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225.悪魔との対話 [2日目深夜] ---- 「ふむ」 長い呪文を唱え終わった♂Wizは無感動な吐息をもらす。 デビルチがその顔を見上げた。 「どウした主人ヨ」 「やはり♂マジの反応は得られません」 どうやら探知魔法だったらしい。デビルチにすくめる肩はないので短い両手だけをひょいと広げてみせた。 「マあ死んダと放送さレてオったからナ」 「探知しやすそうな人は限られますし、どうせならもう少し実験に付き合って欲しかったですねえ」 ♂Wizはかなり身勝手な感想をつぶやく。 それには答えずデビルチは槍の切っ先を振り立てて尋ねた。 「ソれがどうカしたノか?今ハ次の手を考えルベきであロう?」 「ふむ。その通りです。が」 ♂マジが死んだということは、おそらくそちらにマーダーが居たという意味になる。 問題はいつごろ死んだかよく分からないことだ。 ♀Wizと戦ったのが夕刻。 それ以降は連戦とそれに次ぐ移動で探知することなどすっかり忘れていた。 最後の探知直後に殺されたとすればもちろん、放送直前に殺されたのだとしてもすでに数時間経っていることになる。 マーダーの現在地を探る手段としての意味は失われてしまった。 ならば 「彼の死体を探してみましょう」 「なぜダ?マさか墓ヲ作ってヤるなドと言い出す気デはあるまイな」 彼の言葉にデビルチがあからさまな懸念を示す。 ♂Wizは苦笑と不愉快の中間に位置する表情を作った。 「確かにまさかですね。私を何だと思ってるのですかデビルチ」 「強いモノほど一敗地にマみれるとトたんニ覇気を失うコとがアると聞いたゾ」 「ふむ、なるほど」 彼はデビルチの闇色の体に浮かぶ白い目を見据えた。 「今は戦いを求める気がないという意味ではその通りかも知れませんね」 「ナヌ」 デビルチはその手の槍を構える。 「そレは困る。契約ヲ違エる気か」 「おや。私とやり合う気ですか?」 答えて冷たい笑みを浮かべる♂Wiz。 一瞬の対峙後デビルチの腰が引けた。 「そンなツもりはなイが」 「冗談です」 ♂Wizは表情を消して歩き出す。 仕方なく従うデビルチに対し彼は背中ごしに語った。 「今は、と言うのは朝までの話ですよ。視界の良くないこの時間は接近戦能力に長けた者に有利ですし、連戦で気力を消耗しましたからね」 「…オどかすナ主人ヨ」 デビルチは心中胸をなで下ろした。 「その意味で隘路になっているこの位置はよくありません。だから少なくとも移動する必要があるのですよ」 「アいろ?」 「狭い道のことです。このE-6は島の南北をつなぐ唯一の通路ですし、ここを通る人は禁止区域を避けて比較的中央へ寄るはずです。つまり見た目以上に範囲は狭く、夜中でも誰かと遭遇する可能性を無視できません」 「ふム。コこを離れるべキ理由はワかった。だガいいのカ?♂マジの近くにハ汝にトっても危険ナ殺人者がおるのデはないイのカ?」 デビルチは指摘する。 力量に差はあっても魔法を主な戦闘手段とする点で♂マジと♂Wizはよく似ている。 つまり♂マジを真っ向勝負で倒せるのであれば♂Wizにとっても強敵である可能性が高い。 ♂Wizは首を振った。 「おそらく彼を殺した誰かはもうその近くに居ません」 「ナぜそウ思うのダ?」 「単純な心理です。マーダーであれば次の犠牲者を探すために移動するでしょうし、そうでない者が殺してしまったのなら一刻も早くその場を逃げだしたいと思うでしょう」 「そうイうものカ」 「ええ。普通の人は」 彼はデビルチにうなずき返し、そして軽く首を傾げる。 「もしかしてあなたはまだ地上に出て日が浅いか、あるいは生まれて間がないのではありませんか?」 「キくナ」 デビルチはそっぽを向いた。 ♂マジの死体は意外にあっさり見つかった。 彼が最後に向かった方角からほとんどずれていなかった上に素っ裸で倒れていたためである。 「こ奴ハ何を考エて脱いダノだ?噂に聞ク『ろしゅツきょ』トかいう奴カ?」 槍の先で死体をつつきながらデビルチが愉快そうに尋ねる。 ♂Wizは首を振った。 「いかに彼が変人でも、自分で脱いだとは考えにくいですね。