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153.誤解が生んだ赤い結末 ---- ご主人様、無事でいて!! そう願いながら駆けつけたわたしの視界に映ったのは、一人の男と地に伏せたご主人様。 あの男がご主人様を……! ジルタスはその勢いのまま止まらずに鞭を振るう。 射程ギリギリで放たれたそれは、寸前まで男の居た地面に乾いた音と共に叩きつけられる。 グラサンモンクは予見していたように飛び退くと、即座に指弾を放つ。 男の周囲に浮かんでいた光の球の一つが一直線に飛んでくる。 ジルタスも走りながら返す鞭で軌道を逸らし華麗に受け流した。 そのまま再度鞭を振りかざす。今度は十分に男を捕らえられる距離だ。 ――パシィッ! 手ごたえはあった。だが首を狙ったそれは惜しくも男の左腕に巻きついたのみに終わった。 それでも十分なダメージだ。巻きついた鞭は左腕にがっちりと食い込み、肘の先から地面に血が滴っている。 だが、男は表情一つ変えず何事もなかったかのようにこちらに向かってくる。 といってもその目はサングラスに覆われて全く見えないが。 ジルタスの鞭捌きと制限を受けている指弾とを比較し、瞬時に中距離を不利と感じたグラサンモンクは、 左腕を犠牲にしながらもジルタスの懐に入ることを優先したのだった。 そして、空いた右手から容赦ない一撃を繰り出す。 咄嗟に鞭を手放し回避を試みたジルタスだったが、反応が一瞬遅れて避けきれずにその拳を受けてしまった。 それは深く深くジルタスの腹部に突き刺さり、背中まで達していた。 ジルタスはグラサンモンクを力強く睨み付けていたが、力なくその場に倒れた。 彼女を包むワンピースとその下の地面があっという間に赤黒く染まっていく。 ジルタスはまだ意識を失ってはおらず、♂アコライトの方を向いて小さく呟いた。 「ご主人様……ごめんなさい、守れなかった……」 今まで怒りの色一色であったジルタスの表情が一気に崩れる。そして嗚咽と同時に血を吐いた。 「ご主人様?」 命乞いをされても止めを刺すつもりのグラサンモンクであったが、 監獄の女王ともあろう者が「ご主人様」と呟いたことに疑問を感じその手が止まる。 視線は♂アコライトに向けたまま、血を吐きながらジルタスが続ける。 「そうよ、そこの、♂アコライトが、わたしの、ご主人様よ。よく、も、たい、せつ、な、ごしゅじ……」 「待て!オレは何もしていない!♂アコは襲われて気を失っているだけだ!!」 思わずグラサンモンクが言葉を遮る。 そしてヒールを二度三度とかけるが、貫通した穴が塞がるわけもなく血は流れ続ける。 だが無駄なのはわかっていてもヒールせずにはいられなかった。 ジルタスは驚いて目を見開いたが、やがて自分の勘違いに気づいてすぐに満面の笑みになる。 「…………」 ジルタスは唇だけで何事か呟くと静かに目を閉じた。 『ご主人様を救ってくれてありがとう。早とちりしてごめんなさいね……』 なんてことだ、完全に誤解だった。 突然襲ってきたから思わず手にかけてしまったが、このジルタスはゲームに乗ったマーダーではないどころか、 なんとたった今救った♂アコライトの仲間、いやそれ以上に深い絆で結ばれた『従者』であった。 あまりのことにしばし愕然とする。しかし、真後ろで♂アコライトが気絶していたことを思い出し、再び考えを巡らす。 ここでオレがジルタスの命を奪ったことを彼が知ったらどうなるだろうか。 彼はあの蟲に襲われていたときオレの存在に気付かないまま気絶した。 彼が目を覚ましオレをジルタスの仇と認識して襲い掛かって来たとしたら、同じことの繰り返しになる。 そうなると、最悪の場合♂アコライトまでも殺さねばならなくなる。 オレが仇であるのは事実だが、それは避けなくてはならない。 だが、初対面であるオレが一切を説明したところで、その言葉を信じてくれるであろうか。 そしてまた、納得してくれるであろうか。 残念ながらその望みが限りなく薄いことは、自分が一番よく理解している。 この思いがそのように簡単に割り切れるものではないことを……。 それならばと、先程の戦闘を隠し通すことも考えた。 