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137 姉妹[第2回放送前] ---- どうしようもないほどの悪夢。ううん、違う。これは現実。忘れようとしても忘れられないあたしの過去。 首を鎖につながれ、翼をもがれた一羽のあわれな大鷲がオリの中で好奇の視線にさらされている。 人の姿をしているのに口から出る言葉はたどたどしく、鳥と話すときにだけその口はなめらかに動いた。 サーカスの観客はそんな大鷲の一挙手一挙動に沸き返る。けれどそれは決して喝采ではなくて、嘲笑に過ぎない。 そう、あたしはただの見世物だった。 観客の受けが悪ければその日の食事はパンのひとかけらすら与えられず、鞭打たれ、 団員の虫の居所が悪ければ、熱湯をかけられ、蹴られ、唾を吐き捨てられた。 そのうちにあたしは人をまともに見ることができなくなり、 月日が流れ、あたしは人を見るだけで知らずガクガクと震えるようになっていた。 そんなある日のこと、誰かが鍵を閉め忘れたのだろうか。あたしは偶然にもオリから外の世界へ逃げ出すことに成功する。 予期せぬ自由を手に入れたあたしは夢中になって大地を、草原を駆けた。 けれど人間のにおいが髪から肌までべったりと染みついてしまったあたしには帰る場所などなく、 人間の世界で暮らしていくことを余儀なくされたあたしは風の民、アーチャーとしての生活を送ることとなった。 人との生活はそれでも決して慣れることなどなく、あたしはいつも怯えていた。 いつまたあの生活に戻されてしまうんだろうか。そう思うだけであたしの体はガクガクと震えた。 気がつけばさらに幾年かの歳月が過ぎ、あたしはハンターになっていた。 ハンターになったあたしが最初に行ったこと、それが鷹との契約。それがふぁるとの出会い。 ふぁるとの出会いであたしは少しづつだけど元気になっていった。それはもう、自分でも良く分かるくらいに。 でも、どんなに月や星が空を流れても、あたしが心を許せる友だちはやっぱり鳥たちで。 いつまでたっても人間は恐怖の対象でしかなくて。 ───ふぁる…会いたいよ…… 自分がこぼした寝言で目を覚ました。 目の前にはあたしを心配そうな顔で覗き込む♀スパノビの顔。 その幼いながらも優しさと力強さを湛えた彼女の顔を目にしてあたしの体は───どうしようもなく震えだした。 怖い。目に飛び込んでくる少女の顔が怖い。 あたしを見る少女の目が怖い。 あたしに囁きかける少女の声が怖い。 人間の言葉を声に変えて奏で出す少女の口が怖い。 あたしに差し伸ばされた少女の手が怖い。 あたしに触れようとする指先が怖い。 怖い、怖い、怖い、怖い、怖い。 怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い。 体はガタガタと震え、目は恐怖に凍り、両腕も、その指先も自分の意志がまるで通わない。 歯はうまく噛みあわず、ただガチガチと音を立てるだけで少しの声を発することもできない。 そんな異常とも言えるあたしの行動を前にして、それでも心配そうな表情のままでふわりと抱き締めてくる彼女。 あたしは人間とここまで接したことも初めてなら、人間から抱き締められたことも初めてだった。 今まであたしが出会った人間はあたしを好奇心の目で見るか、無関心に無視するか、そのどちらかしかいなかったのだ。 ---- | [[戻る>2-136]] | [[目次>第二回目次2]] | [[進む>2-138]] |
137 姉妹[第2回放送前] ---- どうしようもないほどの悪夢。ううん、違う。これは現実。忘れようとしても忘れられないあたしの過去。 首を鎖につながれ、翼をもがれた一羽のあわれな大鷲がオリの中で好奇の視線にさらされている。 人の姿をしているのに口から出る言葉はたどたどしく、鳥と話すときにだけその口はなめらかに動いた。 サーカスの観客はそんな大鷲の一挙手一挙動に沸き返る。けれどそれは決して喝采ではなくて、嘲笑に過ぎない。 そう、あたしはただの見世物だった。 観客の受けが悪ければその日の食事はパンのひとかけらすら与えられず、鞭打たれ、 団員の虫の居所が悪ければ、熱湯をかけられ、蹴られ、唾を吐き捨てられた。 そのうちにあたしは人をまともに見ることができなくなり、 月日が流れ、あたしは人を見るだけで知らずガクガクと震えるようになっていた。 そんなある日のこと、誰かが鍵を閉め忘れたのだろうか。あたしは偶然にもオリから外の世界へ逃げ出すことに成功する。 予期せぬ自由を手に入れたあたしは夢中になって大地を、草原を駆けた。 けれど人間のにおいが髪から肌までべったりと染みついてしまったあたしには帰る場所などなく、 人間の世界で暮らしていくことを余儀なくされたあたしは風の民、アーチャーとしての生活を送ることとなった。 