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---- 239.なかま [3日目早朝] 彼女は長い悪夢を見ていた。 日常と言う名の悪夢。 当たり前になりすぎて悪夢だという意識もなかった。 彼女に夢はなかった。 ただその時置かれた境遇から脱し、這い上がることの繰り返し。 それは作業であって夢ではない。 上り詰めた先に何をしようと言う目的があったわけでもない。 彼女は悪夢しか知らないままに育ち、 そして今、別の悪夢の中にいる。 ♀アルケミストは目を覚ました。 う~ん、と体を伸ばそうとして手をぶつける。 そう言えば木のうろに潜り込んで寝たんだった。 (そろそろ一度きちんと身繕いしたいわね) 髪に付いた木屑を払って彼女は思った。 色気が武器の彼女としては着替えも化粧もできない今の状況はよろしくない。 あまり身だしなみが整い過ぎてても警戒されるだろうが、せめて水浴びして髪をとかすぐらいはしておきたいところだ。 (飲み水もなくなっちゃったし、小川でも探そうかしら) うろを出た彼女は今度こそ大きく体を伸ばした。 こんな島でも朝の空気は爽やかだ。 さえずる鳥の声。 そよ風に揺れる梢。 すぐ傍でもゆらゆら揺れ動くものがある。 それがゆっくり顔を振り動かす人間だと気付くのに一瞬の間があった。 「きゃ!?」 思わず彼女は身構えた。 それでも反射的にか弱い女を演じられた事に少しだけ満足する。 そいつは頭を振るのをやめ、じっと見つめ返してきた。 だがその眼には殺意も欲情も侮蔑も憐憫も、彼女が予想したいかなる感情も浮かんでいなかった。 ただのモノを見るような眼。 その目つきに♀アルケミストの心の何かがざわついた。 「な、何よ」 反射的に言ってしまってから心の中で舌打ちする。 これじゃ虚勢を張ってるただの小娘だ。 それでもやっぱり相手の表情に変化は見られなかった。 ただ抑揚のない声でぼそっと呟く。 「おめ、ながまか。てきか」 そしてまた♀アルケミストの顔をじっと見つめる。 その口調を聞いてやっと彼女は相手の正体に気付いた。 こいつはあの愚鈍な♂スパノビではないか。 変わりすぎた雰囲気に飲まれてわからなかった。 いつも♀BSの意向を窺っていた、あの自信なさそうな様子が微塵もない。 彼女は一瞬だけ計算し、すぐに笑顔を取りつくろった。 「なんだ、あなただったの。よかった、私は仲間よ。忘れちゃった?」 下らない連中とまた一緒になるのは避けたい。けれど敵味方を問われて敵と答えるのは下の下だ。 答えを迷ったりごまかしたりするのも敵と言うに等しい。 ただ無駄に人数が増えるのは困る。 だからこう聞いた。 「そう言えば♀BSさんは?」 その瞬間、♂スパノビの表情が小さく動いた。 「もう、いね」 「…そうですか」 ♀アルケミストは小さく頷いた。 ♀BSとはぐれたのなら彼は今ごろ必死に探し続けているはず。 ということは死んだのだろう。 彼が殺したという可能性は…あり得ない。 「かわいそうに」 彼女はなるべく優しげな声を出した。 ♀BSが死んだのであれば自分が取って替われるかもしれない。 うまく手なずければ裏切る心配のない手駒になる。 戦力としては疑問が残るけど、♀BSが死んで彼だけ生き延びたならそれほど馬鹿にしたものじゃない。 しかし、差し出した手の先から♂スパノビの体が逃げた。 「ながま、さがす」 「え?」 とまどう彼女の前で巨体が立ち上がった。 「めいれい、まもる」 さっさと行こうとする男に♀アルケミストは慌てた。 (ちょっとちょっと。私の誘いを無視するなんてどういうつもりよ) 内心かなりむっとしながら尋ねる。 「あの、命令って?」 ♂スパノビは一言だけ答えた。 「ぼず、言った」 それ以上何も説明せず♂スパノビは歩き出した。 ♀アルケミストも仕方なく後を追う。 ぼずと言うのは♀BSのことに違いない。 まだあの脳筋の命令に従ってるのだとすると、死んだと決めつけるのは早いかも知れない。 