持品:S3ナイフ、青箱1個 備考:怪我はなんとか動ける程度、マーダーとなったわけではない?>  ♀プリースト 現在位置:森の中の小屋 所持品:S1少女の日記 青箱1個 備考:死亡> <残り41人> | [[戻る>2-061]] | [[目次>第二回目次]] | [[進む>2-063]] |
062 K ---- 目を開けると夕暮れが広がっていた。 自分はいつ外に出たのかと♂騎士は一瞬戸惑った。 だが、すぐに単に小さな明かり取りの窓から夕日が差し込んでいただけな事に気付く。 だがその夕陽は強く視界をすっかりオレンジに染めていた。 バードとダンサーが出て行ってから浅い睡眠を繰り返していたが 今回はどうやら少し深く眠れたらしい。 といっても、まだ夕暮れ時なのだから実際は大して寝ていたわけでもないのだろう。 ただ、頭がすっきりしているだけだ。 そしてそのことは♂騎士にいくつかのことをはっきりと認識させていた。 一つは痛み。 バード達と話していたときはまだまだ朦朧としていてあまり感じなかったが この傷は到底かすり傷なんて言えるものではない。 激痛によって全身が歪むようにさえ感じられる。 確かに死ぬほどの傷ではないが、死なないのと痛みが無いのは当然だが同義ではない。 「くそっ…なんだってんだよ」 毒づいてみるが、喋るとどこが痛いかを発見できただけだった。 もう一つは恐怖。 夜の帳が落ちようとしている今になって♂騎士はようやく恐怖していた。 自分にこの傷をつけたのはモンスターではない。同じ人間なのだ。 今まで騎士として生きてきて、「人間」とは常に守るべきか弱い味方だった。 だが違った。それは違ったのだ。 自分以外の人間は自分を殺すかもしれない。 あの♂ローグはそんな事実などとうに受け入れていたに違いない。 自分の知っている人間が自分を殺すことだってありうるんだ。 そして傍らでまだ眠っている♀プリの存在に気付き、ふと目をやる。 いつもと同じ寝顔。すこし疲れているように見える・・・ 少し弱くなった夕陽の赤が♀プリの上でゆらめく。 不意に違和感を感じ♂騎士は♀プリから目をそらす。 何か、何かすごく嫌な感じがした。 一瞬、♀プリがまったく見知らぬ人間のように見えた。 ♂騎士の理性が必死にその「嫌な感じ」を頭の隅に追いやろうとする。 だがその嫌な感じはいつの間にか頭から抜け出てきて悪寒となって♂騎士の身体を包む。 (何考えてんだよっ、俺は。こいつに関して何も心配する必要なんて無いじゃねーか。  こいつは俺が転職してきたときに付け込んできた性悪で、父親は有名な騎士で、おれはすっかり頭が上がらないけど  それでもおれはこいつとパートナーを組んでやってきたんだ。  こいつだって、なんだかんだで俺にくっついてやってきたわけで・・・  温室育ちのお嬢様だけど、役に立つときもあるし!!  だから、だから、だから・・・・) 俺はこいつを信用してる。体の痛みをこらえながらそう口に出したつもりだった。 だが、震える♂騎士の口からは出た言葉はそれとは違った 「オレハ・コイツガ・オソロシイ」 ・・・夕焼けは先刻までのその強烈な赤を徐々に闇色に変えて小屋の中に進入してきていた。 自分は今何を言ったのだろう? 何か変なことを口走ったような気もするし、当然のことを口にしてみただけの気もする。 だが、♂騎士の身体にまとわりついていた悪寒は嘘のように消えていた。 そこで、♂騎士は自分の横に置かれている自分の荷物に気付いた。 いきなりあんなことがあったせいで開けそびれていたものだ。 軋む体を起こし、一つの青箱に手をかける。 出てきたのはいつも♂騎士が扱っているものに比べればごくごく小さな金属。ナイフだった。 鞘から刀身を取り出してみる。 もうわずかしか残っていない夕焼けの残骸を反射してぼうっと光る。 ♂騎士はその今にもプツンと音を立てて切れてしまいそうな弱々しい光を見つめる。 「ん・・・んー」 ナイフに反射された光が差したのだろうか。♀プリが目を覚ました。 「あ、おはよーって、起きたんだ! 良かった!! もう目を覚まさないかと思ったんだよ!?」 そう言って♀プリは涙目で♂騎士に抱きつく。 薄暗い室内に鮮血が飛び散る。 ♂騎士の握り締めたナイフが♀プリの心臓を刺し貫いていた。 「なん…で…? こんな……」 最後まで喋りきる前に♀プリは事切れていた。 だが、たとえもう少し生きながらえることが出来ていたとしても何も変わらなかっただろう。 ♂騎士にも自分が何故そんなことをしたかうまく理解できていなかった。 ただ一つ確かなことは、♂騎士は視界の中に自分以外のものがいなくなったことに たとえようの無い安堵感を覚えていたことだけ。 こうして騎士は守るべきものを失い夜に堕ち―― <♂騎士 現在位置:森の中の小屋 所持品:S3ナイフ、青箱1個 備考:怪我はなんとか動ける程度、マーダーとなったわけではない?>  ♀プリースト 現在位置:森の中の小屋 所持品:S1少女の日記 青箱1個 備考:死亡> <残り41人> ---- | [[戻る>2-061]] | [[目次>第二回目次]] | [[進む>2-063]] |

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