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207.懺悔   ♂アーチャーが深淵の騎士子を連れて♀セージの所に辿り着いた。 既に燃えかすとなっている♂BSを見た♂アーチャーは、戦闘の終了を悟った。 不意に今まで全く無反応であった深淵の騎士子が、♀セージを見るなり声を上げた。 「お主……セージか?」 「ああ」 「そうか。学術に長けたお主なら、この忌まわしい首輪を外す術を知ってるかもしれぬとアルケミが言っておってな」 「……」 「お主を捜しておったのだが……最早手遅れだ。今更この首輪を外したとて……何も変わらぬ。誰も帰っては来ぬのだ」 絶望し全てを諦めた深淵の騎士子に、二人は何かを言うべきだと思ったが、どんな言葉も今の深淵の騎士子には意味を為さないとも感じた。 ♀セージは穏やかに言う。 「とにかく今は体を休めよう。かまわないな深淵?」 深淵の騎士子は全くの無反応だったが、それを了承と無理矢理受け取り、二人は手綱を引いて♂プリーストの居る場所へと向かった。   駆け出すバドスケ、しかし一度足を止めて振り返ると♂プリーストに向かって言った。 「おい、お前深淵と♂ケミに会わなかったか?」 ♂プリーストは表情を硬くする。 「知り合いか? ……会ったぞ」 その言葉にバドスケは勢い込んで問いかける。 「で!? ♂ケミはどうなった!」 「死んだ。手遅れだった」 それを聞くなり、バドスケは傍目に見てわかるぐらいに落ち込んでしまった。 大きく溜息をつき、呟く。 「……俺のやる事為す事、何もかもうまくいかねえのな……」 とぼとぼと♀セージの居る場所を目指し歩き出すバドスケ。 不意に、草を踏みしめる音がしたかと思うと、バドスケの前に♀クルセが現われた。 いきなりの事に、♀クルセは目を丸くする。 そしてバドスケはバドスケで、驚き振り返って言った。 「なんだ、お前達の仲間にクル……」 振り返ったバドスケの眼前に♂プリーストが迫っていた。 「神罰テキメン! ゴーッドブレスユーーーーーーーーーー!!」 ついでに迫っていた拳がまともにバドスケの顔面に入り、バドスケはもんどり打って倒れる。 倒れるバドスケを見下ろしながら、♂プリーストは拳を眼前に握りしめて言う。 「神の祝福があらん事を、そうあれかし。余計な一言は死を招くと知れいっ!」 ♀クルセは呆然としつつも、心の中でつっこむ。 『……最後の一言以外、全然意味も脈絡も無いぞそれ……』 呆れる♀クルセであったが、そんな感想も地面に横たわる♂ローグを見ると一気に吹っ飛んだ。 「っ!!」 それでも声を出さずに済んだのは、クルセイダーとして日々鍛え上げた自制心の賜であったろう。 ♂ローグに駆け寄り、その状態を確認した後、今にも泣き出しそうな顔で♂プリーストを見る。 ♂プリーストは地面に文字を書く。 『大丈夫、怪我はひどいが気を失ってるだけだ』 その言葉に大きく安堵する♀クルセ。 そして、♂ローグの側に座り込んでその場から動かなくなってしまった。 おそらく♂ローグが目覚めるまでは彼女はそこから動く事は無いであろう。 そう♂プリーストは思い、そのままにしてやる事にした。 起きあがるバドスケが、非難の声をあげるが、理由を地面に書いて説明するとすぐに納得した。 バドスケは♂ローグの側に居る♀クルセの表情を見て、♂プリーストが敢えてああ書いた理由も察した。 「……あんた、結構良い奴だな」 何やら状況が和んできたせいもあって、そんな事を言うバドスケ。 だが、♂プリーストにはバドスケに糾さねばならない事があった。 ♂ローグの顔にも赤みが戻ってきている事から、♀セージにこれを知らせるよりも、こちらの糾弾の方を優先させる事にした。 「お前、何もかもうまくいかないって言ったな?」 「ん?」 「それには、♂ノビを殺した事も含まれるのか?」 バドスケも忘れてはいない。 初めて♂プリに出会った時、バドスケが♂ノビを殺したと知った♂プリは激怒してバドスケに襲いかかってきているのだ。 「俺さ、深淵にもあんたにも殺される理由充分にあるんだわ……んでさ、ついさっき、それを拒否する理由も無くなっちまった」 ♂プリは黙ってバドスケを見ている。 