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085 暗殺者への試練【定時放送後~夜】 ---- ――お前はもっと冷徹になり切れ。    そうすれば、お前は強くなる 月、か。俺達暗殺者の歩く世界には不要の産物なんだがな。頭上に広がる果てなき闇より己を照らす真円を見上げ、♂アサシンは自嘲した。 視線を落とすと、木の下で横になっている♀ノービスの姿。いろいろな事があって流石に疲れたのだろう、すうすうと暢気な寝息が聴こえてくる。支給された鞄を枕に、まるで緊張感のない寝顔。時々むにゃむにゃと何か呟くが、よく聴き取れない。 ・・・やれやれだ。 ♂アサシンは、思考の迷宮を彷徨っていた。 無防備だな。本当に。このゲームじゃあ寝込みを襲われたら、その時点でズィ・エンドなんだぜ。 いや何を言っている、俺がいるからに決まってるだろう。俺が傍にいるから、コイツはこんな場所でも安心して眠れてるんだ。 そうじゃねぇ、少しゆっくり考える時間が欲しいからと、寝かしつけたのは俺だ。・・・最も、自分が殺した♀シーフの名を読み上げるあの声を聴かずに済んだのは結果的には良かったんじゃあないか。 ・・・だめだ。 俺はいつからこんな、甘い男になった。 マスターが俺に何をさせたかったのか。それは・・・解る。 しかしその♀ノービスは、俺の生きる意志となった。 こいつの為に――ひいては己の為だけどな、俺はあそこで生き延びた。 それを消すということは、俺の何を否定することになるのか・・・・・・? ・・・それも違う。根本的に俺は間違っている。 覚悟など要らなかった筈なのだ。 暗殺者にとって全ては生と死の延長線上に過ぎぬ。 捨て去るべきは感情、死を畏れた事それ自体が過ち。 ならば、その原因を作り出したのは―― 間違いない、暗殺者としてこのままではいけない事は解る。 しかし今の俺を作ったのは――とまではいかずとも、確実にこいつに影響は受けているわけで。 俺はこいつを守りたい? ・・・答が出せない時点でスデに暗殺者失格なんだろうが、この小娘が俺の中で少し特殊な存在になろうとしているのは確かなわけで。 こうなることを・・・見越してたのかよ、マスター? ・・・・・・だから俺は、こいつを殺せば・・・こいつを殺すことさえできれば、俺は、暗殺者として―― このままじゃあ、お前はそこで殺される そうすれば・・・その子供(ガキ)もどうせいずれは、死ぬんだぜ 利用しようと思って生かしてただけなんだろ? 今こそ、手前を生かす為に利用しろよ ・・・・・・ロリコン、ですか? 「違うッ!」 条件反射で叫び。そして、眼が合った。 ♀ノービスはたった今目を覚ましたばかりなのだろう、未だ眠そうに薄目で♂アサシンのほうを見つめていた。 瞬間、雪崩れ込む理性と暗殺者としての本能。 ――俺は暗殺者こいつを守る殺すのみ護る為に戦う俺はもっと冷徹になれ利用できるんじゃないかこいつは殺す死なれるのは嫌だ それはどちらも♂アサシンにとってはかろうじて残っていた程度のものに過ぎなかったが、 ――殺すなんで俺がこんなガキに血を吸ってねぇな最近生き延びろお前は殺す守り切れる保証はねぇならば俺は暗殺者として俺は殺す殺す殺せ護らせろ 彼の中で一番最後まで残っていた感情は・・・・・・、 ――俺は、ロリコンじゃねぇ <♂アサシン><現在位置:草原地帯、小さな木の下(F-6)> <所持品:フード[S]、レッドジェムストーン×1、未開封青箱×2> <スキル:クローキングLv10> <備考:暗殺者としてひと皮剥けるべく♀ノービスを殺すか逡巡。そして・・・> <状態:葛藤> <♀ノービス><現在位置:草原地帯、小さな木の下(F-6)> <所持品:ソード、未開封青箱×1> <スキル:死んだふり> <外見:ノビデフォ金髪> <状態:寝起き> ---- | [[戻る>2-084]] | [[目次>第二回目次]] | [[進む>2-086]] |
