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031.クールに ----   冷静な判断力。大魔法を操る魔力ではなく、それこそが自分の持つ最大の武器だと彼女は自負していた ポータルで馴染み深いゲフェンに似た街へ落ち着いた彼女は、まず人目につかない屋内へと逃げ込んだ そして荷物を広げて判断を下すため現状の把握を始めた 所持品は食料、赤ポーション、そして二つの青い箱 この箱の中から何が出るか……まず使えるものが出る可能性は低いだろう だが、それでも開けてみないことには何も始まらない 「開けてびっくり玉手箱……と」 まず大きな箱から出てきたのは見事な反りを持った東洋の剣だった 「何、これ?」 手に取ってみようとその柄を手にした瞬間、びりり!と魔力が彼女の体を走る 「!?」 思わず地面に放り投げた刀が、がらんがらんと地面を転がった 「……ムラサマブレードってヤツかしらね」 絶大な攻撃力の代わりに所持者に呪いを与える妖刀、そう聞いていた そういえば投げ捨てられた刀から立ち昇る魔力が恨めしげな泣き声を上げている気さえする 「どっちにしても私じゃ使えないわね」 両手剣に分類されるこの剣を扱うには、彼女の腕力は足りなさ過ぎた 持ち運ぶにしても重たいので、村正はそのまま置いていくことに決める 一息をついて気を取り直し、もう一つの小さな箱を開ける 「……ねこ?」 箱の中からでろーんと出てきたのは、垂れた猫を模したぬいぐるみだった 時価にして数十Mは下らない物品のはずなのだが……はっきり言ってこの戦場では一切役に立ちそうになかった 「なんでこう無駄なレア運があるのかしらね」 自分の運の無さに思わず苦笑がこぼれる まあ乗せておけば矢避けくらいにはなるかもしれない。そう思いたれ猫を頭の上に乗せた そして最後に確認しておくことが一つ 「ソウルストライク!」 掲げた腕から魔力の塊が飛び出す 全開の魔力で放ったはずの魔法は部屋の片隅にあった花瓶だけを粉々に壊し、そのまま消えた 「……はぁ。この程度の威力じゃ、よっぽど上手く狙わないと相手を殺すのは無理ね」 壁を突き破るつもりだったのだが、予想通り魔力が制限されている アコライトやプリーストのヒールで致命傷を直ぐに回復されてはゲームになどなりはしないのだから当然だ おそらく5分の1前後、その程度にまで魔力が落ちていた 「魔力の無いウィザードなんて唯の人と変わらないってのにね」 予想はしていたことだが、思わずため息が唇からこぼれた 魔力を増幅する杖があればもう少しマシなのかもしれないが無いものをねだっても仕方ないと再びため息 だが、これで彼女の進む道は決まった この装備、更に下げられた魔力では戦い続けて勝ち残るのは無理だ バカそうな男を口先三寸で誘惑して他人を殺させるという方法もある。だが、それは彼女のプライドが許さなかった そもそも誘惑したつもりがこちらが殺される可能性だって大きい ここに立てこもり自分が最後の一人になるのをブルブル震えて待つか?それもNO そんな幸運があるなら、そもそも彼女はこんな戦いに巻き込まれなかったのだから ならば残った取るべき道とは? 決まっている。この戦いから逃げ出す。あの女の裏をかいて では次にその方法を考えよう。どうすれば逃げられるか 指先で首筋を撫でる 蛇のように巻きついた首輪が嫌に冷たい この首輪が在る限り、逃げることは不可能。正に犬の首輪というわけだ 「クールに……良く考えなさい」 首輪には仕掛けがしてある、とあの女は言った 素人目にだが、見た目は唯のマーターの首輪程度にしか見えない だが、そこから感じる魔力で……それがどんな類のものかはわからないが、確実に強力な呪いがかかっているようだった。それも複数 「……ダメね、私じゃ解析するにしても限界があるわ」 そういった緻密な魔法の分析はセージの領分なのだ セージ……そういえばあの会場で見かけた♀セージがよく見知った顔だった ノービス時代からお互い切磋琢磨しあい、セージとウィザードとして決定的に道を分かつまで♀セージは彼女のライバルだった 「ずっと気に入らない子だったけど……こんな時には仕方ないわね」 彼女なら、少なくとも技術的な信頼は出来る 進むべき道が決まったならここに立ち止まっている理由は無い。♀ウィザードは最低限周囲に気を配らせながら駆け出した ♀セージが戦いに参加しているとは毛頭考えなかった (癪な話だけど、あの子も頭が良くて……何より理不尽が許せない子だったから) <♀ウィザード 所持品:たれ猫> <大青箱から出た村正はゲフェン?室内に放置> ---- | 戻る | 目次 | 進む | | [[030]] | [[目次]] | [[032]] |
