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230.ひとには言えない話 [2日目深夜] ---- 暗く、見通しのきかない山中。 時として木々や斜面に月光もさえぎられ、方角を失う。 それでも♂プリはただひたすらまっすぐ歩いていた。 (ったく♂騎士の奴。どこまで行きやがった) ヒールを連発しすぎたせいで頭がくらくらする。 じっとしていればそれなりに回復したのだろうが、そこは殴りの悲しさ。 歩いていてはほとんど回復しない。 そのうち歩くことそれ自体が目的になりそうだった。 ピ……ピ……ピ……ピ……ピ やがて何か妙な音が聞こえ始める。 (疲れすぎで耳鳴りでもはじまったか?) 首輪から響く音の意味に♂プリは気付かなかった。 察しが悪いというのは酷だろう。 彼は♂騎士を追い、禁止区域のない北東へ向かっているつもりだったのだから。 ただ、暗い山中で思った方向へ進むことは想像以上に難しい。 林道の整備された山でさえときどき遭難が起きるのがその証拠である。 疲労で注意力が落ちていた♂プリは知らず知らずの内に道に迷い、いつの間にか禁止区域に近付いていた。 (クソ、うるせえな。今はンなこと気にしてる場合じゃねえんだ。♂騎士の奴を見つけて一発説教かまさねえと) 疲れ切った脳味噌には余分なことに考えを巡らすだけの余裕がない。 ピ、 ピ、 ピ、 ピ、 ピ、 あああうるせえうるせえうるせえっ だまらねえとブチ食らわすぞコラあっ 何に何を食らわすと言うのか。 自分でもよくわからないが彼は両手をぶんがぶんがと振り回す。 ピ、ピ、ピ、ピ、ピ、 うるせええええええええっ それでも効果がないと見るや、今度は両手で耳を押さえたまま走りだした。 ただでさえ視界が悪いのにそんなことをすればどうなるか。 もちろんあっという間にバランスを崩す。 では道さえない山道でバランスを崩すとどうなるか。 ♂プリの足がずるっと滑った。 「おおおっ!?」 前のめりにつんのめり、斜面を転げ落ちそうになる。 彼は反射的に残った足で強く地面を蹴った。 「なんのっ」 片手を地面につき、前回りにきれいなとんぼを切る。 足元の傾きも計算に入れ、着地のイメージもしっかりできていた。 ただ――回転方向に立木があることだけを見逃していた。 キンッ 肉体の激突音としてはあり得ないような高い金属音が♂プリの脳裏に響く。 「…………が……あ…………!?!!」 彼はそのままずるずると地面に落ち、ちょっと人には言いにくい場所を押さえて悶絶した。 男にしか分からない痛みと言う奴である。 「ぐ……ふ…、ふふ……」 十数秒後。身動きも出来ずにうずくまっていた彼の背が揺れ出した。 「ふ…ふははははははははっ!あ~~~~~~っ!!」 一声叫んでがばっと跳ね起き、股間を押さえてだんだんっと短く跳ねる。 「畜生やってられるかっ!俺はまだ一生貞潔守る気なんてねえんだっ」 ふ~は~ふ~は~ ♂プリは荒い息を吐いて天を仰いだ。 そりゃ俺はそっち方向にも破戒僧だぜべらぼうめ。だからってこんな天罰はないんじゃねえか神様? 毒づきながらひょこひょこ歩き出す。 まさかつぶれてないよな? こんな場合でもオトコとして『役に立つ』かどうか気になった。 となるととりあえず思い浮かぶのは♀Wizの顔。 ここ1ヶ月で一番の美人だし治療の時に肌も見た。 肝心の部分までは見てねえけどその方が色っぽいやまあそれはさておき。 ちと不謹慎だが緊急事態なんだ許してくれ♀Wiz…あいててて血が集まると痛えっ。 それでも♂騎士を捜すため、少々みっともない姿勢ながらも♂プリは歩き続ける。 だが彼は気付かなかった。 彼の苦痛のそもそもの原因となった首輪の音がいつの間にかとまっていることに。 転倒し悶絶したことで進む方向が変わっていたのだ。 与えられた苦痛が天罰ではなく天佑であったことを♂プリは知らない。 <♂プリースト> 現在地:不明(どこかの山中) 所持品:修道女のヴェール(マヤパープルc挿し) でっかいゼロピ 多めの食料 マイトスタッフ 外 見:逆毛(修道女のヴェール装備のため見えない) 怖い顔 備 考:殴りプリ ♂騎士を追いかけ単独行動 状 態:心身ともに極度の疲労。根性で体を動かしている。股間を強打 ---- | [[戻る>2-230]] | [[目次>第二回目次3]] | [[進む>2-232]] |