殺害者が何か隠していないか調べたか、あるいは殺害手段をごまかすためにやったのではないでしょうか」 「ナんだツマらン」 不満そうなデビルチを横目に彼は♂マジの体をざっと調べた。 体に大きな傷はない。 少なくとも多量の出血はみられず、むしろ焦げ臭い匂いが目立つ。 「ドうなノだ?」 「おそらく死因は魔法によるものですね。それも外傷の小ささから見て電撃系です」 暗くてはっきりしませんが、と彼はつぶやいた。 「ただ…ふむ」 「どうシた主人ヨ」 「残った魔法使いの内、♀Wizと♂セージは島の北西にいました。となると残るのは♀マジだけ」 「こ奴ガ探しテおった者だナ」 「彼女に殺されたのでしょうかねえ。いささか驚きです」 ♂マジと♀マジの言動を思い返して彼は首を傾げる。 どちらもそれなりに見所のある頭脳の持ち主だったが、目的のため他者を犠牲にするだけの思い切りには欠けていたように思う。 納得できない様子の彼をデビルチが横目に見上げた。 「他に魔法ガ使える者はオらヌのか?電撃なラば我も使えるゾ?」 「――なるほど。そう言えばあなたやジルタスの例もありましたか。…他に電撃を使うモンスターと言うと風の悪霊や梟の悪魔、洛陽の猫人に…女王蜂もですか」 他にもまだ居たような気がしますねえ、と♂Wizは頭を振りデビルチに視線をやった。 「あなたに心当たりはありませんか?」 「知らヌ。我は箱ニ入れらレておっタのだゾ」 「ふむ」 彼はあごに手を当てて考え込む。 しかしすぐに首を振った。 何者の仕業か断定するにはあまりにも証拠が足りない。 「今のところ誰がやったとも言い切れませんね。明るくなったらもう一度よく調べてみましょう」 彼そう言って手近な木の下に乾いた場所を見つけ座り込んだ。 デビルチがちょこちょこ駆け寄ってくる。 「朝までココにとどマるのカ?」 ♂Wizは左腕の傷に応急処置をほどこし、木の幹に背を預けた。 「ええ。大魔法も使いましたしさすがに疲れました。見張りを頼みます」 「心得タ」 目をつぶる♂Wizへ敬礼するようにデビルチは槍を傾けた。 <♂Wiz> 位 置:E-6→E-7 装 備:コンバットナイフ 片目眼鏡 とんがり帽子    レッドジェムストーン1つ 血まみれのs1フード 外 見:黒髪 土気色肌 スキル:サイト サイトラッシャー ファイアーピラー クァグマイア    ファイアーウォール フロストダイバー アイスウォール モンスター情報    ストームガスト メテオストーム ソウルストライク ファイアーボール 備 考:「研究」のため他者を殺害 丁寧口調 マッド    デビルチと主従契約 軽度の火傷 左腕に刺し傷 ♂セージに対する敗北感 <デビルチ> 位 置:E-6→E-7 所持品:+10スティックキャンディ トライデント(デビルチ用) 備 考:悪魔 ♂WIZと主従契約 <残り24名> ---- | [[戻る>2-225]] | [[目次>第二回目次3]] | [[進む>2-227]] |
226.砕けたもの [2日目深夜] ---- 鋭く一撃、二撃――手首を返してフェイント。 右手の刃に意識を引きつけて左拳が顔面へ …入らない。 「ちっ」 外見からは想像も付かない♂スパノビの身ごなしに♂ローグは舌打ちした。 一体なんだこいつは? ごっつい女を毒っといてニューマからつぶすつもりがやたら手間取る。 フェイントがまるで効かねえ。 見透かしてやがるのかと思ったがそうでもねえらしい。 何も予測してねえんだ。 攻撃がどこから行くとか全然考えねえで、当たりそうな攻撃にだけもの凄え反応しやがる。 その割に反撃は単純極まりねえ。 馬鹿正直にまっすぐ短剣を突き出すだけ。 食らう気はしねえし、カウンターを入れればさすがに当たる。 もうとっくに倒れてておかしくねえくらいあちこち切った。 なのに弱った様子も見えねえってのは一体どういうこった? 「だったらこれでどうだよ」 ♂ローグはトリッキーに体を揺らすのをやめて無造作につっ立った。 棒立ちにも近いその姿勢でも♂スパノビの分かりやすい攻撃なら最小限の動きでかわせる。 その分♂スパノビを観察することに集中。 