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203.ふぁると♀スパノビだけがともだちさ [2日目夜] ---- これは夢? それともまぼろし? ううん、そんなことない! ほかの誰にもわからなくたって、あたしにはわかる。 空をすべる大きなつばさも、するどい鉤型のくちばしも、切り裂く爪も、強靭なあしゆびも、すぐに思い描ける。 どんな闇夜だって、たとえ目が見えていなくたって、声さえ聞けば、あたしにだけはわかるの。 だからあたしは、おおきな声で大好きな彼の名を呼んだ。 「ふぁる!」 あぁ、ふぁる。やっぱり来てくれたんだ。来てくれたんだね。それもこんなところまで。 つばさや尾羽が、あんなにぼろぼろになってるのに。そうまでして、来てくれたんだね。 だったらもう、あたしもがんばるしかない。覚悟は決まったわ。 相手が鳥を嫌う羽虫の女王なら、あたしはその虫を食べて生きてきた、猛禽の娘よ! ふぁるとふたりなら、できないことなんてなにもないんだから。 そう、それはまるで、ふぁるがあたしの勇気を運んでくれたみたいだった。 ぽっかりと胸にあいたままで、苦しかったあたしの淋しさは、ふぁるのひと鳴きで埋まったのだ。 あたしってほんと、あきれるくらいに単純だ。 ごめんね、お姉ちゃんも大好きだけど、いまはまだ、ふぁるの方が大切みたい。 ぴーぃ、とのどをふるわせて、彼の声があたしの耳に届いた。 人間にはわからないだろうけど、あたしには彼の言いたいことがはっきりと理解できる。 女王蜂を前に、ふぁるはあたしにこう言っているのだ。 『目印でもないと、ねらいがつけられないぜ?』 ワシタカ類は昼行性猛禽類、フクロウ類は夜行性猛禽類だ。 一部の例外をのぞいては、ふぁるのようなファルコンは夜目が利かない。 つまり、さっきはミストレスが右手に雷をまとっていたから、うまく狙えたみたいだけれど、今は無理だということ。 ぴーぃ。 今度はあたしが指笛でふぁるに意志を伝える。 あたし以外にもうひとり味方がいること。戦う相手が女王蜂であること。 そして─── (だいじょうぶ、あたしには昼を見るワシの目も、夜を視るフクロウの目もあるんだから) ───あたしがふぁるの目になるってこと 予期しなかったふぁるの出現に、取り乱したミストレス相手なら、あたしにもなんとかなるかもしれない。 ううん、なんとかするしかない。 きつく両方の眉をつり上げて、あたしは彼女の正確な位置を笛の音にのせた。 音を聞いたふぁるは、猛禽の王にふさわしくたけると、ミストレスの位置をめがけて飛びかかり、自慢の爪をくりだした。 その攻撃をミストレスは紙一重のところで回避した。 ほんとうに紙一重だったから、彼女はずべっと転んでしまったのだけれど。 絶好のチャンス到来に、あたしは集中力を高めていく。 いままですっかり忘れていたけど、あたし、集中力を向上できるんだった。 「♀ハンタさん、だいじょうぶ? 私になにかできることがありますか?」 お姉ちゃんのあたしを案ずる言葉を聞いて、あたしはますますやる気をみなぎらせた。 あたしひとりだけじゃない。ふぁるとふたりだけでもない。三人もいるんだ。 「お姉ちゃんは支援にまわって。あたしとふぁるに速度増加を。  だいじょうぶ。あたし、全力でやってみるから。ふぁるもお姉ちゃんもいっしょだから」 あたしのしっかりとした物言いに、お姉ちゃんはすこし、いや、かなりおどろいているみたい。 いままで見たこともないくらい、目が大きくなっちゃってる。 でも、それも無理ないかな。あたしだってまさかこんなことで、勇気がわいてくるなんて知らなかったから。 「小娘が。我に土をなめさせるなど、許されると思うてか!」 