231.手負いの獣 [2日目深夜] ---- 畜生畜生畜生畜生 殺してやる殺してやるコロシテヤル 隠れたまま息の続く限り逃げた♂ローグは姿を現すと同時にぶっ倒れた。 そのまま闇に向かって憎しみをぶちまける。 怒りは自分にも向いていた。 ルアフ、ニューマとハンマーフォール。 あり得ないほど最悪の組み合わせだった。 どうしてさっさと逃げなかったのか。 …あれだ。 初日に遭ったクソカップルだ。 退却間際に聞いた叫び。 『どうしてよ!ニューマもでないし!』 あれでニューマは使えないと思いこまされた。 だが今にして思えば実際に詠唱するトコを見たのは速度増加だけ。 あとはぎゃあぎゃあ騒いでただけだった。 策だったとは限らない。 だが少なくとも彼はあの言葉に釣られたのだ。 はらわたが煮えくり返る。 この手で泣き叫ぶツラを引き裂いてやりたい。 彼氏の命綱をくわえさせ、叫んだら終わりの素敵状態で犯し殺してやりたい。 だがあのアマはもう死んだ。 「うがああああああああっ!!」 怒りの力を借り、変な向きにぶら下がっていた足首を元に戻す。 しびれとも熱さともつかない激痛が左半身を満たした。 「…………!」 発作的に左足を切り落としたくなるほどの苦痛。 歯を食いしばり、無事な右脚に爪を立てて耐える。 どうやら骨は折れていない。 ただ腱か靱帯がイってるようだ。 戻したはずの足首が勝手に変な方向へ曲がろうとする。 何か使える物はないか。 荷物をひっくり返す彼の手に青い小箱が当たった。 「…この際だ。何でもいい、出やがれ」 治療薬ならラッキー。 使える武器でもいいし、クズ装備でも添え木にはなる。 ブーツの類や移動力を補える物でもいい。 開けた瞬間、清潔な白い布が大量にあふれ出る。 「お?」 一瞬、彼は第一の希望が叶ったかと思った。 だがその直後。 「っな…!?……あンのクソジョーカーーーっ!!」 怒りの余り卒倒しそうになる。 箱から出た物の正体はウェディングドレスだった。 ジョーカーという男はどこまでも悪質なジョークセンスの持ち主に違いない。 「こんなモノ着れるかああっ!」 彼は腹立ちまぎれに純白の布を引き裂く。 ウェディングドレスはあっという間にボロ切れの塊になった。 やがて。 「さて、と」 やるだけやって腹立ちも収まったのか、彼はボロ切れを固くねじりだした。 さらに結び合わせて長い紐にし、足首へ巻いてガチガチに固定する。 これでとりあえず立てるようにはなるだろう。 だが身のこなしは落ちるし、全力疾走もできない。 飛び道具での先制がこれまで以上に重要になる。 「ってもな」 クロスボウを取りに戻ることを考え、♂ローグは諦めた。 患部の熱が引くまでじっとしていた方がいい。 焦って無理をすると本当に動けなくなる。 それにさっきの連中が持っていったなら今さら戻っても間に合わない。 まだあるなら朝を待っても同じことだ。 彼はハイディングの要領で穴を掘り、冷たい土に足首を埋めた。 <♂ローグ> 現在地:F-6 所持品:ポイズンナイフ クロスボウ(ヘルファイア付近に捨てたまま) 望遠鏡 寄生虫の卵入り保存食×2 外 見:片目に大きな古傷 備 考:殺人快楽至上主義 GMと多少のコンタクト有、自分を騙したGMジョーカーも殺す なるべく2人組を狙う 状 態:左足首を損傷(バンデージ固定済) 肩口に刺傷 ---- | [[戻る>2-230]] | [[目次>第二回目次3]] | [[進む>2-232]] |

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