心臓めがけて♂スパノビの握る短剣がまっすぐ突き出される。 ケレンもハッタリもない、速いが読みやすい剣筋。 ――そんなんは剣士だけでいいんだよっ どんなに反応が早くても、力を乗せた重くて速い攻撃には止められなくなる一点がある。 そこへポイズンナイフを滑り込ませた。 ず、と手応え。 太い腕へ刃が確かに食い込む。 次の瞬間にはもう腕が引かれていたが、今度こそ間違いなく毒を流し込めた。 さあどうする。 「…って、なんだぁ?」 ♂スパノビは右腕を引くと同時に左手で傷口を絞り、血が噴き出したところへ何かを塗り込んでいた。 あまりに手際がよくて傷口をかばう仕草にしか見えなかったが、あれは 「解毒だとぉ!?」 普通スパノビが習得するスキルじゃない。 道理で手間取るわけだ。 ヒールも使うしニューマも使ってやがった。なかなかスキル切れ起こさねえところ見るとSPRとか持ってるのかもしれねえ。 けどそれじゃ肝心のスキルがすんげえ半端になってんだろ。 ほっといても怖くねえな。 ♂ローグは優先順位を切り替えた。 面倒な割に怖さがないこいつよりまず女だ。 彼は♀BSが立ち上がろうとしていることにしっかり気付いていた。 不意打ちの影響が抜けてない上に毒が回り切って足元がふらついてやがる。 どうせならいろいろ楽しそうなこっちを残したかったんだが、2対1に戻って粘られるのはもっと面白くねえ。 とっとと片付けよう。 彼はバックステップを踏んだ。 躊躇無く追ってくる♂スパノビを待って体を入れ替え、元の方向へもう一度バックステップ。2人を分断する。 ほんの1秒かそこらで駆け戻れる距離だがそれで充分。 身をひねり、♀BSとその斧を視認し、右手のナイフを突き出す。 同時に斧が振り下ろされるが、アドレナリンラッシュも掛かってない斧の速度では彼を捉えきれない。 「とれえ」 ポイズンナイフは♀BSの腹を深々とえぐり、両手斧は♂ローグをかすめもせずに通り過ぎた。 だが。 振り下ろされた斧はそのまま地面へ叩きつけられた。 爆発的な衝撃が膨れ上がる。 激震が足下をすくい、♂ローグの全身を貫いて天地の感覚を奪った。 ドサリ 「ハンマー…フォール」 地に倒れた♀BSはあえぐように呟く。 膝に力が入らない。 立ち上がって斧を振ることは出来そうにない。 だから残ったすべての力を振り絞り、♂ローグの足首を万力のように締め上げて叫んだ。 「♂スパノビ!やっちまいな」 ♂ローグの意識が飛んでいたのはほんの短い間だった。 そして天地の感覚が戻った瞬間に絶体絶命の危機に気付く。 巨体の突進する音。 関節をきめられた左足首の上げる悲鳴。 やべえ。やべえ、やべえっ! 彼は目前に迫る♂スパノビの短剣から必死に身をよじった。 どんっ 肩口に衝撃。 突き飛ばす力とひねる力、2つの無理な力が加わった足首が嫌な音を立てる。 「がああああっ!?」 激痛が電流となって背骨を駆け上がった。 だが、きめられていた関節が破壊されたことで足首の拘束がゆるむ。 彼は何も考えず、ただ生存本能に従いバックステップを踏んで逃げ出した。 <♂ローグ> 現在地:F-6 所持品:ポイズンナイフ クロスボウ(地面に打ち捨てられている) 望遠鏡 寄生虫の卵入り保存食×2 未開封青箱 外 見:片目に大きな古傷 備 考:殺人快楽至上主義 GMと多少のコンタクト有、自分を騙したGMジョーカーも殺す なるべく2人組を狙う 状 態:左足首を損傷 肩口に刺傷 <♀BS> 現在地:F-6 所持品:ツーハンドアックス 古いカード帖 外 見:むちむち カートはない 備 考:ボス 筋肉娘 覚悟完了 状 態:全身に浅い火傷・矢傷。左脇腹に裂傷。毒 腹部に深い刺傷 <♂スパノビ> 現在地:F-6 所持品:スティレット ガード ほお紅 装飾用ひまわり スキル:速度増加 ヒール ニューマ ルアフ 解毒 外 見:巨漢 超強面だが頭が悪い 備 考:BOT症状発現? 状 態:HP・SP共に消耗? ---- | [[戻る>2-225]] | [[目次>第二回目次3]] | [[進む>2-227]] |

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