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 184.破戒<二日目宵の口> ----  父親が死んだ。  不思議と、余り悲しいとは思わなかった。  世辞にもいい父親ではなかったけれど、多分そのせいでは無いと思う。  きっと、そのせいじゃない。  きっと──きっと、そのせいなんかじゃない。  言い聞かせるように何度も言葉を転がす。  そのくせ♀BSは、一しきり酒でも煽りたい様な気分だった。  二度目のサヨナラにも乾杯だ。丁度、先程まで雨も降り注いでいて。  ひどく寒い。回復したとはいえ、体力は普段に比べれば落ちているのだし。 「お天道様も泣いてたのかね」  呟いた。彼女とその同行者は立木の影で雨をしのいでいた。  結局、♂ハンターには追い付けなかった。山歩きへの慣れの差であった。  酷く暗い。彼女以外には誰も何も口にしなかった。  正直に言えば、彼女もまた彼らを責める事が出来る様な状況ではなかったし、 己が既に何をすればいいのか見失いそうですらあった。  本当に、寒い。膝を抱え、視線をさまよわせる。  映り込んで来たものは、と言えば幾つかの横顔。  前を向いているのは、目を覚ました♂スーパーノービスだけだった。 「ぼ、ぼす」 「ああ、何さ?」  投げやりに答える。  そう言えば、このゲームの始まりから付き合い──言い換えれば、この中で一番気の置けない関係であるのは最早彼だけであった。  他の者は皆死んでしまった。♀ダンサー然り、父親然り。  ふと考える。もしも、彼さえも死んだとしたらどうだろうか?  それは喩えるなら硬い硬い鉄(ココロ)を思い切り叩き潰すみたいな──おぞましい快楽。  ぞわり、と何か酷くどす黒い被虐心が湧き上がった気がした。  頭を振る。理解してはならないものだ、と思考を覚ますと、心配げな顔で♂スパノビが彼女を見ていた。 「何でもないよ……まだ、疲れてるだろ?おとなしくしてな」  おとなしく言葉に従い、♂スパノビは身体の力を抜いて木に背をもたれかけさせた。  愚鈍な男である。  聞けば、殆ど教官の言葉を聴くがままに只管繰り返してきたのだと言う。  そういう性質なのだろう。疑問をさしはさむ事の出来ない精神的片輪。  ああ、しかしそれを言うならば自分自身は何か。  きっと、立ち上がる為に必要な心が千切れ飛んでしまったのだ。  ならば、己も彼も同じに違いない。  瞳はぼんやりと。唇はかすかに歪む。頭は殆ど何も考えられない。 「──誰です?」  だからなのか、不意に立ち上がった淫徒プリがその言葉を発して初めて億劫そうに顔を動かしていた。  見れば、僅かに草むらが揺れているのが見えた。  人殺しだったなら殺そうと、とりあえず簡単に考えて彼女もまた立ちあがる。 「人殺しじゃないなら、殺さないから。安心して出てきて」  と、♀BSと同じく獲物を手にした♂アコライトがぼそりとした声で彼女の心境を代弁していた。  茂みのざわめきが消え、そしてややあって。 「……」  再び茂みがざわめいた後で、一人、♀ノービスが姿を現した。  ぎょっとした顔を淫徒プリが浮かべる。  それはそうだろう。冷静さを保っている彼故の反応と言えた。  この情け容赦の無い殺戮戦。何の牙も持たないノービスが幸運のみで生き残る事が出来る程、甘くは無い。  ひりついた顔で、♂アコライトがその少女を見ている。  ♀BSは、僅かに躊躇いを覚えて♀ノービスと淫徒プリを見比べていた。  頬の辺りに手を当ててから、ごほんと一度淫徒プリは咳払いをする。 「簡潔に答えてください。貴方は、一体どうやって生き残ってきたのですか?」 「……」  少女は見定める様な目をして答えない。  余りにも一方的な此方の物言いに面食らっているのかもしれない。  だが、力関係では♀BS達が圧倒的に優位に立っている以上、否とは言えまい。  ♀ノービスは眼前の淫徒プリの顎の辺りを見つめてから、嫌々といった調子で口を開く。  ──少女が語った顛末は、おおよそ淫徒プリの想像の外に出るものではなかった。