031.クールに ----   冷静な判断力。大魔法を操る魔力ではなく、それこそが自分の持つ最大の武器だと彼女は自負していた ポータルで馴染み深いゲフェンに似た街へ落ち着いた彼女は、まず人目につかない屋内へと逃げ込んだ そして荷物を広げて判断を下すため現状の把握を始めた 所持品は食料、赤ポーション、そして二つの青い箱 この箱の中から何が出るか……まず使えるものが出る可能性は低いだろう だが、それでも開けてみないことには何も始まらない 「開けてびっくり玉手箱……と」 まず大きな箱から出てきたのは見事な反りを持った東洋の剣だった 「何、これ?」 手に取ってみようとその柄を手にした瞬間、びりり!と魔力が彼女の体を走る 「!?」 思わず地面に放り投げた刀が、がらんがらんと地面を転がった 「……ムラサマブレードってヤツかしらね」 絶大な攻撃力の代わりに所持者に呪いを与える妖刀、そう聞いていた そういえば投げ捨てられた刀から立ち昇る魔力が恨めしげな泣き声を上げている気さえする 「どっちにしても私じゃ使えないわね」 両手剣に分類されるこの剣を扱うには、彼女の腕力は足りなさ過ぎた 持ち運ぶにしても重たいので、村正はそのまま置いていくことに決める 一息をついて気を取り直し、もう一つの小さな箱を開ける 「……ねこ?」 箱の中からでろーんと出てきたのは、垂れた猫を模したぬいぐるみだった 時価にして数十Mは下らない物品のはずなのだが……はっきり言ってこの戦場では一切役に立ちそうになかった 「なんでこう無駄なレア運があるのかしらね」 自分の運の無さに思わず苦笑がこぼれる まあ乗せておけば矢避けくらいにはなるかもしれない。そう思いたれ猫を頭の上に乗せた そして最後に確認しておくことが一つ 「ソウルストライク!」 掲げた腕から魔力の塊が飛び出す 全開の魔力で放ったはずの魔法は部屋の片隅にあった花瓶だけを粉々に壊し、そのまま消えた 「……はぁ。この程度の威力じゃ、よっぽど上手く狙わないと相手を殺すのは無理ね」 壁を突き破るつもりだったのだが、予想通り魔力が制限されている アコライトやプリーストのヒールで致命傷を直ぐに回復されてはゲームになどなりはしないのだから当然だ おそらく5分の1前後、その程度にまで魔力が落ちていた 「魔力の無いウィザードなんて唯の人と変わらないってのにね」 予想はしていたことだが、思わずため息が唇からこぼれた 魔力を増幅する杖があればもう少しマシなのかもしれないが無いものをねだっても仕方ないと再びため息 だが、これで彼女の進む道は決まった この装備、更に下げられた魔力では戦い続けて勝ち残るのは無理だ バカそうな男を口先三寸で誘惑して他人を殺させるという方法もある。だが、それは彼女のプライドが許さなかった そもそも誘惑したつもりでこちらが殺される可能性だって大きい ここに立てこもり自分が最後の一人になるのをブルブル震えて待つか?それもNO それで生き残れるような幸運があるなら、そもそも彼女はこんな戦いに巻き込まれなかったのだから ならば残った取るべき道とは? 決まっている。この戦いから逃げ出す。あの女の裏をかいて では次にその方法を考えよう。どうすれば逃げられるか 指先で首筋を撫でる 蛇のように巻きついた首輪が嫌に冷たい この首輪が在る限り、逃げることは不可能。正に犬の首輪というわけだ 「クールに……良く考えなさい」 首輪には仕掛けがしてある、とあの女は言った 素人目にだが、見た目は唯のマーターの首輪程度にしか見えない だが、そこから感じる魔力で……それがどんな類のものかはわからないが、確実に強力な呪いがかかっているようだった。それも複数 「……ダメね、私じゃ解析するにしても限界があるわ」 そういった緻密な魔法の分析はセージの領分なのだ セージ……そういえばあの会場で見かけた♀セージがよく見知った顔だった ノービス時代からお互い切磋琢磨しあい、セージとウィザードとして決定的に道を分かつまで♀セージは彼女のライバルだった 「ずっと気に入らない子だったけど……こんな時には仕方ないわね」 彼女なら、少なくとも技術的な信頼は出来る 進むべき道が決まったならここに立ち止まっている理由は無い。♀ウィザードは最低限周囲に気を配らせながら駆け出した ♀セージが戦いに参加しているとは毛頭考えなかった (癪な話だけど、あの子も頭が良くて……何より理不尽が許せない子だったから) <♀ウィザード 所持品:たれ猫> <大青箱から出た村正はゲフェン?室内に放置> ---- | 戻る | 目次 | 進む | | [[030]] | [[目次]] | [[032]] |

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