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175.雨と葛藤 ---- ♂マジは迷っていた。 あの狂った♂Wizが……正しい方向を教えてくれたとは…限らない……! …だが……彼としても…実験を遂行するには……俺が死んだら困るはずだ… 考えろ…考えろ……! しと…しと… 気がつけば雨が降っていた。 いくつもの分岐をあらゆる角度から考え、しかしいまだ結論は出ない。 ……俺を殺さないように配慮したと考えれば……♀マジと遭遇できるように正しいことを教えただろう…… しかし♂Wizが逆の方向で別の人影を見かけたとすれば……万一を思って別方向にいかせるかもしれない…… 大体……俺と♀マジを組ませたら……自分に反抗するという可能性を考えているかもしれない…… いや…もしかしたらまだ奥の手を……そもそもマジシャン2人で勝てる相手ではないかもしれない…… …ぐっ……時は刻一刻と過ぎていく…… この隙に……♀マジが移動するとも考えられる…… ならば…考えている間に移動したほうが良いかもしれん…… …最悪の場合…アイツが殺されてしまうかもしれんっ…… 落ち着けっ……落ち着けっ……焦りはミスを生むだけだっ……   ざわ…          ざわ… ……よし……決めたっ……今一度だけ…信じよう……! ――気づけば雨は大降りになっていた。 ブーツの中までぐしょ濡れになり、重くなった足をしかし、止めることなく加速して。 …あの衣装ではとても保温機能があるとは思えない…… 加えてあの貧相な体つき……たとえ有名な魔術師の作の衣装だとしても…… ククク…… ――笑ってる……だと…?誰が……一体……? …いや、ここには俺しかいない…… つまり……笑っているのは俺だ…… ――何故笑う……? …本気で同情するほどの……彼女を…彼女との出会いを……思い返したから…… ……この二つの符号が意味するものは…ひとつ……っ! 最初は……厄介でしかないと思っていた…… 自分よりも見るからに弱そうで……足手まといにしかなりそうもなく…… 一度は……もうひとりの自分が殺せと…殺せと命令するぐらいだった……だけど…! たった、たった一晩しか一緒にはいなかったが…… 今まで感じたことのなかった温もりを……彼女は与えてくれた……っ…! 初めての感覚だが…思ったより気持ちがいいな……! 他人を信用できるっていうのは……! まして、それが……こんな殺し合いの場でなければ…… さらに格別っ……!最高だっ……! 帰ろう……帰って、どうなるのかはわからないが…… きっと…… 自然と足が速まる。 これからを思い描くという、初めての体験をしながら。 ――気づけば、辺りは暗さを増していた。 自分に問う。例え彼女を見つけたとして、彼女を絶対に守れるのかと。 ――俺は……守れる…この命に代えても……守ってみせる……っ…… ギャンブルに生き、すべての因果は確率で片付けられるものと思っていた彼。 今は違う。 明確な目的を遂行するために生きる。 どんなことになっても絶対に守ると、彼自身が決めた自分への誓約。 誰に言われるまでもなく、飽くまでも自分自身の為の。 いいのかよ……! 俺がやる気になったら……遊びじゃなくなる……! やらせてもらうぜっ……限界を超えてっ……! 今の自分なら何でもできる。 そう思い込んだ彼はもう止まらなかった。 ひたすらに♂Wizの指し示す方向へ直進を続ける。 晴れ渡った彼の心に続くように次第に雨も引いていく。 だから、少し考えれば危険とわかる森へも勢いを殺すことなく進んでいくのであった。 <♂マジ> 位置 : D-6 森の入り口 所持品:ピンゾロサイコロ(6面とも1のサイコロ) 3個(内1個は割れている)    青箱1個 スティレット 外見 :長髪 顔色悪い 状態 :左手負傷(スティレットによる自傷) 備考 :JOB50 ♀マジとはぐれ捜索中 カイジ ---- | [[戻る>2-174]] | [[目次>第二回目次2]] | [[進む>2-176]] |

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