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126 プライベート・レッスン?  [2日目・早朝] ---- G-5に位置する、砂地交じりの草原。 そこにまばらに生える木の下に、♂ハンターと♀アーチャーは座っていた。 だがその様子はいつもと少し違っている。 いつも過剰なほどに♂ハンターにくっついている♀アーチャーが、珍しく彼に背を向けて座っているのだ。 不機嫌そうに頬を膨らませながら。 「なぁ、いいかげん機嫌を直してくれないか」 「王子様が悪いんですよ! 嫌がるあたしに無理矢理あんなことさせるからっ」 「えーと…誤解を招く言い方はやめてね……」 +++ 事のはじまりは今から少し前。 危険区域のこともある。定時放送が流されるまで下手に動かないほうがいいだろう、という考えから二人は未だにG-5にいた。 「荷物の確認も、弓のメンテナンスもした。  他に、放送を待つ間何かすることはないかね。……そうだ!」 ぽん、と手を打つ♂ハンター。 満面の笑みを浮かべ、手には愛用のアーバレスト。 そして、それを……♀アーチャーに手渡す。 「弓の練習、しようぜ」 「……え?」 「付け焼刃かもしれないけどさ、何もしないよりましだろ。幸い今のところ他人の気配もしないし」 「い、いやです! 王子様、あたしの弓の腕前知ってるでしょう!?」 渡された弓を突き返す♀アーチャー。だが、♂ハンターは受け取ろうとはしない。 「だからこそだよ。俺だってさ、いつまで君を守れるかわからないんだぜ。  死ぬまでいかなくても、怪我をして弓を引けなくなるかもしれない。今回は幸い浅かったけどな。  非常時のために、君も自分の身を守れるようにしたほうがいい。俺だって…君を死なせたくはないからさ」 真摯な♂ハンターの瞳。 本気で♀アーチャーのことを思って言っているということが嫌でもわかる。 いつも我が道を行く彼女だったが、それを見ては彼の言葉に従わざるを得なかった。 木の幹に、がりがりと大きな×印を彫る。 「これを狙って矢を射るんだ。なーに、真ん中に当てろなんて言わないさ」 ×を指差し、明るく声をかける♂ハンター。 対する♀アーチャーの表情は、暗い。 一本目。 ×の彫られた木を大きく右に反れ、別の木の真ん中に突き刺さる。 ♂ハンターは指導のため、彼女の様子をよく観察していた。 (姿勢はいいし、構えも問題ない。むしろ綺麗すぎるくらいだ。  基本ができてないわけじゃないんだな。しかしどうしてこの撃ち方をしてあんな所に飛ぶんだ?) 二本目。 ×印の遥か上を目指して一直線。 (狙いをつける瞬間に、手が震えてるな。  力が足りないとかそんな震え方じゃない。まるで何かに怯えてるみたいだ) 三本目。 今度は大きく左に反れ、後ろの木の群生地行き。生い茂る葉の中に突っ込み行方不明。 (……と、いうか。撃つ瞬間に目を瞑ってるじゃないか。  今まで手のほうばかり見てて気がつかなかったけど) 「……なぁ」 思わず声をかける。びくり、と体を震わせる彼女。いつもとは別人のようだ。 「何か、怖いものでも見えるの?」 「……!」 妄想家の彼女のことだ。幻が見えてもおかしくない、と思っての言葉だったが。 それに対する彼女の反応は、いつものお姫様を気取ったハイな妄想の中にいるとは思えないものだった。 「うーん…ま、いいや。続けてくれ」 「は、はい……」 再び矢を射始める♀アーチャー。相変わらず何かへの怯えをその瞳に残したまま。 (なんとなく、わかった。彼女は技術が無いわけじゃない。というより元は良かったのかもしれない。  何か、精神的な問題だな。これは……直すのは難しいかもしれない) そう結論付け、♂ハンターは大きな溜息をついた。 そして。結局×印の真ん中どころか近くにすら撃てないまま弓の訓練は終わり。 「……だから、嫌だって言ったのに。王子様のいじわる」 ♀アーチャーは完全に機嫌を損ね…というより鬱になり、今に至るのだった。 +++ 「なぁ、謝るからさ……ほんと、機嫌直してくれって」 このままじゃあ守れるものも守れないじゃないか。 「……じゃあ…あたしのお願い、ひとつ聞いてくれたら許してあげます」 「……俺にできることならするけど…なに?」 「あたしをぎゅっ、て抱きしめて。『愛してるよ、姫。もう離さない。君は俺の宝物だ』って言ってください」 「……へ?」 頭の中が真っ白になる。 ――いま、なんていいました? 「言ってください、王子様」 (何で俺がそんなことを。