「another2-15」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

another2-15」(2006/04/20 (木) 14:45:36) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

アナザー せめて夢の中では ---- ここはどこだろうか・・・。どこかの川原のようだが・・・。 辺りを見渡すと、不思議なことに夜でもないのに、辺りが闇に包まれている。 だというのに、かわらに咲く花々や川を泳ぐ魚などは、昼間のようにしっかりと見える。 ・・・、なんだか一度は来た気がする。川を挟んだ両岸だけが、はっきりと見えて、 それ以外が静かに闇に閉ざされている場所・・・。 ・・・・、そうか私はまだここに出入りできてしまう容態なんだ・・・。 一度は帰ることが出来たはずだが、まだ完全にはここから離れられないらしい・・・。 あれ?対岸に人影が見える。誰だろう・・・。なんだが見覚えがある・・・。 あの銀髪・・・、あの身のこなしは・・・、♂アサ・・・? ああ、そういえば前に来たときも、♂アサに追い返されたっけ・・・。 私、また追い返されちゃうのかな・・・。 ―――お前はまだ来なくていい。俺が迎えに来たのはお前ではない――― 遠くの方からかすかに聞こえてくる。では、私以外に誰がいるのだろう・・・? 私がそう思っていると、すぐ脇を走り抜けていく誰かがいた。そちらを向くと、 金髪の少女が川をバシャバシャと渡っていき、♂アサの胸に飛び込んだ。 へぇ・・・、いつの間にか、随分小さい子を面倒見るようになったのねぇ・・。 ―――♂アサシンさん、私やりました。初めて自分の意思で人を殺めました。    どうですか?立派なアサシンになれますか?――― ―――ああ、よくやったな。やっと自分の意思で一歩を踏み出したな。――― ♂アサを見上げてうれしそうに報告する少女。それに対し、やさしく頭をなでる♂アサ。 その姿にやましいものは何も感じられない。アサシンとは思えない慈愛に満ちた表情。 褒められた少女はまた、♂アサの胸に顔をうずめる。正直そこまで信頼できる少女が、 羨ましい。私にはまねできない。 ―――さて、俺はもう帰るが、お前はまだいる気なのか?まあ、そこにいる分には    かまわんがこっちには来るなよ。お前にはまだやるべきことがあるからな。――― そういって少女と闇に消えていく♂アサ。古い友人のこっちに来るなという言葉に、 改めて彼が死んでしまったということと、あの少女も同じく死んでしまったことを、 思い知らされる。だが、何もできない・・・。 また、対岸に人影が見えてきた。腰まで伸ばした綺麗な銀髪。同性でも羨む見事な体つき。 はじけ飛ばないのが不思議な夏物のワンピースを着ている。以前に監獄で見かけた事が ある。ジルタスという女主人だ。あそこにいるということはやはり彼女も・・・。 そう思っていると、後ろの方から怨嗟のうめきが聞こえてきた。ジルタスもきいたの だろうか、少しつらそうな表情をしている。 ―――僕は、僕は・・・、何も出来なかった・・・。折角ジルタスさんの仇を    見つけたのにっ!!何も出来ずに、何も出来ずにっ!!――― いつの間にか川原に少年が現れていた。跪き、それぞれの手で、川原の砂利を握り締める。 そんな少年を見て、ジルタスは優しく声を掛けた。 ―――ご主人様・・・、いいのです・・・。ご立派でした・・・。そこまで私のことを    思ってくださったのですから、それだけで十分です・・・。――― ―――でも・・、僕は、僕は・・・。あなたに何もして上げられなかった・・・。――― ―――いいえ、ご主人様・・・。あなたは沢山のことを私にしてくださいました。    ですから、そんなに悔やむことはありませんよ。・・・さあ、参りましょう、    これから先はもう、決してご主人様と離れることはありません。――― ゆっくりと立ち上がった少年は静かにジルタスの待つ対岸に渡っていく。胸が痛い。 あんな健気な少年すらも死んでしまうのか・・・。 やがて対岸に渡った少年をジルタスが優しく抱きしめる。自分のために泣いてくれる 少年を、もう2度と放したりはしない。そんな想いが伝わってくる。 そして、ゆっくりと二人が足元から闇の中に消えていった。 やがて、周囲が暗くなっていく。暗闇だった周辺もそうだが、はっきりと見えていた、 川原が薄暗くぼやけてきた。と同時に、揺られる感覚と、胸や腹部に感じる温かい何か。 聞こえてくる荒い息づかいは、何かの重労働でもしているのだろうか・・・。 時折、体に活を入れてくる暖かい手のひらと力強い言葉。ああ、そうか。やっとわかった。 彼は見かけに反して、とてもやさしい。今も自分のことを省みず私のために必死になって くれている。ああ、私は夢を見ていたのか。ならば、次見る夢にはあの人が出てきてほしいな・・・。 あの人なら私を追い返したりはしないだろうし、その時には私も役目を 終えているはずだから・・・。私はおぼろげな意識の中でそんなことを考えていた。 関連話:[[193.夜空に輝くもの>2-193]]、[[197.加速する悪意>2-197]] ---- [[戻る>第二回番外編]]
