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159.最低 [2日目午後 雨の降り出す前] ---- 最低。 ひとめ見れば同性ならば誰もがうらやむほどの美しさを持った彼女は、 蟲にのどを食い殺されたあわれな鍛冶師のかたわらで、鍛冶師にすがりついて涙を流す女を見て、そう思った。 死んだ鍛冶師の名はホルグレン。いわずと知れたプロンテラの迷鍛冶師である。 その巧みな技術を前にして、涙を流した冒険者の数は星の数ほどいると言われているかの鍛冶師もまた、 この血で血を洗う無益な戦場に送り込まれていたのだ。 それにしてもなんなのよ、このくだらない茶番は。 ひとりしか生き残れない殺し合いの最中なのに、親が死んだからって。 今朝のときもそうよ。わざわざ死んだやつなんかのために墓まで作って、黙祷までして。 まったく、つきあう方の身にもなってもらいたいものだわ。 ♀アルケミストは死者を前にして、誰が見ても哀しんでいると思わせる、およそ完璧な憂いの表情を作り、心中で悪態をつく。 彼女からしてみれば、平和な世界でぬくぬくと育ってきたとしか思えない♀BSの行動には嫌悪を覚えこそすれ、けして理解することなどできない。 いや、正確にいえばそういう類の感情があることを理解はしている。 理解しているからこそ彼女もまた哀しみにくれる同行者を演じているのだから。 ただ彼女はその感情を人に対していだいたことがないのだ。 なぜなら彼女が哀しみの対象とするものは、いつも自分自身の利に関係することのみであり、 たとえ血の繋がりのあるものだとしても、利とならない存在であれば、なんのためらいもなく切り捨てるだけなのであるから。 もっとも彼女と同じ血縁をもつものなど、この世のどこにもいないのではあるが。 彼女がそんな風にして、自分にとって哀しかった出来事と目の前の出来事をすり替えて涙を流すことに飽きはじめた頃、 同行者である淫徒プリが少しだけ喜びの声をあげた。献身的に看病していた♂アコライトが目覚めたのだ。 ところがである。 起き上がった♂アコライトは、ホルグレンと同じくすでに死んでいるジルタスを見つけるや、顔色を青く変えてジルタスのもとへ駆け寄ったのだ。 物言わぬジルタスを見た♂アコライトの少年の瞳から大粒の涙がこぼれ落ちる。 少年のそんな様子に、ジルタスとの主従関係でも察したのか、淫徒プリは少年の側に近寄り、少年の肩を優しくそっと抱いた。 最低。 ♀アルケミストは演技を続けなければならなくなったことに、ため息のひとつでもつきたいと思った。 けれどそんなことはできない。せっかくここまで演じ続けてきた役を途中で放棄することなどできようはずもない。 心を隠すこの仮面は腕力のない彼女にとっての数少ない武器なのだ。 しかたなしに彼女はあの白い夢を見ることにした。 自分がいったい誰なのか、なにをしたいのか。どこからきたのか、どこへ行くのか。 そんなとりとめのない思考。自分の心をゆっくりとゆっくりと時間をかけて切り刻む、狂気という名の刃。 彼女はぼんやりと立っていた。どこを見るでもなく、何をするでもなく、ただぼんやりとその場に立っていた。 それは警戒心の強く、策謀家である彼女にしてはめずらしく、ひどく間の抜けた行為であった。 そのタイミングで♂ハンターがあらわれたことは果たして幸運だったのだろうか? そう、本来ならば誰かが周囲に警戒していなければいけなかったはずなのだが、その役をこなす人間が誰もいなかったのである。 もし♂ハンターが悪意ある殺人者であったなら、きっとまたたく間に全員が殺されていたであろう。 それほどの大失態であった。 しかし彼は、心に汚れなき人間であった。 ほんの少し、いや、かなり不幸な運命を背負ってはいたけれど、彼は運命に負けない程度には強い心を持った善人だったのである。 「一体何があったんだ?」 傷を負っているのだろうか、どこか体をかばうような立ち振る舞いをする彼は、哀しみを帯びた瞳で淫徒プリにそう話しかけた。 ******** 最低。 ♀アルケミストは本日何度目になるか分からないその言葉を脳裏に浮かべた。 やっと自分の身を守ってくれそうな、たらしこみやすそうな男があらわれたにもかかわらず、彼を仲間にしそこなったからである。 それというのも彼が、別れの直前に見せた彼の瞳が、おどろくほどに悲壮な決意に満ちていたからであった。 甘言に富む彼女ですら思わず声をかけそびれてしまうほどに、彼の目はどこか遠くを見ていたのだ。 結局増えたのは戦力になりそうもない♂アコライトの坊やがひとり。 あれじゃ、ただの足手まといにしかならないわ。 そう思った彼女はある提案をすることにした。