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NG.教皇猊下の工作員 ---- パタン 狭い自室の扉をそっと閉じ、GM橘は寝床に就いた。 そして胸の上で手を組む。 (豊穣の女神フレイヤよ。御身に栄光あれ。また御身が代理人、教皇猊下の上に恩寵あれ。我ら御身が愛と豊穣の教えを遍く地上に広め奉らん。願わくば我らをよしみ賜わんことを) ここ数年来、決して口に出したことのない祈りを心の中で唱える。 どこで誰が聞いているか分からない。 それは諜報の道を歩んできた彼にとって当然の注意であった。 特に油断のならない相手を近くに置いているときは。 (おそらくジョーカーは私を疑っている) 工作員としての勘…というか人物評であった。 GMジョーカーは明らかに、自身と女王イゾルデ以外の一切を信用していない。 どこまで気付いているかはともかく、同僚である彼らGMメンバーも疑いの目で見ているはずだ。 別に不思議な話ではない。 GMジョーカーに限った話ではなく、親衛隊とか諜報部門の長というものは偏執狂でないと務まらないのだ。 だからGM橘は三流策士の皮をかぶった。 例えばゲームの参加者捕獲にも小手先の策を弄し、うまくいかないと力押しに逃げた。 あるいは歴史故事を持ち出し、現状に無理矢理当てはめて展開を予測した。 他の同僚は彼を鼻持ちならないインテリ馬鹿だと思っているだろう。 それでいい。 底が浅い、こいつは読み切ったと思えば油断するものだ。 (人のことは言えないか) 彼は苦笑した。 自分もGM森のことをただの筋肉馬鹿だと評しているではないか。 あれでも一応イゾルデの抜擢を受けてGMになったのだ。 脳筋も銭ボケも見せかけで、実はクレバーな可能性も皆無ではない。 (…まあ、さすがにそれはないか) 首を振り、ミッドガッツ王国で最後の仕事となるであろう策を反芻する。 この仕掛けが成功しようと失敗しようと、彼はここに居られなくなるだろう。 少なくともGMジョーカーがそれを許さないはずだ。 (ジョーカーとやり合ってまで残る意味はないしな) GM橘はGMジョーカーを甘く見てはいなかった。 GMジョーカーは彼やGM森のように政府系諸機関から抜擢されたわけではない。 にもかかわらず頭が切れ、腕も立つ。 普通ならば間違っても敵に回してはいけない種類の男だ。 でも、と彼は思う。 (それは奴の弱点でもある) GMジョーカーは有能な男だ。 だからこそ女王イゾルデの信頼を得ている。 しかしそれは自己への過信と他者への油断を生む。 GMジョーカーは政府出身ではない。 だからこそ冷酷なまでに女王最優先の判断が出来る。 しかしその反面、彼にはコネらしいコネがない。 どんな組織でも、多かれ少なかれ縄張り意識というものが存在する。 そしてそこには表に出ない情報が生まれる。 もちろんGMは全ての政府組織に必要な情報を提供するよう命じることが出来るが、そこにあると知らない物は要求しようがない。 かと言ってあらゆる情報に目を通すなど物理的に不可能だ。 つまり、GMジョーカーには伝わらない情報がある。 そして外務省に籍を置いていた彼にだけ知り得た、小さな情報があった。 もし仮にGMジョーカーの耳に入っていたとしても、取るに足りない情報として聞き流したかも知れないほどの。 『シュバルツバルド共和国のさる老政治家が後継者難』 だからどうした。 普通ならそう考える。 同盟国とはいえ他国の一政治家の話である。口を出すいわれはない。 だが、その話には続きがあった。 『同家系最後の男児は従姉妹筋の甥。誕生後すぐ母親と共に出奔』 もしやと思ったGM橘は本国に連絡を取った。 そしてシュバルツバルドもミッドガッツも掴んでいない彼らの行方を突き止めた。 当然だ。 出奔を手引きしたのが、アナベルツから送り込まれたシュバルツバルド方面工作員…GM橘の先輩だったのだ。 当時権勢を誇っていたその老政治家の力を削ぐために。 残念ながら、その親子はすでに鬼籍に入っていた。 しかし、出自を証明する証拠は工作員の手に残っている。 そこで同時期にミッドガッツに入った移民から条件に合う男子――幼い内に親を失った孤児で、目や髪の色が一致する冒険者――を選び出した。 それが♂騎士である。 GM橘は彼に催眠暗示をかけ、恐怖と共に出自に関する思い込みを植え付けた。 さらにGM森を引き込んで上辺の隠蔽工作を行い、ゲームに送り込んだ。 ♂騎士の調査報告には『移民の子、両親死去。係累なし』とだけ記してある。 紛れもない事実なのだ。いくら調べてもそこに嘘はない。 今頃、シュバルツバルド王国には彼の存在を知らせる手紙と、証拠の一部が届いているはずだ。 後継者を失った老政治家は、当然彼を引き取ろうと考えるだろう。 両親もおらず、実力のみで騎士叙勲を受けたほどの甥っ子なら、養子としては申し分ない。 さて、その大事な後継者がこのような殺人ゲームに送り込まれていると知ったら老政治家はどう考えるだろう? 女王イゾルデは、そしてGMジョーカーはどうするだろう? もし彼が生きて本土に戻ったならば、隣国からやってきた老政治家と共に女王イゾルデに暇乞いの挨拶をすることになるだろう。 普通に勝ち残ったのではあり得ないはずの、近距離での女王との対面が実現するわけだ。 そこで見事女王を討ち取れば文句無しの満点。 もちろんその可能性はそれほど高くあるまい。 失敗して殺されても別に構わないのだ。 その場合も、イゾルデの命を狙ったという事実と後継者を殺されたという遺恨が残る。 あるいは勝ち残ることなく、この島で無惨な死を遂げてもいい。 イゾルデ側に遺恨は生じないが、老政治家の失望と怒りはより大きくなるだろう。 つまり程度の差はあれ、どう転んでもミッドガッツ王国とシュバルツバルド共和国の間に不和の種がまかれる。 両国の不和はそのままアナベルツ皇国の利益となるだろう。 (猊下。御為にこの2国を共倒れさせてご覧に入れましょう) GM橘はうっすらと笑った。 <GM橘> 位置:不明 容姿:不明 所持品:不明 状態:正常 備考:アナベルツ皇国工作員 [[戻る>第二回NG]]

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