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233.大自然の呼び声 [3日目未明] ---- ずびし。 ♂セージの脳天に鋭いチョップが入った。 「ついてこないで」 ♀商人は冷たく言う。 「そうは言ってもですね」 ♂セージは眠そうに目をしばたかせつつ抗弁した。 「やはり1人になるのはよくありませんよ」 「すぐに戻るってば」 彼女はいらだたしげに男を押し戻す。 ただし寝ている仲間を起こさないように小声で。 「しかし排泄中は最も無防備になる瞬間のひと・・・ぶっ」 言葉の途中で靴を投げつけられ♂セージは倒れた。 投げつけた姿勢のまま♂商人は肩を怒らせ荒い息を吐く。 「分かってるなら来るなっ!」 要するに見張り番の最中にトイレへ行きたくなったのだ。 彼女は投げつけた靴を拾って木立に入る。 「いい?絶対にこないでね」 「仕方ありませんね。声の届く範囲にいて下さい」 ♂セージは倒れたまま答えた。 「まったく。もーちょっとデリカシーあれば完璧なのになあ」 ぶつぶつ言いながら♀商人は藪をかきわける。 結局、彼女はかなり奥まで分け入っていた。 声が届く距離では音も聞こえてしまうかも知れない。 乙女の恥じらいのなせるわざである。 「・・・・・・」 ♀商人は来た方向を振り返った。 そろそろ東の空も白み始める時刻とは言え、木立の中はまだまだ闇に等しい。 視線も気配も届かないのを確認して彼女はしゃがみ込んだ。 ※♀商人のお願い。目と耳をふさいでてね※ 数分後。彼女は顔を上げた。 かすかな葉擦れの音。 まっすぐに近付いてくる。 彼女は慌てて服を整え、靴を脱いだ。 やがて目前まで迫った気配の顔のあたりを狙って叩きつける。 「天誅!」 「うおっ!?」 彼は大げさに飛び退いた。 「んもう、来ちゃ駄目っていったでしょ!」 仲間からは充分離れているので今度は気兼ねなく声を張り上げる。 「・・・そりゃまあ心配してくれるのは嬉しいけど・・・」 一方、彼は左腰に手をやって用心深く問いかけてきた。 「何者だ?」 その言葉でやっと♀商人はおかしさに気付く。 なんだか♂セージと様子が違う。 「ええっと、誰?」 「・・・♂騎士。そっちは」 「♀商人。って、え?ええええええっ!?」 反射的に答えてから♀商人は狼狽した。 わずかな明かりに覗く真っ赤な眼。 腰の手は剣の鞘に掛かり、すでに鯉口を切っている。 ♂セージは言っていた。 ♂騎士は狂戦士化しているかもしれない。 ズッ、と摺り足で踏み出す音。 「来ないでっ!」 カートもゼニーも置いてきた彼女は反射的にもう片方の靴を投げた。 銀光がひらめく。 鈍い音とともに靴がたたき落とされた。 彼女は身を翻して逃げだそうとする。 だが、靴がない。 素足に石や木の根が食い込む。 「痛っ・・・くつ、靴っ」 その背を襲うかと思えた♂騎士はなぜか立ちすくんでいた。 「靴・・・?」 足元に落ちた靴と♀商人を見比べる。 「そう、靴っ。返してっ」 「・・・・・・」 無言で考え込んでいた♂騎士はやがて剣をゆっくり収めた。 そして靴を拾う。 「ほら」 靴を差し出す彼から♀商人は後ずさった。 「寄らないでっ」 怯える彼女へ♂騎士はため息混じりの悲しげな笑みを向けた。 「そっちに敵意がないらしいことは分かった。なら戦う意味はない」 そう言って靴を彼女の足元へ投げ返す。 「・・・なんで?」 ♀商人は警戒しながらそれを拾い、聞き返した。 彼は答える。 「敵なら靴なんか投げない。もっと硬い物を選ぶし、裸足じゃ戦いにくい」 彼女は思わず呟いた。 「それが分かるのになんで♂ケミさんを・・・」 何も持ってなかったのに。という言葉は口の中で消えた。 ♂騎士は息を飲む。 「・・・あの時居たのか」 そして寂しそうに言った。 「見えなかったんだ」 「どうして?暗かったから?」 不思議そうに聞く♀商人へ彼は首を振る。 「いや。姿は見えていた」 「でもそれが誰か、何を持ってるか、持ってないかもわからなかった」 ♀商人は首を傾げ、靴を履き直した。 「この靴は見えるのに?」 ♂騎士は首を縦に、そして横に振る。 「今は見えない」 「どういうこと?」 「わからない」 「・・・これはどう?」 ♀商人はその大きな手袋を外して見せた。 そちらをちらりと見た♂騎士は無言で首を振る。 「じゃあ、こうしたら?」 彼女は手袋をぽんと投げ渡した。 受け取った♂騎士は何とも言えない表情を浮かべて言った。 「決闘の申し込みか?」 上流階級では手袋を叩きつけるとそう言う意味になる。 「ちーがーうー!」 両手足をじたばたさせて抗議する♀商人に彼は苦笑した。 「冗談だ。手袋だなって意味のな」 「シャレになってないからやめて」 彼女は深々と息を吐いた。 そして気を取り直し、手袋を取り返す。 「でも、やっぱり見えたんだ。私が持ってると見えないんだね」 ♀商人の手元を見ていた♂騎士は、やがて大きくうなずいた。 「そういうことか」 「うん。たぶんそういうこと」 彼女もうなずき返す。 「俺は他人がちゃんと見れなくなってるんだな」 彼は深々とため息を吐き、手に顔を埋めた。 「どうして・・・」 見かねて♀商人は言った。 「GMに何かされたんじゃないかって。♂セージさんが」 「GM・・・橘や森にか?」 ♂騎士は顔を上げ、すこし考え込んだ。 心当たりがあるような気もするし、ないような気もする。 一方の♀商人も首を傾げた。 「橘とか森って誰?GMって言ったらジョーカーじゃないの?」 「ああ、俺が最初に会ったのはその2人だったんだ」 彼は当然のように答えた。 ♀商人も、ふうん、と相槌を打っただけで終わる。 「それより。詳しい話も聞きたいし、あいつをちゃんと弔いたい」 そう言って♂騎士は辺りを見回す。 「他の皆は?」 「ん。ちょ~っとあっちの方」 ♀商人は背後の木立を示す。 「遠いのか?どうしてこんなとこに1人で・・・」 ♂騎士は首を傾げながら踏み出した。 「ん?」 名状しがたい水っぽい足音。 彼は何かに気付いた様子で小さく鼻を鳴らす。 「なんだ。トイレか」 その瞬間、♀商人の顔が真っ赤に染まった。 「え・・・え・・・」 「え?」 「えんがちょ~~~~~~っ!!わ~~~~~~ん!」 「しまった!?すまん。ごめん。待ってくれ!」 泣きながら一直線に駆け去る彼女を追って♂騎士は必死に走り出した。 <♀商人> 現在地:D-6(仲間とやや離れた位置) 所持品:店売りサーベル、(以下仲間の所に置き去り)乳鉢いっぱい、カート、100万はくだらないゼニー 容 姿:金髪ツインテール(カプラWと同じ) 備 考:割と戦闘型 メマーナイトあり? ♂セージに少し特別な感情が……?    ♀WIZ・♂シーフ・♂セージ・淫徒プリと同行→朝を待って♂セージ・淫徒プリと同行    ♂騎士と遭遇 <♂騎士> 現在地:D-6 所持品:ツルギ、S1少女の日記、青箱1個 外 見:深い赤の瞳 状 態:痛覚を完全に失う、体力は半分ほど、個体認識異常(♂ケミ以外)正気を保ってはいるが、未だ不安定     ♂ケミを殺してしまった心の傷から、人間を殺すことを躊躇う それでも生きたいと思う自分をあきれながらも認める。 備 考:GMの暗示に抵抗しようとするも影響中、混乱して♂ケミを殺害 体と心の異常を自覚する     ♂ケミのところに戻り、できるなら弔いたい ♀商人と遭遇 ---- | [[戻る>2-233]] | [[目次>第二回目次3]] | [[進む>2-235]] |
234.見慣れた悪夢[2日目深夜~3日目未明] ---- ゆっくりと目を開けた。カーテンから差し込む光が、昼に近づいていることを教えてくれる。  昨日は研究に力を入れすぎて、ほぼ徹夜をしてしまった。突っ伏した机から体を起こすと、毛布がはらりと地面に落ちる。寝てしまった自分に彼女が掛けてくれたらしい。さり気無い心配りがいつも自分を癒してくれる。まぁ、彼女には決して言わないが・・・。  「おはようございます。昨日の研究は何か成果はありました?」 地下の研究室から階段を上がってくると、キッチンにいる彼女が何かを切りながら聞いてくる。眠たい頭で「少しは。」とだけ答え、昼になってしまった朝ごはんが何なのか、ぼんやりと考えた。今刻んでいるのは、レタスかな?ということはサラダがあるので、それにあわせて、肉か魚の料理があるのか?しかし、寝起きにそれらは重いな。