それなら。 「みなさんを探すならこっちだと思います」 彼女は♂スパノビの進む方向を少し修正した。 悩んだり復讐に狂ったりの余計な道連れはもうたくさんだ。 今までの『仲間』、特に♀BSと再合流しないように仕向けよう。 (と言っても誰がどっちへ行ったのか分からないけど) 彼女は心中肩をすくめた。 なるべく遠くまで行くのがいい。 その先はこの新しい手駒を活用しよう。 思い通りに動かすのは難しそうだが、盾にはなるし2人連れなら友好的なフリもしやすい。 それに♂スパノビだって男には違いない。 まずは彼を籠絡して、彼の仲間探しに乗じて有望なPTに紛れ込み、他の勢力を排除した上で毒薬を有効活用。それが理想だろう。 そこまで考えて彼女は苦笑した。 (世間ではこういう都合のいい理想のことを夢って言うんだったかしら) 少なくとも彼女の上を通り過ぎた男たちが寝物語に語った『夢』はそうだった。 彼女はそんなものに捕らわれない。 可能な目標を定め、達成する。 「あの、♂スパノビさん、待って下さい。私、山歩き慣れてなくて…」 ♀アルケミストは♂スパノビの籠絡を始めた。 それがどれほどの難事かも知らず。 <♀アルケミスト> <現在地:F-7> <所持品:S2グラディウス 毒薬の瓶 ガーディアンフォーマルスーツ(ただしカードスロット部のみ)> <外見:絶世の美女> <性格:策略家> <備考:製薬型 やっぱり悪 ♂スパノビと同行> <状態:軽度の火傷> <♂スパノビ> 現在地:F-7 所持品:スティレット ガード ほお紅 装飾用ひまわり 古いカード帖 スキル:速度増加 ヒール ニューマ ルアフ 解毒 外 見:巨漢 超強面だが頭が悪い 備 考:BOT症状発現? ♀BSの最期の命令に従っている ♀アルケミストと同行 状 態:HP消耗、SPはほぼ回復? ---- | [[戻る>2-238]] | [[目次>第二回目次3]] | [[進む>2-240]] |
239.なかま [3日目早朝] ---- 彼女は長い悪夢を見ていた。 日常と言う名の悪夢。 当たり前になりすぎて悪夢だという意識もなかった。 彼女に夢はなかった。 ただその時置かれた境遇から脱し、這い上がることの繰り返し。 それは作業であって夢ではない。 上り詰めた先に何をしようと言う目的があったわけでもない。 彼女は悪夢しか知らないままに育ち、 そして今、別の悪夢の中にいる。 ♀アルケミストは目を覚ました。 う~ん、と体を伸ばそうとして手をぶつける。 そう言えば木のうろに潜り込んで寝たんだった。 (そろそろ一度きちんと身繕いしたいわね) 髪に付いた木屑を払って彼女は思った。 色気が武器の彼女としては着替えも化粧もできない今の状況はよろしくない。 あまり身だしなみが整い過ぎてても警戒されるだろうが、せめて水浴びして髪をとかすぐらいはしておきたいところだ。 (飲み水もなくなっちゃったし、小川でも探そうかしら) うろを出た彼女は今度こそ大きく体を伸ばした。 こんな島でも朝の空気は爽やかだ。 さえずる鳥の声。 そよ風に揺れる梢。 すぐ傍でもゆらゆら揺れ動くものがある。 それがゆっくり顔を振り動かす人間だと気付くのに一瞬の間があった。 「きゃ!?」 思わず彼女は身構えた。 それでも反射的にか弱い女を演じられた事に少しだけ満足する。 そいつは頭を振るのをやめ、じっと見つめ返してきた。 だがその眼には殺意も欲情も侮蔑も憐憫も、彼女が予想したいかなる感情も浮かんでいなかった。 ただのモノを見るような眼。 その目つきに♀アルケミストの心の何かがざわついた。 「な、何よ」 反射的に言ってしまってから心の中で舌打ちする。 これじゃ虚勢を張ってるただの小娘だ。 それでもやっぱり相手の表情に変化は見られなかった。 ただ抑揚のない声でぼそっと呟く。 「おめ、ながまか。てきか」 そしてまた♀アルケミストの顔をじっと見つめる。 その口調を聞いてやっと彼女は相手の正体に気付いた。 