アナザー せめて夢の中では ---- ここはどこだろうか・・・。どこかの川原のようだが・・・。 辺りを見渡すと、不思議なことに夜でもないのに、辺りが闇に包まれている。 だというのに、かわらに咲く花々や川を泳ぐ魚などは、昼間のようにしっかりと見える。 ・・・、なんだか一度は来た気がする。川を挟んだ両岸だけが、はっきりと見えて、 それ以外が静かに闇に閉ざされている場所・・・。 ・・・・、そうか私はまだここに出入りできてしまう容態なんだ・・・。 一度は帰ることが出来たはずだが、まだ完全にはここから離れられないらしい・・・。 あれ?対岸に人影が見える。誰だろう・・・。なんだが見覚えがある・・・。 あの銀髪・・・、あの身のこなしは・・・、♂アサ・・・? ああ、そういえば前に来たときも、♂アサに追い返されたっけ・・・。 私、また追い返されちゃうのかな・・・。 ―――お前はまだ来なくていい。俺が迎えに来たのはお前ではない――― 遠くの方からかすかに聞こえてくる。では、私以外に誰がいるのだろう・・・? 私がそう思っていると、すぐ脇を走り抜けていく誰かがいた。そちらを向くと、 金髪の少女が川をバシャバシャと渡っていき、♂アサの胸に飛び込んだ。 へぇ・・・、いつの間にか、随分小さい子を面倒見るようになったのねぇ・・。 ―――♂アサシンさん、私やりました。初めて自分の意思で人を殺めました。    どうですか?立派なアサシンになれますか?――― ―――ああ、よくやったな。やっと自分の意思で一歩を踏み出したな。――― ♂アサを見上げてうれしそうに報告する少女。それに対し、やさしく頭をなでる♂アサ。 その姿にやましいものは何も感じられない。アサシンとは思えない慈愛に満ちた表情。 褒められた少女はまた、♂アサの胸に顔をうずめる。正直そこまで信頼できる少女が、 羨ましい。私にはまねできない。 ―――さて、俺はもう帰るが、お前はまだいる気なのか?まあ、そこにいる分には    かまわんがこっちには来るなよ。お前にはまだやるべきことがあるからな。――― そういって少女と闇に消えていく♂アサ。古い友人のこっちに来るなという言葉に、 改めて彼が死んでしまったということと、あの少女も同じく死んでしまったことを、 思い知らされる。だが、何もできない・・・。 また、対岸に人影が見えてきた。腰まで伸ばした綺麗な銀髪。同性でも羨む見事な体つき。 はじけ飛ばないのが不思議な夏物のワンピースを着ている。以前に監獄で見かけた事が ある。ジルタスという女主人だ。あそこにいるということはやはり彼女も・・・。 そう思っていると、後ろの方から怨嗟のうめきが聞こえてきた。ジルタスもきいたの だろうか、少しつらそうな表情をしている。 ―――僕は、僕は・・・、何も出来なかった・・・。折角ジルタスさんの仇を    見つけたのにっ!!何も出来ずに、何も出来ずにっ!!――― いつの間にか川原に少年が現れていた。跪き、それぞれの手で、川原の砂利を握り締める。 そんな少年を見て、ジルタスは優しく声を掛けた。 ―――ご主人様・・・、いいのです・・・。ご立派でした・・・。そこまで私のことを    思ってくださったのですから、それだけで十分です・・・。――― ―――でも・・、僕は、僕は・・・。あなたに何もして上げられなかった・・・。――― ―――いいえ、ご主人様・・・。あなたは沢山のことを私にしてくださいました。    ですから、そんなに悔やむことはありませんよ。・・・さあ、参りましょう、    これから先はもう、決してご主人様と離れることはありません。――― ゆっくりと立ち上がった少年は静かにジルタスの待つ対岸に渡っていく。胸が痛い。 あんな健気な少年すらも死んでしまうのか・・・。 やがて対岸に渡った少年をジルタスが優しく抱きしめる。自分のために泣いてくれる 少年を、もう2度と放したりはしない。そんな想いが伝わってくる。 そして、ゆっくりと二人が足元から闇の中に消えていった。 やがて、周囲が暗くなっていく。暗闇だった周辺もそうだが、はっきりと見えていた、 川原が薄暗くぼやけてきた。と同時に、揺られる感覚と、胸や腹部に感じる温かい何か。 聞こえてくる荒い息づかいは、何かの重労働でもしているのだろうか・・・。 時折、体に活を入れてくる暖かい手のひらと力強い言葉。ああ、そうか。やっとわかった。 彼は見かけに反して、とてもやさしい。今も自分のことを省みず私のために必死になって くれている。ああ、私は夢を見ていたのか。ならば、次見る夢にはあの人が出てきてほしいな・・・。 あの人なら私を追い返したりはしないだろうし、その時には私も役目を 終えているはずだから・・・。私はおぼろげな意識の中でそんなことを考えていた。 関連話:[[193.夜空に輝くもの>2-193]]、[[197.加速する悪意>2-197]] ---- [[戻る>第二回番外編]]

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示:
目安箱バナー