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235.見慣れた悪夢[2日目深夜~3日目未明] ---- ゆっくりと目を開けた。カーテンから差し込む光が、昼に近づいていることを教えてくれる。  昨日は研究に力を入れすぎて、ほぼ徹夜をしてしまった。突っ伏した机から体を起こすと、毛布がはらりと地面に落ちる。寝てしまった自分に彼女が掛けてくれたらしい。さり気無い心配りがいつも自分を癒してくれる。まぁ、彼女には決して言わないが・・・。  「おはようございます。昨日の研究は何か成果はありました?」 地下の研究室から階段を上がってくると、キッチンにいる彼女が何かを切りながら聞いてくる。眠たい頭で「少しは。」とだけ答え、昼になってしまった朝ごはんが何なのか、ぼんやりと考えた。今刻んでいるのは、レタスかな?ということはサラダがあるので、それにあわせて、肉か魚の料理があるのか?しかし、寝起きにそれらは重いな。だが、食べないと怒るし、なにより外の飯よりうまいから、残したくもないし・・・。 そうこう考えていると、玄関からノック音が響いた。彼女が「は~い。」と返事をし、玄関に近づく。それを見て彼は急に不安になった。 (行くな、行くんじゃない。その扉に近づいてはいけない。) だが、彼の思いは言葉にはならず、彼女は扉のノブに手をかける。 (ダメだ!!開けるな!!) だが、叫びは声にはならず、彼女は扉を開けた。 「あら、確かにノックの音が聞こえたのに、誰もいないわ。いたずらかしら?」 そう言った後、彼女は彼に向かって、微笑みながら「や~ね~」と言って・・・。 止まった。止まった彼女は急に色を失い、白くなっていき、風に飛ばされる灰のように、開けた扉から消えていく。そして一本だけ残った歯が思い出したように重力に引かれて落ちる。それを拾い上げ、声にならない叫びを叫び続け、彼は意識を取り戻した。  「また、夢でしたか。」 ♂WIZはゆっくりと目を開けた。まだ暗い。デビルチを見張りに立たせてから眠りについて、そんなには時間は経っていないらしい。静かに身を起こし周囲を見渡す。見張りにいるはずのデビルチの姿がない。自分自身に危害がないのを考えると、デビルチに何かがあったとは考えにくい。となれば、生まれたてゆえの好奇心で、辺りの探索に行っているのかもしれない。  「やれやれ、とんだ見張りですねえ。」 ♂WIZは起こした体を宿り木に寄りかからせ、ゆっくりと目を閉じる。まだ休息は足りないが、横になるよりは何かあったときに反応し易い。手当てをした左腕をそっとさする。 (この島に来て2日。形態は違えど、彼女の夢を連続で見るとは・・・。最近は少なくなったのですがね。やはり、彼女に似ているあの♀ノービスのせいでしょうか・・・。そういえば、あの娘の行方も分らないままでしたね。♀WIZや♂セージとの戦闘で忘れていました。夜が明けたら、あの娘の捜索でもしますか。一度は諦めて引き返しましたが、見失ったのは隣のブロックの森の中。あれから半日近くは経っていますから、いない可能性が高いですが、なにか手がかりがあるかもしれませんしね。) 「お前は見立て通り、いい稼ぎだったぜ?」 机に並べた金を勘定しながら、その男は言った。私は何を思うわけでもなく、男から渡されるわずかな金を受け取って、男に背を向ける。 「明日もしっかり稼げよ?お前にはいままで随分と金がかかってんだ。しっかり返して親孝行してくれよ?」 そう言う男に何も答えず、自分にあてがわれた部屋に戻っていく。もう何も感じない。初めてだったときは泣きもしたし、抵抗もした。だが、いまではもう嫌悪すら沸かない。ただただ、作業のようにこなしていく。自分の体を清める行為も虚しく感じる。この行為は穢される為に行うのだ。そう思うのも当然だろう。そして、何人かの子と並べられ、好奇そうな目で見比べられ、私を指差しながら後ろに控える男に金を渡し、私の手を引いて部屋の中に連れ込んでいく。そして私の作業の時間が始まる。 はぁ、とため息をついて♀アルケミストは意識を戻した。ここは薄汚い部屋ではなく、深い闇に包まれた森の中。身を隠せそうなところがあったので、ここで眠っていたのだが、いやな夢で起こされた。