つまり、同行者がいたのだろう、と。  アサシンの男と行動を共にしていた事、魔法使いに襲われて彼と死に別れた事。それから、自分はまだ死ぬ積もりは毛頭無いとも。  促されるまま、腰に下げていたポイズンナイフを差し出すに至って、彼は彼女の生殺与奪が完全に自分にあるのだ、と理解する。 「この子、どうするんですか?」  と、♀アルケミストが控えめな、しかし拒絶を僅かに含んだ声色で言う。  考える事は酷く疲れるのだけれど、♀ダンサーの姿が心に引っかかるから、♀BSは嫌だと言えない。  ♂アコライトは、僅かに嫌悪さえ浮かべて──♂アサシンと同行していたからだろうか──少女を見ていた。  ♂スパノビは殊、こういう判断はからっきしだが♀BSの意見に従うだろう。  賛成と反対は拮抗。結局、今現在全ての決定権は淫徒プリに委ねられていた。  少し、考え込むような様子を見せる。  彼とて馬鹿ではない。引き込むべき人間を刹那的な要求に従って選ぶ事は半ば放棄してしまっている。  と、言うのも無理の無い話しである。余りにも、ここまでの道中に人が死にすぎた。  半ば、彼らの一行はパーティとしての結束を失いつつある。  そして、根拠の無い強弁はその瓦解を決定的なものにするだろう。  同じパーティーの筈なのに、まるで敵同士の腹の探りあいのようである。  信頼できぬ味方は敵よりも厄介である、とは誰の言葉だったか。  ちら、と背後を仰ぎ♀BS達の方を仰ぎ見た。  ──分の悪い賭けなどするものではない。それは破滅へ向かう一本道であろう。  彼の美女の意向に添えないのは、個人としては残念であったが、そうも言ってられない。 「──わざわざ追い返す事も無いでしょう、ね。それに、もしかすると有益な情報も得られるかもしれませんし」  ♀アルケミストは、特に文句を言いはしなかったが、少女は不安げな顔を彼女に向けていた。 「……解りましたよ。確かに、情報は多い方がいいんでしょうし……僕はそういう事は得意じゃありませんから」 「それでは、雨は上がりましたけど──」  淫徒プリは、途中で言葉を切ると空を見上げる。  そこには酷く暗い雲。僅かに形の良い眉をしかめてから、更に言葉を続けた。 「これから移動するのも酷です。もう少し休憩して──その間に、少し今後の事についてお話でもするとしましょう」 <♂アコライト> 現在地:G-6→? 所持品:ジルタス仮面(ジルタスの遺品) メイス 外見:公式通り 備考:支援型 状態:ジルタスの死のショックにより狂気を帯びる。 <淫徒プリ> 現在地:G-6→F7 所持品:女装用変身セット一式 青箱1 外見:女性プリーストの姿 美人 備考:策略家。Int>Dexの支援型 状態:軽度の火傷。魔法力の連続行使による多少の疲労。 <♀ケミ> 現在地:G-6→F7 所持品:S2グラディウス、青箱2個+青箱1個(♂BSの物) カード帖(ホルグレンの遺品) 外見:絶世の美女 備考:策略家。製薬ステ。やっぱり悪 状態:軽度の火傷。 <♀BS> 現在地:G-6→F7 所持品:ツーハンドアックス カード帖(ダンサーの遺品) 外見:むちむち。カートはない 備考:ボス、筋肉娘 状態:負傷箇所に痛みが残る。軽度の火傷。父(ホルグレン)の死にショックを受け精彩を欠く。    肉体的ダメージよりも、精神的なものが色濃い。 <♂スパノビ> 現在地:G-6→F7 所持品:スティレット、ガード、ほお紅、装飾用ひまわり 外見:巨漢、超強面だが頭が悪い 状態:瀕死状態から脱出。眠りからは覚めている。 <♀ノービス> 現在地 E-8(E-7に程近い) =>F7 所持品 ポイズンナイフ スキル しんだふり 応急手当 外 見 ノビデフォ金髪 備 考 どろだらけ。 姉御チームと合流 <注記:姉御チームの結束力低下> ---- | [[戻る>2-183]] | [[目次>第二回目次2]] | [[進む>2-185]] |

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