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098 鍵の行方は【~放送後30分】 ---- ピ、ピ、ピ、ピ、ピ、ピ…… 痛い怖い助けて嫌だ痛い暗い怖い―― 誰もいなくなった小屋で、血まみれの肉塊ががたがた震えていた。 かつては工務大臣の位にあり、この殺人ゲームの実施を可能にした、ある意味の天才。 しかし冒険者達と共にこの場所に投げ込まれてみれば無力な一般人に過ぎなかった。 震えているのは恐怖からか、失血によって寒さを感じているからか、それとも両方か。もはやそれさえ分からない。 小屋の窓から投げ込まれる前に、急所を外してさんざん切りつけられた。 両眼も潰され、右脚の腱まで切られて逃げられなくされた。 寒い痛い誰か助けてくれ畜生助けてくれないなら死んじまえ―― 死ね…?死…死、死にたくない ゲームへの参加が彼への制裁なのは分かっていた。 最後まで生き残ったとしてもGMに殺されるだろう。 だから他の奴に秘密を教えて一緒に連れ出してもらおうと思った。 なのに、GMジョーカーは『あなたの首輪は他の首輪と一定距離を一定時間保つと爆発しま~す♪どれぐらいかはヒ・ミ・ツ』などと言った。 だから逃げ回った。 ――嘘だった。 切り刻まれている間、あんなに近くにいたのに爆発しなかった。 畜生畜生畜生嘘つきめ地獄へ堕ちろ 彼は♂ローグを呪いGMジョーカーを呪い女王イゾルデを呪い神を呪った。 島にいる者全員を呪い、世界の全てを呪った。 そして あの女、あの女だっ!私じゃないのにっ! 彼がこの島へ来ることとなった元凶を呪った。 一ヶ月と少し前。 前回のゲームが開催される数日前、彼は行きつけのバーに立ち寄った。 そして初めて見る顔を見つけた。 隅のスツールで1人静かに飲む女性。 うつむき加減の顔は長い髪に隠れてよく見えなかったが、かなりの美人に思えた。 バーテンダーに目顔で尋ねても軽く肩をすくめるだけの返事が返る。 しばらくちらちらとそちらを気にしつつ、連れでも来るのかと待ってみても一向にその様子がない。 次第に回ってきた酔いに助けられ、彼はついに声を掛けてみることにした。 『一杯おごらせてもらえますか?』 芝居で覚えた通りの、何のひねりもないセリフ回し。だが、 『…ありがとうございます』 思いがけず涼やかな声と哀しげな笑顔が返り、彼の心臓は大きく高鳴った。 酔っていた分と女慣れしていない分を差し引いても、相当な美女だった。と思う。 高まる期待を押さえつつ、徐々に身の上を訊ねると、どうも長いつき合いの友人を失いそうらしい。 恋愛経験の少ない彼にも分かるほどの大チャンスだった。 『相談に乗りますよ』 またも工夫のカケラもないセリフだったが、よほど困っているのか潤んだ目で見つめ、 『でも――』 一瞬離れた席の客やバーテンダーに視線を向けて口ごもる。 よほど人前では言いにくい話らしい。 彼はそこで手を引くべきだった。ワケありにも程がある。仮にも大臣がそんなことに首を突っ込んではいけない。 だが、彼はこう言った。 『個室を用意してくれ』 高級な酒場には密談や密会に適した小部屋がある。 そこを借りた工務大臣は、なかなか事情を話そうとしない女性の手を取って 『必ず力になります』 とこう言った。 その言葉にひとしずくの涙をこぼし、彼女は…友人がBR法の適用を受けたとうち明けた。 あまりの付合に、さすがに返答に窮する。 『やっぱり、ダメなんですね』 彼の絶句に絶望を悟り、女性は打ちひしがれた風情で珠の涙を流した。 そしていつしか彼の肩に顔を埋めた女性を慰めるため、彼はついに口を滑らせた。 『生き残る可能性はあります』 表のルールと隠しルールを説明すると、女性はすがりつくような、尊敬するような瞳で見上げてきた。 