辺りは梟の鳴き声などがする程度で、平和なものだ。今のうちに休んで、明日に備えよう。  ♀アルケミストは少し態勢を変えゆっくりと眠りに落ちていった。  「・・・子バフォ・・・。」 何かをつぶやいた悪ケミストにグラサンモンクは意識を向ける。閉じた瞼から流れる雫。何か悲しい夢でも見ているのだろうか。いや、悲しくない夢なんて見るはず無い。気を強く張っていないといけない、悲劇的な別れがあったのだ。楽しい夢なんて見られるはずが無い。 (俺では夢の中の君を護ることはできない。だが、現実の世界の君なら守ることが出来る。あの男が託した希望を俺が護ろう。自分自身の全てを懸けて・・・。) グラサンモンクは周囲に意識を向けなおす。殺し屋としての感覚も使って、この少女を護る。文字通り自分の闇である部分も含め全てを使う。殺し屋として汚れきった自分だが、それがこの少女を生かすために役立つのなら喜んで使おう。 (ん?なんだ・・・?) 殺し屋としての自分が暗闇の中に違和感を感じとった。敵意はないようだが、見られている。そして、聖職者としての自分が人ではない気配を感じ取っている。一瞬小動物かと思ったが、聖職者として気配を感じているため、その可能性は低い。だが、悪魔の類であるのに、敵意がないというのもおかしな話だ。人を見たら襲ってくるのが彼らであって、遠巻きに見ているというのはどうも解せない。向こうもこちらの反応に気が付いたのか、徐々に離れていく。追って正体を確かめたいが、少女を放って置くわけにもいかない。 (誰かの使い魔か?だとしたら、早々にここから移動したほうがいいな・・・。) グラサンモンクは、これで君を悪夢から助けられるかな、と思いながら、悪ケミストの細い肩をそっとさすった。 「主人の命デ『周囲』を見張ってイタが、近くにイルナ。」 そういうデビルチは周囲を捜索し終り、主のもとへ戻っていく最中である。見張りとは大分違うがデビルチ自身はその違いに気が付いてはいない。もっとも発見できているのは、グラサンモンクと悪ケミストのペアだけだが・・・。 デビルチはてってけてーと走っていく。主人に成果を報告するために。そのあと、その主人に後ろから口の両端に指を掛けられて引っ張られながら怒られるなんて、そんな事は今の彼には夢にも思っていなかった。 <♀アルケミスト> <現在地:F-7 ♀ハンターと♀スーパーノービスが雨宿りをしていた木のうろ> <所持品:S2グラディウス 毒薬の瓶 ガーディアンフォーマルスーツ(ただしカードスロット部のみ)> <外見:絶世の美女> <性格:策略家> <備考:製薬型 やっぱり悪> <状態:軽度の火傷。騒動に乗じてPTを抜ける 一度は起きたが寝なおす> <悪ケミ> <現在位置:F-7> <所持品:グラディウス バフォ帽 サングラス 黄ハーブティ 支給品一式 馬牌×1> <外見:ケミデフォ、目の色は赤> <思考:脱出する。> <備考:サバイバル、爆弾に特化した頭脳、スティールを使えるシーフを探す、子バフォ?の夢をみている> <したぼく:グラサンモンク> <参考スレッド:悪ケミハウスで4箱目> <グラサンモンク> <現在地:F-7> <所持品:緑ポーション5個 インソムニアックサングラス[1] 種別不明鞭> <外見:csm:4r0l6010i2> <スキル:ヒール 気功 白刃取り 指弾 発勁 金剛 阿修羅覇王拳> <備考:特別枠 右心臓> <状態:♂ローグを警戒、負傷は治療、悪ケミを護る、怪しい気配により移動を決意する> <参考スレ:【18歳未満進入禁止】リアル・グRO妄想スレッド【閲覧注意】> <作品「雨の日」「青空に響く鎮魂歌」よりモンク(♂モンクと区別するため便宜的にグラサンモンクと表記)> <♂Wiz> 位 置: E-7 装 備:コンバットナイフ 片目眼鏡 とんがり帽子    レッドジェムストーン1つ 血まみれのs1フード 外 見:黒髪 土気色肌 スキル:サイト サイトラッシャー ファイアーピラー クァグマイア    ファイアーウォール フロストダイバー アイスウォール モンスター情報    ストームガスト メテオストーム ソウルストライク ファイアーボール 備 考:「研究」のため他者を殺害 丁寧口調 マッド    デビルチと主従契約 軽度の火傷(手当て済み) 左腕に刺し傷(手当て済み) ♂セージに対する敗北感 いなくなったデビルチ待ち <デビルチ> 位 置:E-7 所持品:+10スティックキャンディ トライデント(デビルチ用) 備 考:悪魔 ♂WIZと主従契約 周囲を捜索して帰還中 ---- [[戻る>2-234]] [[目次>第二回目次3]] [[進む>2-236]]