「深淵も俺を殺したいと思ってる。どっちが俺殺すか話し合って決めてくれ。俺は……抵抗はしねえよ」 沈んだ声のバドスケに、相変わらず険しい表情のまま、♂プリーストは言う。 「おいバドスケ。俺は聖職者だ、わかるな?」 「なに?」 「聖職者の仕事には、罪を犯した者の告白を聞く懺悔ってもんがある。お前、今から懺悔しろ」 「……懺悔?」 「そうだ。お前がやってきた事を神の御名において嘘やら誤魔化しやら抜きでぜーんぶ白状すんだ。さあやれ」 「おいおい、いきなり何言い出すんだ……」 「神様は寛大だから何言われても許すらしいが、俺は了見が狭くてな。てめえをどうするかはそれ聞いてから決める。とっととやれ」 何やらデジャブを覚えるバドスケ。 「お前、その押しの強さローグ姉さんそっくりだぞ」 「…………俺は聖職者だから、どんな事言われよーと、例えクソッタレな殺し屋と同じに扱われようとも懺悔の最中に相手を殴り飛ばすよーな真似はしねえんだ」 「わかった、お前は寛大で公正な聖職者だ。だからその震える拳をしまってくれ。俺が悪かった」 ♂プリーストはどっかとその場に座り、♂ローグのバッグを勝手に開ける。 「ほれっ」 中から薫製肉を取り出すと、バドスケに向かって放る。 バドスケはそれを受け取ると観念してその場に座り、今まであった事を話し始めた。 「俺はアラームを救いたかったんだ……」 バドスケの懺悔は続く。 「アリスを殺した時、思ったよりも、簡単に死ぬんだなって……それで、すぐに吐きそうになった。吐く物も無いのにな」 ♀セージ、♂アーチャー、深淵の騎士子も合流して、静かにそれを聞いている。 「なんであの子はあんな所にぼーっと突っ立ってたんだろう。そんな事を延々延々考えてた……」 深淵の騎士子も馬を降り、アルケミを側に横たえて聞いている。 「きっとさ、あの朝焼けが見たかったんじゃないかなってさ。それが結論だった。綺麗だったな……あの子も朝焼けも……」 意識を取り戻した♂ローグが身を起こす。 ♀クルセが慌ててそれを止めると、♂ローグは素直に言うとおりにしながら二人でバドスケの話に聞き入っていた。 「♂ノビはさ、すげぇ根性あって頭良くてさ、かっこいいな~って思った。俺じゃ勝てねえなって……」 ♀ローグとの出会い話に行くまで、バドスケはほぼ無表情を崩さなかった。 そこで、少し顔を緩ませ、そしてアラームとの再会、♂ローグ達との交流、最後にアラームとの別れ。 全員、ただバドスケの言葉に耳を傾けていた。 ある物は失われた命を思い出し、ある物は自分が出会った境遇と比べ、またある者は自分がバドスケの立場であったならどうしたかを考えた。 そんな様々な思いを抱きながら、バドスケの意外に流暢な話口調に聞き入っていた。   「以上だ」 バドスケがそう言って締めるが、しばらくの間誰も口を開こうとはしなかった。 なんとも重苦しい沈黙。それを破ったのは♂プリーストだった。 「おし、良くわかった。んじゃ俺は今日はもー寝る。流石にへばった」 そう宣言すると、さっさと毛布を持って少し離れた所に陣取り、そっぽを向いたまま横になった。 そんな♂プリーストを見て、♀セージも皆の睡眠を促す。 誰しもが疲れ切っていたので、これに逆らう者はいなかった。 各々がそれぞれに寝床の準備を始める。しかしバドスケはその場に座ったままだ。 ♂プリーストの態度をどう受け取った物か困惑しているのだ。 ♀セージはバドスケの前に立ち、言った。 「バドスケ……だったな。聖職者が何のために懺悔を行うか、その理由を知っているか?」 「いや」   「赦す為だ」   バドスケに毛布を渡し、♂プリーストの方を見る♀セージ。 「♂プリーストは感情を堂々と表に出すタイプだ。だからこそ、整理に時間がかかるのだろう。だがな……」 「……」 「奴なら大丈夫だ。きっと目が覚めたらいつも通り、何事も無かったかのようにお前に話しかけるだろう」 「……俺にも……それ出来るか?」 「お前次第だ。さあ寝ろ、それだけ疲れていれば悪夢を見る心配も無いだろう」 そう言う♀セージをまじまじと見るバドスケ。 