這いつくばった姿勢のままで、ミストレスは真っ赤になって怒ってるみたい。だけどね、こっちだって怒ってるんだから。 『ふぁる! ミストレスが起き上がるまえに、はやく!』 『そのまえに、こいつを受け取りやがれ、このうすのろ! 重いんだよ』 そうして、ふぁるの左足からあたしの手の中に見覚えのある弓が放られた。 以前にあたしが使ってた、持ってるだけで体力がみなぎる不思議な弓だ。 ふぁる、持ってきてくれたんだ。 「♀ハンタさん、それ弓ですね! それならこれを使ってください」 つづいてお姉ちゃんまであたしになにかを投げてきた。受け取ったのは矢筒。 中に入っているのは青白い鉱石”オリデオコン”を鏃につけた、オリデオコンの矢だ。 すばやく矢を2本引き抜いて、あたしは弦を絞った。 きれいな紫の長髪を怒りにふるわせて、ミストレスは起き上がった。 両手の閃光も、雷神さまが怒ってるみたいにまぶしい。 バチバチと爆ぜるような音が、ミストレスの魔力のすごさをあらわしてるみたい。 だけど、それはふぁるにとっても、あたしにとっても絶好の的だった。 『ふぁる!』 あたしのダブルストレーピングと、ふぁるのブリッツビートの方がはやいんだからね! そのことにミストレスが気づいていたのかどうかはわからない。 ただ彼女はぼそりと一言こう洩らした。 「口惜しや」 けっきょく彼女はあたしにも、ふぁるにも、お姉ちゃんにも雷を放ったりしなかった。 彼女が狙ったのは地面だった。 ズドンとものすごい音をたてて、ただでさえ見通しの悪い夜の世界が、ほこりにまみれてなにも見えなくなった。 いくら夜目が利いてもこれでは弓は撃てそうにない。 これでよかったのかどうかはわからないけど、ひと通り落ち着いたころにはミストレスはどこにもいなくなっていた。 安心したのか、はりきりすぎたのか、あたしはすとんと腰をぬかしてしまった。 お姉ちゃんはそんなあたしを見て、安堵のほほえみを浮かべていた。 そしてふぁるは、 『アハハハ、やっぱりおまえはオレサマがいないと、なんにもできねぇんだな』 すぐ近くの木にとまって、おなかをふるわせて大笑いをしていた。 うぅ、ひどいよふぁる。 <♀ハンター> 現在地:E-5南端 所持品:スパナ、古い紫色の箱、設置用トーキーボックス、フォーチュンソード、オリデオコンの矢筒、+2バイタルシュールドボウ[3] スキル:ファルコンマスタリー、ブリッツビート、スチールクロウ 備考 :対人恐怖症、鳥と会話が出来る、純鷹師、弓の扱いはそれなり、島にいる鳥達が味方 状態 :半乾き? ♀スパノビを信頼、ふぁると遭遇で勇気りんりん <ふぁる> 現在地:E-5南端 所持品:リボンのヘアバンド スキル:ブリッツビート スチールクロウ 備考 :なんだかんだいいながら♀ハンターが心配で堪らない、ツンデレ?GM側の拠点を発見するも重要視せず無視、♀ハンターと遭遇 <♀スパノビ> 現在地:E-5南端 外見 :csf:4j0610m2 所持品:S2ダマスカス(未回収)、シルクリボン(無理矢理装着)、古いカード帖(本人気付いていない) スキル:集中力向上、ニューマ、速度上昇 備考 :外見とは裏腹に場数を踏んでいる(短剣型) 状態 :半乾き? ♀ハンターの生い立ちや鳥との会話能力を知る、JTにより負傷 <ミストレス> 現在地:E-5南端→? 外見 :髪は紫、長め 姿形はほぼ♀アーチャー 所持品:ミストレスの冠、カウンターダガー 備考 :本来の力を取り戻すため、最後の一人になることをはっきりと目的にする。つまり他人を積極的に殺しに行くことになる。なんらかの意図があって♂ハンターを誘惑。その理由は不明     戦略的撤退 ---- | [[戻る>2-202]] | [[目次>第二回目次3]] | [[進む>2-204]] |