235.不運 ---- ―――……何だ? ♂プリは躊躇っていた。 木陰を通して人影が見える。まだかなり遠いが、複数…恐らく3人だろう。 「集団でいるってことは…多分殺人者じゃないんだよな。」 呟いて確認してみる。このゲーム、最後まで残った者が勝ち…だということは。 殺人者は単独で行動したがるだろう…と、思う。多分。恐らく。 ―――ってことは味方なんだよな…? 彼等は♂騎士の行方を知っているかもしれない。殺人者でなく、知っているなら教えてくれるだろう。 だが、と彼は思う。あの集団が味方なのかを彼は判別できなかった。何故なら――― 一人妙なのだ。主に頭が。 ―――やたらデカくねぇか?あいつの頭… ミッドガルド王国ではアフロという髪型は一般的ではない。そのため、彼はそんな髪型の存在すら知らなかった。 その上、夜で遠距離であるということが、彼に正確な判断をさせなかった。 ―――ほんとに人間か、あれは?明らかに頭デカすぎだろ…? 声をかけてみるか、それともやめておくべきか。迷っていた彼は…自らの足が、枯れ枝を踏みかけていることに気づかなかった。 ―――パキッ 「「「!」」」「やべっ…!」 静まりかえっていた森に響いた一つの音。それに4人はそれぞれ反応する。 ♂ハンタ、♂モンク、♀騎士は、音の響いた方向に集中する。 ♂プリは自分の方に気配が向いたのを感じ取る。 最初に相手を確認したのは♂ハンタだった。鍛え上げた目。梟のような彼の瞳が相手を捉える。 ♂プリはその視線を感じ、迷う。見つかった、どうする、敵か味方か、それ以前にあれは人なのか。 その一瞬の動揺。それが結果的に、彼の失敗となった。 「Hey,you,guy!覗きは・よくない・犯罪だ…ZE!」「うお!?」 その一瞬で、♂モンクに懐に入り込まれていたからだ。 考え込んでいた原因の妙な頭の相手が眼前に現れ、驚いて動きが止まる♂プリ。 鍛え上げられた拳を向けられ、彼は動くに動けなってしまう。 一拍遅れて♀騎士と♂ハンタも集まってくる。 もう彼に逃げ道はない。 彼の不運の原因は、♂モンクの髪型…アフロ。その妙な髪形だろう。 彼は両手を上げて… 「―――降参だ。」 「いや、信用できないぞその顔!」 「え、ちょ、待ておい!?」 「……(疑うような視線)」 …♂プリ自身のこわい顔も不運の原因だったかもしれない。 その後必死で説明して、彼らが納得するまで、♂プリは武器を向けられ続けたそうな。 <♂プリースト> 現在地:E-6 所持品:修道女のヴェール(マヤパープルc挿し) でっかいゼロピ 多めの食料 マイトスタッフ 外 見:逆毛(修道女のヴェール装備のため見えない) 怖い顔 備 考:殴りプリ ♂騎士を追いかけている ♂ハンタ、♂モンク、♀騎士と遭遇、誤解から捕まる 状 態:心身ともに極度の疲労。根性で体を動かしている。股間を強打 疲労により方向感覚欠如 <♂ハンター> 現在地:E-6 所持品:アーバレスト、ナイフ、プリンセスナイフ、大量の矢 外見:マジデフォ金髪 備考:極度の不幸体質 D-A二極ハンタ 状態:麻痺からそれなりに回復(本調子ではない) ミストレスと、ジルタスを殺したモンクを探すために動く。   ♀アーチャーを救いたい <♂モンク> 位置 :E-6 所持品:なし(黙示録・四つ葉のクローバー焼失) 外見 :アフロ(アサデフォから落雷により変更) スキル:金剛不壊 備考 :ラッパー 諸行無常思考 楽観的 刃物で殺傷 <♀騎士> 位置 :E-6 所持品:S1シールド、錐 外見 :csf:4j0i8092 赤みを帯びた黒色の瞳 備考 :殺人に強い忌避感とPTSD。刀剣類が持てない 笑えるように ---- [[戻る>2-234]] [[目次>第二回目次3]] [[進む>2-236]]

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