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124 素敵な朝を ----  朝日に急かされて、私は目を覚ます。  何時もの一日がまた始まる、って心のどこかで信じながら。  けれど。この悪夢はまだ覚めていないらしい。  開いた眼に移るのは、プロンテラの町並みじゃなくて。  私のしたぼく──、子バフォでも無くて。  痩せた、黒い頭巾に半ば包まれた顔。  それから、朝日と海から吹く風に揺れている遠い木々だった。 「やあ、お早う」  と彼が悪ケミに言う。 「ん…おはよ」  寝ぼけた頭で答え、それから自分が見張りの途中で眠ってしまっていた事に悪ケミは気づいた。  さっ、と顔が青くなり、続いて言い訳が幾つも電光石火に閃いて、けれども自分が言い訳がとても下手だと言う事に思い至った。  頭がぐしゃぐしゃして──実際、手入れもせずに一日動き回ったのだ。どのような惨状になっているかなんて考えたくもなかった。 そこの所は貧乏極まるとは言え悪ケミもオンナノコである──兎も角、慌てふためいてしまう。 「あ、あああアンタっ!!な、何人の寝顔見てたのよぅっ!!失礼でしょうが!!」  結局出てきたのはそんな言葉のみ。ぽかん、とした目の忍者が彼女を見ている。  やがて、なんとも可笑しそうに僅か、彼は笑みを零した。 「元気そうでなによりだよ。兎も角、起きたのなら色々やりたい事があるんだけど、いいかな?」  それから。  支給されていた保存食と水で簡単な食事を採り、忍者と悪ケミはこれからの方針について話し合うことになっていた。  (余談だけれど、保存食は冒険者にもお馴染みの干し肉と乾パン。大変に味気ない代物だった)  開けないまま手元に残っていた忍者の青箱を開け──それは、二振りのグラディウスという時代がかった短剣だった。  互いにその短剣を一振りづつ配分し、これからについての論議が始まった。勿論、生き残る為、脱出する為に。  先ず悪ケミが考え付いたのは、勿論昨日発見した灯台に向う事。 「やっぱり灯台が気になるんだけど」 「そうだね。確かにその通りだよ。私もそれを考えてた」 「でしょー。やっぱ私冴えてるわ」  などと、得意げに言う悪ケミにしかし、忍者は真顔で。 「いや、でも出来るだけ気をつけた方がいいと思うんだ」  と切り返し、更に言葉を続ける。 「ほら、ここから灯台までは結構ある。それに、灯台って言うのは目立つからね。  人が集まってくるかもしれないし、それが私達と同じような人とは限らない」  すると、むっとした顔で悪ケミが、「何よ臆病ね」と言った。  それに忍者は「時には臆病になる事だって必用さ」と冗談っぽく答えたけれども、一転して真面目な顔をして。 「灯台までは出来るだけ安全に行きたいんだ。ほら、私は弱いからね。  それに、仮にあの灯台が、この島に幾つかあるだろう管理側の施設だったとしたら、まずそこに居る人たちとは戦闘になる」  『幾つかある』その言葉を聞いて、悪ケミは忍者に質問で返した。 「幾つか、って言ったわよね」 「うん。その通り」 「どうしてそんな事がわかるのよ?こう言うのは…ちょっとアレかもしれないけど。  私が主催者だったら、絶対この島の中には居ないわ」  それはそうだろう、と悪ケミは自らの答えに自分で太鼓判を押す。  考えてみれば──彼女にだって解るぐらい単純な理屈だ──参加者の中には、 かなり強力な武装を手にしている者だっているかもしれない。  どうせ死ぬと解っている以上、そんな彼、もしくは彼女が死に物狂いで反抗を試みないとも限らない。  だから自らに危害を加えられる危険を冒してまでこの島に居る利点は少ない。  その反抗をさせない為の首輪なのだろうが、どうせ死ぬのであれば些細な差だ…と思う。  しかし忍者は。 