「028」(2005/11/01 (火) 14:31:50) の最新版変更点
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028.卵と
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♂ローグだ。森の中に居る。
腰には、一振りの剣。肩には、あの女が寄越したバックが吊ってある。
鬱蒼とした森の中で、気配を殺して潜みつつも、俺はさっきの自分の行動に首を捻っていた。
なんたって、殺さなかった?プロ南を跳ね回ってるポリンを潰すより、簡単だった筈だろうに。
ほんの少しでも、ツルギを握った手を前に押し出せば、それで終わりだった筈だ。
俺の手は、あの馬鹿の血で、真っ赤に染まっていただろう。
「まさか、馬鹿が空気感染したのか?」
ぼそっ、と呟く。
まぁ、さすがに馬鹿が病原性などと言うことは聞いたことがない。
と、一箇所に腰を落ち着けると急に腹が減ってきた。
本当の事をいうと…鳴子の様な罠を急いで仕掛けた方がいいんだろうが、面倒くさい。
鞄に手を突っ込み、ごそごそとやる。
「おいおい…こりゃ、本当に感染しちまったかもしれねぇなぁ」
だとしたら、由々しき事態だ。
その事実を肯定するかな様に、袋から出て着た手には、青箱。
すっかり、開けるのを忘れてしまっていたそれが、食料のかわりに引き出された。
手前の馬鹿さを笑いながら、それを開ける。
「…をい」
そして思わず、俺は中身に対して突っ込みを入れていた。
ちょんちょん、と指先で箱の中にいたそいつを突っつく。
「…む、むぅ」
箱の中に窮屈な格好で押し込まれていたそいつが呻いた。
寸詰まりの手足、ねじくれた角、それから親父ゆずりの鋭い鎌。
普通、バフォメットJrと呼ばれるMobが、青箱の中にはいた。
…というか、この箱。確実に空気穴も何も無いんだが。
物理的に、絶対子バフォが中に入らないと思われるし。
まぁ、そこは管理者脅威のメカニズム万歳、という奴だろう。
支給品、というからにはペットの類なのだろうが…
「というか、俺には自分の食料はあってもペットの分なんぞ無い。
なるほど。今日は山羊鍋か。久しぶりの肉…」
ぴゅん、とそんなことを言っている俺の目の前を横薙ぎに鎌が払った。
…少し、危なかった。しかし、これだけの速度を出せるとなると、子山羊といえども筋張って硬いかもしれない。
「ぬ、主は…ワシを食らうつもりかっ…!!」
肩で息をして、そいつは言う。
見た目より、頑丈なようだった。ますます、筋張ってる説が有力視される。
「冗談だよ」
言って、青箱ごと脇に放る。しかし、子バフォは、くるりと器用に空中で一回転し、着地してみせた。
そして…きょろきょろと周囲を見回し始める。何故か横で、支給品はその行動を繰り返していた。
一方の俺は、そいつにはすぐに興味を失って、懐を探り始める。記憶が確かなら、何本かタバコを突っ込んでいた筈だ。
「…すまぬが、ここが一体どこか教えてくれぬだろうか?」
漸く一本タバコを探り当て、しかし、肝心の火が無いことに気づき、
支給品のツルギで火花でも出せないものかと、枝っきれを与えられたチョコかヨーヨーの如く四苦八苦していた俺に、
そいつが、そんなことを尋ねかけてきた。
「んー…?知らねぇよ」
結局火が付かないまま、唾液で湿り始めたタバコをぷっ、と吐き出して言う。
子バフォは、不愉快そうに、空中に舞うそれを鎌で真っ二つにした。
「知らぬ、と言うことは無いだろう。なら、どうやってお主はここに来た?」
「拉致られて」
答えは、いたって簡潔だ。…そういえば、子バフォはユピテルが使えた筈だったっけ。
一瞬、俺は真っ二つになった煙草に、物欲しそうな目線を送った。
嗚呼…折角、火種のアテができたってのに。
「んー?どうした。白いぞお前?」
「…すまぬ。どういうことか、事の顛末を説明して欲しいのだが」
少し、俺は考える。もう一本、煙草が懐から転がり出て着た。
そいつを指に挟みながら、俺は言う。
「先ずは、木屑集めてくるから、そこにユピテル打ち込んでくれ。話は、それからだ」
とりあえず、他の全ての問題を棚上げにして、俺はニコチン補給を決行するのだった。
<♂ローグ 子バフォ一匹獲得?>
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