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216.狂気の瞳 [2日目 丑三つ時] ---- 人には縁というものがある。出会いも別れも、人と人とがつづきあっているからこそ生まれる。 あるものはそれを偶然とし、またあるものはそれを必然とした。 それもそうだろう。この広い世界では、たとえ天寿をまっとうできたとしても、生涯に出会うことのできる人数など知れている。 出会いを縁と呼ばずして、なんと呼ぶことができるだろうか。 偶然であろうと必然であろうと、そんなことは関係ない。ただ出会ったことに、意味があるのだ。 では彼と彼との再会にもまた、なんらかの意味があるのだろうか。  ◇ ◇ ◇ 傷だらけの男───♂クルセイダーは近づいてくる足音に、笑いだしたくなる気持ちを抑えた。 日が落ちてから、すでにかなりの時間が過ぎている。自分の手足が動かせるまでに回復したことから考えても、それはわかっていた。 それでもオートバーサークの反動からか、肉体は万全という状態からは程遠かった。だからこそ♂クルセイダーは、森に身を隠していた。 そこへ♂クルセイダーの事情など知る由もなく、何者かが近づいてきたのである。♂クルセイダーはこれを好機と捉えた。 日中ですら薄暗い森の中である。まして今は月と星の明かりがわずかに差しこむだけの夜。音がなければ相手の存在に気づけるはずもない。 当然♂クルセイダーは、わずかの音も立てなかった。息を殺して不意打ちの機会をうかがっていた。 足音が、相手がたった一人であることを教えてくれた。 その相手が自分のすぐ脇を通り抜けようとしたところで、♂クルセイダーは意を決した。 わずかの躊躇もせず、すばやい動作でシミターの刃を暗闇へ刺しこんだ。とても傷を抱えた男とは思えない、見事な動きだった。 とうてい避けようのない一撃だった。 ♂クルセイダーは、自分の一刀をかわされたことが、にわかには信じられなかった。 潜んでいることを感づかれた覚えはない。反応できるはずもない。はっきりと殺せたと思っていた。 しかし、現実は違っていた。 相手は♂クルセイダーが襲いかかったまさにその瞬間、まるで獣のように殺意を感じとり、即座に横とびしたのだ。 ♂クルセイダーの剣は空を切り、襲撃は結果として失敗に終わった。 こうなると不利なのは♂クルセイダーの方だった。 怪我のせいで余力は乏しい。1対1とはいえ、苦戦は必死である。 初太刀を外すとは夢にも思っていなかった彼は、やむを得ずに相手の出かたをうかがった。 相手は背格好からして、男だった。刀剣を構えた姿勢から、剣士騎士のたぐいであることがわかった。 まっすぐで綺麗な構えだった。 「生きて、いたのか?」 こぼした♂クルセイダーの声に、男はぴくりと反応した。 顔は見えなかったが、♂クルセイダーは、やはりあの♂騎士だろうと思った。 それにしてはすさまじい回復である。 ♂クルセイダーが知っている彼は、およそ一日で回復できるような傷ではなかった。 先ほどの動きにしても尋常なものではない。 疑問はつきなかったが、♂クルセイダーはさらに声をかけた。 「♂ケミはどうした? なぜひとりでいる。おまえは人をまもる騎士だろう」 おそらく♂騎士であろうその男は、なにも答えなかった。 「そうか、ではまもれなかったのだな。つまりおまえも、騎士にはなりきれなかった男というわけだ。俺と同じだな」 苦笑する声が洩れた。男に失望したのかもしれなかった。 男なら自分とは違う道を、騎士としての道を貫いてくれると信じていたのかもしれない。いや、信じたかったのだろう。 神を否定し、醜く生きるしかない自分とは違う世界で、男が騎士として死ねることをうらやましいとさえ思っていた。 うらやましかった。 ───自分には二度と手に入らないものだったから 「・・・・・・ぁ・・・・・・・ぉ・・・・・・」 男の声がかすかに聞こえた。力ない、いまにも力尽きて倒れてしまいそうな、かぼそい声だった。 