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028.卵と ----    ♂ローグだ。森の中に居る。  腰には、一振りの剣。肩には、あの女が寄越したバックが吊ってある。  鬱蒼とした森の中で、気配を殺して潜みつつも、俺はさっきの自分の行動に首を捻っていた。  なんたって、殺さなかった?プロ南を跳ね回ってるポリンを潰すより、簡単だった筈だろうに。  ほんの少しでも、ツルギを握った手を前に押し出せば、それで終わりだった筈だ。  俺の手は、あの馬鹿の血で、真っ赤に染まっていただろう。 「まさか、馬鹿が空気感染したのか?」  ぼそっ、と呟く。  まぁ、さすがに馬鹿が病原性などと言うことは聞いたことがない。  と、一箇所に腰を落ち着けると急に腹が減ってきた。  本当の事をいうと…鳴子の様な罠を急いで仕掛けた方がいいんだろうが、面倒くさい。  鞄に手を突っ込み、ごそごそとやる。 「おいおい…こりゃ、本当に感染しちまったかもしれねぇなぁ」  だとしたら、由々しき事態だ。  その事実を肯定するかな様に、袋から出て着た手には、青箱。  すっかり、開けるのを忘れてしまっていたそれが、食料のかわりに引き出された。  手前の馬鹿さを笑いながら、それを開ける。 「…をい」  そして思わず、俺は中身に対して突っ込みを入れていた。  ちょんちょん、と指先で箱の中にいたそいつを突っつく。 「…む、むぅ」  箱の中に窮屈な格好で押し込まれていたそいつが呻いた。  寸詰まりの手足、ねじくれた角、それから親父ゆずりの鋭い鎌。  普通、バフォメットJrと呼ばれるMobが、青箱の中にはいた。  …というか、この箱。確実に空気穴も何も無いんだが。  物理的に、絶対子バフォが中に入らないと思われるし。  まぁ、そこは管理者脅威のメカニズム万歳、という奴だろう。  支給品、というからにはペットの類なのだろうが… 「というか、俺には自分の食料はあってもペットの分なんぞ無い。 なるほど。今日は山羊鍋か。久しぶりの肉…」  ぴゅん、とそんなことを言っている俺の目の前を横薙ぎに鎌が払った。  …少し、危なかった。しかし、これだけの速度を出せるとなると、子山羊といえども筋張って硬いかもしれない。 「ぬ、主は…ワシを食らうつもりかっ…!!」  肩で息をして、そいつは言う。  見た目より、頑丈なようだった。ますます、筋張ってる説が有力視される。 「冗談だよ」  言って、青箱ごと脇に放る。しかし、子バフォは、くるりと器用に空中で一回転し、着地してみせた。  そして…きょろきょろと周囲を見回し始める。何故か横で、支給品はその行動を繰り返していた。  一方の俺は、そいつにはすぐに興味を失って、懐を探り始める。記憶が確かなら、何本かタバコを突っ込んでいた筈だ。 「…すまぬが、ここが一体どこか教えてくれぬだろうか?」  漸く一本タバコを探り当て、しかし、肝心の火が無いことに気づき、 支給品のツルギで火花でも出せないものかと、枝っきれを与えられたチョコかヨーヨーの如く四苦八苦していた俺に、 そいつが、そんなことを尋ねかけてきた。 「んー…?知らねぇよ」  結局火が付かないまま、唾液で湿り始めたタバコをぷっ、と吐き出して言う。  子バフォは、不愉快そうに、空中に舞うそれを鎌で真っ二つにした。 「知らぬ、と言うことは無いだろう。なら、どうやってお主はここに来た?」 「拉致られて」  答えは、いたって簡潔だ。…そういえば、子バフォはユピテルが使えた筈だったっけ。  一瞬、俺は真っ二つになった煙草に、物欲しそうな目線を送った。  嗚呼…折角、火種のアテができたってのに。 「んー?どうした。白いぞお前?」 「…すまぬ。どういうことか、事の顛末を説明して欲しいのだが」  少し、俺は考える。もう一本、煙草が懐から転がり出て着た。  そいつを指に挟みながら、俺は言う。 「先ずは、木屑集めてくるから、そこにユピテル打ち込んでくれ。話は、それからだ」  とりあえず、他の全ての問題を棚上げにして、俺はニコチン補給を決行するのだった。 <♂ローグ 子バフォ一匹獲得?> ---- | 戻る | 目次 | 進む | | [[027]] | [[目次]] | [[029]] |

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