203.ふぁると♀スパノビだけがともだちさ [2日目夜] ---- これは夢? それともまぼろし? ううん、そんなことない! ほかの誰にもわからなくたって、あたしにはわかる。 空をすべる大きなつばさも、するどい鉤型のくちばしも、切り裂く爪も、強靭なあしゆびも、すぐに思い描ける。 どんな闇夜だって、たとえ目が見えていなくたって、声さえ聞けば、あたしにだけはわかるの。 だからあたしは、おおきな声で大好きな彼の名を呼んだ。 「ふぁる!」 あぁ、ふぁる。やっぱり来てくれたんだ。来てくれたんだね。それもこんなところまで。 つばさや尾羽が、あんなにぼろぼろになってるのに。そうまでして、来てくれたんだね。 だったらもう、あたしもがんばるしかない。覚悟は決まったわ。 相手が鳥を嫌う羽虫の女王なら、あたしはその虫を食べて生きてきた、猛禽の娘よ! ふぁるとふたりなら、できないことなんてなにもないんだから。 そう、それはまるで、ふぁるがあたしの勇気を運んでくれたみたいだった。 ぽっかりと胸にあいたままで、苦しかったあたしの淋しさは、ふぁるのひと鳴きで埋まったのだ。 あたしってほんと、あきれるくらいに単純だ。 ごめんね、お姉ちゃんも大好きだけど、いまはまだ、ふぁるの方が大切みたい。 ぴーぃ、とのどをふるわせて、彼の声があたしの耳に届いた。 人間にはわからないだろうけど、あたしには彼の言いたいことがはっきりと理解できる。 女王蜂を前に、ふぁるはあたしにこう言っているのだ。 『目印でもないと、ねらいがつけられないぜ?』 ワシタカ類は昼行性猛禽類、フクロウ類は夜行性猛禽類だ。 一部の例外をのぞいては、ふぁるのようなファルコンは夜目が利かない。 つまり、さっきはミストレスが右手に雷をまとっていたから、うまく狙えたみたいだけれど、今は無理だということ。 ぴーぃ。 今度はあたしが指笛でふぁるに意志を伝える。 あたし以外にもうひとり味方がいること。戦う相手が女王蜂であること。 そして─── (だいじょうぶ、あたしには昼を見るワシの目も、夜を視るフクロウの目もあるんだから) ───あたしがふぁるの目になるってこと 予期しなかったふぁるの出現に、取り乱したミストレス相手なら、あたしにもなんとかなるかもしれない。 ううん、なんとかするしかない。 きつく両方の眉をつり上げて、あたしは彼女の正確な位置を笛の音にのせた。 音を聞いたふぁるは、猛禽の王にふさわしくたけると、ミストレスの位置をめがけて飛びかかり、自慢の爪をくりだした。 その攻撃をミストレスは紙一重のところで回避した。 ほんとうに紙一重だったから、彼女はずべっと転んでしまったのだけれど。 絶好のチャンス到来に、あたしは集中力を高めていく。 いままですっかり忘れていたけど、あたし、集中力を向上できるんだった。 「♀ハンタさん、だいじょうぶ? 私になにかできることがありますか?」 お姉ちゃんのあたしを案ずる言葉を聞いて、あたしはますますやる気をみなぎらせた。 あたしひとりだけじゃない。ふぁるとふたりだけでもない。三人もいるんだ。 「お姉ちゃんは支援にまわって。あたしとふぁるに速度増加を。  だいじょうぶ。あたし、全力でやってみるから。ふぁるもお姉ちゃんもいっしょだから」 あたしのしっかりとした物言いに、お姉ちゃんはすこし、いや、かなりおどろいているみたい。 いままで見たこともないくらい、目が大きくなっちゃってる。 でも、それも無理ないかな。あたしだってまさかこんなことで、勇気がわいてくるなんて知らなかったから。 「小娘が。我に土をなめさせるなど、許されると思うてか!」 這いつくばった姿勢のままで、ミストレスは真っ赤になって怒ってるみたい。だけどね、こっちだって怒ってるんだから。 『ふぁる! ミストレスが起き上がるまえに、はやく!』 