ていうか俺は王子様じゃなくて、しがない狩人ですが!) もう今までに何度も思ってきた、本当に今更なことなのだが。そう心で叫ばずにはいられなかった。 「言ってくれますよね? 王子様♪」 ずいっ、と詰め寄られる。すさまじい威圧感に、思わず後ずさる。 魔物すら超えるんじゃないかこれは。彼は本気でそう感じた。 「……わかったよ! 言えばいいんだろ、言えば!」 (しょうがないじゃないか。こうしなきゃこれからの行動に支障が出るわけで。 振り回されてるだけであって好きでこんなことしてるわけじゃ!) ぎゅっ。 「あ…愛してるよ…姫。……もう、離さない。君は俺の…た、宝物、だ」 ――完全にパニックになっていた頭の中は、周りの気配なんか気にする余裕なんかなくて。 そう、いつのまにか近づいていたあの人に、見られてるなんて俺は全く気づいてなかったんだ。 「あら、お熱いじゃない」 「きゃぁ、お母様! ええ、あたしたちラブラブなんです♪」 ――ああ、監獄の女王様。 生きていてよかった、とかその首輪はどうしたんだ、とか色々言うべきことはあるんですが。 あまりのショックに――よりにもよって知り合いにこんな所を見られた衝撃で、言葉が出てきません。 「お邪魔しちゃったかしら?」 しかしあなたは少しも動じることなく、色っぽい笑みを浮かべるんですね。 というか、少しは動じてください。 「い、いえ……めっそうもない」 ――うぅ、ターコ。俺、今……すっごい死にたい。 <♂ハンター> 現在地:G-5(G-6境界付近) 所持品・・・アーバレスト、大量の矢、ナイフ 備考:極度の不幸体質 D-A二極ハンタ 状態:右腕の傷はほぼ塞がっている。ジルタスと再合流。現在本気で凹み中 <♀アーチャー> 現在地:G-5(G-6境界付近) 所持品:プリンセスナイフ 備考:弓に対する怯えがあり、うまく扱えない 妄想癖あり ♂ハンターを慕う 状態:ジルタスと再合流。現在いつもに増してハイテンション <ジルタス> 現在地:G-5(G-6境界付近) 所持品:種別不明鞭、ジルタス仮面 備考:首輪を付けられている 状態:王子様ペアと再合流。ご主人様を探している <残り33人> ---- | [[戻る>2-125]] | [[目次>第二回目次2]] | [[進む>2-127]] |
126 プライベート・レッスン?  [2日目・早朝] ---- G-5に位置する、砂地交じりの草原。 そこにまばらに生える木の下に、♂ハンターと♀アーチャーは座っていた。 だがその様子はいつもと少し違っている。 いつも過剰なほどに♂ハンターにくっついている♀アーチャーが、珍しく彼に背を向けて座っているのだ。 不機嫌そうに頬を膨らませながら。 「なぁ、いいかげん機嫌を直してくれないか」 「王子様が悪いんですよ! 嫌がるあたしに無理矢理あんなことさせるからっ」 「えーと…誤解を招く言い方はやめてね……」 +++ 事のはじまりは今から少し前。 危険区域のこともある。定時放送が流されるまで下手に動かないほうがいいだろう、という考えから二人は未だにG-5にいた。 「荷物の確認も、弓のメンテナンスもした。  他に、放送を待つ間何かすることはないかね。……そうだ!」 ぽん、と手を打つ♂ハンター。 満面の笑みを浮かべ、手には愛用のアーバレスト。 そして、それを……♀アーチャーに手渡す。 「弓の練習、しようぜ」 「……え?」 「付け焼刃かもしれないけどさ、何もしないよりましだろ。幸い今のところ他人の気配もしないし」 「い、いやです! 王子様、あたしの弓の腕前知ってるでしょう!?」 渡された弓を突き返す♀アーチャー。だが、♂ハンターは受け取ろうとはしない。 「だからこそだよ。俺だってさ、いつまで君を守れるかわからないんだぜ。  死ぬまでいかなくても、怪我をして弓を引けなくなるかもしれない。今回は幸い浅かったけどな。  非常時のために、君も自分の身を守れるようにしたほうがいい。俺だって…君を死なせたくはないからさ」 真摯な♂ハンターの瞳。 本気で♀アーチャーのことを思って言っているということが嫌でもわかる。 いつも我が道を行く彼女だったが、それを見ては彼の言葉に従わざるを得なかった。 木の幹に、がりがりと大きな×印を彫る。 「これを狙って矢を射るんだ。なーに、真ん中に当てろなんて言わないさ」 ×を指差し、明るく声をかける♂ハンター。 対する♀アーチャーの表情は、暗い。 一本目。 ×の彫られた木を大きく右に反れ、別の木の真ん中に突き刺さる。 ♂ハンターは指導のため、彼女の様子をよく観察していた。 (姿勢はいいし、構えも問題ない。むしろ綺麗すぎるくらいだ。  基本ができてないわけじゃないんだな。しかしどうしてこの撃ち方をしてあんな所に飛ぶんだ?) 二本目。 ×印の遥か上を目指して一直線。 (狙いをつける瞬間に、手が震えてるな。  力が足りないとかそんな震え方じゃない。まるで何かに怯えてるみたいだ) 三本目。 今度は大きく左に反れ、後ろの木の群生地行き。生い茂る葉の中に突っ込み行方不明。 (……と、いうか。撃つ瞬間に目を瞑ってるじゃないか。  今まで手のほうばかり見てて気がつかなかったけど) 「……なぁ」 思わず声をかける。びくり、と体を震わせる彼女。いつもとは別人のようだ。 「何か、怖いものでも見えるの?」 「……!」 妄想家の彼女のことだ。幻が見えてもおかしくない、と思っての言葉だったが。 それに対する彼女の反応は、いつものお姫様を気取ったハイな妄想の中にいるとは思えないものだった。 「うーん…ま、いいや。続けてくれ」 「は、はい……」 再び矢を射始める♀アーチャー。相変わらず何かへの怯えをその瞳に残したまま。 (なんとなく、わかった。彼女は技術が無いわけじゃない。というより元は良かったのかもしれない。  何か、精神的な問題だな。これは……直すのは難しいかもしれない) そう結論付け、♂ハンターは大きな溜息をついた。 そして。結局×印の真ん中どころか近くにすら撃てないまま弓の訓練は終わり。 「……だから、嫌だって言ったのに。王子様のいじわる」 ♀アーチャーは完全に機嫌を損ね…というより鬱になり、今に至るのだった。 +++ 「なぁ、謝るからさ……ほんと、機嫌直してくれって」 このままじゃあ守れるものも守れないじゃないか。 「……じゃあ…あたしのお願い、ひとつ聞いてくれたら許してあげます」 「……俺にできることならするけど…なに?」 「あたしをぎゅっ、て抱きしめて。『愛してるよ、姫。もう離さない。君は俺の宝物だ』って言ってください」 「……へ?」 頭の中が真っ白になる。 ――いま、なんていいました? 「言ってください、王子様」 (何で俺がそんなことを。ていうか俺は王子様じゃなくて、しがない狩人ですが!) もう今までに何度も思ってきた、本当に今更なことなのだが。そう心で叫ばずにはいられなかった。 「言ってくれますよね? 王子様♪」 ずいっ、と詰め寄られる。すさまじい威圧感に、思わず後ずさる。 魔物すら超えるんじゃないかこれは。彼は本気でそう感じた。 「……わかったよ! 言えばいいんだろ、言えば!」 (しょうがないじゃないか。こうしなきゃこれからの行動に支障が出るわけで。 振り回されてるだけであって好きでこんなことしてるわけじゃ!) ぎゅっ。 「あ…愛してるよ…姫。……もう、離さない。君は俺の…た、宝物、だ」 ――完全にパニックになっていた頭の中は、周りの気配なんか気にする余裕なんかなくて。 そう、いつのまにか近づいていたあの人に、見られてるなんて俺は全く気づいてなかったんだ。 「あら、お熱いじゃない」 「きゃぁ、お母様! ええ、あたしたちラブラブなんです♪」 ――ああ、監獄の女王様。 生きていてよかった、とかその首輪はどうしたんだ、とか色々言うべきことはあるんですが。 あまりのショックに――よりにもよって知り合いにこんな所を見られた衝撃で、言葉が出てきません。 「お邪魔しちゃったかしら?」 しかしあなたは少しも動じることなく、色っぽい笑みを浮かべるんですね。 というか、少しは動じてください。 「い、いえ……めっそうもない」 ――うぅ、ターコ。俺、今……すっごい死にたい。 <♂ハンター> 現在地:G-5(G-6境界付近) 所持品:アーバレスト、大量の矢、ナイフ 備考:極度の不幸体質 D-A二極ハンタ 状態:右腕の傷はほぼ塞がっている。ジルタスと再合流。現在本気で凹み中 <♀アーチャー> 現在地:G-5(G-6境界付近) 所持品:プリンセスナイフ 備考:弓に対する怯えがあり、うまく扱えない 妄想癖あり ♂ハンターを慕う 状態:ジルタスと再合流。現在いつもに増してハイテンション <ジルタス> 現在地:G-5(G-6境界付近) 所持品:種別不明鞭、ジルタス仮面 備考:首輪を付けられている 状態:王子様ペアと再合流。ご主人様を探している <残り33人> ---- | [[戻る>2-125]] | [[目次>第二回目次2]] | [[進む>2-127]] |

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