だが、食べないと怒るし、なにより外の飯よりうまいから、残したくもないし・・・。 そうこう考えていると、玄関からノック音が響いた。彼女が「は~い。」と返事をし、玄関に近づく。それを見て彼は急に不安になった。 (行くな、行くんじゃない。その扉に近づいてはいけない。) だが、彼の思いは言葉にはならず、彼女は扉のノブに手をかける。 (ダメだ!!開けるな!!) だが、叫びは声にはならず、彼女は扉を開けた。 「あら、確かにノックの音が聞こえたのに、誰もいないわ。いたずらかしら?」 そう言った後、彼女は彼に向かって、微笑みながら「や~ね~」と言って・・・。 止まった。止まった彼女は急に色を失い、白くなっていき、風に飛ばされる灰のように、開けた扉から消えていく。そして一本だけ残った歯が思い出したように重力に引かれて落ちる。それを拾い上げ、声にならない叫びを叫び続け、彼は意識を取り戻した。  「また、夢でしたか。」 ♂WIZはゆっくりと目を開けた。まだ暗い。デビルチを見張りに立たせてから眠りについて、そんなには時間は経っていないらしい。静かに身を起こし周囲を見渡す。見張りにいるはずのデビルチの姿がない。自分自身に危害がないのを考えると、デビルチに何かがあったとは考えにくい。となれば、生まれたてゆえの好奇心で、辺りの探索に行っているのかもしれない。  「やれやれ、とんだ見張りですねえ。」 ♂WIZは起こした体を宿り木に寄りかからせ、ゆっくりと目を閉じる。まだ休息は足りないが、横になるよりは何かあったときに反応し易い。手当てをした左腕をそっとさする。 (この島に来て2日。形態は違えど、彼女の夢を連続で見るとは・・・。最近は少なくなったのですがね。やはり、彼女に似ているあの♀ノービスのせいでしょうか・・・。そういえば、あの娘の行方も分らないままでしたね。♀WIZや♂セージとの戦闘で忘れていました。夜が明けたら、あの娘の捜索でもしますか。一度は諦めて引き返しましたが、見失ったのは隣のブロックの森の中。あれから半日近くは経っていますから、いない可能性が高いですが、なにか手がかりがあるかもしれませんしね。) 「お前は見立て通り、いい稼ぎだったぜ?」 机に並べた金を勘定しながら、その男は言った。私は何を思うわけでもなく、男から渡されるわずかな金を受け取って、男に背を向ける。 「明日もしっかり稼げよ?お前にはいままで随分と金がかかってんだ。しっかり返して親孝行してくれよ?」 そう言う男に何も答えず、自分にあてがわれた部屋に戻っていく。もう何も感じない。初めてだったときは泣きもしたし、抵抗もした。だが、いまではもう嫌悪すら沸かない。ただただ、作業のようにこなしていく。自分の体を清める行為も虚しく感じる。この行為は穢される為に行うのだ。そう思うのも当然だろう。そして、何人かの子と並べられ、好奇そうな目で見比べられ、私を指差しながら後ろに控える男に金を渡し、私の手を引いて部屋の中に連れ込んでいく。そして私の作業の時間が始まる。 はぁ、とため息をついて♀アルケミストは意識を戻した。ここは薄汚い部屋ではなく、深い闇に包まれた森の中。身を隠せそうなところがあったので、ここで眠っていたのだが、いやな夢で起こされた。辺りは梟の鳴き声などがする程度で、平和なものだ。今のうちに休んで、明日に備えよう。  ♀アルケミストは少し態勢を変えゆっくりと眠りに落ちていった。  「・・・子バフォ・・・。」 何かをつぶやいた悪ケミストにグラサンモンクは意識を向ける。閉じた瞼から流れる雫。何か悲しい夢でも見ているのだろうか。いや、悲しくない夢なんて見るはず無い。気を強く張っていないといけない、悲劇的な別れがあったのだ。楽しい夢なんて見られるはずが無い。 (俺では夢の中の君を護ることはできない。だが、現実の世界の君なら守ることが出来る。あの男が託した希望を俺が護ろう。自分自身の全てを懸けて・・・。) グラサンモンクは周囲に意識を向けなおす。殺し屋としての感覚も使って、この少女を護る。文字通り自分の闇である部分も含め全てを使う。殺し屋として汚れきった自分だが、それがこの少女を生かすために役立つのなら喜んで使おう。 (ん?なんだ・・・?) 