こいつはあの愚鈍な♂スパノビではないか。 変わりすぎた雰囲気に飲まれてわからなかった。 いつも♀BSの意向を窺っていた、あの自信なさそうな様子が微塵もない。 彼女は一瞬だけ計算し、すぐに笑顔を取りつくろった。 「なんだ、あなただったの。よかった、私は仲間よ。忘れちゃった?」 下らない連中とまた一緒になるのは避けたい。けれど敵味方を問われて敵と答えるのは下の下だ。 答えを迷ったりごまかしたりするのも敵と言うに等しい。 ただ無駄に人数が増えるのは困る。 だからこう聞いた。 「そう言えば♀BSさんは?」 その瞬間、♂スパノビの表情が小さく動いた。 「もう、いね」 「…そうですか」 ♀アルケミストは小さく頷いた。 ♀BSとはぐれたのなら彼は今ごろ必死に探し続けているはず。 ということは死んだのだろう。 彼が殺したという可能性は…あり得ない。 「かわいそうに」 彼女はなるべく優しげな声を出した。 ♀BSが死んだのであれば自分が取って替われるかもしれない。 うまく手なずければ裏切る心配のない手駒になる。 戦力としては疑問が残るけど、♀BSが死んで彼だけ生き延びたならそれほど馬鹿にしたものじゃない。 しかし、差し出した手の先から♂スパノビの体が逃げた。 「ながま、さがす」 「え?」 とまどう彼女の前で巨体が立ち上がった。 「めいれい、まもる」 さっさと行こうとする男に♀アルケミストは慌てた。 (ちょっとちょっと。私の誘いを無視するなんてどういうつもりよ) 内心かなりむっとしながら尋ねる。 「あの、命令って?」 ♂スパノビは一言だけ答えた。 「ぼず、言った」 それ以上何も説明せず♂スパノビは歩き出した。 ♀アルケミストも仕方なく後を追う。 ぼずと言うのは♀BSのことに違いない。 まだあの脳筋の命令に従ってるのだとすると、死んだと決めつけるのは早いかも知れない。 それなら。 「みなさんを探すならこっちだと思います」 彼女は♂スパノビの進む方向を少し修正した。 悩んだり復讐に狂ったりの余計な道連れはもうたくさんだ。 今までの『仲間』、特に♀BSと再合流しないように仕向けよう。 (と言っても誰がどっちへ行ったのか分からないけど) 彼女は心中肩をすくめた。 なるべく遠くまで行くのがいい。 その先はこの新しい手駒を活用しよう。 思い通りに動かすのは難しそうだが、盾にはなるし2人連れなら友好的なフリもしやすい。 それに♂スパノビだって男には違いない。 まずは彼を籠絡して、彼の仲間探しに乗じて有望なPTに紛れ込み、他の勢力を排除した上で毒薬を有効活用。それが理想だろう。 そこまで考えて彼女は苦笑した。 (世間ではこういう都合のいい理想のことを夢って言うんだったかしら) 少なくとも彼女の上を通り過ぎた男たちが寝物語に語った『夢』はそうだった。 彼女はそんなものに捕らわれない。 可能な目標を定め、達成する。 「あの、♂スパノビさん、待って下さい。私、山歩き慣れてなくて…」 ♀アルケミストは♂スパノビの籠絡を始めた。 それがどれほどの難事かも知らず。 <♀アルケミスト> <現在地:F-7> <所持品:S2グラディウス 毒薬の瓶 ガーディアンフォーマルスーツ(ただしカードスロット部のみ)> <外見:絶世の美女> <性格:策略家> <備考:製薬型 やっぱり悪 ♂スパノビと同行> <状態:軽度の火傷> <♂スパノビ> 現在地:F-7 所持品:スティレット ガード ほお紅 装飾用ひまわり 古いカード帖 スキル:速度増加 ヒール ニューマ ルアフ 解毒 外 見:巨漢 超強面だが頭が悪い 備 考:BOT症状発現? ♀BSの最期の命令に従っている ♀アルケミストと同行 状 態:HP消耗、SPはほぼ回復? ---- | [[戻る>2-238]] | [[目次>第二回目次3]] | [[進む>2-240]] |

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