生き抜くために必要なことだと判断したのであろう。 提案の良し悪しを判断する気力は今の♀BSにはなかった。もちろん今の♂アコライトにもない。♂スパノビにはもとからそんな能力はない。 唯一、淫徒プリだけが冷静な思考を持っていたのだが、提案を聞いた彼女は───本当は彼と呼ぶべきなのだが───素直に賛同した。 こうして5人は簡易的な土葬と黙祷を済ませると、♂ハンターが去っていった方角に向けて歩きはじめた。 そのとき♀アルケミストの鞄の中には、土葬の際にこっそり着服したホルグレンの遺品、古いカード帖が加わっていたのだが、 そのことに気付いたものは誰もいなかった。 <♂ハンター> 現在地:G-6→? 所持品:アーバレスト、ナイフ、プリンセスナイフ、大量の矢 外見:マジデフォ金髪 備考:極度の不幸体質 D-A二極ハンタ 状態:麻痺からそれなりに回復(本調子ではない) ミストレスと、ジルタスを殺したモンクを探すために動く。 <♂アコライト> 現在地:G-6→? 所持品:ジルタス仮面(ジルタスの遺品) 外見:公式通り 備考:支援型 状態:ジルタスの死のショックにより内面に変化? ♂ハンターを追う <淫徒プリ> 現在地:G-6→? 所持品:女装用変身セット一式 青箱1 外見:女性プリーストの姿 美人 備考:策略家。Int>Dexの支援型 状態:軽度の火傷。魔法力の連続行使による多少の疲労。♂ハンターを追う。 <♀ケミ> 現在地:G-6→? 所持品:S2グラディウス、青箱2個+青箱1個(♂BSの物) カード帖(ホルグレンの遺品) 外見:絶世の美女 備考:策略家。製薬ステ。やっぱり悪 状態:軽度の火傷。♂ハンターを追う。 <♀BS> 現在地:G-6→? 所持品:ツーハンドアックス カード帖(ダンサーの遺品) 外見:むちむち。カートはない 備考:ボス、筋肉娘 状態:負傷箇所に痛みが残る。軽度の火傷。父(ホルグレン)の死にショックを受け精彩を欠く。♂ハンターを追う。 <♂スパノビ> 現在地:G-6→? 所持品:スティレット、ガード、ほお紅、装飾用ひまわり 外見:巨漢、超強面だが頭が悪い 状態:瀕死状態から脱出。眠りからは覚めている。♂ハンターを追う。 ---- | [[戻る>2-159]] | [[目次>第二回目次2]] | [[進む>2-160]] |
159.最低 [2日目午後 雨の降り出す前] ---- 最低。 ひとめ見れば同性ならば誰もがうらやむほどの美しさを持った彼女は、 蟲にのどを食い殺されたあわれな鍛冶師のかたわらで、鍛冶師にすがりついて涙を流す女を見て、そう思った。 死んだ鍛冶師の名はホルグレン。いわずと知れたプロンテラの迷鍛冶師である。 その巧みな技術を前にして、涙を流した冒険者の数は星の数ほどいると言われているかの鍛冶師もまた、 この血で血を洗う無益な戦場に送り込まれていたのだ。 それにしてもなんなのよ、このくだらない茶番は。 ひとりしか生き残れない殺し合いの最中なのに、親が死んだからって。 今朝のときもそうよ。わざわざ死んだやつなんかのために墓まで作って、黙祷までして。 まったく、つきあう方の身にもなってもらいたいものだわ。 ♀アルケミストは死者を前にして、誰が見ても哀しんでいると思わせる、およそ完璧な憂いの表情を作り、心中で悪態をつく。 彼女からしてみれば、平和な世界でぬくぬくと育ってきたとしか思えない♀BSの行動には嫌悪を覚えこそすれ、けして理解することなどできない。 いや、正確にいえばそういう類の感情があることを理解はしている。 理解しているからこそ彼女もまた哀しみにくれる同行者を演じているのだから。 ただ彼女はその感情を人に対していだいたことがないのだ。 なぜなら彼女が哀しみの対象とするものは、いつも自分自身の利に関係することのみであり、 たとえ血の繋がりのあるものだとしても、利とならない存在であれば、なんのためらいもなく切り捨てるだけなのであるから。 もっとも彼女と同じ血縁をもつものなど、この世のどこにもいないのではあるが。 彼女がそんな風にして、自分にとって哀しかった出来事と目の前の出来事をすり替えて涙を流すことに飽きはじめた頃、 同行者である淫徒プリが少しだけ喜びの声をあげた。献身的に看病していた♂アコライトが目覚めたのだ。 ところがである。 起き上がった♂アコライトは、ホルグレンと同じくすでに死んでいるジルタスを見つけるや、顔色を青く変えてジルタスのもとへ駆け寄ったのだ。 物言わぬジルタスを見た♂アコライトの少年の瞳から大粒の涙がこぼれ落ちる。 少年のそんな様子に、ジルタスとの主従関係でも察したのか、淫徒プリは少年の側に近寄り、少年の肩を優しくそっと抱いた。 最低。 ♀アルケミストは演技を続けなければならなくなったことに、ため息のひとつでもつきたいと思った。 けれどそんなことはできない。せっかくここまで演じ続けてきた役を途中で放棄することなどできようはずもない。 心を隠すこの仮面は腕力のない彼女にとっての数少ない武器なのだ。 しかたなしに彼女はあの白い夢を見ることにした。 自分がいったい誰なのか、なにをしたいのか。どこからきたのか、どこへ行くのか。 そんなとりとめのない思考。自分の心をゆっくりとゆっくりと時間をかけて切り刻む、狂気という名の刃。 彼女はぼんやりと立っていた。どこを見るでもなく、何をするでもなく、ただぼんやりとその場に立っていた。 それは警戒心の強く、策謀家である彼女にしてはめずらしく、ひどく間の抜けた行為であった。 そのタイミングで♂ハンターがあらわれたことは果たして幸運だったのだろうか? そう、本来ならば誰かが周囲に警戒していなければいけなかったはずなのだが、その役をこなす人間が誰もいなかったのである。 もし♂ハンターが悪意ある殺人者であったなら、きっとまたたく間に全員が殺されていたであろう。 それほどの大失態であった。 しかし彼は、心に汚れなき人間であった。 ほんの少し、いや、かなり不幸な運命を背負ってはいたけれど、彼は運命に負けない程度には強い心を持った善人だったのである。 「一体何があったんだ?」 傷を負っているのだろうか、どこか体をかばうような立ち振る舞いをする彼は、哀しみを帯びた瞳で淫徒プリにそう話しかけた。 ******** 最低。 ♀アルケミストは本日何度目になるか分からないその言葉を脳裏に浮かべた。 やっと自分の身を守ってくれそうな、たらしこみやすそうな男があらわれたにもかかわらず、彼を仲間にしそこなったからである。 それというのも彼が、別れの直前に見せた彼の瞳が、おどろくほどに悲壮な決意に満ちていたからであった。 甘言に富む彼女ですら思わず声をかけそびれてしまうほどに、彼の目はどこか遠くを見ていたのだ。 結局増えたのは戦力になりそうもない♂アコライトの坊やがひとり。 あれじゃ、ただの足手まといにしかならないわ。 そう思った彼女はある提案をすることにした。生き抜くために必要なことだと判断したのであろう。 提案の良し悪しを判断する気力は今の♀BSにはなかった。もちろん今の♂アコライトにもない。♂スパノビにはもとからそんな能力はない。 唯一、淫徒プリだけが冷静な思考を持っていたのだが、提案を聞いた彼女は───本当は彼と呼ぶべきなのだが───素直に賛同した。 こうして5人は簡易的な土葬と黙祷を済ませると、♂ハンターが去っていった方角に向けて歩きはじめた。 そのとき♀アルケミストの鞄の中には、土葬の際にこっそり着服したホルグレンの遺品、古いカード帖が加わっていたのだが、 そのことに気付いたものは誰もいなかった。 <♂ハンター> 現在地:G-6→? 所持品:アーバレスト、ナイフ、プリンセスナイフ、大量の矢 外見:マジデフォ金髪 備考:極度の不幸体質 D-A二極ハンタ 状態:麻痺からそれなりに回復(本調子ではない) ミストレスと、ジルタスを殺したモンクを探すために動く。 <♂アコライト> 現在地:G-6→? 所持品:ジルタス仮面(ジルタスの遺品) 外見:公式通り 備考:支援型 状態:ジルタスの死のショックにより内面に変化? ♂ハンターを追う <淫徒プリ> 現在地:G-6→? 所持品:女装用変身セット一式 青箱1 外見:女性プリーストの姿 美人 備考:策略家。Int>Dexの支援型 状態:軽度の火傷。魔法力の連続行使による多少の疲労。♂ハンターを追う。 <♀ケミ> 現在地:G-6→? 所持品:S2グラディウス、青箱2個+青箱1個(♂BSの物) カード帖(ホルグレンの遺品) 外見:絶世の美女 備考:策略家。製薬ステ。やっぱり悪 状態:軽度の火傷。♂ハンターを追う。 <♀BS> 現在地:G-6→? 所持品:ツーハンドアックス カード帖(ダンサーの遺品) 外見:むちむち。カートはない 備考:ボス、筋肉娘 状態:負傷箇所に痛みが残る。軽度の火傷。父(ホルグレン)の死にショックを受け精彩を欠く。♂ハンターを追う。 <♂スパノビ> 現在地:G-6→? 所持品:スティレット、ガード、ほお紅、装飾用ひまわり 外見:巨漢、超強面だが頭が悪い 状態:瀕死状態から脱出。眠りからは覚めている。♂ハンターを追う。 <残り:29人> ---- | [[戻る>2-159]] | [[目次>第二回目次2]] | [[進む>2-160]] |

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