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022.時計塔の少女 ----    遠くに、鳥の声が聞こえる。太陽は見えない。  それは、きっここの空が、作り物だからなのだろう。  何処までも不自然に青い空は、地上の少女を皮肉げに笑っていた。  ふらふらと、彼女…アラームは森の切れ目を通る、比較的広い道を歩いていた。  バドスケさん…時計塔の皆…少女は、そんなことを考えていた。  あの後、何か回りが騒がしくなったけれど、隣に居たバドスケが、 見るな、と叫んで手で彼女の顔を覆ったから、よく判らない。  けれど、何があったのかは、なんとなくわかっていた。頭の中では。  殺しあえ。あの女性は、そんなことを言っていた。  けれど、そんなことが出来る訳がない。  それよりも、ここは何処なのだろう?  時計塔で、いつの様に過ごして、何時ものように皆とご飯を食べて、お布団に包まって、それだけなのに。  気がついたら、あの女の人がいた場所に座らされていた。  頭の中が、ぐしゃぐしゃとして、何もかもが良く判らなかった。 「えぅ…」  寂しさと、不安と、それから恐怖に蝕まれてじわじわと、涙がにじんでくる。  それを、ごしごしと拭いながら、続いていく道をとぼとぼと行く。  傍目には、少女の姿は、両親とはぐれた迷子のように写る事だろう。  あるいは、丁度良い的に。か弱い羊に。  彼女のそばには、誰も居ない。  厳しいけれど優しい管理者も。綺麗で面倒見のいいライドワードも。  意地悪だけど、本当は優しいバースリーも。オウル先生も、パンクも。  荒武隊の皆も。  そして、バドスケも。 「バドスケさぁん…」  彼女は、もうこれで口にするのが幾度目かになる詩人の名を呼んだ。  けれど、それは空気に溶けて直ぐに消えた。  ざわざわと、風に吹かれて木々までが、その幼い少女を嘲笑う。  諦めてしまえ、投げ出してしまえとそよぐ草は囁きかける。  ぐすぐすと、鼻を鳴らし、しかしそれでも歩き続ける。  彼女の知る詩人は、光に包まれた後、隣に居なかった。  唯、アラームは広い草原の丘の上に居た。この道は、その近くにあった。  そして、その上を歩き始め…今に至る。  …あるいは、それは少女のサガなのかもしれない。  唯、ひたすらに見果てぬ楽園を目指して歩き続ける。  少女は知らず、自分の歩いている道の先に、何かを見出しているのだろう。  けれど、小さなサンダルに包まれただけの少女の足にとっては、 楽園も、この道の先にあるかも知れないものも、遥かに遠いものだった。  そして、その肩に下げられた鞄は、彼女にとっては余りにも重い枷だ。 「あうっ!!」  小石に、アラームは躓く。 「ぅぅ…」  しかし、躓いても彼女は立ち上がる。  再び流れ始めた涙を、腕でふき取って。  少女は、また、道を歩き始める。 <アラームたん 取得物不明> <参照先:時計塔スレ> ---- | 戻る | 目次 | 進む | | [[021]] | [[目次]] | [[023]] |
022.時計塔の少女 ----    遠くに、鳥の声が聞こえる。太陽は見えない。  それは、きっとこの空が、作り物だからなのだろう。  何処までも不自然に青い空は、地上の少女を皮肉げに笑っていた。  ふらふらと、彼女…アラームは森の切れ目を通る、比較的広い道を歩いていた。  バドスケさん…時計塔の皆…少女は、そんなことを考えていた。  あの後、何か回りが騒がしくなったけれど、隣に居たバドスケが、 見るな、と叫んで手で彼女の顔を覆ったから、よく判らない。  けれど、何があったのかは、なんとなくわかっていた。頭の中では。  殺しあえ。あの女性は、そんなことを言っていた。  けれど、そんなことが出来る訳がない。  それよりも、ここは何処なのだろう?  時計塔で、いつの様に過ごして、何時ものように皆とご飯を食べて、お布団に包まって、それだけなのに。  気がついたら、あの女の人がいた場所に座らされていた。  頭の中が、ぐしゃぐしゃとして、何もかもが良く判らなかった。 「えぅ…」  寂しさと、不安と、それから恐怖に蝕まれてじわじわと、涙がにじんでくる。  それを、ごしごしと拭いながら、続いていく道をとぼとぼと行く。  傍目には、少女の姿は、両親とはぐれた迷子のように写る事だろう。  あるいは、丁度良い的に。か弱い羊に。  彼女のそばには、誰も居ない。  厳しいけれど優しい管理者も。綺麗で面倒見のいいライドワードも。  意地悪だけど、本当は優しいバースリーも。オウル先生も、パンクも。  荒武隊の皆も。  そして、バドスケも。 「バドスケさぁん…」  彼女は、もうこれで口にするのが幾度目かになる詩人の名を呼んだ。  けれど、それは空気に溶けて直ぐに消えた。  ざわざわと、風に吹かれて木々までが、その幼い少女を嘲笑う。  諦めてしまえ、投げ出してしまえとそよぐ草は囁きかける。  ぐすぐすと、鼻を鳴らし、しかしそれでも歩き続ける。  彼女の知る詩人は、光に包まれた後、隣に居なかった。  唯、アラームは広い草原の丘の上に居た。この道は、その近くにあった。  そして、その上を歩き始め…今に至る。  …あるいは、それは少女のサガなのかもしれない。  唯、ひたすらに見果てぬ楽園を目指して歩き続ける。  少女は知らず、自分の歩いている道の先に、何かを見出しているのだろう。  けれど、小さなサンダルに包まれただけの少女の足にとっては、 楽園も、この道の先にあるかも知れないものも、遥かに遠いものだった。  そして、その肩に下げられた鞄は、彼女にとっては余りにも重い枷だ。 「あうっ!!」  小石に、アラームは躓く。 「ぅぅ…」  しかし、躓いても彼女は立ち上がる。  再び流れ始めた涙を、腕でふき取って。  少女は、また、道を歩き始める。 <アラームたん 取得物不明> <参照先:時計塔スレ> ---- | 戻る | 目次 | 進む | | [[021]] | [[目次]] | [[023]] |

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