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249. 正しき道を [3日目朝] ---- ♂騎士は走り出した。 姿がわからない人間に近づくことに恐怖はあったが、助けを呼ぶ人間を無視して隠れ続けることなどできなかった。 それが普通ならば、正しい道であるはずだった。 剣を抜き、突然走り寄ってくる♂騎士に、ミストレスを除く誰もが咄嗟には反応できなかった。 彼の目が明らかに自分たちを狙っていることに気づき、♀騎士は女王と卵から身を離すしかなかった。 だが、ミストレスを拘束していたもう一人である♂ハンターは、彼女から手を離すことができなかった。 彼は、もう『彼女』を離したくはなかったのだ。 ♂騎士は走りながらも悩む。 殺すのは怖い。だが誰かを助けるためならば俺は騎士に戻れるだろうか。 ――人を殺すのを躊躇って、ここで生きていけると思っているのか。 かつて♂クルセイダーから言われた言葉が、彼の頭によぎる。 ふと♂騎士は視界に、紫髪の少女を捉える。輪郭はぼやけてはいたものの、彼にはそう見えた。 彼女が、笑っているように感じた。助けに安心しているのだろうか、と事情を知らない彼は思う。 それが、♂騎士の心の箍を外す決定打となった。 なぜ彼女が個人として見えるのか、疑問に思う余裕は彼にはなかった。 鋭い刃が背中を凪ぐ。 ♂ハンターはそれでも、ミストレスの手を握りしめ続けようとした。 だが痛みに力の抜けた彼の手を、無常にも女王は振り払う。 地に伏した♂ハンターに止めを刺そうと、♂騎士が剣を構えたその時だった。 「いい加減にしろ馬鹿野郎がぁ!」 背後からの強い衝撃に、彼は大きく弾き飛ばされた。 ♂騎士と、彼に体当たりをした♂プリが、絡みあうように地を転がる。 やがて動きが止まると、♂騎士は♂プリから逃れようと半身を起こした。しかしすぐに、♂プリに押さえつけられる。 「離せ! 離せよ!」 「うるせえ! なんてことしてくれたんだてめえは!」 ♂プリは、信じていた♂騎士に裏切られたような気持ちを抱き、憤っていた。 ♂騎士は自分を押さえつける人間が♂プリであると気づかぬまま、悲痛な声で叫ぶ。 「邪魔をしないでくれ! 今度こそ守りたいんだ……!」 ♂騎士の言葉に、彼の事情を知る♂プリの胸が痛む。 だが♂騎士に同情すべき点はあれ、彼が好転しかけていた状況を滅茶苦茶にしたことに変わりはない。 ♂プリは、もがく♂騎士の顔を思いきり殴った。 とりあえず大人しくさせるにはこれが一番だ、という聖職者らしからぬ思考で。 「いいから落ち着け! 邪魔をしてんのはお前のほうだ。  お前の気持ちはわかるがな、守ろうとする相手が間違ってるぜ」 ♂騎士の体から力が抜ける。♂プリもそれを確認すると、押さえつけていた腕を離し、立ち上がった。 「お前、♂プリか……? そのダミ声、聞き覚えがある」 冷静になってはじめて、♂騎士は彼を諭す相手に気がついた。 「おうよ。もう少し早く気づいてほしかったがな。……ってお前、ダミ声ってなんだよ」 「教えてくれ……守ろうとする相手が違うって、どういうことだ?」 「あー、とにかくお前が守ろうとした女は敵なんだよ。  悪いが詳しく説明してる時間はないんだ。お前以上になんとかしなきゃならねえ奴がいるからな」 そう言って♂プリはミストレスのほうへと視線を戻し――表情を凍りつかせた。 短刀に胸を貫かれ、崩れ落ちた♀スパノビと、それに縋り付く♀ハンターが彼の目に映る。 彼の体がその状況に反応する前に、彼女たちは紫電を受け宙に舞い上がり、落ちた。 +++ それは一瞬の出来事だった。 あまりにも場違いなミストレスの悲鳴、それに応えて現れた♂騎士。♂ハンターの負傷。 予想だにしない出来事の連続に、周りの者は誰もが咄嗟に動くことができなかった。 その隙にミストレスは♀ハンターへの報復の障害となる♀スパノビを始末しようと動いたのだ。 彼女の思惑通り、隙を突かれた♀スパノビは彼女の短刀に胸を貫かれ、虫の息だ。 立ちふさがる壁をなくしてしまえば、♀ハンターを守るものは他にない。 「お……おねえ……ちゃ……」 ♀ハンターは自由に動かない手を、必死に♀スパノビへと伸ばす。 そんな彼女に、♀スパノビはやわらかな笑顔を向けた。 (だいじょうぶ……♀ハンターさんは、私がいなくてももう大丈夫です。  あなたはもう十分強いですし……ふぁるさんだっていますから……) 「いや、いやだよ……死なないで……! おねえちゃんが、いなくなったら、あたし……」 震える♀ハンターの手を、♀スパノビはそっと握り締めた。 そして、力を振り絞って言葉を紡いだ。 「心配しないでください……ずっと、一緒ですから――」 「ならば、共に朽ちるがよい」 顔を上げた♀ハンターの視界に、紫電を手に纏うミストレスの姿が映る。 自由にならない体で逃げることもできず、彼女はぎゅっと♀スパノビの体を抱きしめた。 『やめろこのクソアマあぁぁぁぁぁ!!』 ふぁるが割り込むようにして滑り込み、その爪をミストレスへと振りかぶる。 ♀騎士は再びミストレスへ飛びつこうと地を蹴り。 ♂モンクは♀スパノビたちの代わりに電撃を受け止めようと駆ける。 しかし全てが、ほんの少しだけ遅かった。 紫電は割り込んだふぁるをも巻き込み、少女たちの体を宙へと舞い上がらせた。 +++ 「♂ハンター……悪いが、あの嬢ちゃんを元に戻すの、ちぃとキツイかもしれねえぜ……」 ♀スパノビたちの元へと駆けつけた♂プリが、苦々しげに呟く。 ♂プリに続いた♂騎士も、彼の背後で呟く。 「♂プリ……俺はまた、間違えたんだな。俺のせいで、また人が死んだんだ」 「馬鹿野郎、まだ死んだって決まったわけじゃ……」 「俺だってそう信じたいさ。でも……そのスパノビの女の子が、はっきりと人間に見えるんだ。  死んだ♂ケミがあいつってわかるようになったのと、同じように」 「なんだと……?」 ♂プリはかつての♂騎士の言葉を思い出す。 (見分けがつかない……とか言ってたっけな。そういえば俺のことも相変わらずよくわかってないみたいだし。  よくわからんが、死んだらちゃんと見えるようになるってことか?) 「♂騎士。もう一人は……女のハンターなんだが、そうは見えないんだな?」 「ああ、わからない。……きっと、そのスパノビの子が守ったんだろうな」 二度も電撃を受けながらも、♀ハンターは生きていた。 ♀スパノビが覆いかぶさるように彼女を抱きしめ、直撃を防いだからだ。 「まったく……大した嬢ちゃんだぜ。安心しな、あんたの妹は俺が絶対に死なせないからよ」 そっと♂プリは♀スパノビの頭を撫で、彼女の手を胸の上で組ませた。 そして彼は、気絶した♀ハンターへと向き直り、治療をはじめた。 ふと♂騎士は疑問を抱き、♂プリへそれを投げかけた。 「♂プリ……あの紫の髪をした、アーチャーの女……みたいなのは何者なんだ?  遠目ではよくわからなかったんだが、今になってしっかり見るとあいつもなんとなく見えるんだよ。  ちゃんと見えるわけじゃないけど……少なくともお前とか、他の奴よりは判断できる」 「……半分人間じゃないからかもな。