『そのまえに、こいつを受け取りやがれ、このうすのろ! 重いんだよ』 そうして、ふぁるの左足からあたしの手の中に見覚えのある弓が放られた。 以前にあたしが使ってた、持ってるだけで体力がみなぎる不思議な弓だ。 ふぁる、持ってきてくれたんだ。 「♀ハンタさん、それ弓ですね! それならこれを使ってください」 つづいてお姉ちゃんまであたしになにかを投げてきた。受け取ったのは矢筒。 中に入っているのは青白い鉱石”オリデオコン”を鏃につけた、オリデオコンの矢だ。 すばやく矢を2本引き抜いて、あたしは弦を絞った。 きれいな紫の長髪を怒りにふるわせて、ミストレスは起き上がった。 両手の閃光も、雷神さまが怒ってるみたいにまぶしい。 バチバチと爆ぜるような音が、ミストレスの魔力のすごさをあらわしてるみたい。 だけど、それはふぁるにとっても、あたしにとっても絶好の的だった。 『ふぁる!』 あたしのダブルストレーピングと、ふぁるのブリッツビートの方がはやいんだからね! そのことにミストレスが気づいていたのかどうかはわからない。 ただ彼女はぼそりと一言こう洩らした。 「口惜しや」 けっきょく彼女はあたしにも、ふぁるにも、お姉ちゃんにも雷を放ったりしなかった。 彼女が狙ったのは地面だった。 ズドンとものすごい音をたてて、ただでさえ見通しの悪い夜の世界が、ほこりにまみれてなにも見えなくなった。 いくら夜目が利いてもこれでは弓は撃てそうにない。 これでよかったのかどうかはわからないけど、ひと通り落ち着いたころにはミストレスはどこにもいなくなっていた。 安心したのか、はりきりすぎたのか、あたしはすとんと腰をぬかしてしまった。 お姉ちゃんはそんなあたしを見て、安堵のほほえみを浮かべていた。 そしてふぁるは、 『アハハハ、やっぱりおまえはオレサマがいないと、なんにもできねぇんだな』 すぐ近くの木にとまって、おなかをふるわせて大笑いをしていた。 うぅ、ひどいよふぁる。 <♀ハンター> 現在地:E-5南端 所持品:スパナ、古い紫色の箱、設置用トーキーボックス、フォーチュンソード、オリデオコンの矢筒、+2バイタルシュールドボウ[3] スキル:ファルコンマスタリー、ブリッツビート、スチールクロウ、集中力向上、ダブルストレーピング 備考 :対人恐怖症、鳥と会話が出来る、純鷹師、弓の扱いはそれなり、島にいる鳥達が味方 状態 :半乾き? ♀スパノビを信頼、ふぁると遭遇で勇気りんりん <ふぁる> 現在地:E-5南端 所持品:リボンのヘアバンド スキル:ブリッツビート スチールクロウ 備考 :なんだかんだいいながら♀ハンターが心配で堪らない、ツンデレ?GM側の拠点を発見するも重要視せず無視、♀ハンターと遭遇 <♀スパノビ> 現在地:E-5南端 外見 :csf:4j0610m2 所持品:S2ダマスカス(未回収)、シルクリボン(無理矢理装着)、古いカード帖(本人気付いていない) スキル:集中力向上、ニューマ、速度上昇 備考 :外見とは裏腹に場数を踏んでいる(短剣型) 状態 :半乾き? ♀ハンターの生い立ちや鳥との会話能力を知る、JTにより負傷 <ミストレス> 現在地:E-5南端→? 外見 :髪は紫、長め 姿形はほぼ♀アーチャー 所持品:ミストレスの冠、カウンターダガー 備考 :本来の力を取り戻すため、最後の一人になることをはっきりと目的にする。つまり他人を積極的に殺しに行くことになる。なんらかの意図があって♂ハンターを誘惑。その理由は不明     戦略的撤退 ---- | [[戻る>2-202]] | [[目次>第二回目次3]] | [[進む>2-204]] |

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