殺し屋としての自分が暗闇の中に違和感を感じとった。敵意はないようだが、見られている。そして、聖職者としての自分が人ではない気配を感じ取っている。一瞬小動物かと思ったが、聖職者として気配を感じているため、その可能性は低い。だが、悪魔の類であるのに、敵意がないというのもおかしな話だ。人を見たら襲ってくるのが彼らであって、遠巻きに見ているというのはどうも解せない。向こうもこちらの反応に気が付いたのか、徐々に離れていく。追って正体を確かめたいが、少女を放って置くわけにもいかない。 (誰かの使い魔か?だとしたら、早々にここから移動したほうがいいな・・・。) グラサンモンクは、これで君を悪夢から助けられるかな、と思いながら、悪ケミストの細い肩をそっとさすった。 「主人の命デ『周囲』を見張ってイタが、近くにイルナ。」 そういうデビルチは周囲を捜索し終り、主のもとへ戻っていく最中である。見張りとは大分違うがデビルチ自身はその違いに気が付いてはいない。もっとも発見できているのは、グラサンモンクと悪ケミストのペアだけだが・・・。 デビルチはてってけてーと走っていく。主人に成果を報告するために。そのあと、その主人に後ろから口の両端に指を掛けられて引っ張られながら怒られるなんて、そんな事は今の彼には夢にも思っていなかった。 &lt;♀アルケミスト&gt; &lt;現在地:F-7 ♀ハンターと♀スーパーノービスが雨宿りをしていた木のうろ&gt; &lt;所持品:S2グラディウス 毒薬の瓶 ガーディアンフォーマルスーツ(ただしカードスロット部のみ)&gt; &lt;外見:絶世の美女&gt; &lt;性格:策略家&gt; &lt;備考:製薬型 やっぱり悪&gt; &lt;状態:軽度の火傷。騒動に乗じてPTを抜ける 一度は起きたが寝なおす&gt; &lt;悪ケミ&gt; &lt;現在位置:F-7&gt; &lt;所持品:グラディウス バフォ帽 サングラス 黄ハーブティ 支給品一式 馬牌×1&gt; &lt;外見:ケミデフォ、目の色は赤&gt; &lt;思考:脱出する。&gt; &lt;備考:サバイバル、爆弾に特化した頭脳、スティールを使えるシーフを探す、子バフォ?の夢をみている&gt; &lt;したぼく:グラサンモンク&gt; &lt;参考スレッド:悪ケミハウスで4箱目&gt; &lt;グラサンモンク&gt; &lt;現在地:F-7&gt; &lt;所持品:緑ポーション5個 インソムニアックサングラス[1] 種別不明鞭&gt; &lt;外見:csm:4r0l6010i2&gt; &lt;スキル:ヒール 気功 白刃取り 指弾 発勁 金剛 阿修羅覇王拳&gt; &lt;備考:特別枠 右心臓&gt; &lt;状態:♂ローグを警戒、負傷は治療、悪ケミを護る、怪しい気配により移動を決意する&gt; &lt;参考スレ:【18歳未満進入禁止】リアル・グRO妄想スレッド【閲覧注意】&gt; &lt;作品「雨の日」「青空に響く鎮魂歌」よりモンク(♂モンクと区別するため便宜的にグラサンモンクと表記)&gt; &lt;♂Wiz&gt; 位 置: E-7 装 備:コンバットナイフ 片目眼鏡 とんがり帽子    レッドジェムストーン1つ 血まみれのs1フード 外 見:黒髪 土気色肌 スキル:サイト サイトラッシャー ファイアーピラー クァグマイア    ファイアーウォール フロストダイバー アイスウォール モンスター情報    ストームガスト メテオストーム ソウルストライク ファイアーボール 備 考:「研究」のため他者を殺害 丁寧口調 マッド    デビルチと主従契約 軽度の火傷(手当て済み) 左腕に刺し傷(手当て済み) ♂セージに対する敗北感 いなくなったデビルチ待ち &lt;デビルチ&gt; 位 置:E-7 所持品:+10スティックキャンディ トライデント(デビルチ用) 備 考:悪魔 ♂WIZと主従契約 周囲を捜索して帰還中 ---- | [[戻る>2-233]] | [[目次>第二回目次3]] | [[進む>2-235]] |

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