なんとなくお前のおかしな所がわかってきたぜ。  ひとつ言えるのは、あいつがお前にわかりやすく見えてるうちは、あいつは敵だってことだ」 ♂プリの言葉に、♂騎士は眉を顰めた。いまいち状況が把握できない。 「ああ悪い。簡単に言うと、あの女はミストレスっていう魔物で、♀アーチャーの体を乗っ取ってる。  ♀アーチャーは♂ハンター……俺の仲間の彼女で、♂ハンターはなんとか元に戻したがってる。  つまり……危険極まりない女だが、殺さないようにしてほしいってことだ」 思わず♂騎士は頭を抱えた。そういうことならば先ほどの状況も理解できる。 倒れた人物は♀ハンター、それを庇うように立っていたのは♀スパノビ。 周りの人間は彼女らの仲間で、ミストレスを止めたいが、殺すことができないから抑えつけるしかなかった。 蚊帳の外の人間からすれば誤解しかねない状況をミストレスは利用し、自分はまんまと利用されたわけだ。 「つまりだ。♂ハンターって奴をサポートすればいいわけだな。もちろんあの女は殺さないように」 「結構無茶な相談だけどな。しかも♂ハンターはさっきお前が斬った奴だ」 う、と♂騎士は言葉を詰まらせた。今更味方についたところで信用してもらえるだろうか。 「一応お前のことは大体説明してあるから、大丈夫だと思うぜ」 (……それって俺が味方を殺したことも説明してるんだろ。逆効果じゃないのか……) 一抹の不安を覚えながらも、♂騎士はミストレスたちのほうへと体を向けた。 「……♂ハンターの無茶に、お前も協力してくれんのか?」 ♂プリの問いに、♂騎士は背中を向けたまま答える。 「普通にあの女を殺すつもりになれば楽なんだろうけど、そうするつもりはない。  ♂ハンターの、大切な人を思う気持ちってやつ、わかるし」 ふぅ、と♂騎士はため息をつき、言葉を続けた。 「何も知らないくせに状況を引っ掻き回して、♀スパノビを死に追いやったのは俺だ。  罪滅ぼしになるなんて思っちゃいないけど、できることはしたい。  俺、間違ったことばっかりしてきたけど……もう間違った道を選ぶのは嫌なんだ」 「……そっか。まあアレだ、お前には色々言いたいことがあるんだよ。  それはうまく嬢ちゃんを元に戻して、お互い生き残ってからってことでどうよ」 「説教はゴメンなんだけどな。……まあ、そういうことにするか」 ♂騎士が♂ハンターたちの元へと走っていくのを見届け、♂プリも♀ハンターの治療に再び集中した。 ♂ハンターは、地に伏せながらも全てを見ていた。 背中の傷は、痛みが走るものの命に関わるほど酷くはない。 だが、心が痛かった。 ミストレスは、できたばかりとはいえ仲間には違いなかった♀ハンターたちを、はっきりと傷つけたのだ。 それを今更とはいえ目の当たりにすると、どうしても♀アーチャーとの距離を感じずにはいられなかった。 (本当に、戻せるんだろうか。……いや、やらなきゃいけないんだ。  俺の我侭のせいで傷ついた♀ハンターたちのためにも、協力してくれてる♀騎士たちのためにも) ♂ハンターは痛みに顔を顰めながらも立ち上がった。 ミストレスが、彼に妖艶な笑みを向ける。彼はそれに目を逸らさず、彼女を睨みつけた。 「ああ、よい頃合じゃな」 熱に浮かされたような表情でミストレスが呟く。 それと同時に、彼女の抱く卵に一本の皹が走った。 「我の可愛い仔よ。ようやく母の力になってくれるのじゃな」 ぴしり、ぴしり。 間を置かずに皹は全面に走り始める。 女王蜂の魔力を継ぐ子供が、今まさに誕生しようとしていた。 <♂プリースト> 現在地:E-6 所持品:修道女のヴェール(マヤパープルc挿し) でっかいゼロピ 多めの食料 マイトスタッフ 外見:逆毛(修道女のヴェール装備のため見えない) 怖い顔 備考:殴りプリ ♂ハンタ、♂モンク、♀騎士と一時的に同行 ♀ハンターを治療中 状態:心身の疲労はやや回復 <♂ハンター> 現在地:E-6 所持品:アーバレスト、ナイフ、プリンセスナイフ、大量の矢 外見:マジデフォ金髪 備考:極度の不幸体質 D-A二極ハンタ ♂モンク、♀騎士、♂プリーストと一時的に同行 状態:背中に少し深い傷を負う。♀アーチャーを救いたい <♂モンク> 位置:E-6 所持品:なし(黙示録・四つ葉のクローバー焼失) 外見:アフロ(アサデフォから落雷により変更) スキル:金剛不壊 阿修羅覇凰拳 備考:ラッパー 諸行無常思考 楽観的 刃物で殺傷 状態:腕に裂傷 <♀騎士> 位置:E-6 所持品:S1シールド、錐 外見:csf:4j0i8092 赤みを帯びた黒色の瞳 備考:殺人に強い忌避感とPTSD。刀剣類が持てない 笑えるように <♀ハンター> 現在地:E-6 所持品:スパナ、古い紫色の箱、設置用トーキーボックス、フォーチュンソード、オリデオコンの矢筒、+2バイタルシュールドボウ[3] スキル:ファルコンマスタリー、ブリッツビート、スチールクロウ、集中力向上、ダブルストレーピング 備考:対人恐怖症、鳥と会話が出来る、純鷹師、弓の扱いはそれなり、島にいる鳥達が味方 状態:♀スパノビを信頼、ふぁると遭遇で勇気りんりん、でも知らない人達ちょっと怖い    ミストレスと遭遇、JTによる負傷で気絶中 <ふぁる> 現在地:E-6 所持品:リボンのヘアバンド スキル:ブリッツビート スチールクロウ 備考:なんだかんだいいながら♀ハンターが心配で堪らない、ツンデレ?GM側の拠点を発見するも重要視せず無視、♀ハンターと遭遇 状態:JTによる負傷で気絶中 <♀スパノビ> 現在地:E-6 外見:csf:4j0610m2 所持品:S2ダマスカス、シルクリボン(無理矢理装着)、古いカード帖(本人気付いていない) スキル:集中力向上、ニューマ、速度増加、ヒール 備考:外見とは裏腹に場数を踏んでいる(短剣型) ♀ハンターの生い立ちや鳥との会話能力を知る 状態:死亡 <♂騎士> 現在地:E-6 所持品:ツルギ、S1少女の日記、青箱1個 外 見:深い赤の瞳 状 態:痛覚を完全に失う、体力は半分ほど 正気を保ってはいるが、未だ不安定     個体認識異常(死亡した人間、人間でないものは判断可能。中身だけが魔物のミストレスは近くに寄ればわかる程度)     ♂ケミを殺してしまった心の傷から、人間を殺すことを躊躇う それでも生きたいと思う自分をあきれながらも認める。 備 考:GMの暗示に抵抗しようとするも影響中、混乱して♂ケミを殺害 体と心の異常を自覚する     ♂ケミのところに戻りできるなら弔いたい、誤解から♀Wiz達と小競り合いの末逃走 ♂ハンターたちに協力したい <ミストレス> 現在地:E-6 外見 :髪は紫、長め 姿形はほぼ♀アーチャー 所持品:ミストレスの冠、カウンターダガー、(胸元に)ミストレスの卵 備考 :本来の力を取り戻すため他人を積極的に殺しに行く。     ♂ハンターの誘惑と♀ハンターへの報復、両方実行中。卵がまさに孵化しようとしている ---- | [[戻る>2-248]] | [[目次>第二回目次3]] | [[進む>2-250]] |

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