しかし、いつ♂アコライトが目覚めるとも、誰かが通りかかるともわからない中で、ジルタスの遺体と血の跡を隠すのは容易ではない。 それこそ途中で♂アコライトに目覚められたら、説明のしようがない。 仮にうまく隠せたとしても彼がアコライトである以上、腕の傷の治療を申し出ないとも限らない。 そうなった場合治療を断る理由がないし、傷をみれば鞭によるものであることは明らかだ。 結論、自分はこの場に居るべきではない。 未だ目を覚まさない♂アコライトを放置していくことに躊躇いを感じつつも、 他にどうしようもなかったグラサンモンクは、左腕の治療も後回しにしてその場を後にする。 オレは人を助けるどころか、お互いの誤解のせいとはいえジルタスを殺してしまった。 そして、あの♂アコライトが目覚めたときには、大切な人を失うというこの耐え難い苦痛を背負わせてしまうことだろう。 これも復讐者としての運命か――。 <ジルタス> <現在地:G-6> <所持品:ジルタス仮面> <備考:首輪を付けられている> <状態:グラサンモンクが♂アコライトを襲ったと誤解→誤解が解ける 死亡> <グラサンモンク> <現在地:G-6→?> <所持品:緑ポーション5個 インソムニアックサングラス[1] 種別不明鞭(左腕に食い込んだまま)> <外見的特徴:csm:4r0l6010i2> <所持スキル:ヒール 気功 白刃取り 指弾 金剛 阿修羅覇王拳> <備考:特別枠 右心臓> <状態:左前腕負傷 助けを求める人達を守りたい→微妙に変化?> <参考スレ:【18歳未満進入禁止】リアル・グRO妄想スレッド【閲覧注意】 作品「雨の日」「青空に響く鎮魂歌」よりモンク(♂モンクと区別するため便宜的にグラサンモンクと表記)> <♂アコライト> <現在地:G-6> <外見:公式通り> <所持品:なし> <備考:支援型> <状態:気絶中> <残り30人> ---- | [[戻る>2-152]] | [[目次>第二回目次2]] | [[進む>2-154]] |
153.誤解が生んだ赤い結末 ---- ご主人様、無事でいて!! そう願いながら駆けつけたわたしの視界に映ったのは、一人の男と地に伏せたご主人様。 あの男がご主人様を……! ジルタスはその勢いのまま止まらずに鞭を振るう。 射程ギリギリで放たれたそれは、寸前まで男の居た地面に乾いた音と共に叩きつけられる。 グラサンモンクは予見していたように飛び退くと、即座に指弾を放つ。 男の周囲に浮かんでいた光の球の一つが一直線に飛んでくる。 ジルタスも走りながら返す鞭で軌道を逸らし華麗に受け流した。 そのまま再度鞭を振りかざす。今度は十分に男を捕らえられる距離だ。 ――パシィッ! 手ごたえはあった。だが首を狙ったそれは惜しくも男の左腕に巻きついたのみに終わった。 それでも十分なダメージだ。巻きついた鞭は左腕にがっちりと食い込み、肘の先から地面に血が滴っている。 だが、男は表情一つ変えず何事もなかったかのようにこちらに向かってくる。 といってもその目はサングラスに覆われて全く見えないが。 ジルタスの鞭捌きと制限を受けている指弾とを比較し、瞬時に中距離を不利と感じたグラサンモンクは、 左腕を犠牲にしながらもジルタスの懐に入ることを優先したのだった。 そして、空いた右手から容赦ない一撃を繰り出す。 咄嗟に鞭を手放し回避を試みたジルタスだったが、反応が一瞬遅れて避けきれずにその拳を受けてしまった。 それは深く深くジルタスの腹部に突き刺さり、背中まで達していた。 ジルタスはグラサンモンクを力強く睨み付けていたが、力なくその場に倒れた。 彼女を包むワンピースとその下の地面があっという間に赤黒く染まっていく。 ジルタスはまだ意識を失ってはおらず、♂アコライトの方を向いて小さく呟いた。 「ご主人様……ごめんなさい、守れなかった……」 今まで怒りの色一色であったジルタスの表情が一気に崩れる。そして嗚咽と同時に血を吐いた。 「ご主人様?」 命乞いをされても止めを刺すつもりのグラサンモンクであったが、 監獄の女王ともあろう者が「ご主人様」と呟いたことに疑問を感じその手が止まる。 視線は♂アコライトに向けたまま、血を吐きながらジルタスが続ける。 「そうよ、そこの、♂アコライトが、わたしの、ご主人様よ。