085 暗殺者への試練【定時放送後~夜】 ---- ――お前はもっと冷徹になり切れ。     そうすれば、お前は強くなる 月、か。俺達暗殺者の歩く世界には不要の産物なんだがな。頭上に広がる果てなき闇より己を照らす真円を見上げ、♂アサシンは自嘲した。 視線を落とすと、木の下で横になっている♀ノービスの姿。いろいろな事があって流石に疲れたのだろう、すうすうと暢気な寝息が聴こえてくる。支給された鞄を枕に、まるで緊張感のない寝顔。時々むにゃむにゃと何か呟くが、よく聴き取れない。 ・・・やれやれだ。 ♂アサシンは、思考の迷宮を彷徨っていた。 無防備だな。本当に。このゲームじゃあ寝込みを襲われたら、その時点でズィ・エンドなんだぜ。 いや何を言っている、俺がいるからに決まってるだろう。俺が傍にいるから、コイツはこんな場所でも安心して眠れてるんだ。 そうじゃねぇ、少しゆっくり考える時間が欲しいからと、寝かしつけたのは俺だ。・・・最も、自分が殺した♀シーフの名を読み上げるあの声を聴かずに済んだのは結果的には良かったんじゃあないか。 ・・・だめだ。 俺はいつからこんな、甘い男になった。 マスターが俺に何をさせたかったのか。それは・・・解る。 しかしその♀ノービスは、俺の生きる意志となった。 こいつの為に――ひいては己の為だけどな、俺はあそこで生き延びた。 それを消すということは、俺の何を否定することになるのか・・・・・・? ・・・それも違う。根本的に俺は間違っている。 覚悟など要らなかった筈なのだ。 暗殺者にとって全ては生と死の延長線上に過ぎぬ。 捨て去るべきは感情、死を畏れた事それ自体が過ち。 ならば、その原因を作り出したのは―― 間違いない、暗殺者としてこのままではいけない事は解る。 しかし今の俺を作ったのは――とまではいかずとも、確実にこいつに影響は受けているわけで。 俺はこいつを守りたい? ・・・答が出せない時点でスデに暗殺者失格なんだろうが、この小娘が俺の中で少し特殊な存在になろうとしているのは確かなわけで。 こうなることを・・・見越してたのかよ、マスター? ・・・・・・だから俺は、こいつを殺せば・・・こいつを殺すことさえできれば、俺は、暗殺者として―― このままじゃあ、お前はそこで殺される そうすれば・・・その子供(ガキ)もどうせいずれは、死ぬんだぜ 利用しようと思って生かしてただけなんだろ? 今こそ、手前を生かす為に利用しろよ ・・・・・・ロリコン、ですか? 「違うッ!」 条件反射で叫び。そして、眼が合った。 ♀ノービスはたった今目を覚ましたばかりなのだろう、未だ眠そうに薄目で♂アサシンのほうを見つめていた。 瞬間、雪崩れ込む理性と暗殺者としての本能。 ――俺は暗殺者こいつを守る殺すのみ護る為に戦う俺はもっと冷徹になれ利用できるんじゃないかこいつは殺す死なれるのは嫌だ それはどちらも♂アサシンにとってはかろうじて残っていた程度のものに過ぎなかったが、 ――殺すなんで俺がこんなガキに血を吸ってねぇな最近生き延びろお前は殺す守り切れる保証はねぇならば俺は暗殺者として俺は殺す殺す殺せ護らせろ 彼の中で一番最後まで残っていた感情は・・・・・・、 ――俺は、ロリコンじゃねぇ <♂アサシン><現在位置:草原地帯、小さな木の下(F-6)> <所持品:フード[S]、レッドジェムストーン×1、未開封青箱×2> <スキル:クローキングLv10> <備考:暗殺者としてひと皮剥けるべく♀ノービスを殺すか逡巡。そして・・・> <状態:葛藤> <♀ノービス><現在位置:草原地帯、小さな木の下(F-6)> <所持品:ソード、未開封青箱×1> <スキル:死んだふり> <外見:ノビデフォ金髪> <状態:寝起き> ---- | [[戻る>2-084]] | [[目次>第二回目次]] | [[進む>2-086]] |

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