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256.女王の娘[3日目朝]
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ごんごろごんごろごろごろごん
身を丸めたキャタピラーはまるでアクラウスのように転がっていた。
もちろん自力で転がる能力はないのでひたすら斜面を下へ下へと。
ごろごろごろごろごろごろ……どしん
やがてその回転は大木の根本に激突して止まった。
そうなって改めて姿形が分かる。
ミストレスから受け取った魔力のせいだろうか。体格は二回りもふくれ上がり、表皮がパンパンに張りつめていた。
その厚い表皮に刻み込まれていた錐の傷が激突の衝撃で広がる。
ぴし、ぱしり
裂け目はすごい勢いで広がっていった。
だがそこから体液がこぼれる様子はない。
代わりに大きく開いた裂け目の間から何かが伸び始めた。
羽だ。
しわくちゃに折り畳まれていた羽根が朝日に乾かされながらゆっくりと立ち上がる。
菫色と桜色に彩られた、鮮やかな蝶の羽。
キャタピラーから羽化するならクリーミーフィアーだろうか。だが……大きい。
「あいたたたたたたあ…」
さらにどこからか人の声がした。
薄茶の表皮が内側から一気に引き裂かれる。
「んも~。人生最初の朝がこれ~?」
蟲の皮の中から白い手が、そしてどこか♀アーチャーに似た容貌が現れた。
ただその頭の上には真紅の触角と複眼がついている。
ちょっと肉感的な女性の体に蝶の羽。
パピヨンだった。
「母さまもさ~、も~ちょっといいトコに産んでよねえ~」
母とは♀アーチャーとミストレスどちらのことなのか。
双方の色を羽に乗せたパピヨンは首を振る。
「この体はいいかんじだけど~」
脱ぎ捨てた殻から触角をちぎり取り、両手でぶんと振り回す。
即席のフレイルは狙い過たず木の幹を打った。だが中身の抜けた触角の殻はあっさり砕けてしまった。
「ちぇっ、役に立たないの~」
ひゅばしっ
新しい真紅の触角が鞭のようにしなりのび、古い触角の残骸を粉々にうち砕く。
「まいっか~。なんとかなるよね~」
彼女はひとつ大きく羽ばたいて宙に舞い上がり、無邪気な笑顔を浮かべた。
「さぁ~って、誰から血吸おっかな~」
<キャタピラー> → <パピヨン>
現在地:E-6→?
備考 :ミストレスの魔力を一部受け継ぐ、脱皮
状態 :脱皮時に全快
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