人との生活はそれでも決して慣れることなどなく、あたしはいつも怯えていた。 いつまたあの生活に戻されてしまうんだろうか。そう思うだけであたしの体はガクガクと震えた。 気がつけばさらに幾年かの歳月が過ぎ、あたしはハンターになっていた。 ハンターになったあたしが最初に行ったこと、それが鷹との契約。それがふぁるとの出会い。 ふぁるとの出会いであたしは少しづつだけど元気になっていった。それはもう、自分でも良く分かるくらいに。 でも、どんなに月や星が空を流れても、あたしが心を許せる友だちはやっぱり鳥たちで。 いつまでたっても人間は恐怖の対象でしかなくて。 ───ふぁる…会いたいよ…… 自分がこぼした寝言で目を覚ました。 目の前にはあたしを心配そうな顔で覗き込む♀スパノビの顔。 その幼いながらも優しさと力強さを湛えた彼女の顔を目にしてあたしの体は───どうしようもなく震えだした。 怖い。目に飛び込んでくる少女の顔が怖い。 あたしを見る少女の目が怖い。 あたしに囁きかける少女の声が怖い。 人間の言葉を声に変えて奏で出す少女の口が怖い。 あたしに差し伸ばされた少女の手が怖い。 あたしに触れようとする指先が怖い。 怖い、怖い、怖い、怖い、怖い。 怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い。 体はガタガタと震え、目は恐怖に凍り、両腕も、その指先も自分の意志がまるで通わない。 歯はうまく噛みあわず、ただガチガチと音を立てるだけで少しの声を発することもできない。 そんな異常とも言えるあたしの行動を前にして、それでも心配そうな表情のままでふわりと抱き締めてくる彼女。 あたしは人間とここまで接したことも初めてなら、人間から抱き締められたことも初めてだった。 今まであたしが出会った人間はあたしを好奇心の目で見るか、無関心に無視するか、そのどちらかしかいなかったのだ。 「おどろかせてごめんなさい。大丈夫。大丈夫ですよ。  私はこのゲームから生きて帰りたいって思っていますから。  貴女と一緒に生きて帰りたいって思っていますから」 不思議と落ち着きを取り戻せたのか、彼女の言葉があたしの耳に届く。 小鳥の唄い声に似た彼女の胸をくすぐるような声にあたしの目から涙がこぼれ出す。 淡い金色の彼女の髪がほんのり甘い香りを鼻に運んでくれる。 「大丈夫。大丈夫ですよ」 包みこむように優しくあたしを抱き締めてくれる彼女の両手から暖かさが伝わってくる。 記憶の彼方にある暖かさ。あたしを育ててくれた大鷲。 「───おかあさん」 いつの間にか体の震えはおさまっていたあたしに♀スパノビがもう一度微笑みかける。 何故だかその顔は先ほどまで感じていた恐怖がどこかへ逃げていってしまったかのように怖くなかった。 だからあたしは自分の過去を、そして鳥と話すことができることを♀スパノビに話すことにした。 すべてを聞いたあとで♀スパノビはやっぱり笑った。おかあさんのように優しく微笑んでくれたのだ。 「あ───」 不意に♀スパノビが少しだけ不満そうな表情を浮かべる。 「…どうせなら、おねえちゃんにして下さい。他の人が見ればどう見ても私の方が妹ですけどね」 あたしと♀スパノビは目を合わせて笑う。確かにその通りで、見た目にはあたしの方がおねえちゃんだ。 「こんなに大きな妹でゴメンね」 「いいですよ。おねえちゃんに任せなさい~」 ふぁる、あたしね、初めて人間の友だちができたんだ。 しかも、しかもね。その友だちはなんとあたしのおねえちゃんなんだよ。 え、なんのことだかわからないって? 待っててねふぁる、今にわかるから。絶対絶対もう一度会いに行くからね。 <♀ハンター 現在位置・・・D-6> <所持品:スパナ 古い紫色の箱> <スキル:ファルコンマスタリー ブリッツビート スチールクロウ> <備考:対人恐怖症 鳥と会話が出来る ステ=純鷹師 弓の扱いは??? 島にいる鳥達が味方> <状態:♀スパノビと野営。♀スパノビを信頼。> <♀スパノビ 現在位置・・・D-6> <外見:csf:4j0610m2> <所持品:S2ダマスカス シルクリボン(無理矢理装着) 古いカード帖(本人気付いていない) オリデオコンの矢筒> <スキル:集中力向上> <備考:外見とは裏腹に場数を踏んでいる(短剣型)> <状態:♀ハンターと野営。♀ハンターの生い立ち、鳥との会話能力を知る。> ---- | [[戻る>2-136]] | [[目次>第二回目次2]] | [[進む>2-138]] |

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