何処までが本気で何処までが冗談なのか、終始真顔の♀セージの表情からは良くわからない。 「そうだな……確かに疲れたよ……」 そう返事をすると、すぐにバドスケは暗い闇の中にその意識を落していった。   全員が寝静まった頃を見計らって、一人身を起こす深淵の騎士子。 半身だけを起こしてじっと横になっているバドスケを見る。 ♂ローグが、♀セージが、♂プリーストが、♀クルセが、♂アーチャーが、そしてバドスケもがその気配に気付いていた。 寝たふりをしながら、深淵の騎士子の動きを待つ。 深淵の騎士子は怒りでもなく、憎しみでもなく、感情を表に出さない硬質な表情のままバドスケを見つめ続ける。 彼女の内面で様々な葛藤があったのだろう。それは容易に想像出来た。 いつまでもそうし続けていた深淵の騎士子の側で、草木の鳴る音がした。 「……くぇ……」 そう言って深淵の騎士子の顔をなめたのは、ペコペコであった。 他の者を起こさぬよう静かな声でいななくペコを、深淵の騎士子は愛おしげに撫でる。 そして、結論が出たのか深淵の騎士子は毛布をかけ直して再び横になった。 深淵の騎士子が苦しんでいるのは皆がわかった。 しかし、その苦しみの一端でも理解出来たのは♂プリーストだけであった。 ♂プリーストは仰向けになるよう寝返りを打って、空を見上げる。 『そうだよな。殺すのも殺されるのも、もううんざりだ』   秋菜は彼らが睡眠に入る前までの声を一通り聞くと、機嫌の良さを隠そうともせずに♂GMに話しかける。 「さあこっから長期戦よ~。今回はこのパターンになったわね~。うんうん、一番楽しいパターンよねこれ♪」 ♂GMは悲しそうに目を伏せるだけだ。 上機嫌の秋菜は♂GMの作った鍋をつつきながら言う。 「食糧難、徐々に迫る禁止区域、遅々として進まない打倒私対策、まともな奴が狂う様ってのはいつ見ても愉快な物よね~」 やはり無言の♂GM。 「意志が強いだのなんだのいっても、人間は誰でも一緒♪ 結局自分が一番可愛いのよ。そりゃね、考える時間がほとんどない場合なら他人を庇う事もあるわよ?」 そこでいやらしい顔で笑う秋菜。 「それでもね、確実に迫る死を前に何日も過ごすなんて状態になったら……最後は誰もが負けちゃうの。何せ他のみんな殺したら自分は生き残れるんだから、そんな誘惑を蹴れる人間なんて居やしないわ」 鍋の底の汁をご飯にかけて、おいしそうにそれを平らげる秋菜。 彼女はまだ、希代の天才♀セージと♀ウィズの知恵と知識が首輪開封の術を見つけた事を知らなかった。   <♂ローグ 現在位置/プロ南 ( prt_fild08 )所持品:ツルギ、 スティレット、アラームたんc(効果は不明)、山程の食料> <バドスケ 現在位置/プロ南 ( prt_fild08 )所持品:アラーム仮面 アリスの大小青箱 山程の食料 備考:特別枠、アラームのため皆殺し→焦燥→落ち着き> <深遠の騎士子 現在位置/プロ南 (prt_fild08)所持品/折れた大剣(大鉈として使用可能)、ツヴァイハンター、遺された最高のペコペコ 備考:アリスの復讐> <♀セージ 現在位置/プロ南 ( prt_fild08 )所持品/垂れ猫 プラントボトル4個、心臓入手(首輪外し率アップアイテム)、筆談用ノート、エンペリウム2個> <♂アーチャー 現在位置/プロ南 ( prt_fild08 ) 所持品/アーバレスト、銀の矢47本、白ハーブ1個> <♀クルセ 現在位置/プロ南 ( prt_fild08 )所持品/青ジェム1個、海東剣> <♂プリースト 現在位置/プロ南 ( prt_fild08 )所持品/チェイン、へこんだ鍋、♂ケミの鞄(ハーブ類青×50、白×40、緑×90、赤×100、黄×100 注:HP回復系ハーブ類は既に相当数使用済)>   <GM秋菜 現在位置/ヴァルキリーレルム> <♂GM 現在位置/ヴァルキリーレルム> ---- | 戻る | 目次 | 進む | | [[206]] | [[目次]] | [[208]] |

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