よく、も、たい、せつ、な、ごしゅじ……」 「待て!オレは何もしていない!♂アコは襲われて気を失っているだけだ!!」 思わずグラサンモンクが言葉を遮る。 そしてヒールを二度三度とかけるが、貫通した穴が塞がるわけもなく血は流れ続ける。 だが無駄なのはわかっていてもヒールせずにはいられなかった。 ジルタスは驚いて目を見開いたが、やがて自分の勘違いに気づいてすぐに満面の笑みになる。 「…………」 ジルタスは唇だけで何事か呟くと静かに目を閉じた。 『ご主人様を救ってくれてありがとう。早とちりしてごめんなさいね……』 なんてことだ、完全に誤解だった。 突然襲ってきたから思わず手にかけてしまったが、このジルタスはゲームに乗ったマーダーではないどころか、 なんとたった今救った♂アコライトの仲間、いやそれ以上に深い絆で結ばれた『従者』であった。 あまりのことにしばし愕然とする。しかし、真後ろで♂アコライトが気絶していたことを思い出し、再び考えを巡らす。 ここでオレがジルタスの命を奪ったことを彼が知ったらどうなるだろうか。 彼はあの蟲に襲われていたときオレの存在に気付かないまま気絶した。 彼が目を覚ましオレをジルタスの仇と認識して襲い掛かって来たとしたら、同じことの繰り返しになる。 そうなると、最悪の場合♂アコライトまでも殺さねばならなくなる。 オレが仇であるのは事実だが、それは避けなくてはならない。 だが、初対面であるオレが一切を説明したところで、その言葉を信じてくれるであろうか。 そしてまた、納得してくれるであろうか。 残念ながらその望みが限りなく薄いことは、自分が一番よく理解している。 この思いがそのように簡単に割り切れるものではないことを……。 それならばと、先程の戦闘を隠し通すことも考えた。 しかし、いつ♂アコライトが目覚めるとも、誰かが通りかかるともわからない中で、ジルタスの遺体と血の跡を隠すのは容易ではない。 それこそ途中で♂アコライトに目覚められたら、説明のしようがない。 仮にうまく隠せたとしても彼がアコライトである以上、腕の傷の治療を申し出ないとも限らない。 そうなった場合治療を断る理由がないし、傷をみれば鞭によるものであることは明らかだ。 結論、自分はこの場に居るべきではない。 未だ目を覚まさない♂アコライトを放置していくことに躊躇いを感じつつも、 他にどうしようもなかったグラサンモンクは、左腕の治療も後回しにしてその場を後にする。 オレは人を助けるどころか、お互いの誤解のせいとはいえジルタスを殺してしまった。 そして、あの♂アコライトが目覚めたときには、大切な人を失うというこの耐え難い苦痛を背負わせてしまうことだろう。 これも復讐者としての運命か――。 &lt;ジルタス&gt; &lt;現在地:G-6&gt; &lt;所持品:ジルタス仮面&gt; &lt;備考:首輪を付けられている&gt; &lt;状態:グラサンモンクが♂アコライトを襲ったと誤解→誤解が解ける 死亡&gt; &lt;グラサンモンク&gt; &lt;現在地:G-6→?&gt; &lt;所持品:緑ポーション5個 インソムニアックサングラス[1] 種別不明鞭(左腕に食い込んだまま)&gt; &lt;外見的特徴:csm:4r0l6010i2&gt; &lt;所持スキル:ヒール 気功 白刃取り 指弾 金剛 阿修羅覇王拳&gt; &lt;備考:特別枠 右心臓&gt; &lt;状態:左前腕負傷 助けを求める人達を守りたい→微妙に変化?&gt; &lt;参考スレ:【18歳未満進入禁止】リアル・グRO妄想スレッド【閲覧注意】 作品「雨の日」「青空に響く鎮魂歌」よりモンク(♂モンクと区別するため便宜的にグラサンモンクと表記)&gt; &lt;♂アコライト&gt; &lt;現在地:G-6&gt; &lt;外見:公式通り&gt; &lt;所持品:なし&gt; &lt;備考:支援型&gt; &lt;状態:気絶中&gt; <残り30人> ---- | [[戻る>2-152]] | [[目次>第二回目次2]] | [[進む>2-154]] |

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