「うーん。百点中五十点、かな。半分は合ってるけど満点には遠いね」 「な、なによう」  これでも一応は錬金術師で理論畑では優秀だった悪ケミちゃん様、かなり手厳しい採点に些かブルー。 「こう考えてみよう。君は、この島に居る管理者こそが諸悪の根源だ、と思ってる。  が。実際のところ彼らだって、ある意味で言えば使い捨てなのさ。  幾ら管理者が叩かれた所で実際このゲームを主催した只一人の女王は尻尾切りするだけ。  それに、このゲームは──胸が悪くなる話だけどね、私が知っている限りじゃ島の中で監視する人間が絶対に必要なんだ」 「ど、どうしてよ?」 「このゲームはBR法に基づいて施行されてる──ここまでは誰だって調べれば解るけど。  だけど、ほら。元々が悪法だから私や君みたいな反対している人間だって少なくない。  私には無理だけど、情報漏洩は完全に防止できない以上、この首輪を無力化できる人間が居たとしても不思議じゃない。  本当に腕のいいアサシンやローグなら機密文書を盗み出す事だって、あるいは出来るだろうし、 何処かで誰かが秘密を漏らしてしまっているかもしれない、既に漏れてしまっているかもしれない。  第一、これは刑罰なんだから看守が居ない筈が無い。それも複数ね。  だからこそ、もしもの保険に参加者を管理側から迅速に排除できる様にしてある筈だよ」  彼は、酷く冷静な男だった。人殺しが出来なくなったアサシンにその特質が何の意味があるのかは兎も角として。  まくし立てる忍者にぽかん、と口を開ける悪ケミ。  それを見て、ぽりぽりと頬を掻いて忍者はわかり易く翻訳する事にした。 「兎も角、この島の中には管理側の人間が絶対に居て、それでそこに入ろうとしたら確実に戦闘になるから。  だから、それまでに余り大きなリスクを負いたくないんだ」  そう言うと悪ケミは一応は納得した様だったけれども、直ぐに新たな疑問を彼に投げかけてきた。 「でも。ちょっと待ってよ。確かに管理者側の人がここにいるのは解ったけど、 それは根本的な解決になってないんじゃないの?ほら」  ちゃらっ、と悪ケミの指があの忌まわしい首輪に触れて、金具が鳴った。  忍者は不安げな彼女をたしなめる様に苦笑いすると、言う。 「まぁ、確かにその通りだね。臆病なゲームマスターなら、今の話を聞いていただけで私の首が飛んでいたかもしれない。  期せずして──今の会話は一種の賭けだったかもしれないね」  さっ、と悪ケミの顔が青ざめるのを忍者は見ていた。  失態だったかもしれない、と思う。だが、彼は更に言葉を続けた。 「ごめん。今のは私のミスだったよ」 「こ、今度からは気をつけてよね」 「でも、会話は必要だよ。この首輪って言うのは──」  彼もまた、悪ケミがそうした様に自らの首に嵌った首輪をぴぃんと弾いた。 「只、違反者を殺すんじゃなくて、もっと精神的なものも束縛する面があるみたいだね。  よく出来てるよ。余り同意はしたくないけどね」  悪ケミは、と言うと彼の言葉に反吐が出そうな顔をしていた。  無理もない、と思う。世の中の全員が全員、自分みたいに薄汚れた世界の出身者では無い。  いかんともしがたい事実であり、また喜ばしい事でもあった。  この国全体がそうなっていたとすれば、とっくの昔に群雄割拠の戦国時代に陥っていたに違いない、と彼は思う。 「さて、兎も角出発しようか」  その忍者の言葉に、悪ケミはうん、と頷き、そして彼らは出発したのだった。 <忍者&悪ケミ クホの居た灯台へ移動開始。 忍者の青箱を消費し、一人一本s無しグラ獲得> ---- | [[戻る>2-123]] | [[目次>第二回目次2]] | [[進む>2-125]] |

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