その瞳に惹き込まれた彼は、場所をバーの個室から宿のベッドへ移し、腕の中の女に導かれるまま秘密を明かしてしまった。 ――首輪に仕掛けられているのはたった2つの呪い、振動リンクとリンク切れ爆破なんだ。 振動リンクって言うのは首輪と対応するジェムストーンが同じ振動をする仕掛けでね。 着用者の喉の振動…つまり声と脈拍を常に伝えている。 もちろんジェムストーンはGMって呼ばれるゲーム管理者が握っているから、迂闊なことはしゃべっちゃいけないし、首輪を着けている限り死んだ振りもできない。 リンク切れ爆破っていうのは文字通りの物だよ。 振動リンクの術が切れた瞬間に首輪が爆発する。 管理者側が爆破したいときはジェムストーンを割るだけでいいし、首輪の方を外したり破壊してもリンクが切れるから爆発する。リンクの効かない距離へ逃げても同じだ。 しかも爆発力は首輪に封じられているわけだから、単純にディスペルしようとするとそのエネルギーが解放されて爆発したのと同じ結果になる。 外すつもりならその順序とエネルギーの逃がし方を考える必要があるね。 え?位置の確認やスキルの封印はどうしたかって? 首輪1つにそこまでいろいろ詰め込めないよ。 位置確認は配られた地図の方に仕掛けがある。 あの地図は常に管理本部の大地図盤と通信して、自分の方向と距離を確認している。 そして同じ魔法で大地図の方にもそれぞれの場所が表示される。 首輪を警戒することはあっても、便利な道具は警戒しないだろう? 万一首輪を外せても、地図を持って行動している限り生きてるってばれるんだ。 それから封印なんてされていないよ。 冒険者の訓練砦って知ってるかい?あの中では、さまざまなスキルが制限されたり禁止されていたんだ。 その装置を四組まとめて仕掛けただけさ。後退阻止機能とか切ってね。 本来はダメージスキルだけを弱める装置だけど、四基もあるからダメージ回復力や人外の能力まで制限してる。 特にその両方に該当する神の力は極端に働きにくくなったらしいよ。 つまり首輪を外しても、島にいる限り力は戻らない。 GM? ああ、彼らは女王陛下の親衛隊だよ。 今言ったスキル制限を受けないようにする装備を身につけているから、島の中では無敵だけど外に出ればちょっと強いだけの普通の人間さ。 大事なのはここ。装備の能力は有効なんだ。 つまり少々の実力差は装備でひっくり返すことが出来る。 ただ抵抗力なんかも落ちてるから、ちょっとした呪いにも掛かりやすい。いわく付きのアイテムには注意しないとね――。 酔っていただけにしては随分明確にしゃべった物だ。 あるいは何か薬を使われたのかも知れない。 朝、女性の居ないベッドで目覚めた彼は真っ青になった。 あんな情報が参加者に知れ渡ってはゲームそのものが危うくなる。 いやいや待て待て。 彼は髪をかきむしる手を止めて首を振った。 第三回の参加者はすでに全員捕まるか出頭するかして、伝える時間はもうないはずだ。 なにしろイズルードから護送船が出るのは今日。船で数日掛かる距離なのだから当然だ。 つまり彼女には可哀想だが、友達はおそらく助からない。 そしてリークしたとばれる前に彼女を口止めすれば大丈夫なはずだ。 ところが一週間後、工務大臣の楽観は裏切られた。 第三回のゲームはそれまでの二回からは想像もつかないほど低調な物で、GMが数名の命を直接奪うなどという事態まで起きた。 その結果、何らかの内部問題があったのではないかと密かに監査が行われ…工務大臣の怪しい行動が浮かび上がった。 彼は拷問係が拍子抜けするほどあっさりと口を割った。 ただし、第三回に起きた問題が彼のせいではないことも明らかになった。 第三回の問題はあからさまに逆らう者の多かったことである。彼が漏らしたほどの情報があれば、本当にゲームをひっくり返せたかも知れないのだ。 