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130 GMの疑念[放送直前] ---- 『つまり、貴方は夢の中でこの幸せゲームらしきものを主催していた、と言う事ですか』 『え、ええ。そう言う事になりますね。…所詮夢の出来事ですけど』 「ふむ…」 文書化された盗聴記録を読み終え、GMジョーカーは切れ長の目をゆっくり閉じた。 椅子に深々と背を預け、机に脚を乗せて天井を振り仰ぐ。 そのまま長い沈黙が流れた。 「どうしました?彼女が疑わしいのは間違いないと思いますが」 記録文書を持ってきたGM橘がせっつく。 しかしGMジョーカーは視線を下ろそうともしない。 「これで全部ですか?」 「全部とは?」 「彼らの会話ですよ」 何か物足りなそうに言うジョーカーに、GM橘は少々いらだたしげな顔をした。 これだけあれば充分ではないのか。 「前半は分かりません。私が聞いたのは報告があってからですから。それ以前の部分については盗聴担当の記憶によります」 「それ以降であなたが聞き落とした可能性は?」 「…5人同時ですから無いとは言い切れませんが、重要な部分は聞き落としていない自信があります」 「あなたが重要と思う部分は、でしょう。文章では細かいニュアンスまでわかりませんし…直接聞きたかったですねえ」 「それはどうも」 言外にお前の能力を100%信頼してはいないと言われ、GM橘は今度こそ憤懣を表情に出した。 口には出さなくても『じゃあ自分1人で24時間監視してくれ』と瞳が語っている。 「…で、どうしますか?彼女が何か知っているのは間違いありません。起爆しますか?」 「いえいえ待ってくださいな。ルール外の爆破は本当に最後の手段ですよ」 GMジョーカーは首を振り、GM橘の差し出したジェムストーンを押し戻した。 このゲームは冒険者同士で殺し合わせることが重要なのだ。 前回直接手を下しすぎてイゾルデに叱責を受けたジョーカーとしては、そのほとぼりも冷めない内に二の轍を踏むわけには行かない。 「♀Wizさんはまだ決定的なことは口にしていません。それに彼女が工務大臣閣下からあれこれ聞き出した当人だとしたら、盗聴についても知っているはず。にしては不用意な発言だと思いませんか?」 「それはまあそうですが…」 彼らも工務大臣の情報漏洩については調査報告書を読んでいる。 そしてその中に♀Wizの名もあった。 犯人の女が『友人がBR法に』と言ったため、第3回参加者の友人知人は全て調査対象になったのだ。 大臣の証言とは髪の色も印象も違い、事件前後にゲフェンに居たことやカプラサービスを利用していないことも立証されていたが…容貌は染色や化粧で何とでもなるし、カプラ転送に頼らない移動法もある。 つまり彼女を疑うだけの理由はあった。 だが。 (それじゃあ犯人像が一致しないんですよねえ) GMジョーカーは椅子を揺らしながら天井の石組みを眺めた。 彼女が犯人だとすると、あらかじめ変装をし、しかも偽の死体まで用意して周到な計画を実行したということになる。 にもかかわらず、『友人がBR法に』などと正体を明かすようなことを言った? おかしい。矛盾する。 なまじ頭の切れるジョーカーは偶然の積み重ねという考えを切り捨ててしまった。 実のところ♀Wizが髪を染めていたのも厚化粧していたのも、酒場に行ったのと同じ偶然――自暴自棄と気分転換だったのだが、そこまで考えが及ばない。 (大臣閣下がもう少し役に立ってくれればはっきりしたんですが) 彼は心中ため息をついた。 工務大臣をわざわざゲームに参加させたのは、なにも処刑だけが目的ではない。 万一彼から情報を聞き出した者が潜入していた場合、それを見分ける手段として期待していたのだ。 しかし最初の顔合わせから、大臣は怯えるばかりで他の参加者を見ようともしなかった。 それどころか縮こまりすぎて、彼の存在に気付く者さえわずかだったようだ。 そして何の役にも立たないまま1日で死んでしまった。 (陛下に背いたあげく役立たずとは。恥を知りなさい) 中空に想像で描いた大臣の首をGMジョーカーは絞めあげた。 「…何やってるんですか」 GM橘は呆れ声を出した。 ずっと黙っていた上司がいきなり誰かの首を絞めるパントマイムを始めれば、普通は呆れる。 「結局♀Wizは放置でいいんですか?この会話もただの妄想と言うことに?」 「いえいえ」 GMジョーカーは空想上の工務大臣にとどめを刺してから答えた。 「彼女が何を知っているのか、やはり気に掛かります。盗聴役には彼女たちの動向を重点監視させましょう。あなたもなるべく直接聞くようお願いしますよ」 「…あなたは?ジョーカー」 「できればぜぇんぶ私が確かめたいのですけどねえ。残念ながら忙しすぎてそうも行かないのですよ」 嘘ではない。そのことはGM橘もよく知っている。 だが腹は立った。 「そうですか。では会話のニュアンスは報告書の行間から読みとって下さい」 「はいはーい。ついでに森君にも言っといて下さい。もしかしたら出番があるかもって」 せめてもの仕返しに言い捨てるGM橘の背を、まったくこたえた様子のないセリフとヒラヒラ振られる手が送った。 その当人は天井を見上げたままの姿勢を崩さない。 だからGM橘は気付かなかった。 白く塗られた道化師の顔が、いつになく厳しいことに。 (今回も不確定要素は少なくない、ということですかね) 前回、彼をあわやと言うところまで追いつめた男の声が、GMジョーカーの脳裏に蘇る。 ――手前等に向けられてる剣は俺達だけじゃねぇ 一度はあざ笑ったそのセリフが、今は妙に重い。 「…いいでしょう。やれるものならやってみてください。何度でも叩きつぶして差し上げます」 天井を睨み、GMジョーカーは誰にともなく呟いた。 <GMジョーカー> 位置:不明(管理本部) 所持品:ピエロ帽、他不明(バルムン?) 外見:ピエロ 状態:正常 備考:女王イゾルデの意向を最優先 <GM橘> 位置:不明 (管理本部) 所持品:不明 (バルムン?) 外見:銀縁眼鏡、インテリ顔 状態:正常 備考: <残り33名> ---- | [[戻る>2-129]] | [[目次>第二回目次2]] | [[進む>2-131]] |

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