反して剣をにぎる構えには力が溢れていた。隙らしい隙も、微塵も見当たらなかった。声と姿勢がつり合っていないように思えた。 死にたいのに死ねない、アンデッドのような魔物とどこか重なる気がした。 男のただならない様子に、♂クルセイダーは背筋が寒くなったのを感じた。 久しく感じたことのない恐怖というものだった。 「どうした? 俺がわからないわけでもあるまい。それとも、友の死に正気を失ったとでも言うのか?」 言葉を口にして、♂クルセイダーは一歩後ろに下がった。意識して足を動かしたつもりはなかったが、本能がそうさせた。 気がつけば声を荒げていた。 「こたえろ! ♂騎士。おまえはどうしてここにいる!」 男は変わらず、ぼそぼそと口ごもるようになにかを喋った。 しかし♂クルセイダーは耳を澄ませ、今度ははっきりと聞いた。 「・・・・・・・だれだ?・・・・・・おまえ?・・・・・・」 冷や汗が背中をだらりと流れたのを感じながら、♂クルセイダーは目を凝らし、暗闇の中にいる男の顔を懸命に見た。 ぎらりと男の目がきらめいたのを見てとって、大きく後方へ跳んだ。 伝わってきたのはとてつもない殺意だった。 その瞳は血のように鮮やかな赤色で、♂クルセイダーを映していた。 人が持つ瞳のかがやきではなかった。 <♂クルセイダー> 現在地:E-4 髪型:csm:4j0h70g2 所持品:S2ブレストシミター(亀将軍挿し) 状態:左目の光を失う 脇腹に深い傷 背に刺し傷を負う 焼け爛れた左半身   オートバーサークによる反動 <♂騎士> 現在地:E-4 所持品:ツルギ、S1少女の日記、青箱1個 外 見:虚ろな赤い瞳 状 態:痛覚を完全に失う、体力は半分ほど、個体認識異常(♂ケミ以外)、精神不安定 備 考:GMの暗示に抵抗しようとするも影響中、混乱して♂ケミを殺害 ---- | [[戻る>2-215]] | [[目次>第二回目次3]] | [[進む>2-217]] |
216.その男、凶暴につき [2日目深夜] ---- その男、♂ローグはめずらしく悩んでいた。 片目にある古傷を隠すように手をあてて、口をへの字に曲げている。 よほどなにかを考え込んでいるらしい。 それでも目からは時おりぴりぴりとした視線が放たれ、周囲への警戒を忘れた様子はなかった。 さすがに命のやりとりを日常としているものと言えた。 適度な緊張を肌にまとわせながら生活することに慣れているのだろう。 しばらくして♂ローグは、思いついたようにクロスボウの調子を確かめはじめた。 クロスボウは遠距離からの攻撃を可能にしてくれる、♂ローグにとっての生命線である。 いついかなるときであれ正確な射撃ができる状態にしておくことは、優先すべきことだった。 月明かりしかなかったが、♂ローグは手近な木を見定め、その木を目掛けてクロスボウの矢を撃ちこんだ。 初撃が狙ったところから逸れたのは問題なかった。逸れた分だけ狙いを修正し、もう一度矢を放った。 どんぴしゃり。矢はするどい音を立てて木の幹に突き刺さった。 ♂ローグはこうすることで、今の時点でのクロスボウのクセを体に覚えこませたのである。 なぜいま急にそんなことをしたのか? 理由は単純である。♂ローグはこれから朝までの時間を、勝負の時間と考えていた。 全部で4日あるはずの殺し合い。すでにその半分が過ぎていた。 ♂ローグは先ほどの思索の中で、今後の予定を建てていたのである。 残っている28人から自分を除いた27人にどうやって消えてもらうか。そのことを考えていた。 自分ひとりですべての人間を殺すことは、とうていできないことだった。 となると、人を積極的に殺そうとするような人間には"まだ"生き残っていてもらわなければならない。 自然、♂ローグが優先的に殺さなければならない相手が浮かびあがってきた。 そう、彼が何よりも殺さなければならない相手、それは2人でいる者たちだった。 3人以上のパーティを除外したのは、自分の手にあまるからではない。 ♂ローグは人の心というものが、極限に置かれた際にどう転がるのかを、よく知っていた。 ♂ローグが生きてきた世界は、光あふれるところではない。彼が生き抜いてきたのは、暴力と欲望に色塗られた世界だった。 そこで♂ローグは絶望の淵に立たされた人間を、何人も見てきた。 狂乱するもの。腹を据えるもの。最後まであらがうもの。自ら命を絶つもの。 人によって行動は違えど、二つ確かなことがあった。 それは、人を信じたものが救われたためしなどないということ。そして、人は裏切るものだということ。 その点で、2人という協力体制は実に合理的である。 なぜなら相手が裏切ったところで1対1に戻るだけであり、それは有利とは言えないまでも、けっして不利なわけでもない。 また2人ならば、相手の行動から目を離す機会が少ないというのも大きい。 ところが3人以上ではそうはいかない。 自分の目の届かない場所で誰がなにを考え、どう行動しているかなど、わかったものではない。 気がつけば毒入りの食事をとらされていた、なんていうのは笑うにも笑えない。 「3人以上で徒党を組んでる連中なんてのは、どうせしまいにゃ、お互いがお互いを信じられなくなってくる。  それに、誰が腹んなかに悪魔飼ってるかもわかんねぇこんな島じゃ、ひとりの方がましってもんだ」 ♀ノービスを始末したときに頂戴したポイズンナイフの刃を見つめながら、♂ローグはひとりつぶやいた。 「けど、2人でいるやつらは案外やっかいだ。とくに強固な信頼関係なんて結ばれた日にゃ、目もあてらんねぇな」 誰に聞かせるわけでもなかったが、声を口に出すことは、頭を整理するのに都合が良かった。 「だからこそ今殺す。ここで全力で殺さねぇと、4日目がきびしくなっちまうわ」 ♂ローグはそれほどに2人のパーティを危険視し、そしてこの2日目の夜というものを重要視していた。 たとえこの夜に限界まで動いて、3日目の日中を寝て過ごすことになったとしてもかまわないとさえ思っていた。 それだけではない。 4日目は死力を尽くさなければならない。ならば少しでも活動できるために、3日目を休息にあてるのは当然の考えである。 ♂ローグはさらに考えた。 禁止区域の状況におけるE-6周辺の重要性である。 現在、島の東西をわける唯一の区域がE-6だった。それはつまり人を呼ぶ場所ということでもある。 E-6、E-7、F-6、F-7。この4つの区域こそが、おそらくは最後の戦場になるであろう。そう推測した。 禁止区域の広がり方は、すべての参加者を島の中央に集めるためと考えて間違いない。 GMジョーカーのやり方としては、ひどく納得のいくものだった。 「俺がGMだったら間違いなくそうする。そしてそれを読めるようなやつは、E-6には近づかない。  E-7かF-6、あるいはF-7に陣取って、ぎりぎりまでやりすごすはずだ」 そこまでを声にして、♂ローグはいやらしく笑った。どう動くかが定まったからである。 「まずはF-6。そこからF-7、E-7と回らせてもらうぜぇ」 小さな声でつぶやいて、♂ローグは気配を闇に溶けこませた。隠密行動はローグにとって、造作もないことである。 こうして♂ローグは、夜は自分の時間とばかりに行動を開始した。 狙うのは二人でいる連中。そいつらをどうやって殺してやろうか? 想像しただけで下半身に血がたぎりそうになる気持ちを静めつつ、♂ローグは駆けはじめた。 血走った瞳が快楽を求め、かがやきを増していた。 <♂ローグ> <現在地:G-6→F-6へ> <所持品:ポイズンナイフ クロスボウ 望遠鏡 寄生虫の卵入り保存食×2 未開封青箱> <外見:片目に大きな古傷> <性格:殺人快楽至上主義> <備考:備考:GMと多少のコンタクト有、自分を騙したGMジョーカーも殺す> <状態:全身に軽い切り傷> <思考:2人組を狙う 3人以上は放置> ---- | [[戻る>2-215]] | [[目次>第二回目次3]] | [[進む>2-217]] |

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