それが盗聴に気付いた様子もなく、単に時間切れで終わったのだから伝わっていたはずがない。 そこでその問題についての嫌疑はひとまず晴れた。 しかし、工務大臣の言う女性が参加者に接触しようとイズルードに来た形跡もなかった。 つまり彼女は嘘をついて彼からゲームの情報を聞き出した疑いがある。…何のために? 謎の女性の真意を確かめるべく、捜索が開始された。 だが、彼女の顔を見た者は彼とバーテンダーの2人だけ。 カウンターではずっとうつむいていたためバーテンダーははっきり見ておらず、工務大臣は酔いと時間が記憶を曖昧にしていた。 なかなか進展しないまま時間だけが過ぎ、やっと数日後、モロクでそれらしい死体が見つかった。 工務大臣も検分に連行されたが、それが彼女かどうか確信は持てなかった。 なにしろ蘇生不能なまでに頭部を破壊されていたのだ。顔など判別できるはずもない。 それでも彼はそれが例の女だと言い張った。もちろん保身のためである。 しかし、諜報部の将校は鼻で笑った。 『まあそれが事実としても、この女を使って秘密を聞き出させ、始末した黒幕が居ることになりますな』 ここはモロクだぞ。ただの物取りかもしれないじゃないか。 彼の言葉には冷笑だけが返った。 そして彼はここにいる。 ピ・ピ・ピ・ピピピピピピピピピピ 「死に、じにだくないよ――」 無様にもがき、震える彼に応えるのはどんどん速くなる首輪の音だけだった。 痛みにうずくまり、首の深手の応急処置を考えることもできないまま、 ピーーーーー 三十分が経過した。 ボンッ 誰にも看取られず、一国の大臣であった男は文字通り首を失った。 <工務大臣> <状態:首輪の爆発により死亡> <備考:島の秘密について誰かに語ったため島送りになった> <残り37名> ---- | [[戻る>代替2-097]] | [[目次>第二回目次]] | [[進む>2-099]] |
098 鍵の行方は【~放送後30分】 ---- ピ、ピ、ピ、ピ、ピ、ピ…… 痛い怖い助けて嫌だ痛い暗い怖い―― 誰もいなくなった小屋で、血まみれの肉塊ががたがた震えていた。 かつては工務大臣の位にあり、この殺人ゲームの実施を可能にした、ある意味の天才。 しかし冒険者達と共にこの場所に投げ込まれてみれば無力な一般人に過ぎなかった。 震えているのは恐怖からか、失血によって寒さを感じているからか、それとも両方か。もはやそれさえ分からない。 小屋の窓から投げ込まれる前に、急所を外してさんざん切りつけられた。 両眼も潰され、右脚の腱まで切られて逃げられなくされた。 寒い痛い誰か助けてくれ畜生助けてくれないなら死んじまえ―― 死ね…?死…死、死にたくない ゲームへの参加が彼への制裁なのは分かっていた。 最後まで生き残ったとしてもGMに殺されるだろう。 だから他の奴に秘密を教えて一緒に連れ出してもらおうと思った。 なのに、GMジョーカーは『あなたの首輪は他の首輪と一定距離を一定時間保つと爆発しま~す♪どれぐらいかはヒ・ミ・ツ』などと言った。 だから逃げ回った。 ――嘘だった。 切り刻まれている間、あんなに近くにいたのに爆発しなかった。 畜生畜生畜生嘘つきめ地獄へ堕ちろ 彼は♂ローグを呪いGMジョーカーを呪い女王イゾルデを呪い神を呪った。 島にいる者全員を呪い、世界の全てを呪った。 そして あの女、あの女だっ!私じゃないのにっ! 彼がこの島へ来ることとなった元凶を呪った。 一ヶ月と少し前。 前回のゲームが開催される数日前、彼は行きつけのバーに立ち寄った。 そして初めて見る顔を見つけた。 隅のスツールで1人静かに飲む女性。 うつむき加減の顔は長い髪に隠れてよく見えなかったが、かなりの美人に思えた。 バーテンダーに目顔で尋ねても軽く肩をすくめるだけの返事が返る。 しばらくちらちらとそちらを気にしつつ、連れでも来るのかと待ってみても一向にその様子がない。 次第に回ってきた酔いに助けられ、彼はついに声を掛けてみることにした。 『一杯おごらせてもらえますか?』 芝居で覚えた通りの、何のひねりもないセリフ回し。だが、 『…ありがとうございます』 思いがけず涼やかな声と哀しげな笑顔が返り、彼の心臓は大きく高鳴った。 酔っていた分と女慣れしていない分を差し引いても、相当な美女だった。と思う。 高まる期待を押さえつつ、徐々に身の上を訊ねると、どうも長いつき合いの友人を失いそうらしい。 恋愛経験の少ない彼にも分かるほどの大チャンスだった。 『相談に乗りますよ』 またも工夫のカケラもないセリフだったが、よほど困っているのか潤んだ目で見つめ、 『でも――』 一瞬離れた席の客やバーテンダーに視線を向けて口ごもる。 よほど人前では言いにくい話らしい。 彼はそこで手を引くべきだった。ワケありにも程がある。仮にも大臣がそんなことに首を突っ込んではいけない。 だが、彼はこう言った。 『個室を用意してくれ』 高級な酒場には密談や密会に適した小部屋がある。 そこを借りた工務大臣は、なかなか事情を話そうとしない女性の手を取って 『必ず力になります』 とこう言った。 その言葉にひとしずくの涙をこぼし、彼女は…友人がBR法の適用を受けたとうち明けた。 あまりの付合に、さすがに返答に窮する。 『やっぱり、ダメなんですね』 彼の絶句に絶望を悟り、女性は打ちひしがれた風情で珠の涙を流した。 そしていつしか彼の肩に顔を埋めた女性を慰めるため、彼はついに口を滑らせた。 『生き残る可能性はあります』 表のルールと隠しルールを説明すると、女性はすがりつくような、尊敬するような瞳で見上げてきた。 その瞳に惹き込まれた彼は、場所をバーの個室から宿のベッドへ移し、腕の中の女に導かれるまま秘密を明かしてしまった。 ――首輪に仕掛けられているのはたった2つの呪い、振動リンクとリンク切れ爆破なんだ。 振動リンクって言うのは首輪と対応するジェムストーンが同じ振動をする仕掛けでね。 着用者の喉の振動…つまり声と脈拍を常に伝えている。 もちろんジェムストーンはGMって呼ばれるゲーム管理者が握っているから、迂闊なことはしゃべっちゃいけないし、首輪を着けている限り死んだ振りもできない。 リンク切れ爆破っていうのは文字通りの物だよ。 振動リンクの術が切れた瞬間に首輪が爆発する。 管理者側が爆破したいときはジェムストーンを割るだけでいいし、首輪の方を外したり破壊してもリンクが切れるから爆発する。リンクの効かない距離へ逃げても同じだ。 しかも爆発力は首輪に封じられているわけだから、単純にディスペルしようとするとそのエネルギーが解放されて爆発したのと同じ結果になる。 外すつもりならその順序とエネルギーの逃がし方を考える必要があるね。 え?位置の確認やスキルの封印はどうしたかって? 首輪1つにそこまでいろいろ詰め込めないよ。 位置確認は配られた地図の方に仕掛けがある。 あの地図は常に管理本部の大地図盤と通信して、自分の方向と距離を確認している。 そして同じ魔法で大地図の方にもそれぞれの場所が表示される。 首輪を警戒することはあっても、便利な道具は警戒しないだろう? 万一首輪を外せても、地図を持って行動している限り生きてるってばれるんだ。 それから封印なんてされていないよ。 冒険者の訓練砦って知ってるかい?あの中では、さまざまなスキルが制限されたり禁止されていたんだ。 その装置を四組まとめて仕掛けただけさ。後退阻止機能とか切ってね。 本来はダメージスキルだけを弱める装置だけど、四基もあるからダメージ回復力や人外の能力まで制限してる。 特にその両方に該当する神の力は極端に働きにくくなったらしいよ。 つまり首輪を外しても、島にいる限り力は戻らない。 GM? ああ、彼らは女王陛下の親衛隊だよ。 今言ったスキル制限を受けないようにする装備を身につけているから、島の中では無敵だけど外に出ればちょっと強いだけの普通の人間さ。 大事なのはここ。装備の能力は有効なんだ。 つまり少々の実力差は装備でひっくり返すことが出来る。 ただ抵抗力なんかも落ちてるから、ちょっとした呪いにも掛かりやすい。いわく付きのアイテムには注意しないとね――。 酔っていただけにしては随分明確にしゃべった物だ。 あるいは何か薬を使われたのかも知れない。 朝、女性の居ないベッドで目覚めた彼は真っ青になった。 あんな情報が参加者に知れ渡ってはゲームそのものが危うくなる。 いやいや待て待て。 彼は髪をかきむしる手を止めて首を振った。 第三回の参加者はすでに全員捕まるか出頭するかして、伝える時間はもうないはずだ。 なにしろイズルードから護送船が出るのは今日。船で数日掛かる距離なのだから当然だ。 つまり彼女には可哀想だが、友達はおそらく助からない。 そしてリークしたとばれる前に彼女を口止めすれば大丈夫なはずだ。 ところが一週間後、工務大臣の楽観は裏切られた。 第三回のゲームはそれまでの二回からは想像もつかないほど低調な物で、GMが数名の命を直接奪うなどという事態まで起きた。 その結果、何らかの内部問題があったのではないかと密かに監査が行われ…工務大臣の怪しい行動が浮かび上がった。 彼は拷問係が拍子抜けするほどあっさりと口を割った。 ただし、第三回に起きた問題が彼のせいではないことも明らかになった。 第三回の問題はあからさまに逆らう者の多かったことである。彼が漏らしたほどの情報があれば、本当にゲームをひっくり返せたかも知れないのだ。 それが盗聴に気付いた様子もなく、単に時間切れで終わったのだから伝わっていたはずがない。 そこでその問題についての嫌疑はひとまず晴れた。 しかし、工務大臣の言う女性が参加者に接触しようとイズルードに来た形跡もなかった。 つまり彼女は嘘をついて彼からゲームの情報を聞き出した疑いがある。…何のために? 謎の女性の真意を確かめるべく、捜索が開始された。 だが、彼女の顔を見た者は彼とバーテンダーの2人だけ。 カウンターではずっとうつむいていたためバーテンダーははっきり見ておらず、工務大臣は酔いと時間が記憶を曖昧にしていた。 なかなか進展しないまま時間だけが過ぎ、やっと数日後、モロクでそれらしい死体が見つかった。 工務大臣も検分に連行されたが、それが彼女かどうか確信は持てなかった。 なにしろ蘇生不能なまでに頭部を破壊されていたのだ。顔など判別できるはずもない。 それでも彼はそれが例の女だと言い張った。もちろん保身のためである。 しかし、諜報部の将校は鼻で笑った。 『まあそれが事実としても、この女を使って秘密を聞き出させ、始末した黒幕が居ることになりますな』 ここはモロクだぞ。ただの物取りかもしれないじゃないか。 彼の言葉には冷笑だけが返った。 そして彼はここにいる。 ピ・ピ・ピ・ピピピピピピピピピピ 「死に、じにだくないよ――」 無様にもがき、震える彼に応えるのはどんどん速くなる首輪の音だけだった。 痛みにうずくまり、首の深手の応急処置を考えることもできないまま、 ピーーーーー 三十分が経過した。 ボンッ 誰にも看取られず、一国の大臣であった男は文字通り首を失った。 <工務大臣> <状態:首輪の爆発により死亡> <備考:島の秘密について誰かに語ったため島送りになった> <残り37名> ---- | [[戻る>2-097]] | [[目次>第二回目次]] | [[進む>2-099]] |

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